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image1774.png公開年:1961年
公開国:日本
時 間:97分
監 督:市川崑
出 演:船越英二、岸恵子、山本富士子、宮城まり子、中村玉緒、岸田今日子、宇野良子、村井千恵子、有明マスミ、紺野ユカ、倉田マユミ、森山加代子、永井智雄、大辻伺郎、伊丹一三、佐山俊二、中川弘子、浜村純、伊東光一、夏木章、志保京助、ハナ肇とクレージーキャッツ 他



テレビプロデューサーの風は、妻帯者でありながらモテまくりで、愛人関係にある女性は10人と下らない。愛人たちは、自分以外に愛人がいることに感づいており、風の浮気性も承知しているのだが、彼のにくめない性格のためか、別れることができずにいた。本妻の双葉でさえ、そんな夫をあきらめて飲食店経営に没頭することで気を紛らしている始末。女たちは、そんなぶつけどころのない状況から、「風がポックり死んでくれれば楽になる」「いっそ誰かが風を殺してくれればいいのに…」などといいはじめる。ひょんなことから、そんな女たちの言葉が風に耳に入ると、元々気の弱い風は、女たちが自分を本気で殺そうとしているのではないかと思いはじめる。能天気な風は、なぜ女たちがそのように思うのか理解できず、妻の双葉に相談してしまい…というストーリー。

男と女の噛み合わなさという点については、人間の進化の過程で獲得した分業に伴う特質なので、どうしようもないことで、そちらの観点では面白みは無かった。しかし、打算と執着という相反する二面性を持っている得体の知れないものとしての女については、見事に表現しきっているとと思う。
「誰にでも優しいって事は、誰にも優しくないってこと」うむ、確かにそうなんだけど、これって言われても男はどうしようもないのよ、実際。

犯罪映画であり、恋愛映画であり、幽霊が出てくるコメディでもあり、シニカルな社会風刺映画でもある。風は表面上は好人物だけど、やってることは悪人といわれても仕方が無いわけで、そう意味ではピカレスク映画ともいえる。このように掴み所のない作品なのだが、ストーリー運びがものすごくウマいので、とっ散らかることなく、これらすべての要素が渾然一体となっている。さすが市川崑ってところか。

浜辺にて黒い服装の十人の女たちに囲まれる船越英二の構図は、まるでゴダール作品みたい。白黒画像が持つ緊迫感やインパクトなんかを最大限にに活用した作品といえるだろう。

常連・岸恵子が美しいアイコンでありながら微妙なくたびれ具合を演じきっているが、彼女以外の”主役”の女たちもなかなかいい感じ。中村玉緒はとってもキュートで、いつからあんなボエボエした声になったのやら。岸田今日子ですら庶民臭さを醸し出しながらも結構アリな感じで魅力的。

まあ、問題は、ラストの車炎上シーンをどう受け取るか?だろうね。これからの市子の生活を案じさせてるってことなのか。色々解釈はできると思う。
2002年に市川崑が自らの手でTVドラマにセリフリメイクしていて、ちょっとラストが異なるらしいんだけど、その違いから市川崑の意図が見えるのかも?と思ったのだが、当時は見逃しているし、いま観ようとしてもレンタルしていない模様。ぐぬぬ。

見たことのない人には、是非お薦め。同時代の日本映画には見られない魅力がある。



負けるな日本

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