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公開年:1995年
公開国:アメリカ
時 間:189分
監 督:カーマ・ヒントン、リチャード・ゴードン
出 演:デボラ・エイモス 他
1989年に発生した中国・天安門事件について、89年4月から6月までの運動の過程を再検証したドキュメンタリー。
前々から観よう観ようと思いながら、長さに怖気づいていたのだが、劉暁波のノーベル平和賞受賞を機に、エイヤーで鑑賞してみた。男が戦車に向かっていく例の映像でおなじみの天安門事件の顛末を、参加した学生側のインタビューを元に構成した作品である。劉暁波もしっかり登場する(まあ当然か)。中国政府側のインタビューは無く、そういう意味ではバランスを欠いた欠席裁判のようにも見えるが、なるべく客観的な考察を加えて、公平に仕上げようという意図は汲み取れる(一方的に学生側を賞賛しているわけでない)。
長いわりには非常に興味深いポイントが多々あったので、意外と飽きることなく観終えることができた。私が気づいた点をいくつか紹介しよう。
①現在、反日デモで盛り上がっており、その理由は偶発的な領土問題に端を発する小競り合いが起因と思われているが、どうもそうではないことが見えてくる。それなりに統制の効いている中国において“デモ”とはそうそう実行できるものではない。その背景には中国政府内の保守派と改革派の権力闘争があり、改革派が勢力を伸ばしつつあるところに保守派が巻き返しを行おうとする…そしていずれかの勢力が自らの不利な点から目をそらすためにデモを利用する…、そういう背景でおこる。今回も中国共産党内の権力闘争が影響していると見られる。
②本作では、まったく抗日活動に関しては触れられていない(過去の五四運動の説明においてもである)。これは、製作側の西洋人には、中国の反日感情に一切興味がないことの現れである。欧米の興味は非民主的な国家において民主主義を勝ち取ろうとする若い力の発露である。六カ国協議で日本の拉致問題が俎上に上がらないのは、彼らにとって日本の問題など微塵の興味もないからである。
③どうしてもこの作品にでてくる中国人にノーベル平和賞をあげなければならない…となった場合、あげることができる人物は確かに劉暁波しかいない。他の人物には、申し訳ないが、我が我がと主張し続けるだけの、いけ好かない人物ばかりで、他者を慮って行動しているのは劉暁波だけなのだ。とはいえ、アメリカのコロンビア大学やノルウェーのオスロ大学と縁のある人なので、賞をあげやすい人物だったのも事実である。
中国は今回の受賞について、“ノーベル平和賞を政治の道具として利用した。ノーベルを侮辱している”と言っていたが、ノーベル平和賞が政治的主張を含まなかったことなど、過去にはない。なにをおぼこ娘のような甘っちょろいことを言っているのか、苦笑を通り越して稚拙すぎて逆に切なくなってくる(まあ、何もしていないオバマに平和賞をあげた時点で、平和賞の選定委員もかなりクレイジーなのは事実なんだけど)。
それよりも、劉暁波に平和賞が与えられる可能性は十分あったのに、のんきに平和賞受賞のシーンを放映し、名前が読み上げられたところで放送をカットするなんて、あまりにくだらない。はじめから平和賞の手前で放送を打ち切ればいいものを。やろうと思えばいくらでも情報統制が可能なのに、こんなブロックもできなくなってしまった共産党政府の力の衰えが逆に心配になってくる。
④柴玲という女性の学生指導者が出てくるのだが、実に奇妙な人物なのだ。運動の過激派グループのリーダ格なのだが、民主運動を推進することが目的のようで実は違うようなのだ。どうもこの事件で名を上げたいのと、異常なまでの上昇志向と注目を集めたい癖がある模様。ホテルの一室でアメリカメディアの単独取材を受けるシーンが結構な長さで収録されているのだが、実に気持ちが悪い。心理学の資料として使ってほしいくらい。そのインタビューでは、自分がなんでこの運動を行っているのかを語り、でも中国の一般人は民主化の心なんか持っていないと嘆き、自分は非常につらくてもうこのような過激な行動で命を危うくするのは止めたいと、涙を流しながら訴える。どうも私はひっかかるものを覚えて、あることをやってゾッとしてしまった。もう、ホラー映画なんかみるより背筋が凍るのでお試しあれ。そのインタビューを話の内容なんかどうでもいいので、ずっと一時停止(コマ送り)を繰り返して見てみよう。なんと、泣いているはずの柴玲は間違いなく瞬間的にニヤリとしているのだ(ぎゃー!)。もともと笑い顔に見える顔なわけではないし、民族的な特徴でももない。そういう表情がかなりの頻度でさしはさまれている。気持ち悪いにもほどがある。
そして、止めたいといっていたのに、ここで逃げると自分の価値が下がると見た彼女は、手のひらを返したように運動を継続する。もう、その行動にはなんのポリシーもない。事件が収束を迎えると、香港に逃亡し、そこで海外メディアにコメントを発表(他の運動に参加した人間は、そのコメント内容はウソだと言っている)。そして海外に亡命し、今ではアメリカでコンピュータ会社を設立し実業家である。簡単に言ってしまえば、それが目的だったのが、見え見えである。そんな人間をよくもまあアメリカは受け入れている。お笑いぐさである。このバカ女に踊らされて命を失った人間も少なくないと考えると、その悪魔性たるや…。
本作をみると、中国の民主化運動がまだまだうまくいかないのが実感できるし、民主化運動がうまくいかないということは資本主経済もうまくいかないことを意味する。プロテスタント的な行動基盤はもちろんあるわけもないし、日本のように職業を無条件に尊いと考える発想もないし、労働は他人より豊かな生活するためとしか思っていない(周囲の人間を幸せにする…という要素が微塵もない)。残念だが、中国経済が容易にアノミー状態になるのが手に取るようにわかる。
まあ、柴玲のクソ人間っぷりを観察するだけも観る価値がある(リアルホラーだ)。お勉強のためにたまにはこういうのも良いと思うので、軽くお薦めしておく。これを観て、中国について頭の整理がつく人もいると思う。
#人を呪わば穴二つという言葉があるけれど、自分の国の子供に、他国を恨めーと教育するような国が、そのことわざとおりにならないわけがない。まあ、近くの2つの国のことだけど。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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