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公開年:2009年
公開国:フランス、ドイツ、ベルギー、カナダ
時 間:137分
監 督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
出 演:ジャレッド・レトー、サラ・ポーリー、ダイアン・クルーガー、リン・ダン・ファン、リス・エヴァンス、ナターシャ・リトル、トビー・レグボ、ジュノー・テンプル、クレア・ストーン、トマ・バーン、オードリー・ジャコミニ、ローラ・ブリュマーニュ、アラン・コーデュナー、ダニエル・メイズ、マイケル・ライリー、ハロルド・マニング、エミリー・ティルソン、ロリーヌ・スキーアン、アンダース・モリス、パスカル・デュケンヌ、ノア・デ・コスタンツォ、キアラ・カゼッリ 他
受 賞:【2009年/第66回ヴェネチア国際映画祭】技術功績賞(Sylvie Oliv)
【2010年/第23回ヨーロッパ映画賞】観客賞


ニモが目覚めると、そこは西暦2092年の世界。自分が118歳であることが告げられる。技術進歩によって、もはや人は死ぬことのない世界になっていたが、ニモはこの世に残った唯一の“死にゆく人間”として注目を集めていた。命の灯が消えゆく中、記者のインタビューを受けるニモは、これまでの自分の人生を語り始める。9歳のニモは、両親の離婚によって、母についていくか、父の元に残るか選択を迫られていた。ニモは、母についていった自分の過去、父の元に残った過去、そして3人の女性との恋愛を語り始め、インタビュアーを困惑させる。ニモが語る幾通りもの人生の中で、どれが真実なのか…というストーリー。

偶然だと思うけど、昨日の『モンスターホテル』の娘と同じ118歳だな。なんか欧米では意味のある数字なんだろうか…。まあ、それはそれとして…。

離婚した両親のどちらと暮らすのかを起点にして、3人の女性との“if”が次々と語られる。様々なポイントで枝分かれした記憶を散りばめたシナリオになっている。ただ散発的にエピソードを並べているように見えるが、それぞれの対比が際立つように構成されており、苦労の跡が伺える。

ただ、苦労したかどうかは別にして、このお話の最大の焦点である“なんで、この老人は併存しえない記憶を語っているのか?”という部分が、臨終前故の単なる記憶の創出と混濁なのか、希求して止まない望みを語っているのか、単なるホラ話なのか、SF的なパラレルワールドのお話なのか、結局、答えを出していないように思える。冒頭のモルグの状態が正なのか?それとも9歳の少年に押し付けられたつらい選択のせいで、多重人格者よろしく、複数の妄想を生み出したのか? それとも、仏教の唯識論よろしく見えている世界なんかすべて脳が生み出した幻想だとでもいいたいのか?途中、宇宙の創造(時間という概念の出現)やエントロピーについて滔々と語るのだが、持ち出しただけで答えにつながっていない。

終盤まで観進めていくと、果たしてSF設定自体が必要なのか?と思えてくる。耳目を集めて、老人の話を真剣に聞きたいと思っている人を登場させたいがためだけに、SF設定を持ってきたのではなかろうか。別に臨終間際の老人の話をだれかが真剣に聞いていればよいだけのことである。老人のたわごとか?という可能性を演出する意図かもしれないが、いずれにせよ答えをだしていないから意味がない。

もしかすると、人生っていうのは無限の可能性があるんだよ!っていう前向きなメッセージを発信したいのかもしれないけど、登場人物で誰一人として前向きな人は出てこないし、いい気分でそのメッセージを受け取った人は皆無に近いと思う。

意図も真意も伝わってこないという、実につらい作品。

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