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image0153.png公開年:2007年 
公開国:アメリカ
時 間:92分
監 督:ロバート・レッドフォード
出 演:ロバート・レッドフォード、メリル・ストリープ、トム・クルーズ、マイケル・ペーニャ、デレク・ルーク、アンドリュー・ガーフィールド、ピーター・バーグ 他
コピー:何のために戦い、何のために死ぬのか──?




大統領への野望を抱く上院議員アーヴィングは、自身の対テロ対策理論をもって世論の支持を得るため、女性ジャーナリスト・ロスを呼びつけ、特別に情報をリークすることで有利な報道をするように仕掛ける。しかし、その持ちかけに“裏”があると確信した彼女は、逆にその真相を明らかにしようと考える。その頃、アーヴィングがリークした情報ネタである、アフガニスタンにおける対テロ作戦は遂行されており、その作戦には戦争に身を投じることを選択した2人の若者アーネストとアリアンが参加していた。一方、そのアーネストとアリアンの恩師である大学教授マレーは、二人の選択に戸惑いを覚えていた…というストーリー。

①野望を抱く政治家とその裏を探るジャーナリストの会談。
②教授と生徒の真に目を向けるべきことがらについての話し合い。
③対テロ作戦に参加した2人の学生の様子。

この三本の話によって、光を三方から当てて、皆さんには何が浮かび上がって見えますか?というアプローチ。その手法自体は決して悪く無いが、最終的には、皆さん持ち帰って考えてくださいというラスト。演出のおかげで、最後はなんとなく考えされられたような気になるのだが、冷静になってみると、巧みな仕掛けがあるわけでもないし、これってよくないよね…という以上に何かが見えるわけでもない。観終わったあとに、複数の線が繋がって、その潮流によってカタルシスが得られる…というようなこともない。

でも、三者に共通して存在する異様な部分を、はばかりながら指摘してみよう。それは、全員が分不相応な“万能感”の持ち主たちということ。自信を持つことは結構なことだが、自分の能力を客観的に見ることができず、自分がデキるはずというもっともらしいが根拠のない確信について、疑うそぶりすらないこと。この万能感は周囲を不幸にする。もっと別の表現を使えば、彼らの中に謙虚の文字がないこと。案外、アメリカの問題は、そんな卑近な感覚の欠如のせいなのではなかろうか。簡単にいうと“驕り”。
欧米の学生はリベートで鍛えられているから、日本人の交渉力の無さとは雲泥の差だ…という意見がある。たしかにそのとおりかもしれないが、でも、リベートの勝利は真実の勝利ではない。時間内のリベートに勝つだけなら、恥知らずの詭弁者にはかなわない。それなら、口下手な人間は永遠に負け続けることになるのか?他人を傷つける表現をよしとしない奥ゆかしい人間は負け犬か?相手に理解してもらうために気長に教育する親や先生は愚か者なのか?そうではないだろう。私は日ごろ、それでも人間は前に進まなければ行けないんだという趣旨のことを書いているが、アーヴィングのように、過去を切り捨て、もっともらしい自論を武器にして、ただただ未来に向かって強引に突き進もうとする政治家を良しとはしたくない。

また、資本に左右され、風見鶏になってしまったマスコミと、その結果無関心になる国民の姿を指摘しているが、それを嘆くことに意味があるとは思えない。逆に、国民全員がギラギラと政治問題に注視し続ける国が、私にはマトモだとは思えないから。程度の問題。バランスの問題。100か0かしか選択できない、アメリカの馬鹿さ加減がよく浮き彫りになっている。誤解を恐れずに言えば、彼らは“中庸”という状態に耐えられないのだろう。
#そう考えると、正しいかどうかは別として、池上彰みたいな政治と国民のギャップを埋める調停者みたいな人が自然発生して、ゴールデン番組が成立する日本って、とても健全な気がしてくる。

と、色々考えると共感できる部分も無きにしもあらずだが、実のところ、レッドフォードの共和党批判作品なのかな…とも。そう思いはじめると、本作の価値がどんどん落ちていく。もっともらしいけど、何か煮え切らないし、観点がずれている気がする。

ほとんどがメリル・ストリープとトム・クルーズの二人劇が占めており、舞台の二人芝居でも通用しちゃうくらいなんだけど、異様に台詞も多くて、眠くなりそう(吹替えで観たけれど、字幕を追ったらならさぞ大変だったと思う)。もし、トム・クルーズが、もっともらしい詭弁を弄するアホを意図的に演じているなら大したものなのだが、こいつならまじめに演じてもアホに見えるという監督の意図にハマッただけという可能性もあるので、彼の演技を単純には評価しにくい(笑)。で、結局、メリル・ストリープに救われちゃたのかなぁ…と。こまった時のストリープ頼みか。
決して悪い作品ではないけれど、最近はやりの書籍『これからの「正義」の話をしよう』に出てくる事例の域を出ていない。“映画”としては、光の当て方がストレートすぎるので、角度を工夫しなければいけないと思う。映画の芸術性という側面をすっかり忘却して製作された作品かなと。

#私がこの映画から得た慧眼は、大人とはいくつもの決断を重ねた人のこと…ってことかな。

決してこういう種類の作品の否定はしないけれど、金払って何でモヤモヤやイライラを持ち帰らねばいかんのか…と、そう思いたくない人は観ないほうがよい。

#邦題は、まとはずれだし、センスもない。作品自体を馬鹿にしているのか、客を馬鹿にしているのか、もしくは配給会社が馬鹿なのか、いずれにせよ“馬鹿”なんだろう。もういい加減、会議で邦題を決めるのをやめたらどうだろう。万人が納得するものを目指すと、結局万人が満足しないというのは、商品開発のセオリーだと思うのだが、なぜそれに気付かないのか…。
 

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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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