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公開年:1962年
公開国:日本
時 間:113分
監 督:小津安二郎
出 演:岩下志麻、笠智衆、佐田啓二、岡田茉莉子、三上真一郎、吉田輝雄、牧紀子、中村伸郎、三宅邦子、東野英治郎、杉村春子、加東大介、北竜二、環三千世、岸田今日子、高橋とよ、浅茅しのぶ、須賀不二男、織田政雄、菅原通済、緒方安雄 他
初老のサラリーマン平山は、これといった不平も不満もなく、平穏な日々をおくっていた。長男の幸一夫婦は共稼ぎながら独立して団地暮らし。次男の和夫はまだ学生で、妻を亡くしてからは24歳になる長女・路子に家事を任せきりだった。ある日、中学時代のヒョータンこと佐久間老先生を迎えてのクラス会が催される。酔いつぶれた先生を家まで送っていくと、そこには嫁に行きそびれた先生の娘がいた。その惨めな様子を見てしまった平山は、年頃の娘のことが急に心配になり…というストーリー。
高度経済成長期の日本の匂いが伝わってくるような映像。その時代に大人じゃなかった人でも、その時代の残滓に触れたことがあるならば、その匂いが脳内に沸き立つに違いない。
まあ、有名な話だろうけど、作中に秋刀魚は一切登場しない。話題にすら出ない。じゃあ何でそんなタイトルなんだ。最後まで観ればわかるはず。それは、秋刀魚の内臓みたいな、ほろにがい昭和の家庭の味。
平山さんは、若い後妻をもらったお友達の様子をみて自分も…って考えていないわけじゃないんだけど、バーのママに死んだ妻の面影をみちゃうってことは、まだ愛しているわけだ。仲の良い家族がずっと一緒にいられるのは幸せなことなんだけど、娘を適切な時期に嫁に出して、自分の妻のようになってもらいたくもある。親が娘の結婚相手を捜すなんて、おせっかいもいいところだけど、それは家族の中にあって当然の愛情だという共通認識のあった時代だね。
「戦争に何で負けたんでしょうね」等々の敗戦に対する人々の受け止め方も、淡々としていて興味深い。親族が空襲で死んでいたり、財産が消失したりしているだろうに、この飄々とした感じ。決してニヒリストを気取っているわけではなくて、生きるってどういうことかな…ってみんな考えてはいるんだけど、まあそれはそれで家族のために働くわ…っていう、健全な精神の時代だったんだと思う。
現実感のない夢や理想を追いかけることが人生の意味だと思っている世代より、よっぽど豊かな人たち。そういう苦痛を知っている大人のやさしさや配慮の上に胡坐をかいて、自由だ権利だと空論ばかりの団塊世代が生まれるわけだけど、“ゆとり世代”にしろあまやかしていいことなんか何一つありゃぁしないってことだよね。
岩下志麻の演技は、表情こそ薄いけれど何か思いを含んだような、少女と女のはざまにいる感じがよく出ている。後の『悪霊島』等での、冷たさが伝わってくるような美しさの片鱗が、この段階で感じられるねぇ。
淡々と似たようなカットが続くんだけど、なぜか飽きずに目が離せない。うまいけどほろ苦いのが、いい人生。もし、今の自分の人生が、“うまいだけ”とか“苦いだけ”だったら、それは何か間違っているってことなのかな…なんて思いが、淡々としたカットの隙間からもたげてくるような作品。そりゃあ、国の内外を問わず研究されるわけだわ。
#ものすごく酒を飲むシーンの連続なんだけど、観ているほうもチビチビと呑みながら観ると愉しいかもしれないね。
負けるな日本
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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