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image0431.png公開年:2006年 
公開国:イギリス、アイルランド、ドイツ、イタリア、スペイン
時 間:126分  
監 督:ケン・ローチ
出 演:キリアン・マーフィー、ポードリック・ディレーニー、リーアム・カニンガム、オーラ・フィッツジェラルド、メアリー・オリオーダン 他
受 賞:【2006年/第59回カンヌ国際映画祭】パルム・ドール(ケン・ローチ)
【2006年/第19回ヨーロッパ映画賞】撮影賞(バリー・アクロイド)
コピー:愛するものを奪われる悲劇を、なぜ人は繰り返すのだろう


1920年。イギリスに支配され続けてきたアイルランドに独立の気運が高まる。医師を目指していたデミアンは、その道を諦め、兄テディと共に独立を目指す戦いに身を投じ、イギリス軍との戦闘の末、両国の間で講和条約が締結されるまでに至った。しかし、完全な独立とは遠い条約の内容を巡ってアイルランド内に賛成派と反対派の対立が生まれ、内戦に発展。デミアンも兄テディと敵味方に分かれて戦うことになる…というストーリー。

邦題と引きで見たパッケージのイメージで、さわやかで牧歌的な映画だと思い込んでいたが、まるで真逆の内容。

イスラム教圏の実情と同じくらいIRAについてもアイルランドの独立戦争と内戦の悲劇については、よく知らない。そういう日本人は多かろう。サッカーW杯シーズンになると、必ずなんでイギリスは4カ国に別れて参加してるの?という質問があるが、まあ、その背景の説明というか経緯がいくらか解る映画である。

救いもないしユーモアもないし、はっきり行ってしまうと何一つ楽しめる要素はないのだが、元々そういう目的で作られた映画ではない。むしろ意識的に排除し、紛争のいきさつを限りなく思想的に中立な視点に立って表現することに執心していることがよくわかる。パルム・ドール受賞の理由の一部がそこにあることは間違いない。

このような泥沼の内戦について理解というか共感をするのは、日本人にとってはむずかしそう。日本と朝鮮半島に置き換えるのとは、また少し違う。私も正直なところピンときていなくて、感情移入することはできなかった。しかし、繰り広げられる条約受け入れの論議や教会での言い争いの緊迫感は、否応なしに観ている側を緊張させる。この技量こそケン・ローチが評価される点だろう。

一つ、本作を観て教訓にできることは、かけ離れた異文化(欧米とイスラム圏のような)同士の争いは確かにはげしいが、終りの見えない過酷で悲惨な状況になるのは、他から見ればほぼ近似のような差の間で生じるということだ(もちろん当事者同士は近似であるとは微塵も思っていないのだが)。日本と韓国もその一例かもしれないが、イングランドとアイルランドはよりそういう状態なのだろう。これは国レベルだけではなく、日常生活の人間関係においてもよく見られること。お気づきでない人は、周りを見渡すといい。異様に犬猿の仲といわれる人同士は、実は似たもので、諍いの原因は取るに足りないことであることが多いはずだ。むしろ圧倒的な違いがある場合は、軋轢回避のための恒常的な牽制が生まれて、表立って争うことはないのだ。

とりあえず、本作を観てIRAの生まれた経緯については勉強になったと言っておくが、大英帝国連合の四カ国は永遠に統合されることはないだろうな…と痛感するし、もしイギリス(GBね)がEUに深く組みするようになったら(ユーロ圏にまでなるようなことがあったら)、それは、GBという枠組みが終わることを意味するような気がするのである。

政治的思想に中立なだけでなく、社会問題提起と芸術性の中立という立場で、映画はどういう姿勢でつくられるべきかという、教材的な意味で非常に評価できるが、娯楽としての映画ではないので、それを覚悟して観て欲しい。非日常に浸ることや、ストレス解消のために映画を観る私にとっては、いささか辛い作品だったと言っておこう。

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