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公開年:1986年
公開国:イギリス
時 間:125分
監 督:ローランド・ジョフィ
出 演: ロバート・デ・ニーロ、ジェレミー・アイアンズ、レイ・マカナリー、エイダン・クイン、シェリー・ルンギ 他
受 賞:【1986年/第59回アカデミー賞】撮影賞(クリス・メンゲス)
【1986年/第39回カンヌ国際映画祭】パルム・ドール(ローランド・ジョフィ)、フランス映画高等技術委員会賞(ローランド・ジョフィ)
【1986年/第12回LA批評家協会賞】撮影賞(クリス・メンゲス)
【1986年/第44回ゴールデン・グローブ】脚本賞(ロバート・ボルト)、音楽賞(エンニオ・モリコーネ)
【1986年/第40回英国アカデミー賞】助演男優賞(レイ・マカナリー)、作曲賞(エンニオ・モリコーネ)、編集賞
1750年、イエズス会の神父ガブリエルは、インディオ達に神の教えを伝道するため、南米イグアスの滝の上まで訪れ、苦労の末、深い信頼を得る。一方、インディオ達を捕獲しては売買を繰り返してしていた奴隷商人メンドーサは、諍いの末に弟を殺した罪に苦しんでいたが、ガブリエルの元で伝道の道に入り、インディオ達と和解、心静かな生活を送るに至った。しかしポルトガル政府がその地の征服を企て、大量の軍を送り込み、神父側との壮絶な戦いが始まってしまう…というストーリー。
まあ、華々しい受賞歴なのだが、キリスト教社会の人にとっては随喜の涙を流すほど感動する作品なんでしょう。私にはさっぱりです。
というか、まるでキリスト教の教えに反して、政府が残虐行為をしたみたいな書き方になっていること自体が逃げに見えてしかたがない。南米における虐殺にあたって侵略した人たちは、その欲望に任せていきなり虐殺したわけではなく、大概が教会に御伺いを立てている。「この原住民は“人間”か?」と。侵略者だって人の子なので、同じ人を殺すのは罪だと思っているので、確認するわけである。で、結果は、(若干御幣はあるかもしれないが)大抵は「原住民は聖書でいうところの“人間ではない”」という回答の元、心置きなく虐殺されているのである。
ジェノサイドは、聖書を読めば普通に見られる行為で、同じ人間でなければ別に罪でもなんでもない。だから、現在の価値観をむりやり当時の状況にあてはめている本作の内容は、実にご都合主義だと私には映った。
また、土着的な信仰を持っているインディオに一方的にキリスト教を教えて、それが“ミッション(使命)”という考え方に、欧米の人たちは一抹の懐疑も抱いていないことが、この受賞歴からよくわかる。イエズス会は世界中でこれをやってきた。日本人なら、それってどうなの?と思う人が多数いるだろう。
若干脱線するが、中国の人が、日本を訪れた感想の中に、“民度が高い”という表現がある。何を指しているかというと実は単純で、道で痰を吐かないとか、どこにでもごみを捨てないとか、公共の場で大声で話さないとか、赤信号を守るとか、そのレベルの話をしているのだ(まあ、日本だって40年くらい前は、できていなかったことなのだが)。で、彼らは“民度が高い”という表現をするだけで、なんでそうなるかがわかっていない。なぜか。“自分がいやだと思うことは他人にしない”という意識が根付いているからだ。
なんで、この話をしたかというと、人間には、ある2つのルールがある。一つは今挙げた“自分がいやだと思うことは他人にしない”。もう一つは“自分がいいということは他人もいいと思うはずだからしてあげる”というルールだ。日本人は圧倒的に前者の下に行動するが、欧米の人間は、圧倒的に後者なのだ。だから自分が良いと思うキリスト教を他者に押し付けることは、良い事をしたとは思っても、もしかして自分の勝手な思い込みなのでは?など、微塵にも髪の毛ほども思わない。結局、この発想は、今のシーシェパードの論理と同じ。自分が鯨やイルカがかわいそうと思えば、それは他人だって同じことだから、押し付けてなにが問題があろうか!そういうロジックなのだ。相手の文化なんかお構いなし。要するに、植民地時代の思想の原点は今になっても何一つ変わっていないという証拠で、自分達の根底に流れるロジックに気付きもしないで、本作を評価している様は、私からみると滑稽でならないのだ。
だから、映画の質云々とは、別の意味で、私にとっては実にムカつく映画だった。だから、モリコーネのすてきな音楽など耳に入らず、その点はもったいなかったかもしれない。
最後の30分は、正直言って宗教的な感慨は何一つもないので、つまらないだけだった。歴史的な事実の確認としてもわかりきった話で改めて参考にするような点もないと思うので、お薦めはしない。
#20年以上前の作品で、文化の圧倒的な隔たりを痛感させられるとは…。私にとっては心が沈む作品だったよ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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