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公開年:2006年
公開国:アメリカ
時 間:108分
監 督:スティーブン・ソダーバーグ
出 演:ジョージ・クルーニー、ケイト・ブランシェット、トビー・マグワイア、ボー・ブリッジズ、トニー・カラン、リーランド・オーサー、ジャック・トンプソン、ロビン・ワイガート、ラヴィル・イシアノフ、クリスチャン・オリヴァー 他
ノミネート:【2006年/第79回アカデミー賞】作曲賞(トーマス・ニューマン)
【2006年/第12回放送映画批評家協会賞】音楽賞(トーマス・ニューマン
1945年。戦後処理を話し合うポツダム会談の取材のため、ベルリンにやって来たアメリカ人ジャーナリスト、ジェイク。彼は以前、ベルリン駐在の記者をしていたことがあり、その時、人妻レーナと不倫の関係にあったが、彼女は、今ジェイクの運転手をする米兵タリーの恋人となっており、思いがけずに再会を果たす。そんな矢先、タリーが謎の死を遂げ、その事件に疑問を抱き真相究明に乗り出すジェイクは、やがて巨大な陰謀へと行き着く…というストーリー。
映像も4:3にして、『第三の男』や『カサブランカ』のように白黒特有のライティングや編集をほどこし、当時のニュース映像を盛り込んだりして、1930年代製の映画よう様な雰囲気をつくろうと試みている。
が、それに何の意味や効果が?意図は何?なんと10分に一度睡魔が襲ってくるという凡庸さ。実は、批評をするのもはばかられるくらい、何を伝えたいのかストーリーがわからない。ケイト・ブランシェットは何がどうで、何でその夫は殺されるのか?最後のピースが繋がったでしょ?って何が?
ソダーバーグのせいではないが、DVDに日本語吹き替えがないのも、うんざり。レトロな画をじっくり見せたいなら、字幕を追わせるんじゃない。
はっきり言うが、つまらない。レンタルしてきても観終わる前に眠ってしまい、返却日が迫ってくる人が半数以上になるだろう。これに時間を費やすくらいなら、明日のために早寝したほうがいいよ。注意報発令だ。
本当に時間の無駄だったとがっかりしてしまった。ソダーバーグってフィルモグラフィざっとを眺めると、ちょっと打率低くないか?
#ああ、ケイト・ブランシェットは美しい。それだけ。
公開年:2006年
公開国:アメリカ
時 間:141分
監 督:クリント・イーストウッド
出 演:渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童、裕木奈江、松崎悠希 他
受 賞:【2006年/第79回アカデミー賞】音響賞[編集](Alan Robert Murray)
【2006年/第32回LA批評家協会賞】作品賞
【2006年/第64回ゴールデン・グローブ】外国語映画賞
【2006年/第12回放送映画批評家協会賞】外国語映画賞
【2007年/第31回日本アカデミー賞】外国作品賞
コピー:世界が忘れてはいけない島がある
1944年6月、日本軍の重要拠点・硫黄島に新たな指揮官、栗林忠道中将が降り立つ。アメリカ留学経験のある栗林は、精神論のみの隊の合理的な体制を整えていくが、オリンピック馬術競技金メダリストの“バロン西”こと西中佐のような理解者もいるが、古参将校たちは反発を強めていった。そんな中、圧倒的なアメリカ軍の戦力を迎撃するため、栗林は島中に地下要塞の構築を進めていくが…というストーリー。
『父親たちの星条旗』が若干がっかりな内容だったので、あまり期待してはいなかったのだが、それなりの受賞歴を見てのとおり、『父親たちの星条旗』よりは格段の緊迫感があり、しっかりと内容に集中させてくれたと思う。
純粋に戦争ドラマだった。本作を観て、国家の体制の違いはあれど、当時の日本人も我々と同じ人間だったのだなぁ…という感想を抱くアメリカ人はいないのではないか。程度の差はあれ、本作の日本人は奇異に映ったと思う。今の日本人の私が観ても、奇異に見える。国家体制があのようだったということは、頭で理解できても、「国家のため」に玉砕していくロジックは、心には沁みてはこない。
『父親たちの星条旗』では、国家のために戦ったのではなく仲間のために戦っただけだ…という表現が出ていたが、本作の日本人は、半分は本気で「国家のため」と思い、半分は何で戦っているのか自分でもよくわかっていないように見える。
軍人としての行動には差がある。捕虜の扱いだ。本作では、不良アメリカ兵によって、降伏した日本兵捕虜が撃ち殺されるのだが、それはあくまでアホな一兵卒の行いである。アメリカ軍の上官はハーグ陸戦条約に乗っ取って手順どおり捕虜の待遇を施しており、小隊長クラスでも“戦争のルール”を理解している。
ところが日本のほうは、ハーグ陸戦条約というもの存在すら知ってるのかすら怪しく、知っていたとしても遵守するつもりは微塵も見えない。
この点は非常に重要なことである。戦後日本は“戦争は悪”として、研究すらタブーである。欧米では当たり前の軍事研究をする学部はもとより歴史学部というものが、日本にはないのだ(今後、できたとしても、近現代の戦争を研究することには、躊躇して、中世・近世の研究をするだろう)。その結果なにがおこっているのか。卑近な例を出そう。どこかの国の軍隊が日本に上陸して、わが町を進軍しているとする。わが国を侵略し、われらの財産を差し押さえていく他国の軍が憎たらしくて仕方が無い。私は自分の財産を守るために、軍人を包丁で襲撃したところ逆に殺されてしまった。その後、日本は逆襲に転じて勝利して戦争は終結した。私の妻は夫である私を殺した相手国を訴えた。さて、その訴えは認められるか?私は国際法のプロではないから保証はしかねるのだが、おそらく“否”である。軍隊として様式(見た目上軍人とわかる服装など)が整っていない者が、攻撃をしかけた場合は、単なる“ゲリラ”活動であり殺されても文句は言えないのだ(一旦ゲリラ活動を行えば捕虜にすらなれない)。
#南京で私服の人間が日本軍に攻撃を仕掛けて逆に殺された場合は、これにあたると思うのだが、それを言うと、望みもしない議論にまきこまれるので、展開はしない。
『私は貝になりたい』でなんで主人公が戦後に裁判にかけられたかといえば、戦争に負けたとばっちりでもなんでもなく、ハーグ陸戦条約に乗っ取った捕虜の扱いをしなかったからなわけ。こういうことは、国がどっかのタイミングで教えなくてはいけないことだと思うのだが、戦争は“悪いこと”なので、教える必要はないという日本国の姿勢なのだ。
何が言いたいかというと、本作で奇異に見えた日本人の姿だが、今、なんらかの理由で同じように徴兵されて戦争に参加することになったら、何も知らず、同じことにやるんだろうな…と思った、、ということである。勝ち取った民主主義と、なし崩しで実現したような民主主義。同じ民主主義でもプロセスが異なると、大きな差があるのだな…という感想である。ただ、この差は真摯な歴史研究と教育によって克服できると私は信じているのだがね。
まあ、いろいろ考えさせてはくれた映画で、その考えが阻害されるような興醒めのシーンはなかったとだけは言っておこう。特段、『父親たちの星条旗』とワンセットでみなくてはいけない理由はないのだが、一応、国家間のコントラストというのが、観かたに影響すると思うでの、時間と気力が許す人は、連続で観るとよいと思う。
技術的な難点を一点だけいっておく。あくまでアメリカ映画なので、本国では字幕で観せることを前提としているため、日本語の聞き取りやすさは二の次になっている。セリフの聞き取りに難い箇所が散見されたのは、残念である。
公開年:2006年
公開国:アメリカ
時 間:132分
監 督:クリント・イーストウッド
出 演:ライアン・フィリップ、アダム・ピーチ、ジェシー・ブラッドフォード、ジョン・ベンジャミン・ヒッキー、バリー・ペッパー、ジェイミー・ベル、ポール・ウォーカー、ジョン・スラッテリー、ロバート・パトリック、ニール・マクドノー、メラニー・リンスキー、トム・マッカーシー、クリストファー・バウアー、ジュディス・アイヴィ、スコット・リーヴス、スターク・サンズ、ジョセフ・クロス、ベンジャミン・ウォーカー、マイラ・ターリー、アレッサンドロ・マストロブーノ、ジョージ・グリザード、ハーヴ・プレスネル、ジョージ・ハーン、レン・キャリオー、クリストファー・カリー、ベス・グラント、コニー・レイ、アン・ダウド、メアリー・ベス・ペイル、デヴィッド・パトリック・ケリー、ジョン・ポリト、ネッド・アイゼンバーグ、ゴードン・クラップ、カーク・B・R・ウォーラー、トム・ヴェリカ、ジェイソン・グレイ=スタンフォード 他
受 賞:【2006年/第30回日本アカデミー賞】外国作品賞
【2006年/第49回ブルーリボン賞】外国作品賞
コピー:戦争を終わらせた一枚の写真。その真実。
太平洋戦争末期、硫黄島に上陸したアメリカ軍は日本軍の予想以上の抵抗に苦しめられ、戦闘は長期化し死傷者は増える一方。そんな中、擂鉢山の頂上に星条旗を立てた1枚の写真がアメリカ国民を熱狂させた。星条旗を掲げる6名の兵士は、一躍アメリカの英雄なったが、帰国できたのはの3人だけ。国民的英雄として熱狂的に迎えられた彼らは、戦費調達のための戦時国債キャンペーンに駆り出され、アメリカ各地を回ることになって…というストーリー。
前にも言ったが、私は戦争モノがあまり好きではない。残酷だからとか暗いからとか、そういう理由ではない。戦争の悲惨さを表現して、戦争を批判する意図が、多かれ少なかれあるわけだが、それが好きではない。なぜなら、「戦争って残酷~」って思わせたからといって、戦争がおこらないわけではない、、というのが持論だから。
一般人が、自国が戦争に向かっているな、、と気付いた時には、もう遅いのだ。それは歴史を顧みれば明らか。なんで戦争に至ってしまったのかという、その予兆が何なのか…というポイントを観客に感じさせなくては、戦争批判の映画は目的を果たさない。
、、ということで、本作もいつかは観ようとは思いつつ、食指が伸びなかったわけだが、ここはエイヤーで。
イーストウッドが本作で言いたいことは、ラスト近くの原作者の役とおぼしきキャラクターが語る、国家と戦闘と民衆の関係についての関係、それがすべてである。それを、日米戦の超有名なアイコンが、実は、国民が受け取ったとおりではなく、国策に利用されたという事実を通してである。
紆余曲折はあれども民主主義が生まれた現在であっても、その関係は太古から変わらないという指摘なのだろう。
申し訳ないが、それがすべてである。光の当て方は違えど「戦争っていやだね~」という切り口は一緒である。たいした受賞歴がないのも、さもありなん(日本の外国賞だけしっかり受賞しているのは、『硫黄島からの手紙』との関係だろうか)。
ただ、本作の視点は、保守派といわれるイーストウッドが作ったと思えないほどリベラルな内容だと思うのだが、それをどう捉えたらよいか。保守派の人間であっても、こういいたくなるほど、今のアメリカは民主的でも平和的でもないということか。
技術的に、一点だけ目新しいなと私が感じたのは、弾丸の飛跡の表現方法である。実際、ああは見えないと思うのだが、緊迫感アップ、状況把握のしやすさ等々、なかなか効果的だったと思う。
続けて、『硫黄島からの手紙』を見ます。一応、この2作で1セットのようなものだと思うので、お薦めするかしないかについては、明日言います。
公開年:2001年
公開国:アメリカ
時 間:203分
監 督:フランシス・フォード・コッポラ
出 演:マーロン・ブランド、マーティン・シーン、デニス・ホッパー、ロバート・デュバル、フレデリック・フォレスト、アルバート・ホール、サム・ボトムズ、ラリー・フィッシュバーン、G・D・スプラドリン、ハリソン・フォード、スコット・グレン、コリーン・キャンプ、リンダ・カーペンター、シンシア・ウッド、トム・メイソン 他
受 賞:【1979年/第52回アカデミー賞】撮影賞(ヴィットリオ・ストラーロ)、音響賞(Walter Murch、Mark Berger、Richard Beggs、Nat Boxer)
【1979年/第32回カンヌ国際映画祭】パルム・ドール(フランシス・フォード・コッポラ)、FIPRESCI[国際映画批評家連盟賞](フランシス・フォード・コッポラ)
【1979年/第14回全米批評家協会賞】助演男優賞(フレデリック・フォレスト「ローズ」に対しても)
【1979年/第37回ゴールデン・グローブ】助演男優賞(ロバート・デュヴァル)、監督賞(フランシス・フォード・コッポラ)、音楽賞(カーマイン・コッポラ)
【1979年/第33回英国アカデミー賞】助演男優賞(ロバート・デュヴァル)、監督賞(フランシス・フォード・コッポラ)
【2000年/アメリカ国立フィルム登録簿】新規登録作品
コピー:魂を揺さぶる 2時間30分の旅(1970年時)
戦争。アメリカ。これはコッポラが産んだ生きものだ。
ベトナム・サイゴンにて、特殊行動班員のウィラード大尉に、特殊部隊の将校であるカーツを殺せという命令だった。カーツは数々の叙勲歴を持つ最高の人物であったが、ジャングルの奥地で原地人を支配し、軍と連絡を絶ち、自らの王国を築いているとのこと。この密命を受けたウィラードは、4人の部下を連れ作戦を遂行。道中、彼らは幾多の異常な世界を体験しながら、ついに、カーツ大佐が潜伏する“王国”へと辿り着くのだったが…というストーリー。
まず、上記には2001年となっているが、これは60分の未公開シーンを足した再編集版で、初公開は1979年である。私は、元編集版を観たことがない。初見である。
どうも、タイトルの仰々しさと、伝え聞いた評判による先入観から、敬遠し続けて今に至る(本作だけじゃなくって、この手の戦争映画はあまり観ていない。プラトーンもシン・レッド・ラインも観ていない)。
それにしても、3時間半以上は、いくらなんでも長すぎである。元を観ていないので、足された部分がどこかわからないのだが、プレイメイトとのからみや、フランス人入植者とのやりとりのあたりがそうらしい。戦闘が絡まない部分はカットされていたということだろう。
どうも、翻弄されて壊れていった人々の姿や、正義を振りかざして戦争に参加しているが原因をつくったのはアメリカでしょ?とか、そういう主張を、再編集版では盛り込みたかったようなのにみえる。
たしかに、ベトナム戦争の相手のベトコンだって、始めはアメリカが支援していたんだし、アルカイダだって(厳密に言えばその母体となった組織だが)アメリカが支援していたのは事実。すべてCIAが独断でしかけて、この結末で、同じことを何度も繰り返しているのだ。さらにアメリカ国民は、この事実に気付いているんだかいないんだか、厚顔無恥に相手の非ばっかりあげつらってみっともないったらありゃしない。だから、言いたことは非常によくわかる。
日本は中国から律令制度を始め、色々なものを輸入してきたが、宦官制度だけは輸入しなかった。国民性に合わなかっただけかもしれないが、これを取り入れなかったことは、結果として正しい。
同じように、将来、アメリカから大統領制を輸入したとしても、CIAのような暴走する機関だけは、日本に取り入れてはならない(公安に必要以上の権限を付与するのも厳禁である)。
それはそうなんだけど、やっぱり増長すぎで、そういうテーマ云々を考える以上に眠くなるのだ。目的であるカーツ大佐に出会うまでに2時間半が経過し、目的を達したところで、その後、特にひねりもないので、カタルシスも盛り上がりもない。遠慮なしにエグい戦闘シーンなどあって、目は飽きなさそうなものなのだが、何度も寝てしまって、結局、何度も観かえして、結局5時間以上、観ていたと思う。
もしかすると、ヨハネの黙示録に詳しかったら、所々に散りばめられた寓意を読み取ることができて、楽しめるのかもしれない。残念ながら、私は、四騎士と7つのラッパくらいしか知らないので、眠気は抑えられなかった。
これは、1979年版を観てからじゃないと評価できないな。とても、この特別完全版といわれるもので、この数々の受賞ができるとは思えないからだ。機会があったら観てみることにする。
とりあえず、時間があまりない人や、映画を観ている最中に寝てしまいがちな人はやめたほうがよい。
公開年:2004年
公開国:ドイツ
時 間:155分
監 督:オリバー・ヒルシェヴィゲル
出 演:ブルーノ・ガンツ、アレクサンドラ・マリア・ラーラ、トーマス・クレッチマン、ユリアーネ・ケーラー、コリンナ・ハルフォーフ 他
受 賞:【2004年/第77回アカデミー賞】外国語映画賞
【2004年/第17回ヨーロッパ映画賞】男優賞(ブルーノ・ガンツ)
コピー:彼の敵は世界
全てを目撃した秘書が今明かす、衝撃の真実。
ヒトラーの個人秘書を務めたトラウドゥル・ユンゲの目線で、ヒトラーが地下の要塞で過ごした最期の12日間を様子を描いた作品。
監督は『es[エス]』のオリヴァー・ヒルシュビーゲル(密室空間の話は得意なのかしら)。
最近、日本で『わが闘争』を漫画化したら、ドイツからクレームがついた。ドイツ本国ではいまだに発禁で、たとえそれが海外であろうともものすごく警戒するのだ。私はその漫画を買ったが、知ってる以上の情報はないんだけどね(『わが闘争』じゃなくってもヒトラーの生涯についての著作物はたくさんあるし)。日本では戦犯をあつかった映画やドラマは昔からたくさんあるが、それとは大違いだ。
2004年とはいえ、これをドイツで映画化したこと自体、かなり心的にも外面的にも抵抗があっただろうと伺える。そんな状況だから、原作者の証言に基づいて(おそらくその原作の内容が事実なのかどうかの検証もして)、厳格に製作されたことだろう。いや、それは歴史的につじつまが合わないよ…とか、他の人の証言と食い違いがあるなぁとか、そういうツッコミを避けるために、脚色はもちろん、過剰な演出や演技は極力排除されているのだろう。
ここまで言えばわかると思うが、これは映画という形式をとっているだけであって、歴史の教材の映画化だと思ったほうがよい。歴史的事実を説明するためには、判明している事柄は勝手にカットできないから、こんなに長くなる。
かといって、最後の12日間だけの話なので、ここまでドイツが劣勢になるまでのプロセスは、まったく語られることはないので、第二次世界大戦末期の国家間のパワーバランスを忘れていると、ちょっとわからないところもでてくる(ヒトラーが死んだあと、部下がだれかと交渉しようとするのだが、その相手がだれなのかわからない)。
逆に政治的なメッセージも盛り込まれない。淡々と事実を羅列する。一民衆だったといえども責任がないということはないのですよ…という衆愚政治への警告は、最後の原作者へのインタビューだけで表現されている。
さて、本作はお薦めできるか?というと、よほどヒトラーに興味のある人以外は、観るのはつらいかもしれない。もし、数ヶ月前に発売された、漫画版の『わが闘争』を見て興味が沸いた人はどうぞ。でもイヤっていうくらい長いし、ヒトラーの思想についてはなにもわからないけど、それを覚悟の上で。
公開年:2001年
公開国:フランス、イタリア、ベルギー、イギリス、スロヴェニア
時 間:98分
監 督:ダニス・タノヴィッチ
出 演:ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラヤツ、フイリプ・ショヴァゴヴイツチ、カトリン・カートリッジ、サイモン・キャロウ、ジョルジュ・シアティディス、サシャ・クレメール、セルジュ=アンリ・ヴァルック、ムスタファ・ナダレヴィッチ 他
受 賞:【2001年/第74回アカデミー賞】外国語映画賞
【2001年/第54回カンヌ国際映画祭】脚本賞(ダニス・タノヴィッチ)
【2001年/第27回LA批評家協会賞】外国映画賞
【2001年/第59回ゴールデン・グローブ】外国語映画賞
【2001年/第14回ヨーロッパ映画賞】脚本賞(ダニス・タノヴィッチ)
【2001年/第27回セザール賞】新人監督作品賞(ダニス・タノヴィッチ)
コピー:For Peace 平和こそすべて
ボスニア紛争を舞台に、ボスニアとセルビアの中間地帯に取り残された敵対する兵士たちの姿を描くストーリー。
典型的なシチュエーションドラマ。二人が膠着状態ってことで『ソウ』を想像してしまった(全然違うけど)。
華々しい受賞歴ではあるが、戦争映画として純粋にすばらしいのか?というと、それはちょっと違うと思うのだ。他の戦争映画(特にアメリカの戦争映画)とは、あまりにも趣が違って、それがものすごく新鮮に写ったということではなかろうか。戦争の恐ろしさを迫力ある特撮で見せるといったモノが多いと思うし、悪くいえば説教くさかったりするものだが、本作は淡々と淡々と現在の戦争の様子が表現している。
メインのキャラは全員、愛すべきキャラではなくて全然共感できない。前日に『ワグ・ザ・ドッグ』を観たからかもしれないが、登場するマスコミ連中の腹立たしさといったらない。国連なんかあんだけ金をかけて何やってんだ?とみんな思うだろう。皮肉でもなんでもない。これが事実なんだもの。
以下、ネタバレ含む。
始めに、話が進んでくと、この2人の間に友情とか芽生えるのかな?つまんねーなと思っていたが、そうならなかったことが実に素晴らしい。戦争で友情なんか芽生えるわけないし、仮に1つ友情が芽生えたって、その10000倍の憎しみが生まれているのは間違いないんだから、こういう描き方は正しい。至極真っ当な戦争映画といえるだろう。どんなドラマティックでグロテスクな悲劇を見せるよりも、本作を見せたほうが、戦争に嫌気がおきるだろう。そういう意味で高い評価なのだ。
ただ、映画としては、このノリは始めにやったもん勝ちだ。同じテイストで似たような映画をつくったってまったくウケないと思う(二番煎じだって、絶対にいわれるもの)。この着想の閃き1本でたくさん受賞できたのだ。この監督が、その後、評価の高い作品を世に送り出しているか?というと、そうでもないところが、その証拠ではなかろうか。同じような閃きが彼に再び訪れることを祈ろう。
戦争映画がお好みで無い人もいるだろうが、ちょっと他とは視点が違うので、観てはいかがだろうか。
観終わった後に、特段カタルシスがあるわけでもないのだが、逆にモヤモヤするわけでもない。心にカッサカサの空っ風が吹く感じを、味わってみてほしい(それがまた悪くないのだよ)。
公開年:2000年
公開国:アメリカ、ドイツ、イギリス、アイルランド
時 間:131分
監 督:ジャン・ジャック・アノー
出 演:ジュード・ロウ、ジョセフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ、ボブ・ホスキンズ、エド・ハリス、ガブリエル・トムソン、エド・ハリス、ロン・パールマン、ロバート・スタッドローバー、エヴァ・マッテス、マティアス・ハービッヒ 他
コピー:愛するターニャ。今日も僕は君のために またひとり敵を撃つ
1942年。ナチスの猛攻にさらされ陥落寸前のスターリングラードに送り込まれた新兵ヴァシリ。劣勢の中、青年政治将校ダニロフのライフルを借りて、驚くべき正確さで敵兵を次々と仕留めた。それをきっかけにソ連の英雄に仕立て上げられ…というストーリー。
観ていないと思って借りたのだが、既視感が。レイチェル・ワイズの顔を見たところで、過去に観た事をはっきり思い出したが、とりあえず最後まで観た。私がお気に入りの映画『薔薇の名前』の監督の作品なのだから、そりゃぁ観てるだろうに。
実在したスナイパーがモデルとのこと。他の登場人物もほぼ実在するらしいが、エピソード的にはかなりの部分脚色だと思う(根拠はないのだが作り話っぽい臭いがするので)。とはいえ冒頭の戦闘シーンは出色だった。ソ連将校の人を人とも思わない指揮命令には、いくらなんでも…と閉口してしまうが、草いきれならぬ“死体いきれ”でむわーっとしてきそうな感覚が画面から伝わってきそうな、なかなかの迫力。評価できる。
なかなか緊張感のある男くさい作品なのだが、展開が進むにつれて、ぼんやりしてくる。決してつまらなくなるわけではないのだが、ひとつだけで一本映画ができそうなテーマが、似たようなレベルで盛りこまれていて、主軸がなんだかわからなくなるのだ。ぱーっと挙げても、下記くらいある。
・一兵卒が英雄譚としてまつり上げられる話
・英雄と女兵士と将校の三角関係
・二大スナイパーのプロ対決
・共産主義対ナチ
・ユダヤ迫害
・子供の二重スパイの話
エピソードとして並存するのが悪いわけではないのだが、主軸がどこなのか、もうすこしメリハリをつけるべきだ。いろいろな太い軸が交錯し、カウンターバランスが利きすぎて、がんじがらめなのだ。こういう場合はどこかをガス抜きすべきだと思う(素人が偉そうに…)。
例えば、私なら三角関係の要素はもうちょっと軽くする。だから、ヴァシリとターニャが深い仲になるくだりは、私が脚本家なら付けない。さらに、お互いの気持ちすらはっきりさせないようにして、それなのに、ターニャはダニロフの求愛を拒む。なんでキミに振り向きもしないヴァシリに俺は負けるんだーと嫉妬に狂う…程度に。
それを横目に、ヴァシリはスナイパーとしての対決に執着して暴走していく。
それにしても、『薔薇の名前』でもそうだったが、異常なシチュエーションのセックスシーンを入れるのが好きな監督なんだな。趣味が悪いと思う。さらに、個人的な理由で、大変もうしわけないのだが、レイチェル・ワイズという女優があまり好きではない(『ハムナプトラ』『コンスタンチン』もなんか引っかかる)。それどころか、結構な頻度でイラっとするくらいなので、余計イヤな気分になって、あのシーンは早送りしてしまった。
そのほかで、入れたくなるのはわかるが、結果として生きていないのが、ユダヤ迫害の部分だ。ターニャは両親が殺され、それに憤慨して前線に戻るのだが、重すぎてそれに引っ張られてしまう。私ならば、すでに両親は殺されていて、ずっと前線から頑なにに離れないことにする(実は、女兵士が前線にいるなんていう状況が信じられず、リアリティが無く感じられてしょうがなかったのだが、観終わった後に調べてみると、第二次世界大戦時、イギリスやフィンランドやソ連など欧州各国でではけっこう女性兵士がいたようである)。
褒めるところはひとつある。エネミー・アット・ザ・ゲートじゃあよくわからないところを、“スターリングラード”というタイトルにしたことで、ソ連側の戦争映画であることがピンとくる。秀逸な邦題だ(その分、なぜか残念コピーがつけられているので、プラマイゼロではあるのだが…)。
まあ、いろいろ苦情はいったが及第点の作品ではあるので、軽くお薦めしておく(よりよくなるのになぁ…という心ある苦情だと思っていただければ)。
公開国:フランス、ドイツ、ポーランド、イギリス
時 間:149分
監 督:ロマン・ポランスキー
出 演:エイドリアン・ブロディ、エミリア・フォックス、ミハウ・ジェブロフスキー、エド・ストッパード、モーリン・リップマン、フランク・フィンレイ、ジェシカ・ケイト・マイヤー、ジュリア・レイナー、ワーニャ・ミュエス、トーマス・ラヴィンスキー、ヨアヒム・パウル・アスベック、ポペック、ルース・プラット、ロナン・ヴィバート、ヴァレンタイン・ペルカ 他
受 賞:【2002年/第75回アカデミー賞】主演男優賞(エイドリアン・ブロディ)、監督賞(ロマン・ポランスキー)、脚色賞(ロナルド・ハーウッド)
【2002年/第55回カンヌ国際映画祭】パルム・ドール(ロマン・ポランスキー)
【2002年/第37回全米批評家協会賞】作品賞、主演男優賞(エイドリアン・ブロディ)、監督賞(ロマン・ポランスキー)、脚本賞(ロナルド・ハーウッド)
【2002年/第56回英国アカデミー賞】作品賞、監督賞[デヴィッド・リーン賞](ロマン・ポランスキー)
【2002年/第15回ヨーロッパ映画賞】撮影賞(パヴェル・エデルマン)
【2003年/第27回日本アカデミー賞】外国作品賞
【2002年/第28回セザール賞】作品賞、監督賞(ロマン・ポランスキー)、主演男優賞(エイドリアン・ブロディ)、音楽賞(ヴォイチェフ・キラール)、撮影賞(パヴェル・エデルマン)、音響賞(Jean-Marie Blondel、Dean Humphreys、Gerard Hardy)、美術賞(Allan Starski)
コピー:音楽だけが生きる糧だった
ナチス占領下のポーランドを生き抜いたユダヤ人ピアニストを描いたストーリー。公開当時は、実話であることや、長男が日本で大学教授をやっていることなどを含め、大層話題になっていた。見よう見ようと思っていながら、重い内容と長さから、後回しになっていたのだが、この間、スイスでポランスキーが逮捕されたのをきっかけに、見てみようと…(なんだかなぁ)。
今後、ポランスキーがお亡くなりになったとしたら、間違いなく、その人生は映画化されるでしょうね。なかなかこんな人はいない。
幼少時、両親とともにゲットーに押し込められ、父親が逮捕される直前に、有刺鉄線に切って穴をあけポランスキーを逃がす。その後、父は強制労働、母はアウシュビッツで虐殺。本人もユダヤ人狩りからの逃走を続ける。本作は、彼にとってどうしても作らなければいけない作品だったということ。これを作らずして死ねるか…くらいの気持ちで撮っていたことだろう。
まあ、彼の場合、その後も波乱万丈。運良く生き残った父と再会し、俳優活動などをするが、自由な活動を求め(冷戦時代だからね)、ポーランドからヨーロッパに移住し、映画監督に。西側でウケたので、アメリカに居住。女優のシャロン・テートと結婚するが、この顛末が恐ろしい。かの悪名高きマンソン・ファミリーに襲撃されて、妊娠中の彼女は惨殺されてしまう。アポロ11号が月着陸したちょっと後のハナシ。
「FBI心理分析官」を読んだので、シャロン・テート殺害を含めた罪で逮捕されたチャールズ・マンソンのことは知っていたが、彼女がポランスキーの奥さんだったことは、結構最近になってから気付いた。まったく結びついていなかった。ちなみに、チャールズ・マンソンは、まだ刑務所内で存命している。
まあ、ここまでなら、単なる悲劇で終わるのだが(といっては失礼だが)、その後がよろしくない。友人のジャック・ニコルソン宅で、13歳の少女に性的行為をした嫌疑で逮捕。本人は無罪を主張するも有罪となる。さらに悪いのが、その保釈中に、国外逃亡。今回逮捕されたのも、この件で国際手配されていたからである。
彼を釈放するように署名が集まっているようだが、どんなに才能のある映画監督だろうが(本作以外は見たことがないが)、それはそれ、これはこれ。今後どうなるかは注目したいところだが、ここまでくると、不謹慎なのは承知で言うが、あとは映画のいいラストになるような、さらに味のある晩年を迎えて欲しいと思う。
で、本作なのだが、これは是非みるべき。いや、見なくてはいけないといっていいかも。私も何年かに一度、こういう類の悪夢を見るが、なんともいえない緊迫感。じっとり汗が出るようだ。これはポランスキーにしか撮れない作品ということ。彼のこれまでの経験は、この映画をとるためにあったといってもよいかもしれない。なんといっても体験した本人が監督した映画なのだがら、貴重の極みだ。
重ね重ね不謹慎なことをいうが、中国も今あるような抗日映画ではなく、このレベルの作品がつくれればよいのだけどね。
閑話休題。とにかく無条件にお薦めする。
実は『シンドラーのリスト』も後回しにして、見ていなかった。これを機会に見ることにする。
#(追伸)10/26に、ポランスキーに対する訴えが取り下げられたと報道があった。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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