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image1353.png公開年:2008年
公開国:日本
時 間:140分
監 督:橋口亮輔
出 演:木村多江、リリー・フランキー、倍賞美津子、寺島進、安藤玉恵、八嶋智人、寺田農、柄本明、木村祐一、斎藤洋介、温水洋一、峯村リエ、山中崇、加瀬亮、光石研、田辺誠一、横山めぐみ、片岡礼子、新井浩文 他
受 賞:【2008年/第32回日本アカデミー賞】主演女優賞(木村多江)
【2008年/第51回ブルーリボン賞】主演女優賞(木村多江)、新人賞(リリー・フランキー)
コピー:めんどうくさいけど、いとおしい。いろいろあるけど、一緒にいたい。


1993年。優しいだけで頼りないカナオと、小さな出版社に勤める几帳面な性格の翔子の夫婦。子供ができたことをきっかけに結婚した二人だったが、出産を控え幸せな日々を送っていた。日本画家を目指していたが、食べるために靴修理屋でバイトするカナオだったが、突然あらわれたかつての先輩から、法廷画家の仕事を紹介してもらう。不慣れな世界で戸惑いながらも仕事を覚え、徐々に馴れていくのだったが、そんな中、生まれたばかりの子供が亡くなってしまう。あまりの悲しみに、翔子はうつに陥り、心療内科に通院するようになる。カナオはそんな彼女を見守るだけだったが、一方で法廷画家として、連続幼女殺人や地下鉄毒ガス事件などの凶悪な事件を傍聴することになり…というストーリー。

女たらしの夫で苦労する妻の話になるのかと思いきや、違った方向に。
舞台は関西?それにしては、木村多江もリリー・フランキーも言葉がしっくりこないねーなんて違和感を感じていたが、「前に上野で似顔絵を描いていたときには…」ってセリフ一つで、それ以降気にならなくなった。すごく配慮の行き届いた、シナリオだと思う。

カナオはその生い立ちから、自然と世の中を客観視してしまう。その目線は、世の中だけでなく妻に対しても同じ。自分にも向けられるその目線が、妻には冷たいものに感じられる。彼が妻を正面から見ることはない。法廷画家という職業にはマッチしてしているかもしれないけれど。客観視することが悪いことだとは思わないが、それしかできないというのは、この夫婦にとって大問題。

彼は、全編を通じて、ずっと世界を傍観しつづける。そんな中、カナオはどんどんエグい公判に立ち会うことに。家族の関係に関わる事件が多い。だれもが憤りを覚えるような事件でも彼は冷静。まあ、天職だよね。一方の妻は、自分の人生はこういうものだ、と決めて行動する人。始めはカレンダーに印をつけた日に、性交渉をしない夫をたしなめるという、ちょっと下卑たシーンだったりするので、あまり深刻に映らない。むしろコミカルに見えるけれど、その性格がだんだん彼女を苦しめていく。そのままなら、問題は露呈しなかったかもしれないが、子供を流産してしまったことで、彼女の歯車は壊れていく。
後輩の勝手な言動に対し、あまりの怒りに硬直する翔子。このシーンは非常に共感しやすい。

苦しい時にお互いがどう思っているのか、語り合うことはこの夫婦にはない。もしかすると、仮に子供が生まれても、もっと別の形で壊れていったかもしれない。
雨の中、窓全開で佇む妻に、なんで自分は冷めた態度なのかを語るカナオ。子供のころにどうしようもないことにいろいろ巻き込まれると、こういう物の見方しかできなくのるのは、よく理解できる。変に醒めてるヤツとかやる気がないヤツに見られたりする(まあ、実際、どっちにころがってもどうとでもなるでしょ…って思ってるんだけど)。
「鼻ベタベタじゃん」なんて、あのシーンで距離が深まったように見えるけど、そんなに簡単に傷は修復されない。時間が掛かる。

望んでいた日本画家ではないけれど、法廷画家という絵を描く仕事についた夫。遅れて天井画を依頼されて“描く”人になった妻。お互い、世界を描く側になって、明白な共通点が生まれる。カナオは妻が日本画を描くという話を聞いて、ちょっとうらやましそうな顔をする。普通なら、ああしたらいいんじゃないか、こうしたらどうかと口を出しそうになる。でも、彼はしない。
結局、夫婦がお互いを見ることはないのだが、かえってそれがいいんだね。横にいて、同じような方向を見て歩く。それが一番正しいんだろう。

最後の終わり方に不満足な人はいるかもしれない。でも、本作はカナオの生き方がすばらしいとかそういうことをいいたいわけではない。生きることは単に生きること以上のなにものでもない。そこが腑に落ちた人は満足できるし、そうでない人は不満を覚えるだろう。私は大満足。未見の人には是非お薦めしたい。
トリアー監督の『奇跡の海』にも通じる“病んだ”視点。ある意味ゾっとするおもしろさ。そっち側に立ったことがある人じゃないと、この作品は書けないと思う。

#木村多江とリリー・フランキーの演技は、ちょっと神懸ってたね。

 

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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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