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公開年:1978年
公開国:日本
時 間:112分
監 督:増村保造
出 演:梶芽衣子、宇崎竜童、井川比佐志、左幸子、橋本功、木村元、灰地順、目黒幸子 他
受 賞:【1978年/第21回ブルーリボン賞】主演女優賞(梶芽衣子)
大阪内本町の醤油屋の手代・徳兵衛は、堂島新地天満屋の遊女・お初と深い関係にあった。しかし、徳兵衛の働きぶりが誠実であったため、醤油屋の主人であり叔父でもある久右衛門は、自分の妻の姪と徳兵衛を結婚させようと考える。そして、徳兵衛の継母であるおさいに銀二貫目を結納金として渡して、話をつけてしまう。それを聞いた徳兵衛は驚き、久右衛門に抗議。久右衛門は激昂したが、日頃の徳兵衛の行いに免じて、母親に渡した金を来月七日までに返す事ができれば許すという。しかし、返却できなければ大坂を追放すると。大急ぎで田舎の母親のもとを訪れ、やっとの思いでその金を取り戻した徳兵衛だったが、その帰路で親友の油屋九平次に出会う。九平次は博打で借金を作ってしまい、返済できなければ店を売るはめになってしまうと言い、徳兵衛に借金を頼むのだった。親友の窮地を放っておくことができず、母親から取り返した銀二貫目を九平次に貸すのだったが…というストーリー。
『女囚さそり』シリーズを何本か観たあと、ほかに梶芽衣子が出ている作品で何かな…と探すと案外少ない。そして、彼女が映画賞を獲っているのって、本作だけだったりする。
冒頭から心中場所に向かう2人のシーンからスタート。その後は、これまでの経緯とシーンが交互に展開するという構成。まあ、有名な話だし、心中しちゃうというオチは誰もがわかっているのだから、アリ。
私、人間なんて生きてりゃなんとかなるもんでしょ!って考えてる人間なので、こういう自殺のお話は愉しめないだろうな…って思っていた。しかし、徳兵衛が巻き込まれる様子を見るに、もう、こりゃどうしようもない、死にたくなってもしょうがないな…と思えてくる。誰も自分の言い分をまるで信じてくれない。何をいっても無駄。クソ馬鹿野郎の九平次の口車にみんな乗せられて、あることないこと言いふらされて、社会で生きていく先が見えなくなる。人間は社会性動物なので、それを否定されると、生きていくのは難しい。まあ、自分ひとりだけなら、逐電しちゃえば何とかなるのかもしれない。だけど、自分が追いつめられるだけならいざしらず、お初の方もどっかに見受けされちゃう手筈がとんとん拍子で整っていくという。そりゃ心も折れるわ。近松門左衛門、やるなぁ…と。
先日観た『野火』と同じく、主役を演じる宇崎竜童のダイコンっぷりが、逆に効果的。九平次役の橋本功の演技が過剰気味で、いいコントラストにもなっている。弱くも強くもない平均的な男である感じがうまく出ていて、観客の共感に繋がっている。
梶芽衣子の演技はちょっとわざとらしいんじゃないか?と思う人もいるかもしれないが、そこは、文楽の世界を“人間化”しているんだということに気付けば、これでいいことが判るだろう。
で、“人間化”することで、心中のシーンはひたすらグロくなる。つまり、全然、心中自体を美化するつもりはないという製作意図なのかもしれない。こういう諸々の製作意図が、ピシっとはまっている作品なんだろう。全然好みのジャンルじゃないはずなのに、とても愉しめた。軽くお薦め。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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