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公開年:2009年
公開国:アメリカ
時 間:103分
監 督:ピート・ドクター、(共同監督)ボブ・ピーターソン
出 演:エドワード・アズナー、ジョーダン・ナガイ、ボブ・ピーターソン、クリストファー・プラマー、デルロイ・リンドー、ジェローム・ランフト、エリー・ドクター、ジェレミー・レアリー 他
受 賞:【2009年/第82回アカデミー賞】作曲賞(マイケル・ジアッキノ)、長編アニメ賞
【2009年/第67回ゴールデン・グローブ】音楽賞(マイケル・ジアッキノ)、アニメーション作品賞
【2009年/第63回英国アカデミー賞】作曲賞(マイケル・ジアッキノ)、アニメーション賞
【2009年/第15回放送映画批評家協会賞】音楽賞(マイケル・ジアッキノ)、長編アニメ賞
コピー:愛する妻が死にました──だから私は旅に出ます
妻エリーに先立たれ一軒家に一人で暮らす老人カール。家の周囲が開発される中、妻との思い出があふれるこの家をかたくなに守り抜いてきた。しかし、とある事件によって、家を立ち退き老人施設に入らなければいけなくなってしまう。迎えた立ち退きの日、大量の風船を使って家ごと大空へと舞いあがり、エリーの夢だった南米パラダイス・フォールへと向かうのだった。しかし、空飛ぶ家の玄関に、少年ラッセルがしがみついており…というストーリー。
ピクサー映画は基本的に嫌いではない。『トイ・ストーリー』などキャラクラーや雰囲気など、面白いとは思う。しかし、物語・脚本として、純粋に良い評価をしたくなるようなものは、これまで無かった。
コピーしかり、日本のプロモーションにおいて“老人”の部分をやたら押していたので、『つみきのいえ』を想像してしまい、なにやらかび臭い作品なのかと危惧していたが、まったくそんなことはなかった。“老人”というファクターがアニメとして受け入れられにくいのではないか?という危機感からだったと理解はできなくもないが、完全に杞憂。しかも杞憂どころか、いささかミスリード的宣伝になってしまったと思う。特に野村監督夫妻を引っ張りだしたのは、結果として失敗だったろう。ちょっと作品を汚してしまったかな。
なんとなく、ジブリアニメのタイトルみたいな邦題だが、本作を観ればわかると思うが、かなりズレてる。原題の“UP"は中々秀逸だと思うので、なんとか邦題でも生かせなかったのか、いささか残念にも感じる。
冒頭のカールとエリーの出会いから、その後の結婚→別れという長い期間を台詞なしで表現する映像は、そのシーンの表現力のすばらしさはもちろん、後の伏線としての効果がものすごく高い。普通の市販の風船で家を持ち上げるという荒唐無稽なギミックははじめっから見えているので、その他に物理法則やら技術的に無理が生じていても、そういう映画だから…と、ツッコむ気はおきない。そういう下地作りがカッチリしているので、ファンタジーとして、すんなり受け止められる点も実に秀逸である。
犬の会話マシンだって、市販されているのは、吠える声の高さや抑揚などで判断するので、無言の犬の気持ちがスピーカーから聞こえるなんて有り得ないんだけど(だって、それじゃテレパシーだもんね)、それをなんとなく成立させる話の勢いがある。
南米到達時に、家を徒歩で牽引する時に、杖はどこから?と一瞬思ったんだけど、家から落ちるときに、さりげなく杖も一緒に落ちてるワンカットが差し込まれているんだよね。そういう整合性における緻密さはしっかりしているんで、決してちゃらんぽらんなわけじゃない。
映像技術に溺れなかったという点でも評価したいし、日本語吹替えに、素人のタレントを持ってこなかったのもよかった。というか、ここまでデキのよい作品を、浅はかなプロモーションのためだけにタレントを引っ張り出してマイナス要因をつくって、作品自体を台無しにするような勇気が、日本の配給会社側には無かったってことだろう。それだけデキがよいってことだと思うけどね。
#今後、海外アニメの吹替えに、まともに声優なんかできそうもないタレントが起用されるか否かって、一つのモノサシになるかもしれないね。
『WALL・E』の二倍くらい良い出来映えだと思うので、お薦めする。観て損はなし。ピクサーで3本映画をチョイスしろといわれたら、間違いなく入れる。いや、一本選べと言われれば、おそらく本作かな。
#立ち退き話や、子供の家庭環境等々、アメリカって夢も希望ない社会なんだな…とつくづく感じる。アニメごときで何をいってるの…っていう人がいるかもしれないけど、そういう社会事情がベースになってこそ、成立する脚本なので、これがヒットするってことは、実際にそういう社会なんだと思うよ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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