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公開年:2000年
公開国:日本
時 間:111分
監 督:市川崑
出 演:役所広司、浅野ゆう子、宇崎竜童、片岡鶴太郎、石橋蓮司、石倉三郎、うじきつよし、尾藤イサオ、大滝秀治、三谷昇、津嘉山正種、神山繁、加藤武、江戸家猫八、岸田今日子、菅原文太 他
受 賞:【2000年/第50回ベルリン国際映画祭】特別功労賞(市川崑)
或る小藩では、町奉行が着任してはすぐに辞職するという事が繰り返されていた。次にやってくる町奉行は望月小平太という男で、江戸から赴任してくる。しかし、望月という男は、その振る舞いが大雑把で乱暴で放蕩三昧だということから“どら平太”と仇名されるほどの型破りな役人だという。実際、着任日を10日すぎても奉行所に顔すら見せない有様。そんな不埒な人間が赴任してくることまかりならんということで、藩の若い者たちは怒りを隠さず、武力により排除しようという動きすら見られるほど。しかし、その悪評は、望月が友人である大目付の仙波義十郎に頼んで、流してもらったものだった。実はこの藩には“壕外”と呼ばれる藩の力が及ばない治外法権が存在し、そこでは、密輸、売春、賭博、暴力が横行していた。望月は壕外を浄化するために、送り込まれたのだった。早速、遊び人に扮して壕外に進入した望月は、壕外を仕切っているのが3人の親分であることを知る。標的を定めた望月は、着任すると家老たちに壕外の掃除を宣言するが、何故か家老たちはそれに異を唱え…というストーリー。
四騎の会(黒澤明、木下惠介、市川崑、小林正樹)の脚本ということだが、黒澤明の色が強いと思う。時期的に、脚本としてはほぼ遺作といってよいのではなかろうか。当時、黒澤明と他の三人がちょっとモメていたらしいので、黒澤色が排除されているのかな?なんて思っていたのだが、そんなことはなかった。
市川崑監督も四騎の会ということでちょっと遠慮するのかな…と予想していたのだが杞憂。冒頭から明朝体デカ文字クレジットで“らしさ”爆発。はじめからワクワクである。人を喰ったようなキャラクターが、さまざまな障害を飄々をかわしていく様子は、非常に愉快。役所広司の演技が実に冴えている。
しかし、残念ながら、山本周五郎の時代小説が原作のせいか、話自体の新鮮味がない。というかありきたり。さらに、シナリオの質もはっきりいって良くない(というか、チグハグという表現が正しいか)。どら平太が、素行の悪い人間のふりをして潜入捜査をするという設定は悪くないのだが、“ふり”ではなくて実際に素行は良くないキャラ。それが証拠に、女性問題で浅野ゆう子演じる“こせい”が追いかけてくるほど。だが、この女の役割が、イマイチ面白さに寄与していない。事情を聞こうともせず一人勝手にプリプリした上に、大した考えもなく壕外に潜入してトラブルをおこしピンチに。それこそありきたりだが捕まって人質に…という流れかと思ったのだが、都合よく即座に望月に救われる。その後、話の主筋に絡むでもなし、あきらめずに首を突っ込むでもなし…。いなくてもどうってことのないキャラクター。
素行の悪い人間の“ふり”じゃないので、腕っ節も強い。強いどころか無敵である。あれだけの大人数に対して立ち回りを披露して、全部やっつけちゃう無双っぷりに、ちょっと興醒めさせられちゃうのがもの凄く残念。スタローンやシュワちゃんじゃないんだから。そこは、すこし知恵を使って乗り切るとかしないといけないと思うのよね。痛快さや豪快さを前面に出したエンターテイメントにしたいのはわかるのだが、まったくピンチらしいピンチがないのはいかがなものかと思う。
さらに、壕外と藩の繋がりを調査する謎解き部分も浅い。ミステリアスさに欠ける。謎解きに主眼を置かない替わりに、親分3人衆と家老たちの処遇をコミカルタッチに描こうとしているのだが、ちょっと笑いになりえていない。ラストの馬でこせいから逃げるシーンも、残念ながら、いまいち笑えず…。
加えて、片岡鶴太郎演じる安川の友情エピソードも、いまいち伝わってこない。
(ちょっとネタバレ)
宇崎竜童演じる仙波が黒幕であることは、半分くらいの人が薄々感づいていたと思う。それがバレバレなのは良しとしても、仙波のカウンターとして安川は存在するのだから、安川の純で真摯な友情は心がジーンとしてくるほどに描かないといけないと思うのだが。
…と色々文句を書き連ねてしまったが、市川崑ファンの私としては、満足だった。本当にずっとワクワクして最後まで観たのはウソじゃない。ただ、もう少しだけなんとかならなかったかなぁ…って、そう思っただけ。
それにしても、こせい役は浅野ゆう子でよかったのかなぁ…。 一人だけ全然江戸の人間じゃない感じだった(台詞回しが、作風にマッチしていなかったんだと思う)。『釣りバカ日誌』の2作目くらい(1989年頃)の石田えりだったらぴったりだったけど、時期も違うし、おそらく市川崑の好みじゃないだろうし。
一応、浅野ゆう子と市川崑は『獄門島』『八つ墓村』繋がり。厳しい言い方になっちゃうけど、浅野ゆう子の力量がイマイチ向上していなかったってことなんだろうなぁ。
快作! っていいたいところだけど、市川崑ファンじゃなけりゃ、フツーの作品なのかな。この穴だらけのシナリオを、ワクワクできる作品に仕上げただけで、アッパレだと思うのよ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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