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公開年:1992年
公開国:日本
時 間:90分
監 督:辻理
出 演:石川功久、野村裕、原田大二郎、高嶋政伸、片岡弘貴、石浜朗、塚田きよみ、安藤麗二、石ノ森章太郎、小野寺丈、山浦栄、大内陽子、矢野明仁、寺杣昌紀 他
不治の病を治療するために人間の体質を細胞レベルで改良する研究プロジェクトに携る風祭博士。そして、父の思いに共感し、息子の風祭真(しん)は自ら実験台となるのであった。しかしこの実験は、“財団”が利潤追求
のために戦闘兵士を創り出す計画。レベル3の改造を受けた真は、バッタの特殊能力を備えた異形の怪人へと変貌していき…というストーリー。
劇場公開映画でもテレビムービーでもなく、オリジナルビデオ作品なので、ちょっと反則ぎみなのだが、昨日の『バイオハザードⅡ』を観て、ちょっと思うところがあって、あえてレンタルしてきた。
仮面ライダーなんて観ないよ。それもこんな聞いたこともない怪人みたいなヤツ…、と多くの人が思うはずで、その指摘は間違っていない。数ある仮面ライダーシリーズの中でも異作中の異作といってよい(仮面ライダーのくせにバイクには乗らないは、ベルトはしてないは、変身ポーズで変身するわけじゃないは、見た目は気持ち悪いは)。仮面ライダーというのは、シリーズの中で、何度もも何度も何度も原点回帰が試みられており(スカイライダーしかり、仮面ライダーBLACKしかり)、そのアプローチの一つであるが、その中でもとことんリアル路線を突き詰めてみた作品だ。仮面ライダーとは異形の者であり且つ正義の心を包含する者という定義なのだが、本作の“序章”という位置づけが、特撮ファンから揶揄されるところでもある。何せ、序章だけでその後が作られていないから。実は原作者の構想では、この後、プロテクターを装備していくなどして、徐々に私たちが知っている仮面ライダー然と変貌を遂げていく過程が語られるはずだったのだが、この路線では人気は出ないと判断され、終了したわけである。
本作を観ていただければ判るのだが、1992年製でCGを使っていないことを考えると、実はなかなか高度なできばえで、日本の特撮陣もなかなかやるな!と思わせる。これは続編をつくるべきなのでは?はたまた時代を先取りしすぎたか?とすら思えるレベルなのだ。い特撮技術の点では、おそらく現在の仮面ライダーシリーズに劣っていない(むしろ凌いでいる)といってよい。でも、本作と『バイオハザードⅡ』を見比べることで、受入れら無かった理由が、はっきり見えてくるのである。グロ系のクリーチャーが出てくるSF作品が、許容されるかいなかということ。許容とか“ヒットするか”または“シリーズ化されるか”と置き換えても良い。ポイントは2つ。
①“遊び心”の優先順位を誤っていないか?
ヒッチコックよろしく原作者の石ノ森章太郎がカメオ出演しているが、素人演技で場をシラけさせる。また、ヒロイン役の明日香愛の演技は救いようのないくらいポンコツ演技で、どんなシリアスシーンも観ている側を気恥ずかしくさせるのである(主人公がポンコツ役者のは、ヒーロー物では普通のことで、むしろ名優がその脇を固めるのが通例であるからよしとする)。本作は、長いTVシリーズの中の1話ではない。いい大人がお金をかけてつくる映画に準ずる作品なのだ。遊び心で原作者を登場させようと思うまではいいが、結果として場を壊すなら、カットすべきである。またヒロインについても、大人路線を強調するためにに“脱ぎ”が可能な女優を選定したのだろうが、“脱ぎ”と他の演技を天秤にかけて前者が優先される基準とは何なのだろうか?
何を言いたいのかというと、本作は、全体の面白さや統一感よりも、瑣末な要素を大事にしてしまっている。つまり製作者が物事の優先順位を誤ったということ。製作者(もしくは監督)に構成力・政治力が無かったということで、“木を見て森を見ず”という人間がリーダーになると、大きな目標を達成できないという悪例である。
#ちなみに本作に友情出演している高嶋政伸の演技は、これまで数十年続いた仮面ライダーの歴史の中で、一番すばらしい。まともな役者の演技というものは、かくも素晴らしいものかと…(原田大二郎は?というツッコミはやめてくれ)。
②グロのタブーを犯していないか?
主人公が敵役が生物的な操作によってグロい表現になるのはあまり問題はない。ところが、怪物と人間のハイブリットの子供ができてしまい意識を持っているというくだりで、吐き気をもよおしてくる。ここでヒかれるのである。いやいや、『バイオハザードⅡ』にも子供のゾンビがでてくるよね?という指摘があるだろう。実は、ここがポイントなのだ。『バイオハザードⅡ』の子供ゾンビは人間としての意識がない。この場合はギリギリセーフで、ヒかれないのである。子供や被害者(特に女性や子供)が、ウイルスや遺伝子操作などで肉体が変貌するが、精神は人間のままで、そのどうしようもない状況に苦しみと諦めを表現したところで、アウトなのである。で、仮面ライダーシリーズは、この失敗で学び、以降のシリーズはこのラインを守っている…というならばいいのだが、実は2007年製の『仮面ライダー THE NEXT』で同じ失敗を繰り返してしまい、多くのヒゲの生えたお子様たちが期待した続編は闇に消えたのであった。
ということで、グロいクリーチャーが出てくるSF物がヒットするかしないかの重要なファクターを勉強させてもらった本作。しかし、作品としては三流なので、仮面ライダーファンが、話のネタに観る以外はお薦めしない。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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