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image1997.png公開年:2009年
公開国:アメリカ
時 間:81分
監 督:サーシャ・ガヴァシ
出 演:スティーヴ・“リップス”・クドロー、ロブ・ライナー、ラーズ・ウルリッヒ、レミー、スラッシュ、トム・アラヤ、スコット・イアン 他
受 賞:【2009年/第25回インディペンデント・スピリット賞】ドキュメンタリー賞(サーシャ・ガヴァシ)
コピー:30年間夢を諦めなかった男たちの夢と友情を描いた、笑って泣けるウソのような本当のお話!!

1970年代に結成し、80年代初頭にスラッシュ・メタルの旗手として脚光を浴びたカナダのバンド“アンヴィル”。1984年に日本で開催された「スーパー・ロック・フェスティバル」にはボン・ジョビらと共に招待されたほどで、現在活躍する多くの人気バンドに影響を与えたといわれているが、その人気は続かなかった。20年以上経ち50代になった今、ヴォーカルでリーダーのスティーヴは給食配給センターで働いており、ドラムのロブは無職。新たなギタリストとベーシストの二人を加えてバンド活動を続けてはいるものの、地元のライブハウスで少人数を前に演奏するだけ。今なお成功を夢見てバンドを止めようとはしない彼らに、ヨーロッパツアーの話が舞い込むのだが…というストーリー。

監督は、子供の頃にアンヴィルのファンだったらしいが、単純な復活ストーリーに仕上げなかったところがおもしろい。うまいこと転がってかない人生。ヴォーカルのリップスとドラムスのロブは、絶対的に仲がいいわけではなく、物凄くモメる。おそらくこれまでも、同じようにモメてきたんだろうが、それが解消されてバンド活動を続けることがでいるのが興味深い。

単にバンドが好きだから続けているのだと考えることもできる。しかし、本人も辛いと感じているのは「崖から飛び降りるのは容易」というセリフからもわかる。売れないバンドをを続ける苦痛と、やめてしまったあとの苦痛を天秤にかけて、後者が勝っているから続けているという見方もできる。もっと気楽に、遊び要素を増やしてやれば気はいいのかも知れないけど、一度味わってしまった、プロとしてのステージの快感が忘れられないんだろう。ランナーズハイと一緒で、バンドで快感を得てしまうと止められなくなるのは理解できる。はたして、惰性なのか執念なのか。こればかりは判然としない。
ただ、実力がないとは思えない。監督もなんで売れないんだろう…と思いながら作っているのが滲み出ている。

こういう人は、日本にもいるとは思うし、これからどんどん増えるような気がする。しかし、“№1にならなくてもいい、元々特別なオンリーワン”的な考え方では、このアンヴィルのような執着とは違ったものになるだろう。“オンリーワン”って、そう考えるのがいい場面があることは認めるけど、子供が言い訳に使ったら本当に害悪なセリフだと思う。偏見なのは承知で言うけど、“ゆとり世代”を象徴する歌。音楽の教科書なんかには載せるべき歌詞ではないと私は思う。

もう一点、注目すべきは、家族の反応。一方の家族は夫が夢を追うことに、好意的とはいわないまでも仕方ないと応援しているのだが、ロブの姉なんかはうんざりぎみ。リッチな生活なんか求めちゃいないんだけど、普通の生活すらできないことに疲れが見える。私なら家族がこういう反応見せている段階で、この形でバンドを続けることを躊躇しそうだ。周囲のこの反応を彼らは感じ取れないのだろうか。それとも全部受け止めたうえで続けているのだろうか。周囲への感受性が足りない人間が、アーチストとしての感受性や創造性を発揮できるものだろうか。私の感覚では理解できない部分だ。
語弊があるのを承知で言うが、周囲や家族の反応は、精神遅滞児を暖かく(というか仕方なく)見守っているのに近い感じがする。一般人の正論など通じない次元なので、こうするしかないんだろう。

数十億人いる人間の中で、こうやってしがみつく人間がいたって、何一つおかしいことはない。何かやりたいことがあるのに、何だかんだ理由をつけて、続けなくて後悔するよりは良いような気がする一方で、素直に夢を追う人は美しい! と言いにくくなる作品だったりする。

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