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image2054.png公開年:2007年
公開国:ベルギー、ルクセンブルク、イギリス、ドイツ、フランス
時 間:103分
監 督:サム・ガルバルスキ
出 演:マリアンヌ・フェイスフル、ミキ・マノイロヴィッチ、ケヴィン・ビショップ、シヴォーン・ヒューレット、ドルカ・グリルシュ、ジェニー・アガター、コーリー・バーク 他
ノミネート:【2007年/第20回ヨーロッパ映画賞】男優賞(ミキ・マノイロヴィッチ)、女優賞(マリアンヌ・フェイスフル)
コピー:この穴から幸せが見える。


ロンドン郊外の村で暮らす主婦のマギー。彼女の孫オリーは難病に苦しんでおり、治療費のために家を手放して質素にくらしていた。しかす、マギーと息子夫婦のトムとサラは、オリーを治療できる医療機関はオーストラリアのみで6週間以内に渡豪しなければ助からないと、医師から宣告される。息子夫婦に費用を捻出する経済力はなく、マギーはなんとかしようと金策に走るが、ローンも断られ、仕事も見つからない。途方にくれて街を歩いていると“ホステス募集・高給”を見つけ、その店に入る。しかし、そこはセックスショップ“セクシー・ワールド”。オーナーのミキは給仕の仕事だと思っている、マギーの世間知らずさに呆れつつも、彼女の手のなめらかさに目をつけ、壁の穴越しに手で男をイカせる仕事を薦める。あまりのことに一度は拒絶したものの、孫のためにはそこで稼ぐ以外に手はなく…というストーリー。

一瞬、他に何とかする方法あるんじゃねーの?と思うかもしれないが、あの町の状態とか、経済状態とか、何をどう考えても“あの手段”以外に方法は見当たらないはず。説得力が高い設定。そして彼女は、自分が汚れることと孫の命を天秤にかけて、後者を選択しアクセルを踏む。

ゆっくり暗転して場面転換という独特の編集方法がよい。登場人物の感情とうまくリンクしている表現だと思う。観ている側に、登場人物のその時の思いや状況を理解させる、絶妙な時間の提供にもなっている。
後半は、バレルかどうかのハラハラ・ドタバタ展開になっていくのかと思いきや、本当の終盤までそれをしなかった。その仕事にドップリつかって派手になっていく…みたいな展開も、ほとんど無かった。ありがちな展開に安易に倒さなかった構成力を評価したい。

東京で見た(というか行った)風俗店のアイデアをパクったという発言や、ヒマつぶしにゲームボーイをやってたりするなど、日本を褒めてるんだか馬鹿にしてるんだかよくわからないところはあるが、そこはご愛嬌。
彼女が孫にさしのべる“やさしい手”と、別の意味の“やさしい手”のダブルミーニングになっており、昨今ではめずらしい優秀な邦題である。

で、覚悟をきめた彼女と対極にいるのが息子。この期に及んで、母親がそんなことをしているのが許せないだ、こんな金は使えないだ。挙句の果てには、みんな俺に指図してばかりだなど、子供の戯言のオンパレード。そう彼は大人としての覚悟ができていない子供なのである。
視点を変えれば、マギーはそんな息子を大人にすることができていないとも言える。いや、できていないというよりもしていないのかもしれない。彼女も子離れができていない未熟な人間なのだ。でも、最後、マギーはすべてを息子に託す。あとはお前のステージだと。

そして、彼女はミキの元へ。息子夫婦の旅立ちとか、これまで村の茶飲み友達だった主婦たちへのカミングアウトとか、死んだ夫の浮気話とか、それらがすべて相まって、久々に最後、ニヤリとさせてくれた作品。単純に恋愛に走ったわけじゃないんだよね。

これ、いかがわしい商売が題材だからおおっぴらに薦めにくいだけで、『過去のない男』クラスの名作でしょ。強くお薦め。

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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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