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公開国:アメリカ
時 間:125分
監 督:アレクサンダー・ペイン
出 演:ジャック・ニコルソン、キャシー・ベイツ、ダーモット・マロニー、ホープ・デイヴィス、ハワード・ヘッセマン、ダーモット・マルロニー、レン・キャリオー、ハリー・グローナー、ジューン・スキッブ、コニー・レイ 他
受 賞:【2002年/第28回LA批評家協会賞】作品賞、男優賞(ジャック・ニコルソン)、脚本賞(アレクサンダー・ペイン、ジム・テイラー)
【2002年/第60回ゴールデン・グローブ】男優賞[ドラマ](ジャック・ニコルソン)、脚本賞(ジム・テイラー、アレクサンダー・ペイン)
【2002年/第8回放送映画批評家協会賞】主演男優賞(ジャック・ニコルソン)
コピー:すべての人生を失くした日、人生最高の贈りものが届いた。
アメリカ中西部オマハに住む66歳のウォーレン・シュミット。彼は一流の保険会社に長年勤務していたが、この度、定年退職を迎えた。娘のジーニーは既に独り立ちして家を出ており、これからはおしどり夫婦として寄り添って生きてきた妻ヘレンとの生活。妻の望みでキャンピングカーも購入し、楽しい老後を過ごす予定だったが、どうも会社中心の生活リズムが抜けず、しっくりこない。そんな中、チャリティ団体のCMで、異国の恵まれない子供に援助する制度を知る。CMの内容に触発されて援助をすることを決心し、さっそく手続きに。手続きの一つとして援助する少年への手紙を書く必要があったが、自分の近況を綴っていくうちに、だんだんと、鼻に付く妻の行動、ダメ男と結婚しようとする娘、辞めた会社の奴らの態度など周囲への怒りがこみ上げてくるのだった。そんな中、ヘレンが急死してしまい…というストーリー。
定年退職した、いわば爺さんが主人公なのだが、30代でも40代でも家族持ちで会社勤めをしている男性なら、間違いなく共感できるだろう。言い換えれば、この作品が心に響くのは、おっさんだけ。女性にはピンとこないのではないかと思う。
冒頭、定年になったシュミットが会社を訪ねて、引継ぎ忘れた項目の説明や、援助できることはないか?と尋ねるがサラリとかわされ、おまけに自分が作成した引継ぎは廃棄されていることを知る。唯一の希望だった“優秀な娘”は、なぜか誰がどうみても胡散臭い男と結婚しようとしている。なんで、あの賢い娘が!?
自分は、会社に必要とされている“はず”。娘は思慮深く賢い“はず”。妻は貞淑な“はず”。信じていた…目論見が外れた…とかそういうレベルではなく、シュミットはこれまでそう思わなければ生きていけなかったわけだ。それどころかまるで自己催眠でも賭けたかのように、そう信じて微塵も疑わずに生きてきた。
#娘がIT企業の重要な役職とシュミットは思っていたが、電話の内容でタダの配送係であることは明白。これまでも気づくチャンスはいくらでもあったはずなのに、無意識に目も耳も塞いできたのだ。
定年を迎え、妻が死に、その自己催眠がどんどん解けて行く。妻の浮気が発覚してブチ切れ。じゃあ、娘の援助に労力を傾けようとしても、あの馬鹿家族と同レベルであることに否が応でも気づかされる。
尽くしていると思って生きてきたのに、感謝をされるどころか、卑下される始末。私は、正直、あの娘の首を捻りちぎってやりたい衝動に駆られた。
自分探しの旅に“逃げる”のだが、元々自分なんか無いんだから、見つからないわなぁ。キャンピングカーの屋根で一晩過ごし、悟ったように車を走らせるシュミットだったが、実はなにが判ったのかよくわからない(観客の判断に任せるということなのかな)。とにかく価値観の瓦解した彼の老後に明るいものなどは感じられない。
アフリカの子供の件は、じつは騙されていて(というか、その子に支援しているという建前になっていて)、届きもしない子供への手紙に、自分の思いを吐露しているだけ…というオチになると予測していた。暗い未来にさらに追い討ちかな…と思っていたが、最後の最後でうまく救いを差し込めている。
小さくてもいいから、純粋に気持ちを傾けられるものこそ、彼には必要だった。いままで、無償で家族に尽くしてきたと思っていたが、心の奥底では見返りを求めていた。それは賞賛であったり感謝の声だったり。でも、彼に本当に必要だったのは、お互いを慮るある意味一方通行の気持ち。そのボールが帰ってくるかどうか判らないけど、それでよい。小さな救いだからこそ、ストーリー上、うまく効いていると思う。
ストーリー全体はとても単調だし、よくある話だと思うが、コツコツとボディブローされる感じ。また、奇人じゃないジャック・ニコルソンの演技も、味があった。良作。『アダプテーション』と同年作品って考えれば、受賞暦だってなかなかだよ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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