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公開年:2007年
公開国:アメリカ
時 間:160分
監 督:アンドリュー・ドミニク
出 演:ブラッド・ピット、ケイシー・アフレック、サム・シェパード、メアリー=ルイーズ・パーカー、ジェレミー・レナー、ポール・シュナイダー、ズーイー・デシャネル、サム・ロックウェル、ギャレット・ディラハント、アリソン・エリオット、マイケル・パークス、テッド・レヴィン、カイリン・シー、マイケル・コープマン、ヒュー・ロス 他
受 賞:【2007年/第64回ヴェネチア国際映画祭】男優賞(ブラッド・ピット)
【2007年/第42回全米批評家協会賞】助演男優賞(ケイシー・アフレック)
コピー:あこがれて こがれて、心がつぶれた。
南北戦争後、強盗団を率いて悪事の限りを尽くしたジェシー・ジェームズだったが、戦勝軍の北軍側政府に不満を持つ南部の人々からは、抵抗のシンボルとして英雄視されていた。逃亡生活が15年ほど続いたころ、ジェシーは兄フランクと列車強盗を計画していたが、彼らの前に、強盗団メンバーのチャーリーの弟ロバート・フォードが現われ、仲間に加えてほしいと申し出る。ロバートはジェシーを人一倍崇拝していたが、フランクは小心者の青年を相手にしなかった。しかし、何故か、ジェシーは一存で仲間に迎え入れ…というストーリー。
『パブリック・エネミーズ』の主人公である銀行強盗犯ジョン・デリンジャーと同様で、日本人には馴染みのない人物(あ、本作は実話ベースね)。ジョン・デリンジャーは犯罪者でありながら、銀行強盗をする時に現場にいた客の金に手を付けなかったということで、民衆からは人気があったらしいが、本作のジェシー・ジェームズも同様だった模様。かなり悪質な犯罪者にしか見えないのだが、国家やら企業やら権力者に対抗したり、民衆に牙を向かないちょっとしたエピソードがあると、簡単に英雄視するところまでいってしまうアメリカの民衆の心理が、イマイチ理解できない。日本でもねずみ小僧を義賊扱いした例はあるけれど、弱者に金を配ったってエピソードは作り話だからねえ…。
しかし、『パブリック・エネミーズ』と本作を観て、アメリカ人がなんで社会主義を病原菌のように忌み嫌うのか、わかった気がする(全然関係ないように見えるけど)。大金持ちの企業や銀行を相手にして、国家権力の象徴である警察をあざ笑うようにして捕まらない、そんな注目に値する犯罪者がいるとしよう。もし民衆が金持ちや国家に対して不満を持っていたとすれば、“敵の敵は味方”理論で、民衆は犯罪者を味方として感じてしまう。でも、普通はそこで、「とはいえ、犯罪者でしょ」というストッパーがかかり英雄視するまではいかない。しかし、さらに、民衆に対してやさしく振舞う行動が噂されると、そこで“義賊だ”となって、リミッターが解除されてしまう。
客観的に見れば“犯罪者というカテゴリー”の中では上位なのかもしれないが、社会全体からみれば犯罪者以外のなにものでもないのに、犯罪者カテゴリ内の相対的な比較が、社会的評価にそのままシフト(というか倒錯)してしまうのだ。違う見方をすれば、狭いコミュニティの中で上下関係をつけて人間的価値観を決めたがる性向であるといえる。自分の価値を高めるには、他者との差を明確にする必要があるわけだが、差をつけるために自分の方を高めるならいいのだが、他者のアラをさがしておとしめることもあるわけだ。さきほどの犯罪者の上下評価が、社会的評価に簡単に倒錯されてしまう社会の場合、ちょっとした出自・門地・肉体的欠陥・失敗などによる狭いコミュニティ内のマイナス評価が、社会的評価に反映されるといいことになる。
共産主義世界や日本の過激派での内ゲバに見られたような、そういうことが社会全体で発生しやすい土壌が、アメリカにはあるということなのだ。元々そういう性向であることを無意識に感じているので、社会主義を異様なまでに忌避するわけである。そして、他者との優位性を勝ち取りたい場合には、相手を貶めるのではなく、自分がのし上がりなさい。そう、アメリカン・ドリームを賞賛する社会になる。そういう流れになった…私はそう見る。
しかし、その弊害で、健康保険制度を導入しようとするだけで社会主義的発想だ!っていう批判がおこり、その批判にまともに反論できない社会になっているのは、『シッコ』のとおりである。
閑話休題。
ジェシー・ジェームズ自体を知らない私たちには、ピンと来ないのはもちろん、人物の相関関係も煩雑。さらに尺も長いときているので、半分の人はつまらないと感じると思う。やはり、逃走劇が終幕するまでと、その後日譚とで、ストーリーの焦点がまったく別なので、せめて時間的な配分を同じ分量にすべきだと思うのだが、それはブラッド・ピットとケイシー・アフレックの格の違いのせいなのか。いずれにせよ、バランスの悪さは否めない。
ただ、カメラワークや画質の色味など、なんともいえない独特の雰囲気が醸し出されており、雰囲気を愉しむことがはできるし、ブラッド・ピットもケイシー・アフレックも受賞していることから判るように、演技の面で問題はなし。この二人だけでなく、各俳優が総じてよいデキなのは救いである。
最終的におもしろいと感じるかどうかの差は生じるとも思うが、途中で投げ出したくなる人は少ないと思う良作だと思う。でも、秀作とは言えない。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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