[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
公開年:2007年
公開国:アメリカ
時 間:158分
監 督:ポール・トーマス・アンダーソン
出 演:ダニエル・デイ=ルイス、ポール・ダノ、ケヴィン・J・オコナー、キアラン・ハインズ、ディロン・フレイジャー、バリー・デル・シャーマン、コリーン・フォイ、ポール・F・トンプキンス、デヴィッド・ウィリス、デヴィッド・ウォーショフスキー、シドニー・マカリスター、ラッセル・ハーヴァード 他
受 賞:【2007年/第80回アカデミー賞】主演男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)、撮影賞(ロバート・エルスウィット)
【2008年/第58回ベルリン国際映画祭】銀熊賞[監督賞](ポール・トーマス・アンダーソン)、銀熊賞[芸術貢献賞](ジョニー・グリーンウッド:「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の音楽に対して)
【2007年/第42回全米批評家協会賞】作品賞、主演男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)、監督賞(ポール・トーマス・アンダーソン)、撮影賞(ロバート・エルスウィット)
【2007年/第74回NY批評家協会賞】男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)、撮影賞(ロバート・エルスウィット)
【2007年/第33回LA批評家協会賞】作品賞、男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)、監督賞(ポール・トーマス・アンダーソン)、美術賞(ジャック・フィスク)
【2007年/第65回ゴールデン・グローブ】男優賞[ドラマ](ダニエル・デイ=ルイス)
【2007年/第61回英国アカデミー賞】主演男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)
【2007年/第13回放送映画批評家協会賞】主演男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)、音楽賞(ジョニー・グリーンウッド)
コピー:欲望と言う名の黒い血が彼を《怪物》に変えていく…
20世紀初頭。交渉を有利進めるために孤児を自分の息子として連れ歩く山師ダニエル・プレインヴュー。ある日ポールという若者から、自分の故郷に油田があるはずとの情報を得て、西部リトル・ボストンへ向かう。油田の痕跡を発見したダニエルは、即座に土地の買い占めに乗り出す。しかし、同業者の参入、ポールの双子の弟で住人の信頼を集めるカリスマ宗教家イーライとの確執、息子の事故など、様々な苦難がダニエルを苦しめる…というストーリー。
ディズニー配給には似つかわしくない、ハードな作風。
PTA作品は、いつも私が思い描く予定調和の、その上の展開を観せてくれるので、いつも好感をもって鑑賞している。今回も冒頭の10分以上台詞なしという演出や、強烈な個性の主人公、そしてPTA作品には常連(?)ともいえるカリスマ教祖的なキャラと、じつに“らしい”仕上がり。
とはいえ、中盤を越えても、一体何が言いたいのかテーマが掴めない難解な作品で、終盤になってようやく見えてきた。
“資本主義とは?”が、主題だと私は解釈した。
どういうことか。あくまで私見(というか、経済学上の自論)であることをお断りしておく。
資本主義がなぜ発展したか?というのには明確な理由がある。マックス・ウェーバー的に言えば、資本主義の基本理念は、「周りに何かしてあげて、それに対して適切な利益を得るのは、神の御心に沿っている」ということである。これはプロテスタントの行動様式であり、カトリックでは周りに何か施したからといって利益を得るのは神の教えに背くとされていた。つまり、プロテスタントの考え方こそが、資本主義を発展させたというのが、ウェーバーによる社会学的理論である。
でも、どうだろう。実際の経済活動において、周囲の利益のために何かをしようと常に考えている人がそんなにいるか?いないだろう。いないなら資本主義は発展しなかったのではないか?資本主義を発展させるための、もう一つ別のエンジンがあったんじゃないのか?というのが、ワタクシの理論である。
で、それはなにか。先に行ってしまうと、それは“ニアリー・イコール理論”。何と何が≠(二アリー・イコール=近似)かというと…
①周囲の人が幸せになるように労働をし、適切な対価・利益を得ること。
②対価・利益を得るために、周囲が求めそうなものを予測して、それに向かって労働すること。このまったく目的と行動が間逆の行為が、表面的には同じように見える…という、奇跡のような事象が、資本主義経済を発展させたのだ。①の目的は周囲への施し(愛といってもよい。②の目的は金(欲望といってもよい)。でも、表面的にはどちらも他者に満足してもらい対価を得る行為にしか見えない。愛ゆえの行動と、欲望ゆえの行動が、同じ動作になるとは!これを奇跡と言わずしてなんというか。仮に欲望だけをエンジンとして行動しても、資本主義経済は発展してしまう。むしろ欲望の塊の人間は、競うように資本主義経済発展に貢献するというわけである。
でも、まあ、日本もヒルズ族の所業と、その没落を見てきたわけだから、その“奇跡”にも穴があることは、なんとなくお判りかと思う。周りが求めそうなもの…というラインに収まっているならまだまだセーフなのだが、次第に、儲かるものは周囲が求めているものとイコールだと勘違いし始める(原因と結果がひっくりかえっているのに)。残念ながら、儲かるからといって周囲への愛と同意とは限らない。もう、散々聞き飽きただろうが、“儲かればいいのか?”という意見に繋がるわけだ。
(そこを詳細に説明するには別の理論を引っ張りだしてこないといけないので、ここでは割愛するが、)資本主義では、構造的に資本(財貨・資材)が一時的に偏って集まってしまう場合もあるし、誰も得をしないのに仕組的にお金になってしまうケースもあるし、偏在した資本を利用して有利な立場をつくってさらに儲けることもできる。
で、答えをいってしまえば、資本が目の前に“偶然にも集まってきた”人は、周りの人のためにどんどん投資しなくてはいけないのであるが、それをせずに、私欲を満たしたり、実際の利益を伴わない投機に使ったりすると、資本主義は破綻するのである(ああ、だれか、共著でいいから、一緒に論文にまとめてくれる人は、いないかなぁ…)。
で、二アリー・イコールなので、微かな差異が生じるわけだが、その差異は何か?“THERE WILL BE BLOOD”、つまり愛の変わりに血が流れるってことである。宗教としての愛(イーライ)も否定し、家族愛(HW)も踏みにじり、心は荒みに荒みきっても彼は財を成していく(資本主義は発展してく)のである。こういう欲望をエンジンにして、アメリカ経済いや世界経済は成り立ってきたのさ!本作は、そういう映画である。で、これが良いとも悪いとも主張していない、その目線も具合がいい。
、、、そして、こういう映画をディズニーという世界企業が配給する。ちょっぴりゾっとするでしょ。私は、はじめは(妙に長いし)イマイチな作品かな?と思っていたけれど、このテーマが見えてきた途端、猛烈におもしろく感じてきた。そう思えば、ダニエル・デイ=ルイスの欲の権化として、振り切った演技は実に見事。数々の受賞もさも在りなん。
個人的にはすごく楽しんだけど、お薦めしていいかどうかは悩むなあ(笑)。娯楽映画としては掴みどころがないし、大体にして長いんだもの(今日のレビューが長くなっちゃうくらい)。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
11 | 2024/12 | 01 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 |
22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
29 | 30 | 31 |