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image1869.png公開年:2011年
公開国:アメリカ
時 間:133分
監 督:ベネット・ミラー
出 演:ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル、フィリップ・シーモア・ホフマン、ロビン・ライト、クリス・プラット、ケリス・ドーシー、スティーヴン・ビショップ、ブレント・ジェニングス、ニック・ポラッツォ、ジャック・マクギー、ヴィト・ルギニス、ニック・サーシー、グレン・モーシャワー、アーリス・ハワード、ケン・メドロック、ケイシー・ボンド、ロイス・クレイトン、タカヨ・フィッシャー、タミー・ブランチャード、リード・トンプソン、ジェームズ・シャンクリン、ダイアン・ベーレンズ、リード・ダイアモンド 他
受 賞:【2011年/第46回全米批評家協会賞】主演男優賞(ブラッド・ピット『ツリー・オブ・ライフ』に対しても)
【2011年/第78回NY批評家協会賞】男優賞(ブラッド・ピット『ツリー・オブ・ライフ』に対しても)、脚本賞(アーロン・ソーキン、スティーヴン・ザイリアン)
【2011年/第17回放送映画批評家協会賞】脚色賞(スタン・チャーヴィン、アーロン・ソーキン、スティーヴン・ザイリアン)
コピー:常識を打ち破る理論で野球を変えたひとりの異端児の闘い。

かつてニューヨーク・メッツから1巡目指名を受けたほどの有望株だったビリー・ビーン。スカウトのくどき文句を信じ、スタンフォード大学の奨学生の道を蹴ってまで入団したが、芽が出ることは無く、様々な球団を転々とした挙句に引退。その後はスカウトに身を転じ、今は若くして弱小球団アスレチックスのGMに就任する。2001年ポストシーズンでヤンキースに破れた上に、デイモン、ジアンビ、イズリングハウゼンのスター選手がFAで移籍することに。財政が厳しいアスレチックスはまともな補強をすることもできなかった。そんな中、トレード交渉のために訪れたインディアンズのオフィスで、イェール大の経済学部卒でインディアンズのスタッフとして勤務していたピーターと出会う。彼は、独自にセイバーメトリクス法を用いた選手のデータ分析を行っており、経験と勘だけを頼りにしていた他のスカウトとは異なる尺度で選手を評価していた。彼の理論に興味をもったビーンは、彼を引き抜いて自分の補佐とし、他球団からは評価されていない埋もれた戦力を見つけ出し、低予算でチームを生まれ変わらせようとするのだったが…というストーリー。

サラリーマンというよりも、管理職とかチームリーダーが是非観るべき作品。ドラッカーなんかを読むよりも、ずっと日々の力になると思う。とはいえ、ノムさんのID野球とやらで、データ重視という理論自体に違和感は感じない。

現在の日本と同じく、アスレチックスの編成チームの中も“老害”で溢れている。変わらなくてはいけないのは明白だが、自分の立場や生活を守るために、もっとらしい御託をならべて日々の糧を得ようとする。
アスレチックスのスカウトをクビになったじいさんが、そのあとゴタゴタとビリーの手法をこき下ろすわけだが、そういう人種はビリーが成功しても謝罪もしなければ、職を失うこともない。
彼らはスカウトをやめても、飯のタネとして主観を客観のように語り、大衆をミスリードする。簡単に言えば“平気でウソをつく人々”なのだ。今、テレビをつけてみたら、番組のコメンテーターと称する人物が、同じような態度ととっていないだろうか。いい加減、私たちも、もっともらしいことをいうだけで発言に責任を持たない人間を見抜く能力、いや糾弾する態度を身につけねばけないのだろう。

現場に足を運ばないGMと聞くと、自分では何もやらない人間のように思えて、ちょっと変な気がしたのだが、それはゲンかつぎだということが、後に判る。彼は基本的に“改革”自体を自分の手でやりとげている。けっしてやらせるだけにはしない。信じること、そしてやってみせること。上司としては理想的。
20連勝で十分ファンには夢も喜びも与えただろうが、最終目標はワールド・チャンプと言ってはばからないところも、実に好感が持てる。

最後のインディアンズのオーナー(かな?)のセリフ。そういう既得権益者はほどなくして滅びるという予言は見事的中する。インディアンズの実践によって…ではあるが。別に小泉元首相のファンでもなんでもないが、人間世界のあらゆるところにはびこる既得権益という名の“怠惰”を、お天道様が許すことなどない(と信じたい)。
アスレチックスもトップであるオーナーと一枚岩であったら、きっと同じような道を歩んだに違いないと私は信じている。これは、スポーツ映画というよりも社会学をテーマにした映画だな。

ビリーがアスレチックスに残ったことが美談のように描かれているが、ここは観た人の意見が分かれるところだろう。
将来を嘱望されたが花咲かず…という彼の人生。あの時こうすればよかったんじゃないかという思いは、程度の差はあれ、だれでも思っていること。過ぎたことを考えても仕方が無いということはわかっていても、考えてしまう。痛いほど良く判る。そこから生まれた情みたいなものが、彼がオファーを断った一因なのかどうかはわからない。一旦別のところで成功して戻ることだって無くはないわけで、あの場所が彼にとってどれだけ意味があったのか、その点だけはちょっと描ききれていなかったかもしれない。

同じ理論を使えという意味では決して無いが、“野球”をどういうスポーツなのか?という定義を基底にして、コンセプトを前面に出す球団が日本にあってもよいな…と思う。もちろんその方針はファンも理解できるようにね。
かつての広島カープが日本人オンリーだったのはポリシーが明確だったよね。今は、地域性による差こそあれ、似たり寄ったりのチームばかりになってしまった。日本野球低迷の理由は、案外この映画に答えが隠れているような気がしてならない。

ちょっと男の子向け映画な気もするけど、企業で生きる人間にとっては、非常に勇気と力をくれる作品だと思う。またもや2011年アメリカの当たり作品。お薦めしたい。野球好きな人は、絶対に観ることをお薦めする。努力・友情・勝利という、野球映画にありがちな要素とはまったく別の“野球映画”がそこにある。
#当初、ソダーバーグ監督で製作される予定だったらしいが、観たかった気もしてちょっと残念かも。

 

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一日一シネマ。読んだら拍手ボタンを押してくだされ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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