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公開国:スペイン、メキシコ
時 間:148分
監 督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出 演:ハビエル・バルデム、マリセル・アルバレス、エドゥアルド・フェルナンデス、ディアリァトゥ・ダフ、チェン・ツァイシェン、アナー・ボウチャイブ、ギレルモ・エストレヤ、ルオ・チン 他
受 賞:【2010年/第63回カンヌ国際映画祭】男優賞(ハビエル・バルデム)
コピー:“絶望”の中にも必ず“光”は存在する。
スペイン・バルセロナ。ウスバルは躁鬱病で麻薬に溺れた妻と別居し、2人の幼い子供を男手ひとつで育てていた。そんな彼の仕事は、移民や不法滞在者に仕事を斡旋するなど、違法なことにも手を染めており、日々の生活の糧を得るのが精一杯の状態だった。そんな中、彼は末期ガンで余命はわずか2ヵ月と宣告される。だれにも打ち明けつことができず、死への恐怖だけでなく、遺される子どもたちの将来を考えると苦しみで気が狂いそうになるウスバルだったが…というストーリー。
『ノーカントリー』のアントン・シガーで究極的な気持ち悪さを爆発させたハビエル・バルデムだったが、本作では、どっちかというとそれなりにいい男っていう役。同じ顔なんだけどねぇ(笑)。まあ、あくまでそれなりだけど。とにかく、本作でのハビエル・バルデムの演技自体は、極上である。
ストーリーは男版の『死ぬまでにしたい10のこと』って感じ。不法滞在者や移民相手に、手助けなんだかピン撥ねなんだかわからないような掠りをやってる男なんだけど、妻がとても母親をやれる状態じゃないから、そんな仕事をしながらも子供二人を育てている。怒ったってどうしようもないから、淡々と抑えて生きている感じ。
掠り商売っていっても、移民の人たちにも奥底では慈愛に満ちた態度でのぞんでいる。父性と夫性と男気を兼ね備えた、いい人だと思う。
でも、その愛は常に一方通行でイマイチ伝わらない。そんな中、自分は癌で余命幾ばくも無いと宣告されるという、とにかくこれでもかこれでもかってくらい色々可愛そうな人。もう、ヘロヘロになったときに一縷の望みを託した移民女性にも、子供のために残した金を持ち逃げされる始末。彼の信頼は何一つとして報われることがない。
まるで神に見放されたようなのに、“生きよう”とする男の悲哀を綴ったお話…と言いたいところなんだけど、圧倒的にユニークな設定が…。それは、このウスバルという男が、成仏できない霊を見る能力を持っているということ。
じゃあ、その能力を軸にストーリーが進むのかというと、決してそうじゃない。所々出てくるんだけど、それほど重要なキーとは思えない。そして臨終の時を迎えようというときに、両親の遺品である指輪を娘に託す。そして、彼はこれまで見てきた霊のように自分の子供を見つめている。心配で成仏できないわけだ。でもその後、森で若者と出会うシーンになる。あれは、ほとんど記憶のない父親だろう。父親は子供の将来を今でも心配しているってこと。でも、心配されてる自分もなんだかんだで父親をやっている。そうか、なんだかんだ心配したってなるようにしかならない。これまで色々つらかったけど、すべて受け止めてきたじゃないか。もう、すべてをそのまま受け止めて、子供たちがきちんと生きていってくれることを“祈る”しかない…と。
うん、本作は“祈り”の作品ってところだな。
まあ、流れはわかるのだが、やっぱり、“霊が見える”っていう設定が必要だったかは微妙なんだよな。私なら、このスピリチュアルな能力を盛り込み続けることに、心が折れてオミットしてしまうと思う。別に、モルヒネの幻覚とかでもいいんだもの。
#必要か?って設定は他にもある。中国人のホモとかね。
でも、見ごたえのある作品だった。『死ぬまでにしたい10のこと』みたいなエグい欲望を爆発させることもなく、好感が持てる。掃き溜めの中に輝く、高尚な魂の光を見た(まあ、コピーのとおりか)。そんな印象。お薦めしたい。
それにしても、南欧の映画を作ったら移民を出さないわけにはいかないくらいの状況。EU終わってるな。ウスバルっていうのは、フランコ独裁時代に迫害された人物の息子だと。その子供の世代になっても、決して安心して暮らせる世界にはなっていないという、病根の深さよ。理想論だけの他民族国家なんて、うまくいかなって証明だわ(タダ乗りしようとするくせに、その土地の文化に溶け込もうとしないんだもの、うまくいくわけがない)。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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