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公開年:2006年
公開国:ドイツ
時 間:138分
監 督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出 演:ウルリッヒ・ミューエ、マルディナ ゲデック、セバスチャン・コッホ、ウルリッヒ・トゥクール、トマス・ティーマ、ウルリッヒ・ミューエ 他
受 賞:【2006年/第79回アカデミー賞】外国語映画賞
【2007年/第74回NY批評家協会賞】外国映画賞
【2006年/第32回LA批評家協会賞】外国語映画賞
【2007年/第61回英国アカデミー賞】外国語映画賞
【2006年/第19回ヨーロッパ映画賞】作品賞、男優賞(ウルリッヒ・ミューエ)、脚本賞(フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク)
【2006年/第22回インディペンデント・スピリット賞】外国映画賞
【2007年/第33回セザール賞】外国映画賞(フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク)
コピー:この曲を本気で聴いた者は、悪人になれない
1984年、冷戦体制の東ベルリン。国家保安省の局員ヴィースラー大尉は、反体制的疑いのある劇作家ドライマンとその恋人の舞台女優クリスタを監視し、反体制の証拠を掴むよう命じられる。さっそくアパートには盗聴器を仕掛け徹底した監視を開始するが、音楽や文学を語り合い、深く愛し合う彼らの世界に、だんだんと共鳴してしまい…というストーリー。
この、数々の受賞歴はダテではない。よくできた作品だと思う。
ただ、評価が難しい点が一つある。ヴィースラーが心変わりしていく過程が、いまいちぼんやりしているところだ。観る人によっては、そんな冷徹な上に他人に講義までするような人間が、自分の信条や地位を度外視するほど、心変わりするだろうか?という疑問が湧くと思う。それが腑に落ちるような演出というか説明はできていないと思う。とはいえ、もっとわかりやすく対象者に心酔していくところや揺れる心情をちりばめたほうがいいのか、本作のようにどっちつかずの線のままのほうがいいのか、正直なところ胸をはってどちらが正解か言い切れないのが心苦しい。
ただ、原題は『DAS LEBEN DER ANDERN』で“他人の生活”みたいな意味だと思うが、それを『善き人のためのソナタ』にしたり、このコピーを付けているということは、日本の配給会社は、その答えを、この音楽を聴いたことがきっかけで心変わりしたと解釈したということだろう。残念ながら、私の感性は、その曲だけで心変わりしたとは見ない。むしろ、自分の揺れる心に気付かせたきっかけだと思うくらいだ。
まあ、難点はそれくらいで、総じて良くできている。パッケージや紹介文で重そうな映画だと思われるかもしれないが、比較的軽妙な仕上がりになっている。未見の方は是非観て欲しい。まず、損はしないと思う。ラストの重ね重ね具合(観ればわかる)など、ドイツ映画らしいと思うし、ちょっぴりいい気分にさせてくれた。
なんといっても、作品を観ながら、色々と思索を巡らせることができたというのは、しっかりと映画に没頭させてくれた証拠だろう。私は、本作を観ながらこんなことを考えていた。
まず、国民の情報を病的に探り集める国家機関。社会主義国家のバカバカしさを表現しているわけだが、冒頭のナレーションで、その病的さをあえて語っているのはちょっと別な意味を含んでいるのかな?と。今の民主主義国家では、この他人の生活を覗く行為は、国家機関ではなく、言論の自由というもっともらしいおもちゃを武器にしたパパラッチまがいの報道機関が行っているのだ…というシニカルな視点。
他には、社会主義や共産主義体制は崩壊したけれでも、本作に観られるようなかつて東欧諸国は、マルクスやエンゲルスの共産国家にいたる過程を無視して、一足飛びで社会主義体制になってしまったのだから、こういう状況になるのはあたりまえだ…という歴史学的視点(充分に自由主義経済が揺籃して、その先に社会主義体制が生まれるといっていたんだから、充分に自由経済を発展させればよかったのに、目先の貧富の差に我慢ならず、過程を無視したバカどもがつくった体制だから、こうなるのは当たり前…という意味。まあ、映画の批評とは直接関係ないから、この話は広げない)。
ドイツは解放後に統一したけれども、文化や経済格差によって、しばらく苦しんだ(今も苦しんでいるか?)。北朝鮮・韓国が統一することになった場合、それ以上の差があるがうまくいくか?私はドイツの程度が限界だと思う。だから、朝鮮半島はドイツのような統一はまず無いということ。それは片方が(どちらかかはいわずもがなだが)瓦解して、難民状態に近い形で吸収される結末しかない。そして場合によっては他国がその国土の一部を望み、すべてが統一されない危険もはらんでいる。
とかとか、いろいろ考えさせてくれる傑作だ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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