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公開年:1981年
公開国:日本
時 間:106分
監 督:市川崑
出 演:水谷豊、永島敏行、谷啓、中原理恵、永井英理、黒田留以、市原悦子、草笛光子、浜村純、加藤武、常田富士男、河合信芳、小林昭二、新橋耐子、佐々木すみ江、三條美紀、倉崎青児、川上麻衣子、桜井勝、青地公美、三谷昇、辻萬長、宇野喜代、古俣敦子、大林丈史 他
とある書店で銃撃事件が発生。村上刑事、北刑事、野呂刑事の3名が現場に到着すると3人が血まみれで横たわっていた。被害者の一人である遠藤という男はまだ息があり、“ウドウヤ”という謎の言葉を残し絶命する。驚くことに、もう一人の被害者は、北刑事の恋人である中井庭子だった。庭子は、社会福祉員を目指す大学生で、事件の前にデートに一時間ほど遅れると電話をしていたばかり。残りの被害者は大学教授の雨宮ですでに死亡していた。身元は判明したが、特に3名の繋がりは見つからなかった。村上刑事は、妻に家出されており、忙しい任務の中、8歳の娘と6歳の息子の面倒を見ていたが、それを同僚に伝えることなく仕事を続けていた。また、本来ならば本件から外される北も、強く希望を出し、捜査に継続参加することになった。捜査を進めていくいと、福祉センターの仕事をしていた庭子が、身寄りのない車崎るいという女のところに出向いていたことが判明。るいは身寄りがないと虚偽の申告をしたことでヘルパーの派遣を断られており、気の毒に思った庭子が様子伺いに行ったと考えられていたが、銃撃事件の数日後に、るいの娘のみどりの死体が、近所のかわらの土手で発見されていることが判り…というストーリー。
市川崑作品の中でも、あまり知られていない作品かと(なにやら権利関係で埋もれていたとか)。1981年製作にしては、古臭い画質だなぁ…と思っていたが、“銀残し”で現像しているらしい(市川崑の『おとうと』=銀残し…ってのは映画検定の基本問題)。とはいえ、1970年代の作品かな…くらいの印象。DVDではうまく色合いが出ていなかったりするのかしら…。
原作はエド・マクベインという有名な作家の作品らしいが、不見識で知らん。すまぬ。
昨日の『刑事物語』は、事件と恋愛が並行して語られながらも、最後はその二つのストーリーが交わりあった。本作の場合は、事件と家族問題が並行して語れるが、それが直接交わることはない。それが悪いというわけではないのだが…
(以下ネタバレあり)
捜査上浮かび上がってくる被害者庭子の近況と、事件の真犯人がまったく無関係で、さらに真犯人の目星が付いてからのあっさり解決しちゃう感で、拍子抜けしてしまう。いや、そのあっさり感によって、市井の人々だって色々抱えているんだよ。俺も、妻には逃げられちゃったけど、こうやって曲がりなりにも子供を心を通わせられているおれって幸福なんじゃないか…という対比に使っているのかもしれない。
もうちょっと、母親がいなくなって不安な気持ちを、それを我慢する気持ちなんかが、捜査上浮かび上がってくる人々の感情と、リンクするなり間逆になっているなりで、片山の捜査に影響を与えるような演出があれば、ベストだったと思う。
永島敏行演じる北刑事が、熱血刑事でまっすぐな男だと思っていたのに、なかなかの酒乱で、酔った彼が吐く本心がとても辛辣だというのは、なかなか面白い演出だった。
また、ミスリードといえばミスリードなのだが、市原悦子演じる車崎るいの関係者が、あまりにエグすぎで、バランスが悪い。川上麻衣子の役柄は、今だと微妙にアウトくさくて、地上派放送はまず困難だろう。
いや、文句ばかりに聞こえるかもしれないが、膝くらいまでの水深のプールを、延々と歩かされているような閉塞感は、さすが市川崑。そしてラストシーンが、散々同僚に妻を迎えにいけといわれていたにも関わらず、そのシーンにするではなく、子供たちと3人でレストランで食事をするシーンで終えているのが秀逸。時代が古すぎてそのレストランのある土地が妻のいる金沢なのかどうか判別がつかなかったのだが、もしかすると、妻のところにいく途中でレストランにいっているのかもしれない。でも、つらい3人での生活だったにもかかわらず、その経験を名残惜しいとさえ感じているようにも見える。
当時、バラエティ色の強かった中原理恵だが、ほぼ回想シーンだけでの登場。そのおかげで、観客が客観的で冷静な目線で観ることができるというウマい起用方法もあって、純粋に演技力だけに目がいく形になっている。その他、市川崑の刑事といえば、金田一シリーズの加藤武。その他、常田富士男などお馴染みの顔ぶれも登場。加藤武に「よし、わかった」と言わせるなど、ちょっと笑かせにかかってるんじゃないかという小ネタをはさむ余裕も見られる。これを観て思うのは、水谷豊で、金田一耕助シリーズをつくってほしいってこと。いまなら、成功すると思う。誰かやってはくれないだろうか。ヒットすると思う。
良作だと思う。お薦め。
#関係ない話だが、市川崑の『火の鳥』が観たい。どこにもない。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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