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公開国:アメリカ
時 間:90分
監 督:ウディ・アレン
出 演:オーウェン・ウィルソン、キャシー・ベイツ、エイドリアン・ブロディ、カーラ・ブルーニ、マリオン・コティヤール、レイチェル・マクアダムス、マイケル・シーン、ニナ・アリアンダ、カート・フラー、トム・ヒドルストン、ミミ・ケネディ、アリソン・ピル、レア・セドゥ、コリー・ストール、デヴィッド・ロウ 他
受 賞:【2011年/第84回アカデミー賞】脚本賞(ウディ・アレン)
【2011年/第69回ゴールデン・グローブ】脚本賞(ウディ・アレン )
【2011年/第17回放送映画批評家協会賞】オリジナル脚本賞(ウディ・アレン)
コピー:真夜中のパリに魔法がかかる
ハリウッドで脚本家としてそれなりに成功しているギルだったが、いわゆるハリウッド的な娯楽作品のシナリオ執筆では満足感を得ることが出来ずにいた。彼は元々なりたいと思っていた小説家になるために、執筆を始めたが、納得いく出来にはほど遠かった。そんな中、婚約者のイネズの父のパリ出張に、夫婦で帯同することに。かねてから憧れだったパリの地に胸躍らせたギルは、シナリオの仕事を辞めてパリに移住をしたいと主張するが、今の安定したリッチな生活を捨てることなど、お嬢様育ちのイネズが許すはずもない。そんな二人の前に、イネズの男友達ポールが現れる。ギルはパリを夫婦で満喫したかったのに、イネズはポールたちと遊びたいといい始め、すっかり興醒め。インテリぶって見下すような態度のポールと行動を共にしたいと思うはずもなく、一人で夜中のパリを歩いてホテルに帰ろうとするが、すっかり迷ってしまい、途方に暮れて道端に座り込んでしまう。すると、そこに一台の年代物のプジョーが現われ、誘われるままにギルは乗り込んでしまう。連れて行かれたのはパーティ中の古めかしい社交クラブ。なんとそこには、フィッツジェラルド夫妻やジャン・コクトー、ヘミングウェイといった偉人たちが。彼は、1920年代のパリに迷い込んでしまったことを知り…というストーリー。
自分が崇拝する芸術家たちがいる時代にタイムスリップするという、荒唐無稽な設定。ヘミングウェイ、フイッツジェラルド、ピカソ、ゴーギャン、ゴヤ、ダリ。ちょっとフィッツジェラルドやアドリアナが良く判らなくてピンとこなかったんだけど、他がメジャーすぎるのでセーフ。
(以下ネタバレ)
1920年の世界でいい仲になったアドリアナと二人で、さらに過去世界に迷い込む。そこでアドリアナが過去の世界を賛美する様を見て、自分自身に対する満たされない気持ちの根源が、ただ自分が周囲のせいにしてだけだということに気づかされる。現実が虚しいと嘆き、ノスタルジーに縛られて生きていること、そのこと自体のほうがよっぽど虚しいと。
また、妻の浮気を、ヘミングウェイに指摘される場面。このタイムスリップ世界自体、実はギルの脳内世界だったのでした…というオチにすることもできたが、そうじゃなくてよかった。ギルを調べていた探偵も、中世に放り込まれるところで、ファンタジー色をキープ。おかげで、名作古典落語を聴いているような、心地の良い作品に仕上がっている。
ウディ・アレンがこんなSFチックな展開を放り込んでくるとは思いもよらず、ちょっと面食らった。老人が撮った作品とは思えないほど、新鮮な目線。チャカチャカしていない、落ち着いたカメラワークが、それに安定感を加えて、磐石。
ハリウッドでライターとして成功している彼は、何故か小説化になることにこだわる。なんでか。レジェンド達の助言で小説が仕上がっていくにつれ、現状生活で自分が見ないようにしていることが、顕在化してくる。つまり小説=自分の姿であると。
いつも自分を小馬鹿にしつづける妻に、深い考えも無くしたがっていたギルだったが、だんだんと何かが見えてくる。妻の不貞が発覚すれば普通は激昂するだろうし、相手の男も含めて、とっちめてやりたいと思うのが普通。観ている人の半分は、それを期待したかもしれない。少なくとも妻の両親には事実を明らかにしてギャフンと言わせてやりたいと思う人は多かったはず。
でも、そうはならない。自分がうまくいかないのは周囲のせいだと思っていた自分が間違いだったことに気付いたギルは、環境が悪いなら自分が変われば良い。変わった自分をこの環境が拒絶するのであれば、出て行けばよい。そのロジックを素直に受け止められる人間になったのだ。
正直、古いアレン作品は、私にとってそれほどピンとくるものではなかったが、本作は愉しめた。そして、いつも直球コメディばっかりのオーウェン・ウィルソンだが、ここまでアレン作品にハマるとは意外。お薦めする。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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