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image1120.png公開年:2010年
公開国:アメリカ、イギリス
時 間:90分
監 督:バンクシー
出 演:ティエリー・グエッタ、スペース・インベーダー、シェパード・フェアリー、バンクシー、リス・エヴァンス 他
受 賞:【2010年/第26回インディペンデント・スピリット賞】ドキュメンタリー賞(バンクシー)




ロス在住のティエリー・グエッタは、ストリートアーチストに興味を持ち、警察の取り締まりに屈することなく、彼らの活動を追い続けカメラを向け続けていた。やがて、伝説の覆面芸術家バンクシーの作品や行動を映像に収める機会を得て、さらにか彼と親交を深めるようになる。その後、バンクシーはティエリーに、これまで取りためた映像を編集して、一つの映画にすることを依頼するが、その出来映えがあまりにひどく、彼の映像センスの無さにバンクシーは愕然とする。彼を映像の世界から遠ざけようとした際に、アート活動に目を向けることを薦めると、その気になってしまったティエリーは、アートの才能など無いにも関わらず、分不相応な巨大なイベントの立ち上げに邁進し…というストーリー。

冒頭は、バンクシー以外のアーチストの活動を紹介し、それらが撮影したティエリーの目線で語られる。その後、ティエリーとバンクシーとの出会いと、親交が深まる様子が描かれるのだが、ここまでは実に退屈な内容で、どこが良くて数々の受賞をしているのかさっぱり判らない状態(上にはインディペンデント・スピリット賞しか書いてないけど、もっと規模の小さいインディ系の映画賞をたくさん受賞している)。

私がお堅いつまらない人間なのかもしれないが、“インベーダ”さんとか、アンドレを貼り続けている人の活動が、迷惑極まりない。自分の家や会社の壁や塀にあんなものを貼られたり描かれたりしたら、憤慨すると思う。はっきりいって芸術として美しくもないし小汚いし、あれを剥がすには相当のコストが掛かる。とても腹立たしく感じられた。

で、続いてバンクシーの活動が紹介される(というか監督自身の活動なんだけど)。ここで、バンクシーという男の作品が、何で評価され高値で売買されるのか、はっきりとわかる。角辻の壁の下の方に描かれたネズミの絵ひとつとっても、そのアートセンスが段違い。間違いなく許可なく勝手に描いているのだが、これなら描かれても文句ないかな…って、建物の持ち主の怒りとかを押さえ込み、厳密な法解釈とかをなぎ倒すだけのパワーがそこにある。いや、むしろ描いてくれてありがとう…のレベル。
正体を明かさずに活動しているのも、単に違法なことをしているからパクられないように顔を隠したいということではなく、きちんと違法なことであることを認識した上で、それでもやる意味があるからやってるんだよ、そのギリギリの先に何かがあるんだよってことだと思う。他のアーチストは何が悪いわけ?って姿勢だから不快に感じる。

ところが、本作は後半になってガラリと趣を変える。これまで、ストリートアーチストを撮影しつづけていた(だけの)ティエリーに、バンクシーが映画制作を依頼すると、驚愕するくらいにポンコツ映像に仕上がる。このまま映像の仕事を続けさせるわけにいかないバンクシーは、リップサービスでユーもアート活動してみりゃいいじゃん!なんて行っちゃったら、ティエリーがその気になっちゃう。
元々頭のネジが飛んでる人なのかもしれないが、これまでアート活動なんかしたこともない人間が、バンクシーの真似をしていきなり単独アートイベントをぶち上げる。それどころか、すったもんだの末になぜか成功して、現代アートの旗手として持ち上げられリッチマンになってしまうという、斜め上の展開に。
MBW(ティエリーのアーチスト名)の作品は、他の現代アート作品のコラージュ、いやパクりでしかない。そこの創造性を見出すことが難しいほど。一周廻って、そのオリジナリティの無さに、大衆が現在の世相を勝手に投影したのか。なぜか、お客さんは彼の作品を絶賛するのだが、私にはさっぱりピンとこない。監督のバンクシーもMBWの作品には批判的で、この現象に不快感を表すことを隠さないし、苦言も連発する。

なんだこれは?という展開になるのだが、これは、現代アートというか、今の“アートビジネス”を批判しているのだろう。私は至極納得する。意図してかどうかはわからないが、途中で村上隆の作品がチラっと映る。私が村上隆作品にに抱いている感情と、バンクシーがティエリーに抱いている思いは一緒。そりゃ村上隆は芸大出だしキャリアも積んでいるんだろうけど、その作品に独創性もアート性も一切感じない。今の現代アートビジネスってのは虚業だし、バブル的で、今のマーケットに本物を見分ける力は無い。だから表現の舞台は街の中ってこと。彼が覆面で活動しつづける意味が、そこにもある。

後半になって急激に、社会性の高い視点になる。何を主張したい作品なのか?にハッと気付くと、ゾワっとするおもしろさが表出する作品。大衆は愚かであり賢い…という深いテーマがじわじわと染み出す、デキの高いドキュメンタリー。なかなかの佳作だった。軽くお薦めしたい。

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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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