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公開年:2008年
公開国:イギリス、アメリカ
時 間:120分
監 督:ダニー・ボイル、(共同監督)ラヴリーン・タンダン
出 演:デヴ・パテル、マドゥル・ミッタル、フリーダ・ピント、アニル・カプール、イルファン・カーン、アーユッシュ・マヘーシュ・ケーデカール、アズルディン・モハメド・イスマイル、ルビーナ・アリ 他
受 賞:【2008年/第81回アカデミー賞】作品賞、監督賞(ダニー・ボイル)、脚色賞(サイモン・ボーフォイ)、撮影賞(アンソニー・ドッド・マントル)、作曲賞(A・R・ラーマン)、歌曲賞(詞:Gulzar“Jai Ho”、曲:A・R・ラーマン“Jai Ho”曲/詞:A・R・ラーマン“O Saya”、詞:Maya Arulpragasam“O Saya”)、音響賞[調整](Ian Tapp、Richard Pryke、Resul Pookutty)、編集賞(クリス・ディケンズ)
【2008年/第43回全米批評家協会賞】撮影賞(アンソニー・ドッド・マントル)
【2008年/第75回NY批評家協会賞】撮影賞(アンソニー・ドッド・マントル)
【2008年/第34回LA批評家協会賞】監督賞(ダニー・ボイル)
【2008年/第66回ゴールデン・グローブ】作品賞[ドラマ]、監督賞(ダニー・ボイル)、脚本賞(サイモン・ボーフォイ)、音楽賞(A・R・ラーマン)
【2008年/第62回英国アカデミー賞】作品賞、監督賞(ダニー・ボイル)、脚色賞(サイモン・ボーフォイ)、作曲賞(A・R・ラーマン)、撮影賞(アンソニー・ドッド・マントル)、編集賞(クリス・ディケンズ)、音響賞(Ian Tapp、Tom Sayers、Richard Pryke、Resul Pookutty、Glenn Freemantle)
【2009年/第22回ヨーロッパ映画賞】撮影賞(アンソニー・ドッド・マントル:「ANTICHRIST」に対しても)、観客賞
【2008年/第14回放送映画批評家協会賞】作品賞、若手俳優賞(デヴ・パテル)、監督賞(ダニー・ボイル)、脚本賞(サイモン・ボーフォイ)、音楽賞(A・R・ラーマン)
コピー:運じゃなく、運命だった
インドでは、クイズ$ミリオネアが大人気。この日、ムンバイのスラム出身の青年ジャマールが、難問を次々にクリアして、ついに最終問題まで到達。そこで、放送時間が終了しその日の収録が終了。スタジオを出たところで、イカサマの容疑で警察に逮捕されてしまう。まともな教育を受けたこともない人間が回答できるはずがないと決めつけ、警察は拷問を繰り返すが、ジャマールはなぜ答えることができたのか、その過去を話し始める…というストーリー。
インドの児童労働や虐待、人身売買、ムスリムとヒンドゥーの対立、根強い階級差別。問題だらけの国を舞台にしたヒューマンドラマなのか?はたまた、そんな国が経済国として急進して、私たちのコストセンターとして仕事を奪い、IT立国だとかのたまっているんだぞ!なんて、自由主義や経済的視点での弾劾か?始めはそういう部分に目がいっていた。冒頭の警察官による拷問シーンを見ていると、「アジアの多くの国がそんなもんだよ…」とウンザリして、一回観るのをやめてしまったほど。
でも、たまたまそういう原作が存在しただけであって、映画を製作する側はそういう部分を見せたいわけじゃないんだ…ってことに気付いたら、途端に面白く感じてきた。ひっかかったままの人は、最後まで面白いと思えなかったはずで、本作を凡作と評価する人なんかは、その呪縛から抜け出せなかった人だろう。私は途中で気付けてよかったと思う。
欧米人(特にアメリカ人)は、あれだけグローバル社会はどうしたこうした言うわりには、他国のことは何にも知らない(教育されていない)ので、そういうことを気にして見ている人間はほとんどいなかったに違いない。イギリスだって、二重被爆者を平気で笑いものにできるレベルで、大したもんじゃない(私は総理大臣なら、国交断絶をほのめかして批判してもいいくらいだと思うけどね)。だから、始めから娯楽作モードで見ていたので愉しめたんだろう。それがこの受賞のオンパレードに繋がっていると思う。
だから、こういう作品にアカデミー賞を挙げるくらいなので、アメリカ人は世界の現実を理解しているんだなあ…なんて考えは間違い。そういう部分をまったく観ていない結果でしょう。
不正をした司会者や、違法な取調べをした警官に対して、勧善懲悪で痛い目にあわせるような展開が一切なくて、かえって、それが若さゆえの疾走感と一途な思いを表現する一助になっている。ここに『トレインスポッテイング』のダニー・ボイル監督をもってきた製作側のセンスがすごくて、本作ヒットのMVPは彼にオファーした人である。
複数の時間軸と行ったり来たりする表現は多用されているけれど、ここまで効果的に使えているものは少ないだろう。人間の脳というのは過去の記憶と記憶(もしくは現在の状況)が繋がったときに、快感を覚える。快感の具合は記憶と記憶の距離感で決まり、その距離が絶妙な場合は“ユーリカ!!!”ってな具合で絶頂に至るわけだが、本作の現実と回想での出来事の距離感が非常によろしいのだ。
とにかく社会的に高尚な視点を捨ててから観はじめることをお薦めする。そして始めの20分はイライラするかもしれないが、騙されたとおもって観続けてほしい。そうすれば近年稀に見る娯楽の秀作が登場するはず。お薦め。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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