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imageX0066.Png公開年:1963年
公開国:日本
時 間:99分
監 督:野村芳太郎
出 演:渥美清、長門裕之、左幸子、中村メイ子、高千穂ひづる、藤山寛美 他






幼少期に親と死別してからというもの、世間の厳しい風に晒されて生きてきた山田正助。ろくな教育も受けておらず、文字もカタカナ程度しか読めない彼は、いざこざをおこして服役していたこともある。そんな彼が兵役義務により新兵となる。多くの者は兵役を苦痛に感じていたが、正助にとって、三度の飯にありつけ屋根のあるところで寝られる軍隊は天国のようで、たとえ先輩が辛く当たっても平気だった。ある日、正助は、大演習の際に天皇の“実物”を見て、そのやさしそうな姿に天皇にほれ込んでしまう。やがて戦争が終わるという噂が流れ出す。軍隊から追い出されると危惧した正助は、天皇宛てに除隊させないように懇願する手紙を書こうとするのだが…というストーリー。

『拝啓総理大臣様』が野村芳太郎&渥美清コメディの三作目ということだったので、一作目を借りてみた。長門裕之演じる作家志望の戦友“ムネさん”が、狂言廻しのように、渥美清演じる“ヤマショー”を眺め続ける。

ヤマショーという男は、平時の社会ではまったく役立たず。文字が読めないだけでなく、地道な仕事すら満足にできる器用さを持ちせていないように見える。はっきりいって、言われたとおりのことをするだけの兵役も満足にこなせているとは言いがたい。

天衣無縫ともいえる彼に対して、中隊長は目をかける。藤山寛美演じる元代用教員の新兵・柿内に命じて、教育を受けさせるのだ。まあ、柿内との間に友情は生まれるのだが、それほど学がついたとは思えない。なんで中隊長は、ヤマショーを気にかけたのだろう。その辺は深く説明はされない。
柿内が少年雑誌が面白いと言っていた…と自腹で購入する。柿内にも見せるのかなと思ったら、のらくろにどっぷりはまって読みまくる。「のらくろはかわいそうだのぉ…」って、完全に子供。そういう幼少時代を過ごして来なかったであろう彼を、周囲は優しく見つめる。
なぜ、みんな彼を憎めないのか。放っておけないわけじゃない(事実、結構放って置かれるし)。正直なところ、半分は憐れみだと思う。そして彼の心の中に一切の悪意がないこと、腹に一物を置くということがないことを知ると、振り払う気力がなくなるんだと思う。もう、妖精のようだ。ムネさんの嫁さんも、はじめはヤマショーを煙たがるけど、早々に憎めなくなる。

いずれにせよ、兵役や戦争が終わると、ヤマショーとムネさんの関係は途切れ、また世の中がきな臭くなってくると、縁が生まれる。闇屋をやったり、開拓民になったり、死体引き上げの仕事をやったり、生きる術を模索し続けるがどうにもうまくいかない。やはり、“乱世”の中でしか生きられないのだ。本人の特性は平和そのものなのに、平和の中では生きられないという矛盾。

最後、第二次世界大戦が終わり、隣では朝鮮戦争がおこるものの、日本国内は平和。平時には役立たずのヤマショーだが、そんな彼も、伴侶となってくれる人と出会い、ようやく一人前になろうかというとき…。やはり彼は平時の世では生きられない。最初から最後まで、赤ん坊のような純な心のままで、去ってしまう。そんな純真な彼が愛して病まなかった天皇陛下に対して、かつて天皇へ手紙を書くことを諌めたムネさんが、最後に手紙を書くのである。

決して直球のコメディでもないし、かといって社会派の視点でシニカルになにかを語っているわけでもない。だけど、ヤマショーの性格のように、この映画自体が憎めない。なんとも不思議な気持ちにさせてくれる作品だった。『拝啓総理大臣様』以上に渥美清は生き生きしていた。

 

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