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公開年:1985年
公開国:日本
時 間:133分
監 督:市川崑
出 演:石坂浩二、中井貴一、川谷拓三、渡辺篤史、小林稔侍、井上博一、浜村純、常田富士男、北林谷栄、菅原文太、佐藤正文、茂木繁、保木本竜也、川崎博司、山口眞司、永妻晃、清末裕之、井上浩 他






1945年夏。ビルマ戦線の日本軍は、物資・食料が不足する中、連合国の猛攻を受け、タイへ撤退を続けていた。撤退する部隊のひとつ井上小隊は、音楽学校出身の隊長が隊員に合唱を教えており、隊員達は歌によって結束と強め、苦境を乗り越えていた。隊員のひとり水島上等兵は、音楽の才能があったのか、ビルマ伝統の竪琴サウン・ガウを巧みに弾きこなし、隊員たちの心を癒していた。小隊が国境に近づいたあたりで、日本は降伏。武器を放棄して投降した彼らは捕虜となり、南のムドンにある捕虜収容所に送られた。山奥の三角山には降伏しない小隊が未だ交戦を続けており、このまま降伏しなければイギリス軍は全面攻撃を開始し、間違いなく小隊は全滅する。彼らを助けたい井上隊長はイギリス軍と交渉し、説得役として水島を行かせることに。しかし、期限までに説得することができず、イギリス軍は攻撃を開始。水島もそのまま行方不明となってしまうのだった。水島は運よく戦火を逃れて、生き残ることができたのだが…というストーリー。

なんで水島がビルマに残ろうと思ったのか、隊の人々は理解できない。捕虜といっても虐待されるわけでもなく、いずれは日本に帰れるのだから、水島がなんで戻ってこないのかさっぱり理解できない。戻ってこない理由が思い浮かばないから、似ている人が現れてもたぶん違うだろう…ということになる。

かといって、水島と隊員たちがすれ違う演出がハラハラするか…といわれれば、そうでもなかったりする。

私がこの作品で一番しっくりこないのは、水島が一人で日本兵の供養をすると、そこまで頑なになった理由である。それが妥当か?納得できる?ということ。

水島は、投降しない小隊の説得に失敗して、結果として全員死んでしまう。責任を感じて供養しなくては…という気持ちになるのは理解できるのだが、でもそれは、その小隊だけをきっちり埋葬すれば終了する話。死んだ日本人全員を供養する!というモチベーションにまではならないだろう。

その後、日本兵の死屍累々を見るのだが、確かに供養したいという気持ちにはなるかもしれない。でも、待てよ。彼は突然ビルマにやってきたわけではない。これまでずっとビルマ戦線で戦ってきたわけで、敵味方ともに多くの死者が出ただろう。撤退中も多くの死体を見ただろう。今になって突然、供養しなくては!!!と目覚めるのは違和感を覚える。

その後、イギリス人修道女が日本兵を供養しているのを見て、苦悩(というか悶絶)する。ああ、国籍分け隔てなく供養している人もいるのに、私は帰ろうとしているのか…っていう苦悩なのかな。でも、イギリス人が供養しているのに、日本人がしないなんて情けない…っていう感情だとしたら、なんかズレている気がする。そう、水島はその後も日本兵を供養する!とは言うのだが、他の国の死者も供養するとは言っていないのだ。あのイギリス人修道女の行いを見たのにだ。むしろ、ずっと日本人、日本人といい続けているのって鬼畜の心じゃないか。何も学んでいないじゃないか。

どうにも納得できない私は、原作はどうなのかな?と調べた(といってもwikipedia)。そこに書かれていた原作の内容を読んで、至極納得できた。原作では、三角山の小隊の説得に失敗し玉砕した後、人食い部族に捕らえられ、毎日ご馳走を食べさせられた後に、丸焼きにされそうになるのだ。しかし、偶然強風が吹いて火が消えてセーフ。きっと精霊が怒っているのだと動揺する部族の前で、とっさに竪琴を奏でたら、またまた偶然風が止んで、こりゃすげえや喰うのやめよう!ってなって生き残る…っていう内容。そんな、ギリギリの体験したら達観しちゃて、もう後の人生は供養のために捧げます…くらいの心持ちになるわな。ものすごい説得力。

神の意思にかなった行動とは何なのか?そんな高尚なことはちっぽけな私にはわからないけれど、少なくとも今自分が善行だと思うことを全力でやることは、きっと神の意思に近づいているに違いない…といった感じの非常にプロテスタント的なセンスを感じるのだが、市川崑にそういう宗教的バックボーンがあったかは不明。でも『おとうと』も『野火』もキリスト教的な要素があるよね。

ちなみに市川崑は1956年にも『ビルマの竪琴』を作っている。レンタル屋で見つけたら比較してみようと思う。

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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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