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公開国:アメリカ
時 間:170分
監 督:マーティン・スコセッシ
出 演: レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ブランシェット、ケイト ベッキンセイル、ケイト・ベッキンセール、ジュード・ロウ、アレック・ボールドウィン、ジョン C ライリー、アラン・アルダ、イアン・ホルム、ダニー・ヒューストン、グウェン・ステファニー、アダム・スコット、マット・ロス、ウィレム・デフォー、ジョン・C・ライリー 他
受 賞:【2004年/第77回アカデミー賞】助演女優賞(ケイト・ブランシェット)、撮影賞(ロバート・リチャードソン)、美術賞(ダンテ・フェレッティ:Art Direction、Francesca LoSchiavo:Set Decoration)、衣裳デザイン賞(サンディ・パウエル)
【2004年/第30回LA批評家協会賞】美術賞(ダンテ・フェレッティ)
【2004年/第62回ゴールデン・グローブ】作品賞[ドラマ]、男優賞[ドラマ](レオナルド・ディカプリオ)、音楽賞(ハワード・ショア)
【2004年/第58回英国アカデミー賞】作品賞、プロダクションデザイン賞(ダンテ・フェレッティ)、メイクアップ&ヘアー賞
【2004年/第10回放送映画批評家協会賞】監督賞(マーティン・スコセッシ)、音楽賞(ハワード・ショア)
【2005年/第4回MTVムービー・アワード】男優賞(レオナルド・ディカプリオ)
コピー:すべての夢をつかんだ時、いったい何が見えるのだろう。
18歳で亡くなった父から石油掘削機の事業を引き継いで成功したハワード・ヒューズ。1927年、21歳になった彼は、潤沢な財産を飛行機アクション映画に大量に投入する。映画界の常識からはずれた撮影技法は業界人たちから揶揄されたが、3年以上かけて完成した『地獄の天使』は大ヒットを記録。ハリウッドの有名人となった彼は、その後も映画製作を継続しヒットを飛ばす。やがて人気女優キャサリン・ヘプバーンと出会い恋に落ちる。一方、飛行機への情熱は航空ビジネスへと向かい、会社TWAを買収。新型の飛行機開発を行い、自ら操縦桿を握り、飛行機の世界最速記録を次々と更新。自らの夢を次々と叶えて人生を謳歌するハワードだったが…というストーリー。
『ディパーテッド』でようやくオスカーを受賞したスコセッシだが、あれは、もういいかげん獲らせてあげないと…という功績賞的な意味合いが強かったと思う。あんなお抱え監督仕事にオスカーを与えるんじゃなくて、真の意味でオスカーを渡すに値するのは本作だったと、私は思っている。
昨日の『アルゴ』もそうだったが、アメリカには実在のエピソードの中にとんでもないものが存在する。ただ、実話ベースの映画は大別するを二つあり、一つは“事実は小説より奇なり”パターン。もう一つは“奇人列伝”パターン。本作は後者である。
幼い頃、母親に言われたこと(“QUARANTINE”)が頭にこびり付いて潔癖症になってしまったハワード(事実は知らんが作中ではそう描かれている)。とてつもないハンデではあるが、彼自身それに耐えて眼前の問題をクリアしなければ、自分の夢が実現できないことを認識しており、実際それを乗り越えて勝利を勝ち取っていく。彼は、傍若無人で夢の為なら手段を選ばない…という男ではない。きちんと状況(敵)を見極め、それに対処すべき方法を模索し、これだ!と思ったら躊躇無く邁進する。いやいやそれは難しいだろう…と躊躇してしまうところを全力でアクセルが踏める。一般人との違いはそこである。その障壁の一つとして自分の潔癖症があるならば、何とかそれを乗り越えるだけの胆力を持ち合わせている。
彼の夢は非常に子供じみてみえるかもしれないし、彼が成し遂げたことと投入した費用のバランスに疑問を感じる人がいるかもしれないが、自由主義経済の中で彼のような存在が実は不可欠。①彼の事業により購入される資材や支払われる給与が膨大でお金が回ること、②目的のために飽くなき技術革新を求めていくが、一見無駄な開発に見えても後々その成果が何らかに活用される可能性があること。②はイノベーションであり、①は資本主義社会を廻す基本である。彼が奇人であり、あまりにスピード感のある人間なので、そこに目を奪われがちだが、彼は自由主義経済の化身であることを見逃してはならない。
その証拠に、終盤はパンナムと結託した議員との戦いになる。国益の名の下にパンナムが国際線を独占するという法、つまり“規制”と彼は戦うのである。
結果、その戦いに勝利するハワード。そのやりとりは大変参考になる。相手の出方を予測して反証を準備するという手法は、財産とコネクションの賜物なので、我々は参考にできない。しかし、(必ずしもどんな場面でも活用できるとは限らないが)彼が、ブリュースター上院議員と公聴会で対峙するときの、ブリュースターの発言に対するハワードの言葉のかぶせ方。周囲の人間を不快にさせないレベルで、相手の発言を止める微妙なタイミング。実際の映像は残っているのでそれを参考にしたと思われるが、これを訓練せずにやっていたのなら天性の論客なんだろう。
まあ、とにかくこの公聴会での勝利のシーンは、実に興奮した。
タイトルの『アビエイター』のとおりに、実際に空を駆け巡り、そして経済界・社交界を時には高速で飛ぶ、時にはアクロバット飛行をみせたハワードだったが、最後は壊れていく。でも、神からその役目を与えらているような人間とは、大抵そんなもんじゃなかろうか。(一神教世界以外にみられる)荒ぶる神、職能神っていうのは、神話の中でもどこか狂っているものだ。本作は、ハワードという“神”を眺める作品である。お薦め。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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