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image2149.png公開年:2012年
公開国:フィンランド、ドイツ、オーストラリア
時 間:93分
監 督:ティモ・ヴオレンソラ
出 演:ユリア・ディーツェ、ゲッツ・オットー、クリストファー・カービイ、ペータ・サージェント、ステファニー・ポール、ティロ・プリュックナー、マイケル・カレン、ウド・キア 他
コピー:ナチスが月から攻めてきた!!





2018年。アポロ17号で終了した有人月面着陸プロジェクトを復活させたアメリカ合衆国政府は、黒人ファッションモデルのジェームズ・ワシントンらを月面に送り込む。しかし、彼がそこで見たものは、第二次世界大戦の敗戦後に月へと逃亡したナチスの残党によって築かれた第四帝国の秘密基地。アメリカ船は攻撃を受け捕らえられてしまう。総統のコーツフライシュの元、ナチスは着々と軍備を増強し、地球の帰還を目指していたが、ワシントンが持っていたスマートフォンを見てその技術力に驚愕。その処理能力を持ってすれば開発中の最終兵器“神々の黄昏号”を稼動させることも可能と考え、調達のために地球潜入作戦を敢行。ワシントンを案内役に、野心家の将校クラウス・アドラーと彼のフィアンセで地球学者レナーテ・リヒターが円盤にのって月を出発するのだったが…というストーリー。

アメリカ映画だと思っていたのだが違った。ナチスを題材にした荒唐無稽なコメディをフィンランド、ドイツ、オーストラリアというかつての枢軸国側が作ることに抵抗がなくなったのだな。

ナチスが実は生き延びていて突然襲ってきたらおもしろいんじゃないか?という思いつきを、大真面目に展開した作品。結構壮大な舞台は、それなりのクオリティのCGでしっかりと構築。ナチスのスチームパンクばりのデカイ歯車の機械も、それっぽく表現できている。

さすがにその思いつきだけで引っ張るのは無理があるので、その後ストーリーはカルチャーギャップと現代社会を揶揄する方向に展開する。
相変わらず優生学を是としているナチス科学のせいで、ワシントンは白人化されてしまう。地球では黒人全員が表立って差別されるようなことは無くなり、資本主義社会は揺籃し技術は進歩しまくっている。ナチスの思想など微塵も存在しない。スマホの計算処理能力に驚くものの、宇宙船は普通に飛ばせるという技術的偏り。月にはヘリウム3があるから燃料は無尽蔵という設定なのかもしれないけど、核融合はそう簡単に実現できないだろう。まあ、そのバカらしさがおもしろいのだが。

一方、政治の世界のレベルは過去と変わりない…どころか打算的にレベルダウンしている。ナチを引き合いに出しているものの、茶化すターゲットは現在の国家。アメリカ女性大統領はペイリンそのままで、アメリカの愚作と短絡さを直球で馬鹿にしている。
その馬鹿アメリカは相変わらず、世界の盟主たれと鼻息は荒いものの、政策の失敗による支持率の低下を挽回するために、ナチスの宣伝手法を利用。ナチスという国家社会主義とアメリカ至上主義が世界の覇権を唱える姿で何故か(というか必然的に)マッチするブラックさ。
とはいえ、各国のお国柄を小バカにする程度じゃなくって、もっとブラックでもよかったと思う。ちょっと踏み込みは甘かったかも。日本もちょろっと出てくるが、こっそり他の国と一緒に宇宙戦艦を開発していた場面くらい。宇宙戦艦をつくっていないのはフィンランドだけ…っていうネタが、判るようで判らないけれど。

制作費が安かったのか、さすがに終盤になるとショボくなってくるが、そこはご愛嬌。ラストのワシントンとリヒターとの絡みのシーンにヒネりがあって、スカっと終わることができれば、申し分ない作品だったと思う。
#今の日本はこのレベルの作品を作ることができないと思うな。きっとシリアスな内容の作品になってしまう。

 

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