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公開国:アメリカ
時 間:115分
監 督:ジョン・カーペンター
出 演:カート・ラッセル、ウィルフォード・フリムリー、リチャード・ダイサート、カーダ、ピーター・マロニー、ドナルド・モファット、T・K・カーター、A・ウィルフォード・ブリムリー 他
ノミネート:【1982年/第3回ラジー賞】ワースト音楽賞(エンニオ・モリコーネ)
1982年冬の南極。アメリカ観測基地に一匹の犬を執拗に追う軍用ヘリが近づいてくる。ヘリは犬をライフルで狙撃し続けるが当たらず、ついには基地に着陸し、二人の乗組員は犬を狂ったように追い続ける。しかし、一人の乗組員が手榴弾の扱いを誤りヘリは炎上。もう一人もアメリカ基地のゲーリーによって射殺されてしまう。ヘリの国籍はノルウェーだったが、彼らがなぜ犬を殺そうと必死になっていたのか見当もつかなかった。その後、ノルウェー基地と連絡を試みるが一切応答がない。謎を解明するために、ヘリ・パイロットのマクレディとコッパー医師は、ノルウェー基地に向かったが、そこは、隊員の死体が転がる廃墟となっていた。さらに、何かを取り出した後のような謎の氷塊や、地球上の生き物とは思えない謎の死体があり…というストーリー。
『遊星からの物体X ファーストコンタクト』のラストを1982年製の本作が繋がっていると知り、ある意味答え合わせで鑑賞。あら、マジで繋がってるわ。
ファーストコンタクトのエンドロール中に犬を射殺しようとヘリを飛ばすノルウェー人で終わるのだが、本作の冒頭で犬を追って飛来する二名のノルウェー人がまさにそれ。風貌までぴったり揃えていいる。手榴弾の型も一緒。カート・ラッセル演じるマクレディが、ノルウェー基地を訪れたときの様子は、ファーストコンタクトで散々バトルした後の様子になっている。エイリアンが飛び出した氷塊や建物も一緒。もう、偏執的といってよいほどぴったり同じ。
でも、残念ながら、ファーストコンタクトだけ観ても誰も気付かないんだわ。で、こうやって答え合わせをしても、「ふ~ん。同じに作ったんだね」とそれだけで、新たに何か発見があるわけじゃないんだな。こりゃ、マニアの自己満足でしかないな(笑)。
主人公の考古学者の女性がどうなったのかは不明で、消化不良だしなぁ。1982年版は、ラストの登場した黒人さんが、こいつも乗っ取られてるんじゃね?っていう余韻を残してたんだけど、ファーストコンタクトの方は、雪上車の中で呆然としている主人公に、そういう深読みさせる意図は見えないんだよなぁ…。
まあ、繋がっているっていう件は、そんな所だな。
ゾンビ映画の多くが、大衆社会の投影だったりするが、『遊星からの物体X』は何だろう。それは隣人への不審だな。見た目はいつもどおりの普通の人に見えているけれど、人間なんて中身では何を考えているかはわからない。いつ自分に牙を剥いてくるかわかったもんじゃない…っていう、いささか心が病んでいる気もするけれど、そういう感情。そう感じる場面に人生の上で遭遇しない人はいないだろう。ある意味普遍的な感覚だと思う。
でも、ゾンビ物が量産されるのに比べて、この手の成りすまし系の作品は少ないような気がする。それは、大衆文化、消費社会という大波が、人間個人にとっては抗うことのできないプレッシャーなのだ…という帰結だろう。まさにマルクスがいうところの“疎外”への恐怖というものが、生物としての人間とっては、頭ではわかっていても釈然としないものであり、不安の顕れなのだ。
一方の隣人不審は、あたりまえに日常生活の中で散見されるけれど、より信頼のおける人だけとの付き合いに絞ればいいし、社交辞令的な付き合いでなんとかやり過ごすことは可能なので、潜在意識に潜む恐怖としては弱いということなんだろう。
だから、この成りすまし系の話っていうのは、成りすましている者が、近しい存在であればある程怖い話になるはず。でも、本作は、隊員同士は同僚程度の付き合いで、心が通い合って信頼しきっているというほどではない。それでも、極寒の基地内という狭い空間という設定で、なんとかそれを補おうとしている。
しかし、ファーストコンタクトに至っては、数日前に初めて合流した間柄な上に、まともに言葉も通じない。この設定では、成りすまし系の本当の恐怖は表現しきれないよね。イマイチ感の原因はここにあったな。似せることばかりで、恐怖の根源までは深く追求していなかったってことだろう。
ジョン・カーペンター御大のお仕事に対して、とやかくいうつもりはない。CGのないローテクな特撮だけど、CGよりもよりリアルで、数段気色悪く感じるのだから。30年前の作品の方がすごいと感じられるんだから、文句のつけようがあるまい。
#エンニオ・モリコーネの音楽がラジー賞ノミネートってどういうことやねん。それほど悪くはなかろう。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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