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公開国:日本、オランダ、香港
時 間:119分
監 督:黒沢清
出 演:香川照之、小泉今日子、小柳友、井之脇海、井川遥、津田寛治、児嶋一哉、役所広司 他
受 賞:【2008年/第18回日本映画プロフェッショナル大賞】ベスト10(第2位)
コピー:ボクんち、不協和音。
竜平は平凡なサラリーマンだったが、家族のために懸命に働いてきた。しかし、ある日突然リストラにあい会社をクビになってしまう。プライドの高い竜平は、どうしてもその事実を家族に伝えることができず、毎朝スーツを着て家を出ては、職安や公園などを巡る日々を重ねるだけだった。妻の恵は、夫はもちろん二人の子供からも大事にされず、自分を見失いかけていることねの不安と不満を募らせていた。一方、長男の貴は突然米軍への入隊を決め、次男の健二は給食費をくすねて家族に内緒でピアノ教室へ通うようになる。家族それぞれの心は、散り散りに離れ…というストーリー。
総務部で業務のアウトソーシングをすることはありえる話。でも部署がなくなったからといって辞める必要はなかろう。劇中でも別にクビを言い渡されたわけではなく、部署転換を強いられただけ。あまりに無礼な扱いをされたから、その場で辞めるって啖呵切っちゃったんだよ!って言いたいのかもしれないが、子供が二人いて家のローンもあるオッサンが、そうそう辞める決断をするわけがない。啖呵をきった場面はなかったしそれを臭わせる描写もない。
リストラにあった人が、家族にそれを言えなくて普通にスーツをきて家を出るなんて話は、確かに聞いたことがある。だけど、本作に限って言えば、そこまでひたすらに隠さねばならない理由が見当たらない。仮にすぐに次の仕事が見つかったら、実は転職したんだよ…っていうつもりだったのだろうか。プライドの高い男なんだよって、言いたいのかもしれないが、それにしても程度が過ぎるだろう。
早々にそんなことができないことくらい見え見えなのに。世のサラリーマンお父さん像からかなり離れていると思う。はっきりいってリアリティがない。
こういう展開をみて、頭をよぎったことは、脚本家も監督もまともにサラリーマンをやったことがないんじゃないか…ってこと、そして、取材が足りないんじゃないか…ってこと。そして、日本人の職業観がわかっていないんじゃないか…ってこと。
これから観る人には申し訳ないが、冒頭から40分くらいまでは、はっきりいって、モタモタ、グダグダの繰り返し。身近にありえるテーマなのに、会社員というものをぞんざいに扱われているようで、はっきりいって気分が悪かった。
その他にも、取材不足なんじゃないという点が散見される。グリーンカードも持たない未成年の日本人が米軍に入隊できるものだろうか。親の承諾がどうのこうのって、そんな次元の話なんだろうか。これはどこの並行世界の物語か。それとも私の知識が足りないのか。
どうみても小学生にしか見えない男の子を、黙秘したからといって成年と同じ扱いにするだろうか。指紋をとるだろうか。一般の犯罪者と一緒の拘置部屋に入れるだろうか。生活課など未成年を扱う部門に渡すのではないだろうか。役所や教育委員会など関係各所に連絡するのではないだろうか。“不起訴”という扱いになって放り出されるなどということがありえるだろうか。
はっきり言おう。私はこれらの描写をみて、黒沢清はバカなんだ…と確信してしまった。
しかし、40分を過ぎたところで一変する。小泉今日子演じる母親が、ソファーに寝た状態から上に両手を伸ばし「だれか引っ張って…」と言ったその瞬間から、ストーリーが動き始めるのだ。はっきりいって、この映画は小泉今日子に救われた。彼女の吐き出すのをギリギリで抑えているような演技。これだけが見所である。そして、こんなタイミングで、こんな役に役所広司を使うか…という部分は評価する。
とはいえ、そんな彼女のいい演技も、いくら海の近くの小屋だからって、エンジン音が聞こえないわけないじゃないか…というツッコミと、岸壁から落ちるならまだしも、なだらかな砂浜から海にめがけて車を沈められるわけはないじゃないか…(途中で止まる)というツッコミで台無しになってしまうのだが。
よく事情にわからない外国では、ある程度の評価は得られるかもしれない(というかごまかせるかもしれない)。百歩譲って、これは“トウキョウ”という、この地球上でもないどこかのファンタジー世界のお話だったとしよう。でも、もう一回言おうじゃないか。黒沢清はバカなんだ…と。
そして、最後のピアノのシーン。何が言いたいのか、何を意味するのか、私には何も伝わってこなかった。
決して香川照之の演技は悪いわけではないが、他の作品と錯誤するくらいにどこかで観たような演技で、胸焼けしそうなんだ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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