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公開国:日本
時 間:102分
監 督:板尾創路
出 演:板尾創路、浅野忠信、石原さとみ、前田吟、國村隼、六角精児、津田寛治、根岸季衣、平田満、木村祐一、宮迫博之、矢部太郎、木下ほうか、柄本佑、千代将太、佐野泰臣 他
コピー:俺はいってぇ誰なんだ――
昭和22年。顔中に包帯を巻いた復員兵が、突然寄席に姿を現わす。彼がもっていたお守りから、森乃家天楽師匠の弟子で、将来を期待されながらも兵隊にとられ戦死したとされていた落語家の森乃家うさぎと判明する。しかし、男は一切の記憶を失っており、自分が落語家であったことも、将来を誓い合った師匠の娘・弥生のこともすっかり忘れていた。しかし、師匠も弥生も他の弟子も、うさぎを温かく迎え入れ、記憶を取り戻すために森乃家小鮭という新たな芸名で高座にもあげるのだった。以前の彼の芸風とはまったく異なっていたが、徐々にそれなりの人気が出始めたこと、もう一人の男が戦地から復帰してくる。その男こそ、本物の森乃家うさぎこと岡本太郎。その姿を見て、弥生は激しく動揺するのだったのだが…というストーリー。
連日の板尾創路関連作品。
DVDには、本作の着想を得たという落語『粗忽長屋』が特典映像で収録されている。劇中では板尾創路が演じる男がボソボソと漏らすだけなので、知らない人は始めに観ておくことをお薦めする。
実は私も考えていた…的な野暮なことはあまり言いたくないのだが、冒頭などに出てくる“荒野に富士山”の映像で「おや?」と思ってしまった。というか、『粗忽長屋』を聞いた時に私もそれは考えたことがあるのだ。「俺はいってぇ誰なんだ」って呟く人間が粗忽者かと思いきや、登場人物みんなが粗忽者だったとしたら?一番の馬鹿だと思っていた人間が、実は一番始めに気付いた人間だとしたら?
江戸は実は“穢土”だった…ってこと。しりあり寿の弥次喜多とか、手塚治虫の火の鳥(異形編)に似た世界ということだ。
そして、石原さとみ演じる弥生の「ずっと満月のまま」という台詞で、その気付きは確信に変わる。
最後、森乃うさぎが力車に乗っているシーンで終わるので、全部彼の妄想?っていう解釈もあるけど、それは違うと私は思っている。
実は、みんな思い残したことをしっかりとやりとげている。一門会を開く、兄弟子を超えて真打と期待される、森乃うさぎの名を残す。そうなると、弥生が思い残したことっていうのは、恋仲の男が出征して悶々としていたのを解消すること…っていう身も蓋もないことになっちゃうのだが、そう考えると石原さとみはその役をしっかり演じきっているよね(溺れたうさぎを助けないのも納得)。
顔も全然違うのに(顔が佐清状態ってわけでもないのに)、間違うわけないだろ!というつっこみも、思い残した人だらけのそういう世界だから別に変じゃない…と。
そうなると板尾創路演じる男は、まるで僧侶のような役回りなのだが、女郎屋らしき所の地下を彫り続けるところとドクター中松のくだりについては、ストーリーのどのピースにもはまらず、正直困惑している。でも、デビット・リンチの演出が許容できるならば、板尾創路によるこのような投げっぱなしの謎を許せないということはなかろう。リンチなんてもっとクレイジーだぜ。本作に関して、納得いかないとかつまらないとか文句をいう人が散見されるが、そういう方々はリンチもダメ。要するに、好みがパックリ別れる作品だということである。私はオールOK。
笑顔で死んでいく=成仏。森乃うさぎは戦地で死んでいるが、東京も空襲で死者累々。アジア進出で日本は非道扱いされるが、民間住宅地を直接攻撃するほうが、よっぽど非道だろうが。戦争に負けると、ABCD包囲網で出ざるを得ない状況に追い込まれたにもかかわらず犯罪者あつかいされ、戦時国際法を犯したほうが正当化されるんだぜ!という皮肉まで含まれているとしたら、大したものだか、そこまで考え及んでいるか否かは不明。
私は、『板尾創路の脱獄王』でその才能を高く評価しており、少なくとも松本人志の4倍は映画・脚本の才能があると思っている。次回作に期待。この人は期待されたからといってスカしたりはしないしね。私がもしこんな作品を作ることができたなら、満足で数日身震いしていると思う。板尾創路うらやましい。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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