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公開年:1979年
公開国:日本
時 間:139分
監 督:市川崑
出 演:石坂浩二、佐久間良子、桜田淳子、草刈正雄、ピーター、中井貴惠、河原裕昌、久富惟晴、三条美紀、萩尾みどり、岡本信人、清水紘治、小林昭二、あおい輝彦、加藤武、常田富士男、入江たか子、草笛光子、大滝秀治、三木のり平、小沢栄太郎、白石加代子、林ゆたか、早田文次、山本伸吾、三谷昇、菊地勇一、林一夫、横溝正史 他
昭和26年。数々の事件に関わり心身共に疲れ果てた金田一耕助は、アメリカに渡ろうと決意する。渡米前に昔馴染の老推理作家を訪ねると、パスポート用の写真を撮っていないことを指摘され、近所の本條写真館を紹介される。そこを訪ねた金田一は、経営者の徳兵衛から、近頃、命を狙われているようなので調査してほしいと依頼を受ける。その日の夕方、若い女性が姉の結婚写真の撮影依頼に写真館を訪れる。しかし、その撮影場所には、女性が自殺したという場所でもあったいわくつきの廃墟を指定。写真館の長男・直吉は、依頼に来た少女と瓜二つの花嫁と初見の花婿の写真を撮った。翌晩、また写真を撮って欲しいと昨日の若い女性からの電話が入り、本條父子、弟子の黙太郎、金田一が撮影現場に行くと、天井から花婿の生首が風鈴のように吊るされており…というストーリー。
市川崑祭り継続中(笑)。市川崑版・金田一耕助シリーズの最終5作目。原作でも金田一耕助最後の事件という位置づけの作品。しかし、金田一耕助最後の事件といいながら、本作の舞台は昭和26年。『女王蜂』の舞台って昭和27年だったじゃないか。いきなり前作と矛盾が生じてしており、腰が砕ける。
市川崑による金田一耕助シリーズは打ち止めですよ…という意味と理解しようと考えたが、本作を昭和27年や28年としてはいけない理由が逆に思いつかない。これじゃあ、アメリカから帰ってきたことになっちゃう。
とにかく、これまでの4作とは趣を異にする。市川崑版・金田一耕助シリーズといえば、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』でも見られるレタリング体のフォント表記。スタッフや演者の表記や、『獄門島』ではナレーション的な表記も行われいるが、なんと本作のスタッフ表記は、普通のゴシック体(かろうじて“昭和26年”だけレタリング体だけど)。おまけにジャズ音楽がバックに流れ、これまでの因習深い僻地の雰囲気は一切皆無。さては製作会社が変わったのか?実は市川崑が監督していないんじゃないか?と思うほどである(もちろん変わっていない)。
期待され求められ、それに応えるらめに苦心を重ねた演出を、簡単にマンネリと揶揄された反発ではなかったのかと、個人的は思う。
冒頭と最後には、原作者の横溝正史が長々と登場(おそらく奥様も)。別に重要な役でも何でもない上に、おどろくほどの棒読みの長セリフ。その親族の娘として中井貴恵が出てくるが、相変わらずの稚拙な演技で、そこに彼女を配置するのってやっぱり市川崑は中井貴恵をポンコツと思っていたのかしら…なんて思ってしまう。
で、これまでの作品だと、ダラダラと長い家系図ばかりで判りにくいこと極まりない原作を、できるだけすっきり腑に落ちるように苦心していた様子が見られたのだが、本作ではそれすら完全放棄している感じ。草刈正雄演じる黙太郎に、劇中で「わかりにくい」と言わしめる始末。実際、これまで以上に人物相関図が複雑で、正直に言うと見終わっても良く把握できていない。由香利と小雪が腹違いでそっくりという以外には、さっぱり頭に入ってこない(これでも、原作版よりすっきりさせてはいるらしい)。
『女王蜂』で消えた、腹違いとか近親相姦とか首ちょんぱなどのギミックも復活。さらに『犬神家の一族』で佐清を演じたあおい輝彦はもちろん、常田富士男、大滝秀治、三木のり平、小林昭二などの常連陣を全員召集。加藤武演じる刑事の粋なラストも健在。完全に卒業のお祭り作品と化している。
これは、市川崑の「もうこれで勘弁してください」って思いと「いままでありがとう」っていう相反する気持ちが入り混じった作品なんだろう。金田一耕助感謝祭の最後の打ち上げ花火なんだな…と。そういう意味で、“奇作”である。
ただ、常連組で岸恵子と坂口良子は不在。単にスケジュールが合わなかっただけかもしれないが、この2名だけは思い入れが強くて、あえて出さなかったのではないかな…なんて個人的には思っている。
特段の美しさを放っている桜田淳子にも目が行くが、草刈正雄も興味深い。金田一と並列で狂言回しを演じているのだが、もしかすると、本作でいい味を出せば、別の推理サスペンスシリーズで主役を張らせようという映画会社の思いがあったのかもしれない。
しかし、つんのめった台詞回しが、せっかく耽溺している雰囲気を壊してしまい、とてもポスト石坂浩二が務まる器ではないことを証明してしまっている。エピローグで、何か仕事がないか横溝正史にお願いしているのだが、もちろん無い(笑)。
これは前4作の鑑賞を完走した人だけの、オマケ作品である。これだけを観て市川崑版・金田一耕助シリーズを評価することがないように願う。
負けるな日本
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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