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image1419.png公開年:1954年 
公開国:アメリカ
時 間:114分
監 督:アルフレッド・ヒッチコック
出 演:ジェームズ・スチュワート、グレイス・ケリー、レイモンド・バー、セルマ・リッター、ウェンデル・コーリイ 他
受 賞:【1954年/第20回NY批評家協会賞】女優賞(グレイス・ケリー)
【1997年/アメリカ国立フィルム登録簿】新規登録作品



カメラマンのジェフは足を骨折し、ニューヨークの自宅アパートで療養中。今の楽しみは、窓から見える向いのアパートの住人たちの生活を眺める事。しかし、その内の一室で、セールスマンの夫と激しい口論をしていた病床の妻の姿が見えなくなった事に気付く。その夫の様子を観察するうちに、女房を殺したのではないかと思うに至り、恋人のリザと看護人ステラを巻き込んで調査を進めるのだが…というストーリー。

映画史に輝く名作中の名作なのだろうが、またもや未見なワタシ。映画ファンです…というのが憚られるところなのだが、正直なところヒチコック作品自体をほとんど観ていない。これまで、あまり食指が動かなかったのだ。窓から裏の部屋を眺めていると殺人が…という程度の予備知識しかなくって、もちろん、オチがどういうものなのかも、まったく知らず。

盛り上げポイントと、オチ前の盛り上げのペース配分とか、今の映画では、ちょっと見られない構成。人によっては、飽きる要因になるのかもしれないが、私はそのおかげで、どういうオチになるものやら全く予想がつかず楽むことができた。
基本的に映画って“覗く”ことだからねぇ。その基本に立った視点は、実に慧眼といえる。そしてカメラワークも基本的に部屋から覗いているアングルだけ。カメラアングルが、映画全体の空気を作っている稀有な例で、実験映画といってよいのかもしれない。とても天才的なヒラメキの発露を感じる。

『サイコ』はほぼそのままリメイクされたが、本作の場合はそうはいかないだろう。
パニック障害で部屋から出られない男の楽しみは、ネットでベンチャー警備会社のサーバに不正進入し、そこに接続管理されたたくさんのカメラの映像を見ること。しかしそのうちの一つで……って感じ?いやあ、なんか聞いたことがあるような内容。本作は、ヒチコック原作じゃないんだけど、形にしちゃったもん勝ちってことなんだね。その程度のリメイク具合じゃ、ぜんぜん納得してもらえないくらい、ユニーク且つ完成度の高いプロットってこと。

もし、本作の内容を(すくなくともオチ)を知らなくて、昨今のサスペンスものに飽き飽きしている人は、是非観てはどうだろう。映像の古さを差し引いても、なかなか新鮮な心持ちにさせてくれる作品。軽くお薦めする。

#グレイス・ケリーの美しさを絶賛する人が多いのだが、ワタシはそれほどでも…。

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image0061.png公開年:2006年 
公開国:アメリカ
時 間:85分
監 督:サイモン・ブランド
出 演:ジム・カヴィーゼル、ジェームズ・カヴィーゼル、グレッグ・キニア、ブリジット・モイナハン、ジョー・パントリアーノ、バリー・ペッパー、ジム・カヴィーゼル 他
コピー:俺が誰なら、生き抜ける記憶を失った5人の男たち──誰が誘拐犯で、誰が人質なのか?



工場で目が覚めた5人の男たちは、全員記憶を失っていた。わずかな手がかりから2人が誘拐された人質で、残る3人が犯人であるらしい。誰もが疑心暗鬼になる中、誘拐犯のボスから日没までに戻ってくるという電話が。お互いの正体がわからないまま、とりあえず協力して脱出を試みるが、各々、曖昧ながらも断片的な記憶が蘇り、彼らの混乱に拍車が掛かっていく…というストーリー。

いきなりネタバレ

『ソウ』と『メメント』と『レザボアドッグス』を足して7で割ったような作品。観た人の9割9分が冒頭で『ソウ』を思い出し、あくまでシャレなのかと思いきや普通に始まるという、こっちが赤面してしまうような脚本。
密閉された空間でガスを嗅いでしまい全員の記憶がなくなるという、都合の良いガスありきのお話なのだが、まあ、いくらなんでもそれなりに説得力のある説明があるのだろうと思っていたら、そういうガスが都合よくありましたという、そのままの内容で、さらに赤面。
なんとなく強引に2対3の構図らしいという設定になって、しばらくは、誰が2で誰が3なのか…と、断片的なヒントが判るたびに、めまぐるしく体制が変わるおもしろさが展開されるのだろうとおもったら、小競り合いはするものの結局みんなで協力して脱出を試みちゃうという展開で、またまた赤面。

さすがにこれじゃ成立しないと思ったのか、ボスが到着してからは、自分が悪者なのか良い者なのかという軸にシフト。最後までそれが続く。
確かに最後の展開は読めなかったことは認めるけれど、ここまでふらふらしまくると、実は宇宙人でしたって言われても、ああそうですかって言いたくなるレベル。こういう話は、ラストに向けて集約しつつ骨太になっていかないとだめだと思うんだけどな。

都合のよいガスもそうなんだけど、コインロッカーの底に穴なんて仕掛けとか、電話線を切っちゃうとか、設定の構図を守るために無理な(というか陳腐な)展開のオンパレードになってる。実はわたし、社長と潜入捜査官と、手錠の人の正体はわかったけど、最後になっても残りの二人はぼんやりしかわからない状態。もうちょっと肝心の人間模様とか謎解きをしっかり描いてほしかった。

駄作というか非常に未熟な作品である。キャリアのある脚本家のヘルプが必要だったのではなかろうか。この監督も脚本家も次のチャンスが与えられるかどうか微妙である。お薦めはもちろんしない。

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image0293.png公開年:2003年 
公開国:アメリカ
時 間:131分
監 督:アラン・パーカー
出 演:ケヴィン・スペイシー、ケイト・ウィンスレット、ローラ・リニー、ガブリエル・マン、マット・クレイヴン 他
コピー:あなたはこの結末に納得できますか…




テキサス州。哲学科の大学教授デビッド・ゲイルは、良き家庭人であり、死刑制度反対運動の活動家だったが、現在は活動団体の同僚女性に対するレイプ殺害の罪で死刑が確定し収監中。彼は死刑執行直前になり、女性記者ビッツィーを指名し、多額の報酬と引き替えに独占インタビューを許可する。はじめはゲイルの有罪を確信していたビッツィーだったが、インタビューを重ねるうちに、冤罪を疑うようになり…というストーリー。

二度目の鑑賞。当時、まったく注目していなかった…というか、本作のことを全く知らなくって、昔やってた深夜番組(矢口ひとり)で、矢口真里が紹介したの聞いて借りて観た始末。アイドルタレントから情報を得るとは、映画の対するワタシのアンテナ、低かったなぁ。

ケヴィン・スペイシー出演作品では、『セブン』『ユージュアル・サスペクツ』『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』の3本は、“冷静な狂気”っていう共通点で大好きなのだ。恨みや怒りにまかせたバーサーカー(狂戦士)モードじゃなくって、着々と遂行するリアルな悪魔の所業的な感じが良い。

自分の信念のために、ここまで自己犠牲できるか?って疑問を呈する人がいるが、別に不自然でもなんでもない。自己犠牲とはいえども自分の信念のために自分の生命を使っているだけ(もはや他人のためではない)。それに、白血病で余命幾許も無い人と、家族も職も信頼も失って社会的価値が喪失し生きる意味を失った人間にとって、自分の信念のために身を賭すことくらい何てことはないだろう。

また、「冤罪の可能性があるから死刑はやめよう」なんて方向になるなんて有り得ないという人もいるが、それは民主主義システムに対する見識不足である。
死刑執行のためには州知事がサインするわけだが、なぜ州知事がサインする仕組みになっているかというと、行政の誤りによる冤罪を水際で防止するため。最後の最後に住民が選出した人間が判断を下すということ。その判断基準は、被告と検察の意見を冷静に判断して…ということではなく、完全なデュー・プロセスが求められる。つまり、検察側に一切の落ち度が無いことが条件で、その間の捜査に微塵の瑕疵があっても、その利益は被告のものとなるのが原則。つまり、まず犯人であることが明々白々だったとしても、証拠の採取において手順を逸脱している場合は、その証拠は証拠とみなされず、場合によってば無罪となるわけ。無実じゃないけど無罪ってこと。これが大原則である。
日本人はよっぽど行政に信頼があるのか(“お神”っていくらいだからね)、このデュー・プロセスが軽視されていて、多少証拠に問題があっても証拠として採用されてしまう。だから自白だけで死刑が確定されて冤罪が多々発生するのだけれど
でも、テキサス州の場合は、はじめっから知事はそういうチェック機関であろうという意思すらなく、死刑囚は殺すべきという考え方なわけで、そこが問題なわけ。

ただ、話をややこしくしているのは、死刑制度反対運動家たちが、自分の行動に自己矛盾があるのに気付いていないことである。
本来あるべき行動とは何かというと、まず、知事に現行法制上のあるべき視点で職務遂行することを求め(きちんとチェックしてね…ということ)、死刑廃止云々はその次の段階にすべきことである。しかし彼らはそうはできない。日々執行されていく死刑に対して、冷静になれないから。あげくのはてに、知事と討論しても、死刑制度に犯罪抑止力はないとかなんとか理由を言って、知事に死刑執行を止めさせようとする。基本的に知事は法律を遂行しているにすぎないわけで、その知事に死刑をさせないように脅しをかけて仕向けるのは、それはそれで民主主義システムからの逸脱。まず、死刑制度を廃止する立法がなされるように、立法府(議員)なり有権者なりに理解してもらうことに注力すべきなのだ。本来あるべき姿を求めていながら、脱法を求めているという矛盾。死刑廃止の問題が一向に進まないのは、これも一因である。
日本でもこの現象は発生していて、死刑廃止論者の弁護士が姑息な手段で司法の運営を阻害したり、死刑廃止論者の誹りをさけるために法務大臣が死刑執行のサインをしない例など多々ある。法務大臣が法律に決められた期日に死刑を執行しないのは、法律違反なのに平気で法を破る。大臣が法律を破るなんて法治国家として有り得ない行為なのだが、かといって誰も指摘しないばかりか、死刑執行にサインすると悪魔のように報道される。かといって死刑廃止が選挙の論点になったことすらない。日本も変な国である。
まあ、極論から言えば死刑を廃止しようがしまいがあまり状況は変わらないとは思う。死刑になることを前提に自暴自棄に犯罪を犯すケースも増えるだろうし、だからといって最高刑を無期懲役にしたところで、厭世傾向の人間が社会から隔離されたいがために犯罪を犯す場合も出てくるだろうし、多分きりがないだろう(なんか物理の世界の不確定性原理みたい)。個人的には死刑執行官の負担軽減のために無期刑を最高刑にしたいところだが(日本の死刑執行プロセスでは、心を病んでしまう執行官が多いことだろう)。

閑話休題。以下、若干ネタバレ。

で、はっきりと本作内で語られているわけではないのでが、私は次のような感じだったと考える。
ゲイルとコンスタンスは、自身の状況が切羽詰った段階になってはじめて真の問題に気付いたんだろう。枝葉の問題は捨象されて、根本原則である「冤罪の可能性」とその恐ろしさを国民に身をもって理解させるべきであると。いままで色んな方向に発散していた行動が、この一点に集約するのだがら、それは実に強烈かつ効果的な行動になる。そこに“死を厭わない”という冷静な狂気が加わるのだがら、さらに…である。

ゲイルの執行に間に合ったらどうなっちゃったのだろう?とか、ビッツィーが最後のビデオを公開したらどうなる?とか、それらがシナリオ上の穴だという人もいるのだが、それは誤り。本作のシナリオがすごいのは、仮にどっちにころがっても、目的は果たされるということである。国民は“人間は誤りを犯す”ということを思い知らされたわけだが、もし、これが狂言だと知っても、“人間は騙される”ということを痛感する。いずれにせよ、取り返しのつかない死刑はもっと慎重になるべきだと思うはずだから(必ずしも死刑廃止になるとは限らないけれど)。
#だから、本作のコピーは的外れだと私は思うよ。

ちなみに、最後の手紙は、ゲイルの賢さを表現していて好きな演出。2つの効果があるね。一つは父親はレイプ犯などではなかったという息子へのメッセージ。そして、夫を信じることができず、死に追いやることに繋がったかもしれないという負い目を一生背負って生きさせる、という妻への究極的な復讐。たまりませんなぁ。
#オペラの伏線も好き。

まあ、観終わってみれば、主筋はすごくシンプルなストーリー(死刑廃止のために考えたある計画ってだけ)だと気付くのだが、周りの味付けがよく練られていて実に秀逸なのだ。まったく無受賞・無ノミネートなのだが、こんなに無視されるほど出来の悪い作品では決してない。強くお薦めする。

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image1024.png公開年:1997年 
公開国:アメリカ
時 間:126分
監 督:マイク・ニューウェル
出 演:アル・パチーノ、ジョニー・デップ、ジョニー・デップ、マイケル・マドセン、ブルーノ・カービー 他
ノミネート:【1997年/第70回アカデミー賞】脚色賞(ポール・アタナシオ)




NYのマフィア組織に潜入中のFBI捜査官ジョー。ドニー・ブラスコという名の宝石商として街に潜伏した彼は、組織の構成員であるレフティとの接触に成功。息子のように可愛がられるようになり、次第に危険な世界へと引き込まれていく。レフティも、ドニーへマフィアとしての夢を託し、再び人生を掛けようとするのだが…というストーリー。

冒頭に実話であるとテロップが。言わないと荒唐無稽と思われちゃうような内容なのかと思いきや、逆にとてもスケールの小さい話だった。純粋なフィクションとして見始めたら、ショボく感じてしまうから、それを防ぐためのテロップということなのか。エンドロール前に、この潜入捜査のおかげでこれだけ検挙できたんですよ…っていうテロップも入るんだけど、本作の中で、そんなに重要な証拠が適切に集められたように見えないのも、演出的に拙いところ。そう、ドニーの潜入捜査が、本当に重要なものに見えない点(いつ引き揚げてもたいした問題じゃない気がするの)が、いまいちノリ切れない一因。まあ、その観点でいうと、実際にドニーがレフティにあんな風に同情したかどうかも、フィクションくさいんだよね。あんなにどっぷり介入した(というか一線を越えてる)場合、得られた証拠が採用される確率は低いだろうから。

他にも眉唾な部分も多々ある。ジョニー・デップの奥さんのくだりとかもそう。はじめ、FBIの潜入捜査官であることも秘密にしているのかとおもったら、そうでもないんだよね。男目線・女目線で意見は分かれるのかもしれないけど、なんとなくそれなりに事情は把握しているのに、あんなゴネかたされたら、夫としてはたまったもんじゃない。本当かいな?って感じ(奥さんが一番の悪役に見えちゃったよ)。

さらに、奇しくも似たようなタイトルの『フェイクシティ ある男のルール』と同じで、感情移入しにくい主人公のため、どうしても醒めた目で鑑賞せざるをえない点も、よろしくない。正体がバレるバレないっていう部分にだけ、意識がいっている間はいいんだけど、ちょっと冷静になっちゃうと、アラが見えてくる。

それでも鑑賞に堪えられるのは、アル・パチーノの演技のおかげか。彼の演技が本作の魅力の7割を占めるといっていい。とにかく、自分に与えられた以上の仕事はしたでしょう。送りバントできっちり送って且つ一塁セーフ。守備では隠しダマを披露して、最終打席では、走者一掃のヒット。だけど、三塁を狙って刺されてアウト。でもお立ち台。そんな感じ(なんだそりゃ)。

デップ&パチーノということで、ハードルさえ上げなければ、鑑賞に堪えうるレベルなので、過度の期待をしないことを条件にお薦めする。

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image1441.png公開年:2008年
公開国:アメリカ
時 間:109分
監 督:デヴィッド・エアー
出 演:キアヌ・リーヴス、フォレスト・ウィッテカー、ヒュー・ローリー、クリス・エヴァンス、コモン、ザ・ゲーム、マルタ・イガレータ、ナオミ・ハリス、ジェイ・モーア、ジョン・コーベット、アマウリー・ノラスコ、テリー・クルーズ、セドリック・ジ・エンターテイナー、ノエル・グーリーエミー、マイケル・モンクス、クリー・スローン 他
コピー:最期に頼れるのは、魂か、弾丸か


強引な手法で悪人に制裁を加えるロス市警の刑事ラドロー。その脱法的な手法に同僚のせいで同僚刑事からも疎まれていたが、上司のワンダーは彼を庇い続ける。ある日、元相棒ワシントンが、ラドローを内部調査部に密告しようといると聞き、ワシントンを問い詰めようと近づくと、偶然にも強盗事件に巻き込まれ、ワシントンは銃殺されてしまう。自分が容疑者になりかねない状況になったが、ワンダーの指示で証拠を隠滅するが、かといって犯人を野放しにすることができない彼は、独自で犯人探しを始めるが…というストーリー。

フォレスト・ウィッテカーは、『ラストキング・オブ・スコットランド』に続く作品なのだが、なんでこんなに似た感じの役柄を続けちゃうのか。ショーン・ペンとは仕事に対する姿勢がまったく違うようで、自分が演じる役柄に頓着がない模様。いかがなものかね。おまけに、本作の役は、ウィッテカーにはマッチしていないときている。

さらに、根本的に映画のセンスに著しく欠けるな…と思う点がある。まず、主人公は脱法的な行動をするわけだが、その行為がいたしかたないと思えるような説明はなされない。だから主人公として感情移入しにくいキャラなのだが、そのくせ、アングル的には彼の一人称目線の画面が多いので、無理やり主人公と一緒に脱法行為をさせられている気分になってきて、イライラしてくる。
本作の中に“事情がわかっていないのはラドローだけ”というセリフのがある。要するに、状況がわかっていない主人公がその謎解きをしていく話になっているから、一人称目線になってしまうのはわからないではないのだが、この場合は、三人称目線(まるで幽霊のように場面を俯瞰で見ている感じ)でつくるべきなのだ。製作側にその違和感に気付くセンスがない。

ハードな演出が繰り返されながらも、展開的にはふわふわした感じが続くのだが、ディスカントと二人で攻め込むあたりで急にテイストが変わってしまう。あまりに不自然なので、クレジットを観てみると脚本家が3人。別に複数の脚本家がいることはめずらしくもないが、ここまでシナリオの統一感が取れていないのもめずらしい。まとめ役が全然機能していない。
やはし、クライムサスペンスにしたいのかアクションにしたいのか、軸足が定まっていないのが、うまくいってない一番の原因だろう。

最も致命的なのは、30分程度で誰が犯人かわかってしまうこと。内容からみても、各役者のグレードの差からみても、予想がついてしまう。わかってしまった後も、さらに延々と犯人さがしが継続されるわけで、それに付き合い続けるのも、なかなかつらい。
さらに、ラストは私の大嫌いなニヒリズム落ち。結局、世の中、何をやっても無駄なんだよ…って、そういうことをわざわざ一本の映画にしようとする神経がわからない(前も何かで言ったと思うけど)。斜に構えて、格好をつけたつもりかもしれないが、この落ちを考えた脚本家は、とっととエンターテイメントの世界からご退場願いたい。

本作はわざわざ観る価値なし。お薦めしない。だれかが無料で貸してくれて、本当に何にもすることがない時だけ観ればいい。そうすれば、まあ、こんなもんかな…くらいで被害は最小限でくい止められるかも。

#全体的にいまいちでありながらも、意外に本作で得をしたのキアヌかもしれない。けっこう骨太の役もイケるな…という印象は与えられたので。今後、こういう役柄のオファーが増えるかもしれない。

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image1445.png公開年:2009年 
公開国:アメリカ、ドイツ、イギリス
時 間:118分  
監 督:トム・ティクヴァ
出 演:クライヴ・オーウェン、ナオミ・ワッツ、アーミン・ミューラー=スタール、ブライアン・F・オバーン、ウルリク・トムセン、パトリック・バラディ、ミシェル・ヴォレッティ、ジェイ・ヴィラーズ、ルカ・バルバレスキー、ジャック・マクギー、ジェームズ・レブホーン、レミー・オーベルジョノワ、ダーレン・ペティー、タイ・ジョーンズ、ローラン・スピルヴォーゲル、ベン・ウィショー 他
コピー:真実さえ、取引されるのか

インターポール捜査官サリンジャーは、ニューヨーク検事局のエレノアと共に、不審な資金の流れがあるとの極秘情報を元に、欧州拠点の国際銀行IBBCの捜査に当たっていた。世界各地を飛び回り、内部告発者や情報提供者と接触しながらIBBCの実態を探っていくが、いずれも行く先々で証人・証拠が殺され、捜査は行き詰る。巨悪を倒すためにサリンジャーは覚悟を決めて、ある行動にでるが…というストーリー。

『パフューム ある人殺しの物語』の監督ということで期待してレンタル。

昨今の金融危機の原因をつくった国際金融システムの問題点を浮き彫りにする…そんな作品かな?とタイトルから判断して、頭がお勉強モードになっていたのだが、全然違う内容だった。サスペンスというか、どちらかといえばアクションものであった。
お勉強になったのは、インターポールには逮捕権がないってことだけかな(銭形警部はルパンを逮捕できないのね(笑))。

ストーリー展開も、あまり好きではない。クライヴ・オーウェンの個性が強烈なので、スタンドプレーでグイグイいくのかと思いきや、途中までずっと団体プレー。キャラにマッチしていない。製作側もそれに気付いたのか、最後の方になって「おまえは手を引け」みたいなもっともらしい理由で仲間を排除して、自分だけで行動する展開に(何やらとってつけ…)。
最後は、世の中から巨悪が無くなることはなく、どんなに正義を振りかざしても無駄無駄…という感じで終わる。完全にニヒリストの考え方。そんなことを言うくらいなら、映画にして発表する必要なんかあるのか?といいたくなったが皆さんはどう思われるか。
この“どうせ…”というニヒリズムが根底にあると、物語というものは絶対に面白くなるはずがない、というのが私の自論。映画というのは、多かれ少なかれ他者を愉しませるのが目的のはず。散々話しを広げておいて、「でも意味はないんだけどね…」なんて頭がおかしい人間のロジックである。この脚本家は本作以外に手掛けていないようだが、エンターテイメントの世界から足を洗ったほうがいいのではないか。

クライヴ・オーウェンは、『シューテム・アップ』『インサイド・マン』『トゥモロー・ワールド』『キング・アーサー』などハードな役柄が多い人。個人的な意見だけど、笑っちゃいけない役者だと思っている。カメラ目線でニヤっとされたりすると、なにか品がないというかイヤらしい感じがする。もうすでにハリウッドではトップスターといってもよいのかもしれないけれど、どうも最後の一線が突破できていない気がするのは、その辺の幅の無さのせいかもしれない(完全に私見だが)。
幸い(?)本作では、一度もニヤリとすることなく全編苦虫を噛んだような顔で、かっこよくまとまっているのだが。

観終わって思ったのは、『パフューム ある人殺しの物語』がおもしろかったのは、原作と脚本のおかげで監督の力ではなかったのかな…と。よほど何も観るものがなければ止めはしないけれど、サスペンスとしては深さがないし、アクションとしてもヒネリがない。二流に二流が加わって三流になった作品だと思うのでお薦めはしないが、人によっては評価が分かれる作品なのかな…とも思うので、駄作とまではいわない。
 

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image0628.png公開年:2006年
公開国:アメリカ
時 間:100分  
監 督:リチャード・リンクレイター
出 演:キアヌ・リーブス、ロバート・ダウニー・Jr、ウディ・ハレルソン、ウィノナ・ライダー、ロリー・コクレイン 他
コピー:オレを監視<スキャナー>しているオレがいる。




近未来のアメリカでは、“物質D”と呼ばれるドラッグが蔓延。覆面麻薬捜査官のボブは、物質Dの供給源を探るため自らジャンキーとなり潜入操作しているが、捜査官の正体は完全に秘密扱いのため、捜査対象組織の中の誰がボブなのか、上司や同僚すらもわからない。そんな中、ジャンキーとしてのボブが密告されてしまい、彼は自らを監視するハメになってしまう。さらに、捜査官として疑われないように自ら摂取していた“物質D”が脳を侵しはじめ、彼は自らのアイデンティティを次第に見失っていく…というストーリー。

鑑賞は2回目。以前は返却期限ギリギリだったため、しっかり観られなかった上に、元々、このデジタル・ペインティング手法はどんなもんか…という興味だけで借りていたので、内容をあまり注視していなかった。

おとり捜査のために摂取した麻薬に加え、二重生活のストレスで本当に自分を見失ってしまう過程が、この映画の見所だ。ネタバレなのではっきりは言わないが、騙し騙されの展開の末に、ボブはおとり捜査の裏に気付く。それで全てが終わったように見えるが、最後にもう一枚騙しが加わる(本当はこれから…ってこと)。原作は、さぞや面白いんだろうな…と感じさせてくれる。

この展開はは大変よろしいのだが、演出方法がよろしくない。本作では、結局この物質D流通の黒幕が誰なのかはまったく判らない。ボブがどうなるかもわからない。示唆すらされない。でも、この演出だと、「どうなるの?」と強く期待してしまう。あくまで騙し騙されの過程を楽しむことをメインにしたいなら、変に期待させるようなラストの展開は好ましくない。
続編があるわけでもなし、見ている側は、ひたすらモヤモヤと知りたい欲望を抑えなければいけない。手の届かない異性に恋しそうになったら、無意識に人は忘れようとするだろう。それと同じように、観終った後、無意識に本作のことを深く考えるのをやめよう…という気になっていたのは私だけだろうか。悪い内容ではないのに、話題にならないのは、このせいだと、私は思っているが…。

目玉の“ロトスコープ”というデジタル・ペインティングだが、よい効果を生んでいるとは言いがたい。
まず、(予想だが)撮影した画像をコンピュータに取り込んで、その画像の陰影を階層化して(1フレームごとに階層化しているのかはわからないが)着色範囲を決定。その後、1フレームごとに着色しているんだろう。まさに力技。着色自体は高い芸術性も技術も不要なので、大量のバイトを総動員したに違いない(守秘義務契約だけでもたいへんだろうから、美術とかコンピュータ専攻の学生と、学部単位でまるごと契約したりしたのかもしれないね)。

で、このアートのように見せかけて実際は芸術性など介在しない工程の結果として、半分以上のシーンは、実写となんら変わりが無い。結局は、覆面スーツとドラッグの影響により出現した虫以外に、この技術を用いた意味は薄い。ようするに費用対効果が小さいのだ。もっと、実写感が薄れるような効果が得られれば、“独特の世界観”と高く評価されていただろうが。案外、日本人がやればおもしろいものになっていたと思うので、ダメ元でだれかやってみてもいいかも。

このストーリー自体はものすごくおもしろいので、別の手法で再映画化してもらいたい。ふつうのCGでいい。けっこうモヤモヤするので、お薦めはなしない。わざわざ観る必要はないかな。

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image0363.png公開年:1970年 
公開国:フランス
時 間:103分  
監 督:ジョエル・セリア
出 演:カトリーヌ・ヴァジュネール、ジャンヌ・グーピル、ベルナール・デラン、ミシェル・ロバン、ジェラール・ダリュー、マルク・デュディコール、ヴェロニク・シルヴェール 他
コピー:地獄でも、天国でもいい、未知の世界が見たいの!悪の楽しさにしびれ 罪を生きがいにし 15才の少女ふたりは 身体に火をつけた


修道院・寄宿学校に通うアンヌとロールは、修道院での禁断の書に耽溺し、消燈の時間が来ると懐中電灯の光で悪の日記を綴る。ふたりはバカンスを利用し、牧童を誘惑したり、庭番の小鳥を殺害したり、思うがままに残酷な行為を繰り返していくが、二人の行為はエスカレートし…というストーリー。

フランスでは、その反宗教的で淫靡な内容から上映禁止となって、アメリカと日本とのみで上映されたとのことで、この宣伝文句に興味を抱いてDVDを借りてみた。

1970年の作品なので、少女のヌードだとか小動物殺しだとかの描写(当時のことだから実際に殺してるんじゃなろうか)があって、たしかに問題のある作品だと思うのだが、それだけの理由で上映禁止になるか?それよりも、なんとも言えない吐き気がするような不快感、原因不明の邪悪さが漂うのだが、明確な理由はわからないけれど、無理やりにでも適当な理由をみつけて封印してしまいたい気持ちになったのでは無かろうか。

作中の彼女たちの行動が徐々にエスカレートする様子、それも小動物虐待や弱者攻撃、小さなな窃盗や破壊攻撃に始まって放火…と、この流れは、シリアルキラーが生まれる過程に極めて近いことが興味深く、当時にしてはツボにハマッたというか、妙にリアルな作品だなと思い、色々調べてみると、さもありなん。

この作品は、アン・ペリーというイギリスの女性の小説家(現在でも活躍しているらしい)が、子供の時に実際に犯した殺人事件がモチーフになっているらしい。ピーター・ジャクソンが『乙女の祈り』という映画にしているんだって。知らなかった(借りてみようかな)。そういえば、シャーリーズ・セロン主演の『モンスター』も、レズビアン要素があったな(こちらも実話ベース)。この共通点は興味深い。

そう考えると、反カトリック要素なんかは、表向きの目くらましにしか思えない。決して娯楽作品もホラー作品でもなく、人間の邪悪さを表現した映画としては、白眉の作品だと思う。ただし、実際に一線を越えてしまってから、その邪悪な空気は消え去って、常軌のレールの上を歩き始める。おそらく、それは、モチーフになった事件とは異なる、要するに完全なる作り話になるからではなかろうか。かろうじて最後の激しい演出で踏みとどまっているが(コピーのとおりなので伏せる必要もないのだが)、あやうく世紀の珍作になりかけだったといえる。

多かれ少なかれヤラれてしまうので、元気なときに観るべし。

拍手[0回]

image0493.png公開年:2003年 
公開国:アメリカ、カナダ
時 間:119分  
監 督:マイク・フィギス
出 演:デニス・クエイド、シャロン・ストーン、スティーヴン・ドーフ、ジュリエット・ルイス、クリステン・スチュワート、クリストファー・プラマー、ライアン・ウィルソン、ダナ・エスケルソン、サイモン・レイノルズ、ピーター・アウターブリッジ 他




ニューヨークで暮らす放送作家のクーパーとその家族は、ある日、息子が交通事故に遭いそうになったことをきっかけに、安全な田舎へ引っ越すことを決意。銀行が抵当流しにした“コールド・クリーク”邸という屋敷を購入する。そこでクーパーは、子供が書いたと思われる“悪魔のノド”という奇妙な詩を発見。さらに、突然訪れてきた前の住人のデイルを家の修繕で雇うことに。そんな中、敷地内のあちこちに蛇が現われるようになり、クーパーはデイルを疑うが…というストーリー。

ヘタクソな落語家が、したり顔でもったいぶって噺をしているのを聞かされている感じで、観ていて腹がたってくる。引っ越してー、新しい家には何かがあるんだろうなー、ってのがバレバレで読めるのに、だらだらとこねくり回す。ストーリーの主筋に到達するまでがうざったくてうざったくて。

タイトルからして何やらホラーっぽいのだが、全然違う(もう、ネタバレになってもどうでもいいや。こんな作品)。単に殺人鬼に目をつけられた不運な人の話じゃん。シャロン・ストーンである意味もよくわかんないし,
(彼女の吹替え音声まで変な感じだし)、ジュリエット・ルイスはマロリーそのままんまで気持ち悪いし。

どうしようもなくつまらないと思って、調べてみたら、本作は日本未公開作品だった。そりゃそうか。こんな作品を買う配給会社なんかないよな…。本気でお薦めしない。よく漫画の表現で、ふきだしの中に線がぎじゃぐじゃぐじゃーってのあるでしょ。本作を観た人の頭の上には、まちがいなく、そのふきだしが登場すること間違いなし。ほんと、しっかりしてほしいッス。

#なにこのダサいラスト。

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image0348.png公開年:1972年 
公開国:アメリカ
時 間:123分  
監 督:サム・ペキンパー
出 演:スティーブ・マックィーン、アリ・マッグロー、ベン・ジョンソン、アル・レッティエリ、サリー・ストラザース、スリム・ピケンズ、ボー・ホプキンス、リチャード・ブライト、ジャック・ドッドソン、ダブ・テイラー、ロイ・ジェンソン、ジョン・ブリソン 他
コピー:マックイーン+ペキンパー…… この映画界最大の2人が 全世界に叩きつける 血のバイオレンス・アクション!


銀行強盗の罪で10年の刑に服するマッコイは、4年間服役したところで突然釈放される。実は、この釈放は、地方政界の実力者ベニヨンが、町銀行を襲い奪った金を山分けすることを条件に仮釈放に手心を加えると持ちかけたものだった…というストーリー。

井筒監督の書籍で本作が紹介されていたので、いつか観ようとメモ帳に書いていたのだが、100円レンタルキャンペーン中だったので、借りてみた。ペキンパー監督の作品を観るのは初めてである。コピーで言うほど、“血のバイオレンス”ではないかな。後半は犯罪ロードムービー的な感じに。

説明的なシーンや演出が無く、ちょっと投げっぱなしの感はある。しかし、不徳な疾走感みたいなもので貫かれていて、乾いた砂漠を転がる空き缶みたいな彼らの逃走劇から、最後まで目が話せない。
必要以上に説明される映画ほど、興醒めするものはない。昨今、観客に判って貰おう貰おうと、それがセオリーであるかのように一生懸命説明するものが多くて、若干バカにされている気になることもある。“これ何だ?どういう意味?”と考えさせるのも一つのおもしろさだと思うし、映画に集中させる有効な手法だ。そういう意味で、本作は、実にうまいというか丁度良いと思う。
観進めていくと、不思議な既視感があったのだが、1980年前後の日本映画の雰囲気に似ているかも。もしかすると、日本の映画監督達に影響を及ぼしているのかもね。

まったく受賞歴やノミネートが無いのが実に不思議。世の中の評価もあまり高くないのだが、なぜだろう。展開が行き当たりばったりに見えて、練られていないと感じる人がいるかも…。でも、謗るほどでは無かろう。私は結構評価したい。これを機会に『ワイルドバンチ』『わらの犬』を観てみようと思う。最近のヘタなサスペンスものを観るくらいなら、本作を観ることをお薦めする。昨日の『コラテラル』と本作とどっちを観たほうがいい?と聞かれたら、本作かなぁ。

ただ、日本語吹替え音声が無かったのはちょっとつらかったかも(TV放映はあったはずなので吹替え音声は存在するはずなんだが)。後にリリースされたものには、ついてるのかもね。

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image0507.png公開年:2004年 
公開国:アメリカ
時 間:120分  
監 督:マイケル・マン
出 演:トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス、ジェイダ・ピンケット=スミス、マーク・ラファロ、ピーター・バーグ、ブルース・マッギル、イルマ・P・ホール、バリー・シャバカ・ヘンリー、ハビエル・バルデム、ジェイソン・ステイサム 他
受 賞:【2004年/第30回LA批評家協会賞】撮影賞(ディオン・ビーブ、ポール・キャメロン
【2004年/第58回英国アカデミー賞】撮影賞(ディオン・ビーブ、ポール・キャメロン)
コピー:その夜は、いつものように始まった…

ロスで12年間タクシー運転手をしているマックス。ある晩、アニーという名の女性検事を乗せ知り合いになりご機嫌に。その後に乗せたのはビジネスマン風のヴィンセントと名乗る男で、多額のチップと引き換えに一晩の貸切で5箇所を回るように依頼する。しかしヴィンセントの正体はプロの殺し屋で5名の殺害を請け負っていたのだ。そうとは知らずヴィンセントの戻りを持つマックスだったが…というストーリー。

一度観たはずなのだが、内容は思い出せなかったのでもう一度借りた(たぶん、寝ぼけて観たんだと思う)。

大筋の流れとか、映像の美しさとか、細かい演出とか(安全装置をはずさずに撃つとかね)を見る限りは、よく練られているのがわかるので、脚本や監督の演出に基本的な問題はないと思う。しかし、悪い作品ではないのだが、もう少しのところでハジケていないのには理由があると思う。

まず、本作の編集のデキがよろしくない。四人目を殺すまでが冗長でメリハリがない。そのあたりから馬鹿なFBIに狙われたり、狼を歩かせたりと、アクセント付けを試みてつけているのだが、いかんせん手遅れ。それらはもう15分前に持ってくるべきだろう。その後にトム・クルーズとジェイミー・フォックスが問答をはじめ、一気に緊迫感が漂うのだが、これももっと早めに、始めておくべきだったろう。それまでジェイミー・フォックスがほぼ服従状態で、感情的な振幅が少ない時間が続くので、あきてしまう。まあ、“コラテラル(服従)”というタイトルなので、そういう展開になることは仕方が無いにせよ、緊迫感が不足。
本作には、二人の編集者がクレジットされているのだが(ディオン・ビーブ、ポール・キャメロン)、もしかすると、当初はどちらかが手がけていて、ヤバそうになったからもう一人のベテランがフォローした…のではなかろうか(私の根拠無き勝手な予想だが)。

さらに、BGMが少しダサくて(ベース音の妙に強い曲とか、マッチしていない)、トータルの雰囲気作りに悪影響を及ぼしていると私は思う。

決定的な悪要因は、トム・クルーズの風貌と演技。そこそこ年齢がいっているような見た目だが、体のこなし方は『ミッション・イン・ポッシブル』そのままで、若々しさ爆発。表情や目つきもはつらつ。そのせいで殺し屋のくせに存在感や違和感バリバリ。目立つ裏家業の人間ってなんだ?なんで彼はこんなバカみたいな表情なのか。どういうコンセプトでこの役の役作りをしたのか。とにかく本作の中で悪い意味で奇妙に浮いている。彼だけ学芸会みたいなのだが…。いっそのこと特殊メイクで皺でもつけて表情を制限すればよかったのではないだろうか。他の演者のデキがいいだけに、彼を除いてリメイクしてほしいくらいだ。

この三点の問題をどうにかするのは、プロデューサの仕事だと思うが、マイケル・マンが兼ねているのだ。案外、それが問題だったのかもしれない(彼は監督に徹し、他者が別角度でチェックしていれば…)。

ただ、トム・クルーズのせいでお勧めしないというのは、非常にもったいない。彼のことは残念な人と諦め捨象し
て、他を楽しめばいいと思う。

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image0446.png公開年:2004年 
公開国:アメリカ
時 間:130分  
監 督:ジョナサン・デミ
出 演:デンゼル・ワシントン、メリル・ストリープ、リーヴ・シュレイバー、ジェフリー・ライト、リーヴ・シュレイバー、キンバリー・エリス、ジョン・ヴォイ、ブルーノ・ガンツ、テッド・レヴィン、ミゲル・ファーラー、サイモン・マクバーニー、ヴェラ・ファーミガ、パブロ・シュレイバー、テディ・ダン 他
ノミネート:【2004年/第62回ゴールデン・グローブ】助演女優賞(メリル・ストリープ)
【2004年/第58回英国アカデミー賞】助演女優賞(メリル・ストリープ)
コピー:全ては、あなたの知らないところでコントロールされている!

湾岸戦争の英雄レイモンド・ショーは、大物上院議員の母エレノアのバックアップによって政界入りも果たし、若くして副大統領候補にまでなる。一方、ショーの元上官マルコ少佐は、最近、戦争時の悪夢にうなされていた。敵の急襲によって意識を失ったマルコに代わり、敵に立ち向かい部隊を救ったのがショーということのはずだったが、マルコの脳裏に甦るのは、その事実とは異なるおぞましい記憶。疑念を抱いた彼は、独自の調査をはじめるのだが…というストーリー。

『影なき狙撃者』という作品のリメイクらしいのだが、観たことはない。リメイクされるくらいなので、当然、おもしろい作品なのだろうが、本作を観る限り、失敗リメイクということなんだろうな。

とにかく、端々で変な部分が散見されて、どうもしっくりこない。
戦闘マシンと化した兵士を作るために大掛かりな洗脳をやっているというなら、なんとか納得できるけど、母親の思ったとおりに行動させるために、わざわざクウェートの大掛かりな施設で施術?
息子が洗脳されたことを、別の上院議員に気付かれそうになったので殺そうと思うところまではいいが、その息子に殺しに行かせるって、なんでバレる危険を増すようなことをするのか?証拠が残ったり誰かに見られたら、本来の目的もなにも、全部おジャンなのに…
自分の描いたシナリオのとおり、これから銃撃が始まるというのに(星のマークのところにいったら撃たれるようにしたのは自分なのに)、おめおめと星の上にいって、へらへら笑いながら踊るってありえるか?
レイモンドとマルコ少佐は、洗脳の呪縛をといて本件に決着をつけようとするが、どうやって洗脳を解いた?精神力?なんか都合よくないか?

あまりにそういうことは気にならないんだよね…という人は観てもよいだろう。それなら多分楽しめる。そうでないなら観ないほうがいい。モヤモヤするハメに。

本作のメリル・ストリープは浮いている。あまりこの手の作品には出ないでしょう。彼女のフォルモグラフィを眺めると本作の役は異質だと思う。私見だけど、湾岸戦争に対する反感から出演を受けたのではないかと思っている。彼女の政治的信条は知らないけれど、ブッシュ政権の中東政策や兵士の苦痛を観るに耐えなかったのかもしれない。
本作のシナリオも、あまりリアルにすると政治的アピールが生々しすぎるので、わざと荒唐無稽ともいえる洗脳の描写にしているのかもしれない(ジョナサンデミがそんなヘタレなわけないか…)。

#こんな作品でも、ノミネートされてしまうメリル・ストリープ。恐るべし。

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image1224.png公開年:2000年 
公開国:アメリカ
時 間:110分  
監 督:デビッド・フィンチャニール・ラビュート
出 演:レニー・ゼルウィガー、モーガン・フリーマン、クリス・ロック、グレッグ・キニア、アーロン・エッカート、クリスピン・グローバー、プルート・テイラー・ヴィンス 他
受 賞:【2000年/第53回カンヌ国際映画祭】脚本賞(ジョン・リチャーズ、ジェームズ・フラムバーグ)
【2000年/第58回ゴールデン・グローブ】女優賞[コメディ/ミュージカル](レニー・ゼルウィガー)
コピー:きっかけは無邪気な憧れだった・・・

町でウェイトレスをしているベティは、夫・デルがいながら、昼メロ“愛のすべて”に夢中。そんなある日、デルが殺し屋に殺され、現場を目撃したベティはショックで現実とドラマの区別がつかなくなってしまい…というストーリー。

いくら優秀なシナリオでも、流れの方向性くらいは予想がつくものなのだが、本作は、まった展開が読めなかった。ここまで先が読めない映画ははじめてかも。たぶん私とまったく脳の構造が異なる人間か、ブッ飛んでる人が作ったストーリーに違いない。面白いとかそういう次元ではなく、読めないこと自体に、ショックを覚えた。

まるでコーエン兄弟の作品をみているよう。荒唐無稽なストーリーでありながらも、個々のキャラも立ち具合や、なかなかセンスのいいセリフによって、うまくまとめられている。
ただ、事件が終息に向かう展開だけが、ちょっとむりやり収めた感というか、ヒネリがないというか、もっと突飛にしてもよかったと思う。オチだけは予測がつく展開だったのが、実に残念。

…とおもって、本当のラストシーンで、テロップが…。え?これって実話ベースなの?本当にそうなのか?それとも、それも含めて仕掛けなのか?調べてもよく判らないのだが、誰か教えてほしい。実話だったとして、どこまでが実話でどこまでがフィクションなのだろう)。
#実話がベースだったら、展開が読めないのも、終息のさせかたも、納得できなくもないけれど…

とはいえ、かなり新鮮な衝撃があったので、私はお薦めする。もしコーエン兄弟の作品が好きならば、多分OKだと思う。
#コピーは的外れも甚だしいので、無視してよろしい。コメディ作品にカテゴライズされる場合もあるようだけど、コメディではないので、それも捨ててよし。

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image1405.png公開年:2008年 
公開国:アメリカ
時 間:98分  
監 督:ロドリゴ・ガルシ
出 演:アン・ハサウェイ、パトリック・ウィルソン、デヴィッド・モース、アンドレ・ブラウアー、クレア・デュヴァル、ダイアン・ウィースト、ウィリアム・B・デイヴィス、ライアン・ロビンズ、ドン・トンプソン、アンドリュー・ホイーラー、カレン・オースティン、ステイシー・グラント、チェラー・ホースダル 他
コピー:その真相を追ってはいけない──


若きセラピストのクレアは、飛行機事故で奇跡的に生き残った5人の乗客のセラピーを担当することになったが、そのうちの一人のエリックは他の生存者とはまるで様子が異なり、クレアを困惑させる。そんな中、公表された事故の状況と生存者の証言が食い違い、さらに生存者たちが次々と謎の失踪を遂げる…。航空会社を不審に思うクレアは、事故の核心に迫ろうとするのだが…というストーリー。

アン・ハサウェイが好きな人と、どうしても観るものがない人だけが観ればよい。その他の人は、別に観なくてよい。いきなりだが、以下、ネタバレ。

『シックス・センス』という超有名作品が存在するにもかかわらず、このオチの作品をつくるというのは、どういう神経をしているのか。『シックス・センス』の場合、オチ以外の部分だけでもそこそこ成立するレベルの内容で、それに加えてあのオチだったので、ものすごく効果的だったわけだが、本作は全体的にエピソードが薄弱なので、オチを観たときの驚きもさほどない。

いや、私は、このオチは、もうやってはいけないと言っているわけではないのだ。やるならば、もっと工夫が必要ということだ。もっとサスペンス要素で盛り上げて、このオチから目をそらせるとか。
オチがわかってからの何故かほんわかした感じは、出色なのだが、それだけに、もうちょっと…と思わざるを得ない。いくら何年も前だからって、おばさんの顔は忘れないだろうしぁ…。要するにツメが甘いってことですよ。

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クボタカユキ
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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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