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image0494.png公開年:2003年
公開国:アメリカ
時 間:155分
監 督:アンソニー・ミンゲラ
出 演:ジュード・ロウ、ニコール・キッドマン、レニー・ゼルウィガー、ドナルド・サザーランド、ナタリー・ポートマン、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジョヴァンニ・リビシ、レイ・ウィンストン、ブレンダン・グリーソン、キャシー・ベイカー、ジェームズ・ギャモン、アイリーン・アトキンス、チャーリー・ハナム、ジェナ・マローン、イーサン・サプリー、ジャック・ホワイト、ルーカス・ブラック、メローラ・ウォルターズ、タリン・マニング、エミリー・デシャネル、ジェームズ・レブホーン、ウィリアム・ロバーツ 他
受 賞:【2003年/第76回アカデミー賞】助演女優賞(レニー・ゼルウィガー)
【2003年/第61回ゴールデン・グローブ】助演女優賞(レニー・ゼルウィガー)
【2003年/第57回英国アカデミー賞】助演女優賞(レニー・ゼルウィガー)、作曲賞[アンソニー・アスクィス映画音楽賞](ガブリエル・ヤーレ)
【2003年/第9回放送映画批評家協会賞】助演女優賞(レニー・ゼルウィガー)
コピー:それは、千億の山と谷を越えて、あなたへと続く帰り道。

南北戦争末期。ノースカロライナ出身の南軍の兵士インマンは、ヴァージニアでの戦闘で、友人をなくし、自らも重傷を負ってしまう。激しい戦闘が続く中、負傷兵として従軍を余儀なくされるが、そんな彼の心を支えるのは、彼の帰還を待ち続けるエイダだった。病床でエイダからの手紙をうけとったインマンは、故郷コールドマウンテンの土を踏む為、そして出征前のほんの一時心を交し合っただけの愛するエイダに再び合うため、捕まれば処刑されることを覚悟の上で脱走するのだった。一方、インマンの帰りを待ち続けるエイダは、頼りの父が急逝し、お嬢様育ちで自活能力がなかったために、日々の生活に窮するようになってしまい…というストーリー。

またもや、再観賞モノ。

南北戦争に対する教材的な価値という意味では『レボリューション めぐり逢い』に及ばないが、その迫力や伝わってくる雰囲気、特に白兵戦シーンは実に圧巻で圧倒される。兵舎全体に漂うじゅくじゅくした傷口のような陰鬱さが、戦争なんかうんざりというインマンの気持ちへの共感の一助となる。

このシナリオは、大儀の感じられない戦争への嫌気と彼女の元へ戻るというインマンの強い意志、そして彼が帰ってくまでは必死に農場とその身を守りぬくというエイダの強い意志の2本で成り立っている。
直情的で純粋な彼らの方向性が明確になっているので、スッと入り込みやすいシナリオになっているが、如何せん純情すぎるきらいがあって(実際、インマンとエイダそれぞれは、さほど魅力的なキャラクターではないので)、それが逆につまらなく感じさせるのは否めない。そこを補うのが、実に人間くさく魅力的な脇役たち。オスカー助演女優賞のレニー・ゼルウィガー演じるルビーはもちろん、その父やバンド仲間、生臭牧師のモンロー、インマンを(意図せずに)誘惑する役という今では贅沢な使い方のナタリー・ポートマン演じる母親などなど。
出兵していない男達による義勇軍の虎の威を借る悪逆非道っぷりも際立っているし、シナリオ上の役割としても巧み。エイダを狙う狼でありインマンを狩ろうとする狼でもあるのだから(このキャラ設定だけとっても優秀なシナリオだと思うな)。

そんな脇役たちを通して、望まないながらも汚れていき、その汚れによって成長していく二人。それに並行するように、後半のおもしろさも増幅していく。

賛同していただけないとは思うが、個人的には『風と共に去りぬ』より好きである。気に喰わない点をあえて挙げろというならば、やっとこさ出会った後に結ばれるシーンが無駄に長いこと。このせいで、井戸で見たもののくだりに比重が置かれすぎるることになった(もっとさらっとやるべきだった)。そして、百発百中であること(笑)。
まあ、百発百中なのは彼女が神父の娘であるということで神の思し召しだと解釈しよう。

恋愛モノでしょ?と忌避する人もいると思うが、一味違うので、是非お薦めしたい。参考にすべき優秀なシナリオ。
 

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image0277.png公開年:1995年
公開国:アメリカ
時 間:122分
監 督:ブライアン・シンガー
出 演:スティーヴン・ボールドウィン、ガブリエル・バーン、チャズ・パルミンテリ、ケヴィン・ポラック、ピート・ポスルスウェイト、ケヴィン・スペイシー、スージー・エイミス、ジャンカルロ・エスポジート、ベニチオ・デル・トロ、ダン・ヘダヤ、ピーター・グリーン、クリスティーン・エスタブルック、ジャック・シアラー 他
受 賞:【1995年/第68回アカデミー賞】助演男優賞(ケヴィン・スペイシー)、脚本賞(クリストファー・マッカリー)
【1995年/第62回NY批評家協会賞】助演男優賞(ケヴィン・スペイシー)
【1995年/第49回英国アカデミー賞】作品賞、オリジナル脚本賞(クリストファー・マッカリー)、編集賞
【1995年/第11回インディペンデント・スピリット賞】助演男優賞(ベニチオ・デル・トロ)、脚本賞(クリストファー・マッカリー)
コピー:見破りますか? だまされますか?

カリフォルニアの港で、アルゼンチン・マフィアが所有する船が炎上する事件が発生。現場からは多くの死体が発見され、麻薬に絡んだ抗争と思われた。そこで生き残ったヴァーバルを尋問していた捜査官クインランは、6週間前からはじまる話を聞かされる。銃器強奪事件の関係者として、5人の前科者キートン、マクナマス、フェンスター、ホックニー、ヴァーバルが集められたが、拘置所で話をするうちに宝石強奪を一緒にすることになる。それに成功すると、宝石をさばくために5人揃ってロスのコネクションに接触。そこで新たな宝石強奪の仕事を請け負うことに。しかし、いざ強奪してみると、獲物は宝石ではなく麻薬で、おまけに相手を殺害してしまう。予想外のトラブルに巻き込まれ慌てる5人の前に、伝説のギャング“カイザー・ソゼ”の右腕と名乗る弁護士コバヤシが現れ…というストーリー。

最近、未見で観たくなるような作品が少なくなったきた。ので、再鑑賞モノで。

ケヴィン・スペイシー出演のサスペンスは、どんでん返しモノとかラストで「そういうことか~」ってなる作品が多いいと思う。『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』もそうだし『セブン』だってそう。『アメリカン・ビューティー』だってそんな感じだ(サスペンスじゃないけど)。ケヴィン・スペイシーはそういう作品と縁があるのか?いや、多分そうじゃない。彼がそういう作品にしてるんだと私は思っている。
謎解き映画を観ているとき、いろんな可能性を頭に浮かべている。そして、話が進むにつれて、その選択肢が減っていく。ポンコツ作品だと、選択肢がある程度減ったところで、もうこの展開しかねーじゃん…ってことも多々あるわけだ。こういうのはダメシナリオだよね。
でもね、手品師はネタは潜んでいるところから目を逸らす為に、違うところで手を動かしたり目線を持っていったりするでしょ。同じように、観ている側が選択肢を頭に浮かばせる作業を阻害すれば、シナリオがイマイチだったとしても、展開やオチを先読みさせる可能性を減らせる。で、その手品師が目をそらす為の視線のテクニックに相当するのが、ケヴィン・スペイシーの演技だな…って思うんだ。
で、本作ではその効果が非常に顕著だと。

(以下完全にネタバレ)
本作は、ケヴィン・スペイシー演じる片手足が不自由な詐欺師ヴァーバルの語りで始まる。こういう事情だったんだよって。で、そういう語りで始まるって部分自体が、自分が犯人じゃないってミスリードの役割だったりする。続いて、これまでの事件の経過が回想されて、“カイザー・ソゼ”という存在がクローズアップされていく。最後にだれがソゼか?ってのが判るわけだけど。あれ?彼がソゼだと、辻褄合わなくね?って思うシーンが満載なわけさ。だって、彼はソゼとしての行動を取れる位置にいないし、コバヤシだって死んでたじゃん。
でもね、エンドロールではっと気付くわけだ。冷静になってはじめっから思い返してみると、彼は“おしゃべり”ヴァーバルなのよ。刑事にこういう顛末でした…って、脅されつつ、少しずつ語ってるけど、はじめから最後まで彼のおしゃべりの中の話で、客観的な事実なんて一つもなかったわけ。ヴァーバルの語りは、ガブリエル・バーン演じるキートンにミスリードしてるけど、シナリオ全体はヴァーバルではないって方向に、二重にミスリードしている。

確かに、デキのいいシナリオであることは認める。でもね、完璧といえるほどすばらしいかっていうと、そうでもない。プロットだけを書き出したら、ヴァーバルがソゼであることって、結構な高確率で頭に浮かぶと思う。でも、端々でみせるケヴィン・スペイシーの演技と語りのおかげで、ヘタレのヴァーバルが黒幕なわけがない、それどころか彼の語りが実際のできごとであることを、だれもが疑わなくなっちゃうんだもん。

まあ、私のかいかぶりなのかもしれないけど、疑う人は、本作を観てくだされ。なんてことないクライムサスペンスのはずなのに、脳がトランスする瞬間が絶対にあるはず。名作。
#コバヤシじゃなくてノリタケだったら、与太話っで気付いたかも。それくらい薄氷のフェイク。本当に優秀だわ。

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image1840.png公開年:2011年
公開国:アメリカ
時 間:113分
監 督:ジョン・ラセター、(共同監督)ブラッド・ルイス
出 演:ラリー・ザ・ケイブル・ガイ、オーウェン・ウィルソン、ボニー・ハント、トニー・シャルーブ、グイド・クアローニ、マイケル・ケイン、エミリー・モーティマー、ジェイソン・アイザックス、エディ・イザード、ジョン・タートゥーロ、ルイス・ハミルトン、トーマス・クレッチマン、ジョー・マンテーニャ、ピーター・ジェイコブソン、フランコ・ネロ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ブルース・キャンベル、ポール・ドゥーリイ、ジョン・ラッツェンバーガー、キャサリン・ヘルモンド、ジェニファー・ルイス、チーチ・マリン、ダレル・ウォルトリップ、ロイド・シャー、マイケル・ウォリス、エディ・マックラーグ、リチャード・カインド、ブレント・マスバーガー、デヴィッド・ホッブス、パトリック・ウォーカー、ジェフ・ガーリン、マイケル・ミシェルス、ジェフ・ゴードン、テレサ・ギャラガー、スタンリー・タウンゼント、ヴェリボー・トピック 他
ノミネート:【2011年/第69回ゴールデン・グローブ】アニメーション作品賞
コピー:彼らの“友情”が“世界”を救う!

ピストン・カップに4度優勝中、絶好調の天才レーサー“ライトニング・マックィーン”。ラジエーター・スプリングスで休暇中だったが、親友のレッカー車メーターのおせっかいで、バイオ燃料メーカーが主催するワールド・グランプリに出場することになってしまう。今回は、メータをはじめ町のみんなをピットクルーとして帯同させることに。みんな意気揚々と第一戦が開催させる日本へ向かうが、トップチームが集結するレースの様子に、田舎者のメーターは戸惑ってしまう。そんな中、イギリスのスパイ・コンビにアメリカのスパイと誤解され、メーターはクルマ世界の存亡がかかった争いに巻き込まれてしまい…というストーリー。

CMを見た限りだと、単なるレースの世界ツアーのお話だと思うわけだが、冒頭からスパイ映画のノリでスタート。前作とは打って変わって世界規模の大風呂敷を広げた展開。でも、どこかのスパイ映画で観た様なアクションを、クルマたちが演じている姿がおもしろくて、掴みはバッチリ。コミカルなので、007ってよりもオースチン・パワーズみたい。

前作は、スポーツ物やアクション物での若者成長物語のテンプレート。今回は、アクションコメディのテンプレート。いずれにせよ、ハリウッドが培ってきた鉄板シナリオのパターンを外していないので、安心して鑑賞できる。
ただし、今回の主役はマックィーンじゃなくて、メータ。メーターとマックイーンの不仲、そしてメーターのアイデンティティ崩壊と成長・再生の物語。だから“2”ってよりも、メーターが主役のスピンオフ作品に近いかも。

日本を舞台にした海外の映画は数あれど、一番、正しい日本描写な気がするのは私だけか?でも、東京じゃなくて大阪を舞台にしたほうがマッチしてたかもね。
海外ツアーってことで、日本、ヨーロッパと、プロモーションもばっちり。でも日本車は出ない。ここもまた、大人の事情がプンプンだわな(笑)。
大人の事情といえば、スパイ戦争側のプロットもそう。代替燃料と石油メジャーの陰謀っていう構図はおもしろいけど、その代替燃料に欠陥があって、代替燃料マンセーにならないという、実在の石油メジャーにもエコロジー活動家たちにも、どちらに対しても極めて政治的な配慮(笑)がなされている。車、石油と、けっこうエグくなるテーマだもんな。
ふつうならそういう大人の事情には、気持ち悪さを覚えるとことなんだけど、通り越して笑えるレベルまで昇華できてるな。

前作の時に、メーターはアイルランド系っぽいって書いたけど、その読みは案外はずれてなくて、今回はイギリスでナイトの称号をもらっちゃう(イギリスに縁も所縁もない人はまずもらえないからね)。

こりゃ3もあるかな…くらいの出来映えだけど、毎回恋愛話が絡んでくるとなると、ちょっと世界観に限界があるよな…とも思う。何がって、子供はどうやって生まれてくるのか…っていうところに触れなきゃならないからね。工場とかそういう夢のない描写になっちゃうから、よっぽど工夫しないといけない。3が作られたとしても、またスピンオフみたいな内容になるだろうね。
ジャスティスリーグやアベンジャーズみたいに、“ピクサー・リーグ”みたいなのもおもしろいかもよ(私ならそんな企画を出すけど)。

とても愉しめた。前作共々お薦め。
#「ポリリズム」は、別にどうでもいいや。主題歌歌ってるくらいでヴェネチアとか行っちゃだめじゃね?Perfume。

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image1755.png公開年:2010年 
公開国:日本
時 間:129分  
監 督:篠崎誠
出 演:木村多江、窪塚洋介、福士誠治、柄本佑、木村了、染谷将太、山口龍人、南好洋、結城貴史、清水優、阿部亮平、テイ龍進、趙民和、石田佳央、吉田友一、塩見大貴、中村無何有、松川貴弘、保科光志、藤川俊生、サヘル・ローズ、古藤ロレナ、鶴見辰吾 他
コピー:あなたなら、どうする。



夫婦で参加したクルーズ旅行で嵐に遭い遭難した主婦清子とその夫・隆は、無人島に漂着。救助が一向に訪れない中、たくましく生きる清子に対して、隆は心身ともに衰えるばかりでまったく役立たず。そんなところに、新たに16人の若い男達が漂着してくる。彼らは与那国島でバイト生活を送っていたが、あまりの厳しさのために船で逃げ出したのだが、その途中で遭難したのだった。清子夫婦と16人は共同生活をはじめ、いつしか島は“東京島”と呼ばれるようになる。そんなある日、隆が崖から転落死してしまう。自殺なのか他殺なのかは不明だったが、清子はあっさりと若い男達の中のリーダー格“カスカベ”の妻となり、女王のように大事される境遇に喜びを感じるのだったが…というストーリー。

これってアンビリーバボー的なTV番組で紹介されることも多い、“アナタハン島事件”が元ネタなんだよね。それこそ、一人の女という宝物をめぐってバトルロワイヤル状態になるんだけど、その実際の怪異性とは、まったく無縁のポンコツ作品だったわ。

普通こういう作品って、旅行にいって漂流して…っていうプロローグを描くものなんだけど、後から無人島16人の男達がやってくるところまで、すべて主人公の語りだけで済ませちゃうっていう、驚きの演出。予測のつく展開をダラダラやられるのもウンザリだけど、ここまで割り切られるのも逆に閉口しちゃった。説明なしに無人島の生活の様子からスタートして、なんでこの状態になったのかを、彼らの会話や回想でおいおい説明してくっていう、演出が妥当だったと思うけどね。判りきった展開を極力避けて、観せたいところだけど観せる!っていう覚悟の上の演出なのかと思ったけれど、結局、一人の女性の争奪戦か共有財産制を選択するかという見え見えの展開になるのが、トホホ状態。“女性”のしたたかさとか、原始の姿みたいなものを描ければ成功だったのかもしれないけど、全然表現できていないし。何が観せたかったのよ? と監督を問い詰めたい気分。

途中から、ババァ呼ばわりされる木村多江だけど、男達とそれほど年齢が違うわけでもないし。都会ではブス扱いなのに、島ではうっひょー状態だ、みたいなコントラストはないし。
薄幸が似合う木村多江だけど、本当に不幸な状況におかれると、魅力は薄れ感じだし。木村多江に非はないけど、結果的にキャストミスかもしれん。その他の男連中のキャラもいまいち立っていないし。

小説の段階ではなんとなく成立していたかもしれないけど(読んでないから知らんけど)、映像にすると変な部分も盛りだくさん。
ドラム缶でつくった鏡をプレゼントされて喜ぶ清子→自分の顔を見てびっくり…という流れ。鏡なんかなくても、自然に水面に写る自分の顔を見る機会なんか山ほどあるから。
不法投棄の船がやってきてワタナベだけ救ってもらった(と思われる)シーン。“サイナラ”とドラム缶を並べる時間も体力もないだろうし、不法投棄したやつがそんなことに協力するわけもない。
いくら南の島とはいえ、寒いときは寒いし燃料も真水も豊富なわけではないだろうから、火の番だ水の確保だと苦労してしかるべきだし、それをめぐって問題がおきて当然だと思うが、それがまったく無い(程度の問題だけど、そこを完全に無視するのはねぇ)。
中国人のリーダーとおぼしき人の髪の色。のびても金髪(白い)。でも完全にしろじゃなく根元が黒っぽくみえたから色を抜いているのかと思ったが、伸びても白い。どういう状態?

で、ラストは10年後の様子なんだけど、これが、びっくりするほどつまらない。小っちゃいモーターボートで脱出できるくらいの距離なのに、そして自分の子が一人おいていかれてるのに、救出要請も出さないなんて考えられん。そこで何があったかを隠さなければいけない感じでもないし。子供は絶対手放しちゃだめよといっていたキムですら、放置を選択するという意味不明な展開。
#眼鏡だけで10年を表現しようという、映像センスにも閉口する。
娘がワタナベの唄を口ずさんでいるということは、清子が教えたに違いない。ということは、あの無人島での生活を懐かしんでいる(のか、都会の生活に疲れている)ってことなんだろうけど、思わせぶりに娘に話したいことがある…なんて感じでスパっと終わるけど、島に舞い戻ろうとしてるのか?って匂わせたいのだろうか。それはそれで、魅力的な展開じゃないよな。

こりゃ失敗作。腹の据わってない数々の演出をみるに、ストレスがかかるとチョケて逃げる人なんだ思う。人間修行しないと、この監督はきちんとした映画は作れるようにはならんだろう…、なんて、したくもない人格否定をせざるを得ないくらいの失敗作。映画への造詣があるのと、現場で力が発揮できるのは、別の能力だから。

 

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image1867.png公開年:1991年
公開国:アメリカ
時 間:128分
監 督:リドリー・スコット
出 演:スーザン・サランドン、ジーナ・デイヴィス、マイケル・マドセン、ブラッド・ピット、クリストファー・マクドナルド、スティーヴン・トボロウスキー、ティモシー・カーハート、ハーヴェイ・カイテル 他
受 賞:【1991年/第64回アカデミー賞】脚本賞(カーリー・クーリ)
【1991年/第26回全米批評家協会賞】助演男優賞(ハーヴェイ・カイテル『バグジー』に対しても)
【1991年/第49回ゴールデン・グローブ】脚本賞(カーリー・クーリ)
コピー:男たちよホールド・アップ!すべてが快感。女たちのルネッサンス!

アーカンソー州の小さな町で、ウエイトレスとして働く独身のルイーズ専業主婦のテルマは、一緒にドライブに出かける。退屈な日々に嫌気がさしていたルイーズと、夫から家政婦のように扱われて鬱憤が溜まっていたテルマは、日常から離れたひとときを満喫していた。夕食のためにバーに立ち寄った二人だったが、そこでテルマは大酒を飲み悪酔い。バーの店員ハーランがテルマを口説くと、ルイーズが目を離した隙に二人は店の外に消えてしまう。なかなか戻ってこないテルマを心配して探しに出ると、テルマがハーランにレイプされそうになっている場面に遭遇。銃を突きつけてテルマを救ったが、ハーランの屈辱的な言葉に激昂したルイーズは彼を射殺してしまい、二人はそのまま逃走する…というストーリー。

ハーランを殺すときのルイーズの表情の豹変ぶりや、テキサスに触れられたときの表情で、彼女の過去になにかあったのだな…ってことがわかる。それを表現しようとするシナリオの巧みさもさることながら、そのシナリオの求めにしっかり応えられるスーザン・サランドンの演技力には感服。この一点だけとっても良作といってよいだろうな。

たしかに逃避行なのだが、堕ちていくっていう感じがしない。「旅をするのが夢だったのよ…」 追われているんだけど、このままどうなってもいいのかもしれない…みたいな空気が漂うのが、妙に心地よい。二人は親友とはいえ、性格も境遇も違う。はじめはルイーズがグイグイ進めている感じだけど、途中からテルマのはじけっぷりが顕著に。旅が進むにつれて二人の魂が近づいていくようだ。「こんなに目覚めてる気分は初めて」「すべてが新しいの」さりげなくいいセリフが多い。自分を取り戻す…というか生まれ変わる旅程。ロードムービーとしてかなり優秀だ。
逃走中に、これまでの自分が犯したことを振り返って、踏みとどまるのが最善だったか?って考え直しても、いやいや、やっぱり自分の尊厳やプライドを傷つけつづけるのはもうごめんよ…って感じ。いきあたりばったりかもしれないし刹那的かもしれないけど、その選択にいたく同意できる。

“散るアダ花の美しさ”って感じのラストシーン。DVDには別バージョンも収められている(いろんなカットがあるしBGMも違う)けど、サクッと感のある本編のほうがやはり好きだ。
その散り際を切ない表情でおいかけるハーベイ・カイテルの演技もよい。ルイーズの過去になにかあったな…と判るのと同様に、彼女たちの心の痛みを何故か理解している刑事の過去にも、何かがあったんだろうな…とわかる。ハーベイ・カイテルの厳しさと慈愛が共存する表情。ラストの彼女たちを見る目は、観客の目線とシンクロする。

なんと、小物男のJ.D.役を演じてるのばブレイク前のブラッド・ピット。夫とは違う、危うさとひとなっつこさ、そして且つダメダメ男っぽさをうまく演じている。主役二人が良すぎるから見逃されがちだけど、脇を固める男性俳優陣はいい仕事してるよ。

観ていない人は観るべき作品。おすすめの傑作。ん~、二日連続、いい作品にめぐり合った。これだけで幸せな気分になれるって、やっぱり映画はすばらしいわ。
#なんでテルマは小瓶で酒を買ったのか?これがどういう心境を表しているのか、これだけはよくわからんかった。

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image1863.png公開年:2006年
公開国:アメリカ
時 間:122分
監 督:ジョン・ラセター
出 演:オーウェン・ウィルソン、ポール・ニューマン、ボニー・ハント、ラリー・ザ・ケイブル・ガイ、チーチ・マリン、トニー・シャルーブ、グイド・クアローニ、ジョージ・カーリン、ボブ・コスタス、ダレル・ウォルトリップ、ポール・ドゥーリイ、ジェニファー・ルイス、キャサリン・ヘルモンド、マイケル・ウォリス、リチャード・ベティ、マイケル・キートン、ジョン・ラッツェンバーガー 他
受 賞:【2006年/第64回ゴールデン・グローブ】アニメーション作品賞
【2006年/第12回放送映画批評家協会賞】長編アニメ賞
コピー:そこは、地図から消えた町――
都会育ちの人気レーサーが迷い込んだのは、クルマたちが平和に暮らす町、ラジエーター・スプリングス。しかし、その町には《悲しい運命》が待ち受けていた…。

そこは車だけの世界。ピストン・カップの才能ある若きレーサー、ライトニング・マックイーンは、初の新人チャンピオンがかかっていた最終レースで、その自己中心的な性格が災いし、優勝確実た展開だったのにチャンスを逃してしまう。そして、3台同着となったため、1週間後に優勝決定戦が行われることに。しかし、会場のカリフォルニアへ向かう途中、トラブルによりマックィーンはルート66沿いの田舎町“ラジエーター・スプリングス”に迷い込んでしまう。一刻も早く町を出てレース会場に向かいたいりマックィーンだったが、ド田舎の住人達と過ごすうちに、忘れていた大切なものに気付きはじめ…というストーリー。

それまでピクサー作品はDVDが出れば、新作レンタルで追従していたんだけど、私、モータースポーツというものに、まっ~~~~~ったく興味がないもので、この作品でその慣習は途切れた。この度『カーズ2』を知り合いから借りたのだが、一作目を観てなかったのでレンタルした次第。

なんだよ、単なる喰わず嫌いだったじゃねえか、ものすげーおもしろかった。未だにけっこうグッズが売られてるのも“2”ができるのも納得だぁ。

“人間”が存在しない世界というのは、ピクサー作品ではじめてじゃなかろうか(画面には出てこなくても、どこかに人間がいる世界ばかりだったと思う)。牛や蝿まで車だもんな。このノリは面白い…というか、擬人化大好きの日本人にはピンとくるセンスだわ。

冒頭の圧巻のレースの様子や、トラックに散らばる“タイヤかす”まで表現されている細かさに圧倒される。掴みはOK。
髪の毛の質感とか生体表現にこだわって結果をだしてくたピクサーだけど、つるつるの車の表面反射の処理なんて、それに比べたら大した技術じゃないので、画質に対する違和感など皆無。その分、ストーリーにも集中できる。
先人と若者の軋轢と和解。都会の効率化した生活での感じた疎外への苦しみと、仲間を見つけることでその疎外から開放される過程。車のお話だけど、しっかりした“人間再生”のストーリー。これまでハリウッドが培ってきたウケるシナリオの鉄則から一切外れることは無い、鉄板の展開。

メーターの歯並びの悪さは、アイランド系の肉体労働者って感じで、(ちょっとギリギリの表現くさいけど)キャラ付けもばっちり。ドイツ車、イタリア車、もちろんアメ車等々新旧の車種が盛りだくさんで、車でここまでキャラクターを立たせることでできるなんてすごい。あんま日本車はみないな…って思うけど、そこは“2”におまかせしよう。

文句なし快作。多くを語る必要なし。エンドロールでのドライブシアターで流れる、車にて演じられた歴代のピクサーアニメのデキが最高。“2”にも期待。

#ジローラモの吹き替えが、意外にも成功している。ピクサー映画の吹き替えプロデュース能力はスゴイ。
 

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image1003.png公開年:2006年
公開国:韓国
時 間:116分
監 督:カン・ソッポム
出 演:キム・レウォン、キム・ヘスク、ホ・イジェ、キム・ビョンオク、キム・ジョンテ、チ・デンス 他





かつて若くして街の裏社会を牛耳っていた男テシク。酒を飲めば狂犬のように手が付けられなくなる彼は、殺人の罪を犯し服役。10年経って仮出所して街に戻ってきた。彼はひまわり食堂の女主人ドクチャを訪ねる。彼女はテシクを養子として迎え入れ、実娘ヒジュとの3人の穏やかな生活を送ろうとしていた。しかし、ひまわり食堂は、チョ・パンスというヤクザが進める再開発計画のために立ち退きを迫られており…というストーリー。

なにやら訳ありそうな男が、戒めをノートに書いているのかと思いきや、やりたいことを書いていたり。なにやらチクハグだけど、ミステリアス。さて、この男の過去には何があったのか…というのを追っていく展開か…と思ったが、そこは、過去に罪を犯したヤクザであることがあっさり明かされる。
じゃあ、あとは、なんでこの食堂のおばさんがテシクという男を息子として迎え入れたのか…、そして、とてもかつて“狂犬”のようだったとは思えない、やさしい青年になってしまったテシクは、なんで暴力を振るわないと堅く誓っているのか…という二点に、話の焦点は絞られていく。
その答えはここでは書かないが、オリジナリティが高いとは言わないけれど、それなりに整合性は取れていて、悪くない内容だった。

とはいえ、過去に大きな罪を犯した男が町に戻ってくる…。改悛した彼はヤクザのゴタゴタには巻き込まれるのを嫌い、静かに生きて生きたい…。でも、ヤクザたちの悪行は彼の大事な人を巻き込み、やがて彼を修羅の道に戻していく……って、実にありがちなストーリー。ありがちすぎて何のパクりとかいえないくらいオーソドックスなプロットだ。

ポピュラーだから悪いということはないので、後はお約束どおり、ヤクザたちの悪行で観客の正義の心を刺激したり、ストレスを膨らませていき、その大きく膨らんだ風船を爆発さればカタルシスを得られること請け合い。しかし、残念ながら、大きく膨らませた風船に開けた穴がを大きすぎて、フガガガ~~と勢いの無い空気がダダ漏れしたようなラストで幕を閉じる。
悪役に対して感じたストレスがいまいち発散できず、モヤモヤした感覚が残るのは残念。悪役の描き方は悪くなかったので、愛する者を壊された怒りを爆発させるだけで、十分に魅せることができたと思う。しかし、無駄にバイオレンスで無慈悲な展開を差し込まないと、話を転がせないという、韓国の血というか狂気というか…。どうも、そのあたりのセンスがしっくりこないのは、韓国映画に共通することかもしれない。

中盤までは、狂言まわしのように、ちょこちょこ出てきていた警官は、シナリオ上ではまったくの無意味。あれなら、ヤクザに買収されてる悪徳警官にしたほうが、よっぽど意味があっただろう。自動車工場への襲撃の様子を観ているときに、警官二人以外に二人いたがこれもまったくの無意味。もしかすると、当初は他の展開がある予定だったのに止めたのかもしれない。同様のいきあたりばったりなシーンは多い。
高校の数学女教師とテソクの関係がどういうものだったか、明かされていないとかね。

人情モノなら人情モノ、バイオレンスならバイオレンスと、メリハリをきちんと付けられていないのも不満ポイント。でも、駄作とまではいわないけどね。

#銭湯のロッカーのセンサー付きの鍵ってなんやねん。韓国、意味がわからん。

 

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image1266.png公開年:2008年
公開国:アメリカ
時 間:99分
監 督:トム・ヴォーン
出 演:キャメロン・ディアス、アシュトン・カッチャー、ロブ・コードリー、トリート・ウィリアムズ、デニス・ミラー、レイク・ベル、クイーン・ラティファ、ジェイソン・サダイキス、ディードル・オコンネル、ミシェル・クルージ、デニス・ファリナ、ザック・ガリフィアナキス、クリステン・リッター 他
ノミネート:【2008年第29回ゴールデン・ラズベリー賞】ワースト主演女優賞(キャメロン・ディアス)、ワースト・スクリーン・カップル賞(アシュトン・カッチャー、キャメロン・ディアス)
コピー:恋も、お金も、人生も。幸運は、前向きな人の味方。

ウォール街の証券会社で働くジョイは、仕切り屋の性格が仇になって、婚約者にフラれてしまう。一方、不真面目な仕事っぷりのために、父親が経営する家具工場を解雇されてしまったジャック。そんな彼らは、それぞれ親友を連れて、気晴らしにラスベガスを訪れたのだが、部屋をダブルブッキングされてしまう。これも何かの縁と、一緒に大酒を飲んでバカ騒ぎ。翌日、目が覚めると、ジョイとジャックの指には、結婚指輪が。二人は勢いで結婚してしまったのだ。事の重大さに気付いた二人は、お互いにその気がないことを確認しあい、婚姻無効の手続きをすることで合意。その矢先、何気にジョイから受け取った25セントをジャックがスロットマシンに投入すると、なんと300万ドルが当たってしまい…というストーリー。

過ちで結婚してしまったとしても、お互いにその意思がなかったのだから、婚姻無効だろうが離婚だろうが、とっとと手続きをして財産分与すりゃあいいだろう…とだれでも思う。だけど、判事は離婚を婚姻無効も認めずに、結婚生活を真摯に継続すること…って、そこの意味というか仕組みがわからん。
まあ、アメリカの法律だし、判事に与えられる裁量も日本とは違うんだろうけど、財産を供託して様子をみましょうなんて、さすがに不自然さを感じる。でも、そうしないと、単なる強欲同士の戦争になってしまい、恋愛モノとはベクトルの違う作品になってしまうからね。そう、所詮は恋愛コメディ。そう割りきって観るべき。

反目しあっていた二人が次第に惹かれあっていく展開はお約束。坊主頭の友達が弁護士なのは、ちょっと都合が良すぎかも…とか、工場の同僚とか元カレとか、主役二人以外のキャラがちょっと弱かったり…とか、根本的に恋愛モノに興味が無い私としては、だんだん退屈になってくるが、そこはいたし方あるまい。

ジャックはいつも人生において勝負を避けていて…という設定と、恋愛が花開いていく過程が、いまいちシンクロしていないのも、シナリオ的に残念ではあるが、割り切ってしまえば、それほど鼻に付く演出もないし、無理に笑わせようと媚を売っているところも無いので、極めてさらっと愉しめるライトな作品に仕上がっていると思う。

キャメロン・ディアスは、さすがに若い独身女のアイコンとしては無理があったかもしれない。下着姿はきびしいものがあって、年増女が若い青年をたぶらかしてるようにも見える(実際6歳上だしな)。いっそのことちょっと年上っていう設定にすればよかった気もする。とはいえ、コケティッシュさとビッチさを内包するキャリアウーマンという、地味に難しい設定をうまくこなしたと思う(そこはキャリアの成せる技かと)。なので、ラジー賞が何を指して彼女をノミネートしたのはわからない、それほど悪い仕事はしていない。
それはアシュトン・カッチャーについても同様。モラトリアム体質だが若気の至りで跳ねっかえりの若者をうまく演じたと思う。
ラジー賞は、批判をしても文句のでなさそうな役者をあげつらってみただけで、本気の批判精神でノミネートしているわけではなないように感じる。惰性で人を貶しているように感じられ、そういう姿勢は軽蔑に値する(というか、もう納得できるラジー賞の結果なんか最近ないので、賞自体止めてしまえばいいのに)。

麦茶みたいなみたいな口当たりの映画。アイスティーのつもりで麦茶だったら腹も立つけど、麦茶と判って飲めば普通に飲める。そんなレベルの作品(特段、褒めるところはないけど)。
 

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image0904.png公開年:2005年
公開国:ベルギー、フランス
時 間:103分
監 督:ヴィンセント・ラノー
出 演:カルロ・フェランテ、クリスティーン・グルロワ、ステファン・リベルスキー、オリヴィエ・グルメ 他





家具店を経営するジョージは、いたって平凡な父親。しかし、ある晩、高速道路でドライブ中のカップルとトラブルを起こし、諍いの末に男性を殺害してしまう。犯行が発覚することを恐れたジョージは、自分が所有する山小屋付近に男性の死体を埋める。しかし生きている女性の方を解放するわけにいかず、山小屋に監禁することに。しかし、彼が仕事にいっている間に、逃走を図ったことから、女性をトランクにいれて常に近くに置いておくという、生活を送ることにするのだった…というストーリー。

邦題は“変態男”だけど、現代はTHE ORDINARY MAN“普通の男”って、真逆のタイトルじゃん。どういうこと?

冒頭からなかなかエグい暴行シーンから始まるが、このお父さんが犯人なのか?いやぁ、そんな単純な展開ってことはないだろう。むしろ救う側のほうなんじゃないの?なんて思っていたのだが、そのまま犯人だった。
車でトラブルになったってことらしいんだけど、話の中では、犯人の車が一方的に粘着して追い詰めただけのように見える。結局、全然動機がわからない。シリアルキラーってわけではなさそう。いずれ明かされるのかと思ったが、結局明かされることはなかった。

女性が山小屋から逃げるシーン。犯人らしき人がいたから逃げました→逃げられたのに大声出しちゃう…とか、チグハグな演出のオンパレード。
娘に安易に車の鍵を渡しちゃうとか杜撰にもほどがある。見られたらじゃあ娘も…的な感覚はさっぱり理解できないし。この犯人が何を守っているのかわからん。家族や社会的立場を守っているわけでもなさそう。さっぱりこの犯人の感覚が理解できない。いったい誰目線でこの作品お観たらよいのやら。

そうこうしているうちに、もう、観客はおいてけぼりになる。なんとトランクで監禁されている女性が、快適に過ごし始めたではないか! 刑事のホモ描写とかが、突然差し込まれる。何の意味が?! 突然、回想のような夢のシーンが差し込まれるが、子供のことの記憶なのか何なのか、さっぱりわからない。

こんなヤケクソな邦題を付けたくなる気持ちがわかってきたかも…。

凍死しそうだからって、これまでのルールをあっさりやぶって家に入れるとか、もうグチャグチャでグダグダ。斜め上というか斜め下というか、とても常人の感覚では思いつかない展開。
浮気相手の男は、なんで銃をかまえている女ではなく、男を躊躇なく撃ったのだ? あの状況なら女を狙うのが普通じゃないのか? その疑問がホットなうちに、あれよあれよとラストを迎えるのだが、なんだこのオチ。頭おかしくなりそうなんだけど。

私、これまで何千本と映画を観てきてるけど、こんなに頭がおかしくなりそうになって、吐き気を覚えた作品は初めて。ぎゃ~~~~~~~~~! 殺害シーンとかで吐き気をもよおしたんじゃないから。純粋に展開で頭が狂いそうになるから。

観ただけで脳挫傷を起こすくらいのクレイジー具合。マジキチとは正に本作のこと。こりゃ、日本未公開なのも納得。

 

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image1849.png公開年:2010年
公開国:アメリカ
時 間:97分
監 督:ゲラ・バブルアニ
出 演:サム・ライリー、ジェイソン・ステイサム、ミッキー・ローク、レイ・ウィンストン、カーティス・ジャクソン、アレックス・スカルスガルド、マイケル・シャノン、エマニュエル・シュリーキー、ギャビー・ホフマン、デヴィッド・ザヤス、ベン・ギャザラ、デイジー・ターハン、ウェイン・デュヴァル、チャック・ジトー、ジョン・フィオーレ、スティーヴン・ジェヴェドン、アシュリー・アトキンソン、ロナルド・ガットマン、ジョン・ベッドフォード・ロイド、ドン・フライ 他
コピー:勝率1% 運がなければ、即、死亡。

病気の父がいる貧しい家庭を電気工事の仕事で支える青年ヴィンス。幼い親族もおり将来は不安で溢れている。ある日、工事を依頼された家の夫が、大金が手に入る仕事のオファーが手紙で届いた話をしているのが耳に入る。ところがその夫が薬物の過剰摂取で死んでしまう。引き上げようとするヴィンスだったが、例の仕事の話を思い出しこっそりとオファーの手紙を盗んでしまう。仕事の内容はまったくわからなかったが、手紙の内容に従い指定の場所に向かうヴィンス。足跡を捉まれないようにしてやっと到達した屋敷では、複数の男たちが円になり一斉に前の男の後頭部に向けて引き金を引く集団ロシアン・ルーレットが行われていた。ヴィンスはそのプレーヤーとして賭けの対象として参加せざるを得なくなり…というストーリー。

『ザメッティ』のリメイク。原案とかそういうレベルではなく、完全にリメイク。オリジナルの感想で、リメイクする予定があるらしいがオリジナルの段階で既に完璧に近いから、リメイクする意味はあるのか? と疑問を投げかけ、観るつもりはなかったのだが、レンタル屋で発見してしまい思わずチョイスしてしまった。だって、オリジナルと同じ監督なんだもん。そういうのって珍しいよ。もしかして? という期待はたかまるでしょ。

しかし、始めに言ってしまうが、その予想のとおりリメイクの意味は見事に無かったと思う。

まず、邦題の“ロシアン・ルーレット”はいかん。冒頭でロシアン・ルーレットが行われるカットからスタートするので、この青年がロシアン・ルーレットをすることになるのが丸判り。観客すべてがオリジナル作品を観ているわけではないのだから。

演出上の問題としては、主人公の追い詰められた感(というか、状況的に困窮している感じ)は足されている。ただ、単なる貧乏であって、人種とか社会構造による閉塞感による「どうしようもない」感じは、逆に薄まった。
病状の深刻さを強調したり、幼い子供ががいえう様子などを加えているが、工事費が貰えないくだりとか抜けていたりね。
書類の隠し場所をピンポイントで見つけられるなど、都合のいい演出が多々ある。オリジナルでは置き忘れを偶然見つける感じだったし、参加についても、はじめからぐいぐい参加する感じではなく躊躇がみられた。善良でナイーブな青年であることが強調されていたのだが、本作ではそれがない。

そして、肝心のロシアン・ルーレットだが、“巻き込まれた”という感じは薄まった。それを補うかのように、ジェイソン・ステイサムやミッキー・ロークなど、名を知られた役者を投入して、プレイヤー側に厚みを持たせたようだが、功は奏していない。
オリジナルの場合、主人公が勝つか否かはわからないくらいの不安感が漂っていたのだが、このリメイク版の場合、主人公が勝つのは目に見えている(そう見える)。だから、敵キャラの魅力を増してやって、負ける可能性を出してみたってことかもしれない。

結果的に、ミッキー・ロークを登場させた意味は皆無。「え? それで終わり? そんなのあり?」って思った人は多いと思う。そのせいで、最後に殺しにいく役が、ジェイソン・ステイサムよりもミッキー・ロークとやり取りしていた黒人さんのほうがよくなっちゃってるし。
#ちなみに、お金を発送するタイミングや、送付票を食べるシーンの順番が替えられているのだが、オリジナルのほうが間違いなく自然。むしろなんで替えたのか判らないほど。

オリジナルからなんだけど、撃った後の流れ弾の配慮がないのが、実はおかしいんだよね(体を突き抜けて観客に当たるかもしんないじゃん)。でも、オリジナルではそれに気付かなかった。会場全体がクレイジー極まりない空気で満載だったから気付かなかったんだと思うけど、本作では観客に余計なことを考えさせる余地を与えてるんだよね。

オリジナルも自分の脚本だったわけだから、舞台に合わせてドラスティックに変更することもできたはずなのに、それすらしなかったとは、一発屋監督の臭いがプンプンする。
やっぱりリメイクの意味はなかったね。予想通り。これを観るくらいならオリジナルをもう一回みたほうがいい。いや、オリジナルの素晴らしさが証明されたってことだろう。そっちを是非観ておくれ。

#ドン・フライなんかいたか?

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image1849.png公開年:2004年
公開国:アメリカ
時 間:98分
監 督:マイケル・レンベック
出 演:ニア・ヴァルダロス、トニ・コレット、デヴィッド・ドゥカヴニー、スティーヴン・スピネラ、ダッシュ・ミホク、アレック・マパ、デビー・レイノルズ、イアン・ゴメス、ニック・サンドウ 他
コピー:キラキラしてる?




幼なじみのコニーとカーラは、子供のころからスターを夢見て、歌と踊りを続けてきた。しかし、芽が出ることはなく、今は空港にあるカフェテリアで、通りすがりの客相手に歌う程度の日々を送っている。そんなある日、知り合いがギャングに殺される場面に遭遇してしまい、口封じのためにギャングに追われる身となってしまった。逃亡先はロサンジェルス。とりあえず生活の糧を得るために仕事に就こうとするがうまくいかず、途方に暮れている時に、ゲイ専門のナイトクラブのパフォーマー募集の貼り紙を発見。ゲイに化けていればギャングから身を隠すこともできて一石二鳥ということで、オーディションを受けてみるとあっさり合格。それどころか二人のパフォーマンスは評判となり、クラブは連日満員となるのだったが…というストーリー。

ん~、実は『テルマ&ルイーズ』を借りるつもりだったのに、何を勘違いしたのか本作を借りてしまった…。

『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』で脚本&主演だったニア・ヴァルダロスが、同じく脚本・主演の作品。才能のある人なんだと思うけど、どうも釈然としない。

まず、これって『天使にラブ・ソングを…』とまるっきり同じプロットなんだよね。ギャングの殺人を見てしまって逃亡。全然違う姿で潜伏するけど、そこで持ち前の能力を発揮して人気者になっちゃうって。
違うのは二人組みってことなんだけど、そっちはドラァグクイーン映画の金字塔『プリシラ』が頭をよぎる。DVDジャケットもそっちに近いしなぁ。
合成パクリっていわれても、否定できないと思うんだけど。

『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』もそうだったんだけど、なんか三谷幸喜の作品を観てる時と同じ感じで、いまいち腹の底から笑えない感じ。笑いのセンスが違うってことは、人としての基盤レベルで違うってことだからねぇ。この差はなかなかうめられない。本作をおもしろいという人はけっこういるんだけど、私は一箇所たりともクスリともできなかった。
いくら声を低くしたからって、体つきはどうひっくり返しても女性にしか見えない。トニ・コレットは、ファラオの呪いみたいな外見だけど、それでも、女性は女性なんだわ。大金かけて全改造終わっている…っていう設定とか、もうすこしそれなりに説明してくれないと…。そういう杜撰さも笑えない理由かもしれない。
ラスト、自分を殺しに来るマフィアに居場所がばれちゃった!ってなったその後、『天使にラブ・ソングを…』と比較するとやっぱり陳腐に感じると思う。

ゲイの優しさとか心のキャパの広さとか、そういうものに乗っかっちゃって、杜撰な部分をごまかしているだけだと思う。かといって、同性愛者のシビアな心模様とかそういう部分も描ききれておらず、全方向で甘いと感じる。コメディだからこそ、細かいところをいい加減に処理してはいけないと私は思うんだけど。

別に駄作というわけじゃないんだけど、これを観る時間があるなら、『天使にラブ・ソングを…』と『プリシラ』を再度観たほうが、有意義な時間を過ごせると思う。

#今から、『テルマ&ルイーズ』借りにいくわ…

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image1821.png公開年:2010年 
公開国:日本
時 間:93分  
監 督:渡辺琢
出 演:黒沢かずこ、渋江譲二、光浦靖子、大久保佳代子、椿鬼奴、やべきょうすけ、村上知子、大島美幸、庄司智春、田中圭、秋野暢子 他
コピー:笑いにできない恋もある。




お笑いトリオ森三中の黒沢かずこは、他メンバが結婚しているなか、一人だけ独身。ある日、大島夫妻主催のパーティに参加すると、イケメン俳優の渋江が声を掛けてくる。黒沢のファンだという渋江に、黒沢は舞い上がってしまうが、やはり自分など相手にされるはずもないと思い消極的になる黒沢。しかし、渋江のアプローチは続き、2人の仲は徐々に深まっていき…というストーリー。

別にネタバレしてもどうってことない作品だと思うけど、一応注意しておこう。

ドッキリのてんどんは、観客の7割が予測しただろうが、もう、それしかやりようがない。マジな展開だと考えると、さすがに記憶喪失以降のくだりは陳腐すぎるし。はじめのドッキリもそうだけど、展開が読めるだけに、ドッキリまでのくだりが長すぎて、さすがに飽きる。実質65分くらいの内容しかないのだ。
正直、観るのを何回も辞めてるんだが、ブログに書くことが無くなるから、最後まで付き合った感じ。大久保さんと奴さんのくだりのように、その他の原因の恋愛あるあるを厚くするとか、そうしないと厳しいわ。そこは、製作陣の努力不足というかやっつけ仕事というか…、あまり褒められたもんじゃないね。

薄い内容なので、これ以上言及する気はないのだが、1点だけ。この作品は、実は名作になった可能性がある。

あとからエンドロールでネタバラシみたいな流れになるけれど、『シックスセンス』や『ファイトクラブ』のようにもう一度見返したら、「おお!そういうことか!」という映画にできたから。どういうことかというと、本作の映像すべて、隠しカメラの映像にすればよかったのだ。
女芸人が集まってるバーのシーンも部屋の掃除のシーンも、すべて。だから、黒沢さん目線とか黒沢さんの心の声とか一切排除してね。これをやったら、カルトムービー化したかもしれない。
#まあ、TVドラマの映画化とか、TV局主導の映画ばっかりつくってるプロデューサが、何人も雁首そろえてるような作品だかからなぁ。期待するほうがアホなのか。

どういう層に観てもらいたいのか、定まっていない…という印象もあるし、演出も中途半端だし。キャストは“実在”で貫くべきだよね。そこは秋野暢子じゃないよね。ブレブレじゃん。さすがに田中圭はないだろ?キチンと作ろうよ…と飽きれる部分が多々。レンタル料金50円なら、許せるレベル。

#『ハンサム☆スーツ』のときもそうだったが、映画全体がポンコツでも、大島さんはそこそこデキる子なんだな…と思う。

 

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image0447.png公開年:2004年
公開国:アメリカ
時 間:112分
監 督:ポール・ハギス
出 演:サンドラ・ブロック、ドン・チードル、マット・ディロン、ジェニファー・エスポジート、ウィリアム・フィクトナー、ブレンダン・フレイザー、テレンス・ハワード、クリス・“リュダクリス”・ブリッジス、タンディ・ニュートン、ライアン・フィリップ、ラレンズ・テイト、ノーナ・ゲイ、マイケル・ペーニャ、ロレッタ・ディヴァイン、ショーン・トーブ、ビヴァリー・トッド、キース・デヴィッド、バハー・スーメク、トニー・ダンザ、カリーナ・アロヤヴ、ダニエル・デイ・キム 他
受 賞:【2005年/第78回アカデミー賞】作品賞、脚本賞(ボビー・モレスコ)、編集賞(ヒューズ・ウィンボーン)
【2005年/第59回英国アカデミー賞】助演女優賞(タンディ・ニュートン)、オリジナル脚本賞(ポール・ハギス、ボビー・モレスコ)
【2005年/第21回インディペンデント・スピリット賞】助演男優賞(マット・ディロン)、新人作品賞
【2005年/第11回放送映画批評家協会賞】アンサンブル演技賞、脚本賞(ポール・ハギス、ボビー・モレスコ)
コピー:それはあなたも流したことのある、あたたかい涙。

クリスマスが近づくロサンゼルス。白人に敵意を抱く黒人青年二人組みアンソニーとピーターは地方検事のリック夫妻の車を強奪。リックの妻ジーンは、それ以降、人種差別的な態度に拍車がかかる。人種差別主義者の白人警官ライアンは、黒人のTVディレクター・キャメロン夫妻の車を理由もなく停車させ、権力を傘にきて屈辱を味あわせた。そのときの夫の態度に不満を覚えた妻は夫を責め、それ以来夫婦の間には溝ができてしまう。ライアンの相棒の若い警官ハンセンは、そんなライアンに嫌悪感を抱き、異動を願い出る。一方、銃砲店での不当な差別に憤慨する雑貨屋を経営するペルシャ人ファハドは、黒人ダニエルに店の鍵を修理させるが、ドアごと替える必要があるといわれ口論になってしまい…というストーリー。

他民族国家アメリカならではの作品。自分の生活空間に、生活様式やエトスの違う人が多数存在する状況に馴れていないので、映画を観ているだけなのに疲れてしまう。

理解できない人がいるから身構えたら、それだけで「差別だ!」ってバッシングされる社会。子供のころに犬に噛まれりゃ犬嫌いになる。同じように他人種にいやな思いをさせられりゃ警戒もするだろうさ。マイノリティの暴走というか、マイノリティがマイノリティだというだけで、無条件に優遇される社会は、もっともらしいけど異常。

#“人種”という表現が正しいかは脇に置くとして…
ただ、人種の坩堝がどうしたこうしたというよりも、自分の気に入らない状況がなぜ生じているのか、その正確な理由を突き止めるのを放棄して、表面的にわかりやすい人種の差を理由にしちゃってるだけなんだと思う。
判事の妻なんか、更年期障害のイライラを他人種のせいにしているだけ。ペルシャ人の親父だって、論理的思考のできない馬鹿以外の何者でもないし。

それ以上に、アメリカにいるどの人種の方々も、臆病で且つ怒りっぽい。そして絶対、自分の民族的なスタイルを崩すさないで、お世話になってる国に溶け込もうとしない。そしてさせない。これがTHEアメリカなのかね。それなりにうまいこと織り重なっていてこその他民族国家だと思うんだけど、ただ、同じ土地に他民族がいるだけだもんな。

2004年のアメリカでこのカオス状態。アメリカだけじゃなく、ヨーロッパで移民政策が成功しているところなんか一つもない。他の国は同じ失敗すんなよ! っていってるのに、移民政策を検討しようなんてお花畑なことを言ってる日本の民主党って、やっぱ頭おかしいよな。
夢を求めて! っていったって、誤解を恐れずに言うならば、他人が築いた社会基盤にタダのりしようとする人間でしょう。テイクだけでギブする気が無い人間を共同体にいれちゃあ、そりゃウマくいくわけがないじゃん。

最後の方になると、人種云々じゃなく人と人として心を通わせることこそ、安らぎだ…みたいな流れになるけど、でも、衣食足りて礼節知る…だと私は思うんよ。どんなに貧しくても、力と運のあるやつは幸せになれる…って、そういう価値観オンリーだと、一部が幸せになっても社会全体が幸せになることはなく、結局は自分も不幸になる。自分は今くるしいけど、自分だけじゃなく周りも幸せにならないとね…、そう思える人が、そこそこの割合で存在しないと、社会は良くならんわな。
登場人物全員が全員、生きていても楽しくなさそうなんだもん。アメリカンドリーム=ナイトメアなんだろうね。

等々…、淡々とした切り口ながら、ふっと考えさせる作品。今の社会をいろんな切り口で巧みに観せている。並行して進んでいたキャラが絡み合う様子は、いささか強引ではあるが、映画としては許容範囲。さて、この映画は、何の答えも道筋も提示していない。「で、観客の皆さん、どうするのさ」こういう問いかけで終わるのを、良しとするか否か。
私は、これでオスカー作品賞ってのはどうかと思うよ。かといって『ブロークバック・マウンテン』かといわれるとそれも違う…。その他のノミネートは『カポーティ』『グッドナイト&グッドラック』『ミュンヘン』だもんな。個人的には地味に不作の年だったなと。
オスカー文句なしとは思わないけど、良作ではある。

#皆保険制度って大事だと思うよ。日本の保険制度が苦しいっていっても、他国よりはマシだわ。
 

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image1862.png公開年:2010年
公開国:タイ
時 間:130分
監 督:ウィシット・サーサナティヤン
出 演:アナンダ・エヴァリンハム、ヤリンダー・ブンナーク、ワナシン・プラスータクン、ポンウット・サーラシン 他




2016年、犯罪と腐敗が横行する都市バンコク。絶望感が支配する世界に、堕落した政治家とギャングを次々と処刑するヒーロー、レッド・イーグルがいた。しかし、若き刑事チャートは、レッドイーグルをただの殺人者とみなし、彼の逮捕に熱意を燃やしている。また、政府要人やギャングによって組織されている秘密結社マトゥリも、刺客ブラック・デビルを雇い、レッド・イーグルを追い詰めようとする…というストーリー。

昨日のとはタイつながりでチョイスしたのだが、始めに言っておく。予想の斜め上をいく珍作だった。とにかくヒーロー物っていうのが、まったくわかっていない。

まず、冒頭のTV討論番組の内容の段階でNG。まともな人間は鬱憤を晴らしてくれるヒーローなんか求めちゃだめ!って、そんな正論を言っちゃあダメでしょ。そうは言えども、観客の心の奥底にあるヒーローを待望する心や、勧善懲悪を望む心を刺激するからこそ、ヒーロー作品ってのは成り立つ。現実がそうでないことは百も承知してるのに、それを突きつけるなんて、観客をいきなり興醒めさせてどうするのやら。

タイ映画にはありがちなんだけど、他国の作品では有り得ない構成なの。
最後の方になるまで、レッドイーグルの正体がわからん。謎にしてるとかじゃなくって、正体の人すら、本当に登場してこないんだもん(新聞記者が正体なのか?とかフェイクかましてるわけでもない)。そして、最後まで観ても、なんでこの人がそこまで強いのか、そのスーツはどこから入手したものなのかさっぱりわからない。
さらに敵の組織もよくわからない。ものすごいテクノロジーを持っていて、そんだけのことができりゃ、一人の仮面被った男が暴れようが、どうにでもなるんじゃね?と思うくらい。敵味方のバランスの悪さが半端ない。

話の根底にある“原発反対”のロジックもいまいちよくわからない。
タイ発展のことを考えて、必要な電力量のことを考えたら、石油に変わるエネルギーなんて原発しかないじゃん…っていう推進派の理屈に対して、ヒロイン(っていっていいのかわからんけど)がまともな反論ができていないのがトホホの極み。あまり大風呂敷広げないで、判りやすい“悪”にすりゃいいのに。
政府は買収したり圧力をかけたり悪いことしてるに決まってる…という、決め付け設定で話は進む。敵がぼやけているのは、ヒーロー物として致命的である。

やっぱりヒーロー物の醍醐味がよくわかっていなんじゃないかなと思うシーンは他にもある。
途中でヒロインが「自分のことを救えないヒーローが、他人を救えると思う?」とか言う。むしろ救う気になるから。自己犠牲だから。ヒーローってそういうもんだから(笑)。

タイ映画といえば生身のアクションシーンなんだけど、はじめから超人どうしの戦いなので、アニメの戦闘シーンを観てる感覚で驚きがない。ラストの決戦など、凡庸で飽きる。その戦いの末に、なんと「つづく」で終わるという、ビックリ作品。ラストに“初代レッドイーグル”に捧げる…とかテロップが入ってギョっとする。タイでは昔からあるヒーローらしいわ。

技術では日本映画に決して劣っていないと思うんだけど、とにかく“物語”が作れないのが残念極まりない(そこの壁さえ越えれば、サブカル的な側面で、日本のライバルになると思うよ)。
未公開なのみ至極納得。もちろんお薦めのしようがない。

 

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プロフィール
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クボタカユキ
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男性
趣味:
映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
自己紹介:
一日一シネマ。読んだら拍手ボタンを押してくだされ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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