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公開年:2012年
公開国:イギリス
時 間:110分
監 督:マーティン・マクドナー
出 演:コリン・ファレル、サム・ロックウェル、ウディ・ハレルソン、クリストファー・ウォーケン、トム・ウェイツ、アビー・コーニッシュ、オルガ・キュリレンコ、マイケル・ピット、マイケル・スタールバーグ、ヘレナ・マットソン、ハリー・ディーン・スタントン、ジェームズ・ヘバート、クリスチャン・バリジャス、ジョセフ・ライル・テイラー、ケヴィン・コリガン、ガボレイ・シディベ、ジェリコ・イヴァネク、ブレンダン・セクストン三世 他
ノミネート:【2012年/第66回英国アカデミー賞】英国作品賞
 【2012年/第28回インディペンデント・スピリット賞】助演男優賞(サム・ロックウェル)、脚本賞(マーティン・マクドナー)
コピー:イカれた奴(サイコパス)、募集!



脚本家のマーティは、“セブン・サイコパス”というタイトルとコンセプトだけが決まってる作品の執筆を請け負ったが、まったく筆が進まず悩んでいた。親友で売れない役者をやっているビリーは、脚本のネタ集めを手助けしようと考える。そして、“サイコパス募集”という新聞広告を、マーティに無断で出してしまう。一方、ビリーは、役者稼業の他に愛犬誘拐詐欺に手を染めていた。それは、裕福な家のペット犬を散歩中に誘拐し、迷い犬の張り紙がだされてしばらく経過したあたりで、印象のよさそうな男をつかって返却し、お礼の金をせしめるというもの。犬を返却する役割としてハンスという老人が雇われていた。そのハンスには、癌で入院中の妻がおり、ハンスは日々甲斐甲斐しく見舞いのために病院を訪れていた。しかし、ビリーは、危険なマフィアのボス、チャーリーが偏執的に愛するシーズー犬に手を出してしまい、追いつめられることに。そんな中、ビリーが出した広告の応募者、ウサギを抱えた正義の殺人鬼サガリアが現れ…というストーリー。

誤解を恐れず言うが、冒頭の殺しのシーンからして、素敵。脚本家の話だってことで、もしかして冒頭のシーンも、シナリオの中の話?なんて思ったけど、リアルな殺し。

正直、全然期待していなくて、流し観状態だったのだが、愛犬詐欺の話と、殺人鬼が自分から手を挙げて集まってくるというユニークな展開に。思ったよりもデキがよくて、途中でもう一回頭からしっかり観直してしまった。

(以下ネタバレ)
ビリーはちょっとやばそうだと思ってたけどやっぱり…。それどころかシーズー犬の件は、過失じゃなく意図的かよ…とか。
気のいいハンスも実は…。それが発覚するのは、シーズー犬のすったもんだがあったから。そして、、広告を出したおかげで知りえたとある殺人鬼のエピソードとも絡んでいた。

昨日の『サイトシアーズ』もそうだけど、サイコパスの価値観は理解不能。社会性の欠如だけじゃなく、善悪の価値観が狂っている。友達だと思っていたビリーはサイコパスだと気づき、恐怖を覚えるマーティだが、ビリーの日記をふと読んでしまう。その内容が、サイコパスらしからぬ(というかサイコパスなりのと言った方がいいのか)、親友の才能を信じて応援しようという“友情”で溢れてやんのね。

さあいよいよ話が佳境に!となるんだけど、舞台が砂漠に移行してからは、ちょっとグダグダしてキレが無くなってしまった。まあ、サイコパスの考えていることはよくわからん。わからんけど、サイコパスと心を通わせることができるんだな…っていうエピソードをとにかく盛り込んでくる。妻を殺されただから発狂してもよさそうなのに、結構冷静なハンス。なぜか一生懸命マーティの小説に協力しようとしてくれる。よくわからんけど、ボイスレコーダーに入れたアドバイスを聴くと、なんかほっこりしてしまうという不思議。
最後の最後で、サガリアとの約束を忘れて脅迫されるマーティだけど、サガリアは何かを感じ取って許すことにしてしまったりね。

砂漠以降の疾走感不足。難点はこれ一つだけだなぁ(若干、編集にも難は感じるけど)。もう一歩で快作。無条件でお薦めできるほどではない。
#途中で、何が“セブン”かはどうでもよくなっているのはご愛嬌。あくまで企画中の題名だからね。

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公開年:2012年
公開国:イギリス
時 間:88分
監 督:ベン・ウィートリー
出 演:アリス・ロウ、スティーヴ・オーラム、アイリーン・デイヴィーズ、リチャード・グローヴァー、ジョナサン・アリス、モニカ・ドラン 他
コピー:人生変えちゃう旅かもね。






自分の生活を束縛する母親と2人暮らしのティナ。最近付き合い始めたクリスとの関係は良好。ライター志望のクリスが、取材を兼ねて1週間ほどキャンピングカーでヨークシャー州を巡る旅の計画を立て、それにティナを誘う。恋人との旅行に憧れていたティナはもちろん了解するが、その旨を母親につたえると猛反対。ティナの母親は彼を毛嫌いしており、心臓の悪い自分を放置して旅行にいくのかと旅立つその時まで、悪態を付き続けるのだった。そんな母親を振り切って旅をスタートさせる2人。まず、最初の予定地であるトラム博物館につくが、そこでゴミをポイ捨てするマナーの悪い観光客に遭遇。クリスが注意しても悪びれる様子も無く、彼が不機嫌になる一方。気を取り直して次の予定地に向かおうとキャンピングカーをバックさせると、なんと、先ほどのマナーの悪い客をひき殺してしまう。警察はこれを事故として処理し、お咎めはなし。ティナの動揺と罪悪感は収まらなかったが、初日の宿泊地であるオートキャンプ場で、理想的な夫婦イアンとジャニスと出会う。夫婦の鼻につく態度のせいで、昼間の事件のことは薄れていくが、その夜、あの事故は本当に事故だったのか?という疑念が、ティナの頭をよぎる。すると次の日…というストーリー。

はじめはどう考えてもクレイジーな母親の行動のせいで、見た目がいまいちなカップルが善良に見える。はじめの事故も本当に事故に見える。しかし、だんだんとこのクリス、ヤバい奴なのかな?とも思えてくる。でも、単純にそう結論付けられない。結構、このティナっていうのも優柔不断で、あまりしっかりした精神の人じゃないんだもん。きっとティナの老婆心で、むしろその勘違いから騒動に発展するのかな?と思わせてくれる。本当に、前半は、次に何がおこるんだ?っつー不安感が、うまく醸成できている。
クリスがヒッピーたちを殺しちゃうん夢とか見ちゃうんだけど、朝起きてみると、そいつらが放火で逮捕されちゃったりと、ああ、やっぱり勘違いなのかな…みたいなね。

中盤から、クリスがイアンを殺したことが発覚して、物語の質が変わっていくんだけど、それでも、ストーンヘンジでのクリスの凶行を直接見るまでは、きっと事情があって殺害したのかも…って思えなくもないんだな、これが。

(以下、ネタバレ)
結果的にはクリスはシリアルキラー。実は母親の見立てが正しかったわけで、ショックを受けるティナが母親に電話してみたら、むしろ一人をエンジョイしていて居留守をつかってたりして、笑える。

ここで彼女の苦悩が始まる!と誰もが予想するでしょ。そう単純じゃなくて、斜め上を突っ走るのが本作のいいところ。彼を理解できるように自分のシリアル・キラーになろうとするの。ひえー。
たしかにクリスはサイコキラーなんだけど、それなりに目立たないように、ペースも考えるし、隠蔽工作が可能な手口を使う。だからいままでバレずに生きてこれている。ところがティナは、頭でっかちな状態でそっちの世界に入ってきたもんだから、もう、直情的で歯止めが聞かない。一線を越えたら、気に食わないことは、みんな殺人でケリをつけちゃうくらいに暴走。いよいよクリスもあきれてしまう。

その後、すったもんだの末、あきれながらもティナみたいなクレイジーな女性と出会えたこと、そしてシリアルキラーの自分がこれ以上社会で生きていていいわけがないという思いがクリスの心の奥底にあって、二人で一緒に死のうということになる。ティナもそれが永延に結ばれる唯一の方法だと考えるようになる。

まるで曽根崎心中か!と思わせておいて。さてさてオチは?!
このオチでニヤリとしてる自分もちょっと異常かもしれないな…とは思うけど、なかなか苦労したシナリオで、何度も何度も練り直したな…というのが伺える好感が持てるシナリオ。趣味は悪いけど良作だと思う。

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 公開年:1994年
公開国:アメリカ
時 間:94分
監 督:ジョン・ウォーターズ
出 演:キャスリーン・ターナー、サム・ウォーターストン、リッキー・レイク、マシュー・リラード、スコット・ウェスリー・モーガン、ジャスティン・ホウェリン、ミンク・ストール、メアリー・ジョー・キャトレット、スザンヌ・ソマーズ、パティ・ハースト、ジョーン・リヴァーズ、ウォルト・マクファーソン 他




閑静な住宅街に暮らす主婦ビヴァリー。歯科医の夫と二人の子供を持つ、よき妻・よき母親だった。ある朝、彼女の家に、二人の警察官がやってくる。警察官は近所のヒンクル夫人が、卑猥ないたずら電話や郵便物に悩まされており、捜査しているという。心当たりがないと警察官を返し、その後、いつもように家族を送り出したビヴァリーは、自室から近所のヒンクル夫人にいたずら電話をかけ、卑猥な言葉を連呼するのだった。その日は、息子チップの高校でPTA面談がある日。面談で、担任教師からチップがホラー映画にかぶれすぎており行動に問題があることを告げられ、さらに家庭に問題があるのではないか?カウンセリングを受けた方がいいと言われ、彼女は激昂。帰宅する担任教師を待ち伏せて、車でひき殺してしまう。後日、バザー会場を訪れた彼女は、娘が恋しているカールという男子生徒が、別の女の子とデートをしているのを発見。不快に思ったビヴァリーはは、トイレでカールを火掻き棒で串刺しにして殺してしまう…というストーリー。

実は、本作、長らく観たくて仕方なかったの。どうしても見たいんだけど、日本ではDVDが販売されていなくて、レンタルビデオ落ちを見つけるしかない状態。それで、アメリカのamazonで探してやっと発見したんだけど、やっぱり字幕ないと厳しいよなぁ…って断念。あれから10年ほど経ってやっと鑑賞できた。

「まだ被害者は誰一人として賠償金を受け取っていない…」的な日本語字幕があるので、そんな事件があったのか…と素直に調べちゃったが、そんな事件はない。やっと観ることができて浮かれてたな。クソ、騙された。よく見ると“the story is completely fictional.”って書いてあるし。
いくらなんでもこんな実話あるか?こういうタイプの女性のシリアルキラーって聞いたことないぞ?いやいや小説は事実より奇なりっていうしな…なんて結構信じちゃったじゃないか。なんか腹立つわ。

ストーリーは大きく分けて2パートに分かれる。前半はビヴァリーが犯行を重ねていく展開。独自の倫理観を振りかざし、それからはみ出る人間は容赦なく殺していく。にっこりと。ビデオを巻き戻さない客に腹を立てて(厳密にはバイトしている息子に逆らった客なんだけど)、その人の家にまでいって殺すんだけど、「巻き戻せ~~!!」って言って殺すんだもの。

自分が犯人だとわからないような工作はほとんどしない。担任教師はひき殺しっぱなしだし、ビデオ巻き戻さないババァ人目につかないように忍びこんだりはするんだけど、それは犯行を見つからないようにするためではなく、すみやかに殺すための手法でしかない。自分には非がないと思い込んでいる確信犯という設定なのかな…と思っていたのだが、犯行を屋根から見ていた人のことは追いかけて口封じしようとするところを見ると、そうではない模様。彼女は、家族にだけは(特に息子には)殺人者であることを知られらたくないっていう行動原理があるってことに気付く。
まあ、もちろん家族は気付かないわけがないのだが。

後半は、裁判になるが自分で弁護するという展開に。頑なに自分は犯人じゃないというビヴァリー。自分のやったことが正しいことだ!と主張するわけじゃなく、検察側の証拠や証言をどんどん崩していく無双っぷりを発揮する。これは彼女が確信犯ではなく、自分のやっていることが社会的に許されることではなく、自分の倫理観を振りかざしてしまうと有罪になってしまうことを理解しているということだ。でも、家族には自分はやっていないの微笑むというこの怖さ。

最近の日本でも見られるが、犯罪者を崇める人物が出てくる社会現象が発生する。このシニカル要素とビヴァリーの狂人っぷりが並行して描かれるのがユニーク。公判中もシリアルキラーっぷりを発揮してイライラしまくる彼女は、秋には白い靴は履くもんじゃない!っつって、陪審員の女性にイライラする。
被害者の弟が、兄が殺されたことでクレームに来て、息子チップに喰ってかかるのだが、“シリアル・ママ”がTVドラマ化されると聞いて、おとなしくなっちゃうのとかは、やりすぎ演出かもしれない。さすがにここまでくるとコント臭が…。

(以下、ネタバレ)
で、無罪を勝ちとったのはいいけど、「どうしよう…」って狼狽する家族。そして、“白い靴”の女への怒りを爆発させるビヴァリー。ビヴァリーを演じる予定の女優の“こりゃ、マジもんだ”って顔。最初から最後までカオス状態を維持して、突っ走りきった作品。奇作だけど良作。

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image1204.png公開年:2008年
公開国:アメリカ
時 間:101分
監 督:グレゴリー・ホブリット
出 演:ダイアン・レイン、ビリー・バーク、コリン・ハンクス、ジョセフ・クロス、ビリー・バーク、メアリー・ベス・ハート、ピーター・ルイス、タイロン・ジョルダーノ、パーラ・ヘイニー=ジャーディン、ティム・デザーン、クリス・カズンズ 他
コピー:FBIサイバー捜査官を追い詰める、66億人の好奇心。



ジェニファーは、サイバー犯罪専門のFBI特別捜査官。夫とは死別し、母親と娘と共に生活している。ある日killwithme.comというサイトへの通報が入る。そのサイトでは、拘束された猫が衰弱していく様子をライブ中継したが、封鎖してもIPアドレスを巧妙に変更してサイトにようる中継をし続けた。その後、動物ではなく縛られて薬物を投与された男が映し出される。薬物の投与量はアクセス数にによって増える仕掛けとなっていたが、ジェニファーたちの必死の捜査も虚しく、アクセス数は増える一方で、やがて男性は絶命してしまう…というストーリー。

サイトで行われる犯人の所業はなかなかエグくて、目を背けたくなるほどなのだが、『ソウ』シリーズに比べればかわいいもので、公開当時は物足りなく思われたかもしれない。
あまり評判がいい作品ではないようなのだが、私はそこそこ評価をしたい。シナリオ自体はなかなかウマいと思うので。

子供がいるシーンを強調したり、家にアタックをしかけられたりしたので、おそらく子供がさらわれたりするピンチがあるんだろうなーと思わせておいてスカす…とか、犯人はいったい誰なのか?そこを軸にストーリー展開させていくのかと思いきや、中盤ですっかり犯人を明してしまうとか、「お、そう来るか…」と裏をかくような展開が巧みだと思う。
また、こういう連続殺人鬼モノは、変に犯人を巨悪にしたり、救いようのない怪物にしたりと大風呂敷を広げたりパターンが多いけど、本作の犯人のような小物との闘いに、逆に新鮮さを感じてしまった。

『CSI:科学捜査班』なんかを見慣れた人は、画像解析でもっと場所の特定とはできるんじゃねーの?とか考えるかもしれないけど、むしろCSIのほうが都合が良すぎるわけで、このくらい手間取るくらいが自然だと思う。
最後のFBIのバッチのところは、お前らも加害者みたいなもんだぞ!とアピールしているのであって、格好つけたわけでもないし、もちろん笑いどころでもない。あそこでスパっと終わらせたのは悪くはなかった。
また、これ以上、上司のグダグダぶりにイライラさせられたり、身の回りで何かが起こったりすると、逆にウンザリしてしまっただろう。さらっと流したところに抜きどころのウマさがみえる。小気味良いテンポと、適度なスリルを味あわせてくれた、快作だと思う。
#褒めたけど、本作の脚本家さんたち、あまり他の仕事やってないんだよなぁ…。

ディテールの甘いところで、どうにかしたほうが良かったんじゃないかと思うのは2点。IPアドレスが頻繁に変えられるというのはわかるけど、人命がかかっているのだから、諦めずに愚直にサイトのブロックをし続ければ、すこしでもアクセス数は減らせるのにな…とか思った所。もう一つは、橋の上でFBIに電話をした後、車に戻ったところ。いくらライトが点いたからってからって、雨で寒いからって、犯人に細工された車に戻らんよ。そんなところか。まあ、目くじらをたてるほどでもない。軽くお薦め。




負けるな日本

 

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image1758.png公開年:2009年
公開国:アメリカ、イタリア
時 間:92分
監 督:ダリオ・アルジェント
出 演:エイドリアン・ブロディ、エマニュエル・セニエ、エルサ・パタキ、シルヴィア・スプロス、ロバート・ミアノ、ルイス・モルテーニ 他
コピー: ダリオ・アルジェント×エイドリアン・ブロディが放つダークでロマンティックな残酷スリラー!



イタリア・トリノで、外国人女性をターゲットにした連続誘拐殺人事件が発生。そしてまた、ファッション・モデルのセリーヌが標的となり誘拐されてしまう。彼女の姉リンダは、主に猟奇殺人を担当しているエンツォ警部の元を訪ね、妹の捜査を依頼する。そんな中、セリーヌの前に誘拐された日本人女性が瀕死の状態で発見される。彼女は死に際に、犯人の肌の色が黄色であることを示す言葉を残し絶命する…というストーリー。

タクシーでつかまるシーンが、ありがち。シリアルキラーがいましたとさ…って感じで、めずらしさも新鮮さもなし。犯行中にヘリウムで声を変える…ってのはちょっとおもしろいかなと一瞬思ったが、どうせ殺すなら声を変える意味はまったくないわけで、何かチグハグ。殺害の様子は確かにグロいけれど、シリアルキラー特有の偏執さとか病的な感じがあまりしない。死体の遺棄ルールもピンとこないし、トロフィー的な描写もない。必ずしも紋切り型に秩序型・無秩序型と分類できるわけではないのは承知しているつもりだが、あまりにもシリアルキラー然としていない様子に、この脚本家は、あまりシリアルキラーについて、お勉強していないのでは?と勘ぐりたくなる。
シリアルキラー物は、今となってはありふれているから、よほど工夫をしないとね…。

主役はいったい誰?と思っていると18分過ぎて、やっとエイドリアン・ブロディが登場。このブロディ演じるエンツォのキャラクターに、いかに魅力を持たせられるかが勝負どころ。アクティブなのかポジティブなのか。彼の過去の事件が現在の事件と関係があるのか…等々。しかし、彼の過去の経験は、今回の事件と直接的にも精神的にも、あまり関連がなく、ストーリーに生きていないように思える。
#オスカー受賞後のエイドリアン・ブロディは、本当に仕事を選ばないな。

そして、ストーリー的にも稚拙な部分が満載。
犯人のアジトを突き止めたジャーロは、何故か現場にあった薬を破棄。そんなことをする意味があるだろうか。また、そこに被害者の姉が、来るなといっていたにもかかわらず来てしまうのだが、そこでグダグダと取り乱すシーンが。犯人がそこにいるかもしれないのに、そんなやりとりをするわけがない。

犯人の生い立ちについて、犯人の記憶にあるはずもない赤ん坊時に預けられたシーンが差し込まれる。修道女に聞き取りをしたとかいうならわかるが、そんなシーンが差し込まれる不自然さ。

エンツォの過去についても、そんなに都合よく母親を殺した犯人と遭遇するなんてリアリティがなさすぎだし、さらに殺したのに、事情を話したら見逃してもらえたなんて、くだらない(フィクションなのであってもいいのだが、くだらないと感じさせるような演出しかできないところが問題)。

ラストも姉のところにやって来る…とか、くだらなすぎる。犯人像、手口、主人工のキャラ付け、ヒロイン、事件の顛末…すべてがつまらなかった。『サスペリア』とか『フェノミナ』の監督さんなんだけどね。駄作。




負けるな日本

 

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image0972.png公開年:2001年
公開国:アメリカ
時 間:131分
監 督:リドリー・スコット
出 演:アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア、ジャンカルロ・ジャンニーニ、レイ・リオッタ、フランチェスカ・ネリ、ゲイリー・オールドマン 他
ノミネート:【2001年/第10回MTVムービー・アワード】作品賞、キス・シーン賞(アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア)、悪役賞(アンソニー・ホプキンス)
コピー:沈黙は、悲鳴で破られる。


“バッファロー・ビル事件”と呼ばれた連続猟奇殺人の解決後に、ハンニバル・レクターが脱走してから10年後。その事件でレクターの協力のもと犯人を逮捕した当時FBI訓練生だったクラリス・スターリングも、今やFBIのベテラン捜査官に。しかし、彼女はとある任務中に指名手配犯を射殺したことで窮地に追い込まれる。レクターに深い恨みを持つ大富豪メイスンは、そんな彼女を利用しようと考え、司法省のクレンドラを買収し、クラリスをレクター捜査へ復帰させる工作を行う。その頃、レクターはイタリアのフィレンツェに潜伏し、偽名で司書の仕事に就いていた。これまで、クラリスの行動を注視していたレクターは、窮地に陥った彼女にコンタクトをはかり…というストーリー。

ハンニバル・レクターシリーズには、必ず、彼にとって“はじめて”の人が登場する。
『ハンニバル・ライジング』は、はじめて愛を交わした人。『レッド・ドラゴン』は、はじめて彼を逮捕した人。『羊たちの沈黙』は、はじめて共感した人。本作は、はじめて生き残った人。最後はちょっと弱いけど、その弱さはグロさで補ってるって感じかな。

本作は、衝撃的な頭パッカーンにばかり目がいってしまうけれど、フォレンチェでのパッツィ刑事の顛末、メイスンとの因縁と執着、クレンドラとの軋轢等々、盛りだくさんのエピソードを納まりよくまとめている。それらが下劣な人間を決して許さないレクターの美学によって、きれいに整頓されているのが、実に秀逸。構成や編集がすばらしい。

『羊たちの沈黙』からクラリス役がジュリアン・ムーアに変わってしまった。公開当時は落胆した人もいたと思うが、観終わった感想をいえば、正直そんなことはどうでもいいレベル。それは、クラリスに対するレクターの普遍の愛があれば、その愛の影として現れるクラリスの姿に、何一つ違いがないということを証明している。
レクターの様子を見ていると、男女の間に友情が成立するとすれば、それが父性に基づいたときだろうな…とまで感じさせてくれる。猟奇的で極めてクレイジーなのだが、哲学的な思索を湧かせてくれるのも事実である。

演者で光っているのは、高慢で下品なクソ野郎を演じさせたらピカイチなレイ・リオッタ。存在感を放ちつつも小物をしっかりと演じられる力は、改めて感服する。

重ね重ね残念なのは、飛行機で向かっていると思しき日本での続編エピソードをかすかに期待しても、エンドロール最後の「Bye Bye H.」で、もうそれは無いんだな…と思い知らされることである。

難点はセリフと効果音の音量のバランスが下品なことくらい(音で驚かす演出は無用だと思うな)。受賞歴もあまりなく評価も高くないのだが、それはあくまでレクターシリーズの一本として見られているからだと思う。純粋にこの一作のクオリティは高い。秀作だと思う。

#FBI指定の凶悪犯10人の中にウサマ・ビン・ラディンがいるのに、隔世の感があるね。





負けるな日本

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image0337.png公開年:2002年
公開国:アメリカ
時 間:125分
監 督:ブレット・ラトナー
出 演:アンソニー・ホプキンス、エドワード・ノートン、レイフ・ファインズ、エミリー・ワトソン、メアリー=ルイーズ・パーカー 他
コピー:《悪の根源》を知る為にはその原点に戻らなねばならない。



FBI捜査官ウィル・グレアムは、精神科医ハンニバル・レクターから連続殺人事件について助言を得ながら捜査を続けていたが、ふとしたことから犯人がレクター本人であることに気付く。レクターとの格闘の末、逮捕に至ったが、犯人から助言を貰い続けながら見抜けなかったことのショックから捜査官を引退する。その後、フロリダで家族と静かな生活をおくっていたが、そこに元上司のクロフォードが訪れる。彼は、最近起きた連続家族惨殺事件の捜査協力を依頼。一旦断ったが、事件の状況を聞かされるうちに興味が湧き上がり、結局、捜査に加わることに。しかし、なかなか解決に近づかないことに焦るクロフォードは、ウィルに拘禁中のレクターから事件についての意見を聞いてはどうかと助言をし…というストーリー。

またまた、レクター博士に戻ってしまった。

『羊たちの沈黙』も同様であるが、なんといっても、希代の猟奇シリアルキラーが、ストーリーの主軸の事件を解決するための協力者であるという、プロットのおもしろさ。しかし、その構成が『羊たちの沈黙』と同じであることが、逆に評価がいまいちなの理由だったりするのは、いささか皮肉なものである。

その他にも評価が伸びない理由は多々考えられる。
・画質がきれいだったために逆に安っぽく見えてしまっているとか…
・妙にレクター博士がグレアム捜査官を買っているのだが、半ば立場が対等に近いだけに、「教えろ」「教えない」の押しあいっこのようにも見えて、クラリスの時のような駆け引きや心理戦になっていないのが、いまいち深みが感じられないとか…
・猟奇的な描写が少な目なので、スケールダウンしている印象を与えてしまっている…とか
・レクター、グレアム、ダラハイドの三者の描写がバランスがよすぎて、それぞれのキャラクターの掘り下げが不足しているようにみえるとか…

まあ、色々挙げればあるのだろうが、それもこれも『羊たちの沈黙』という偉大な親の光が神々しいだけで、本作の絶対的なデキが低いわけではないと、私は思う。
ハーヴェイ・カイテルやフィリップ・シーモア・ホフマンらが脇を固めるなど、競演陣も豪華だし、ストーリー上の事件の犯人の興味深さという点では、『羊たちの沈黙』の犯人“バッファロー・ビル”よりも本作の“レッド・ドラゴン』のほうが上だと思う。
私は、持ち前の洞察力が周囲や敵から評価をうけながらも、「別にそんなことどうでもいいし…」という態度と、しかしながらも捜査には関わらずにはいられないというグレアム捜査官の姿にシンパシーを感じたので、非常に愉しめた。

シナリオ上の難点を強いて挙げれば、エミリー・ワトソン演じるリーバを、燃える家に残すなら殺せばいいし、殺す気がないのなら逃げやすくすればいいし、普通に放置しなのだけが腑に落ちなかった。唯一、微妙な演出と感じたのはその点くらいかな。

ネットの評判を読むと、原作を読んだ人の評判が悪く、読まずに本作を観た人の評判が良いという傾向がはっきり現れている。原作を読んだことのない私は十分に満足。どれだけ原作がすばらしい想像を喚起するデキなのかはわからないが、読んでいないことでここまで愉しめたのだから、むしろ読んでいなくてラッキーと思えるほど。お勧めしたい。
仮にお気に召さなくても、ラストシーンを見たら、『羊たちの沈黙』が見たくなること必至。

#『刑事グラハム/凍りついた欲望』も観てみようかな…。評判は悪いけど。



負けるな日本

 

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image0973.png公開年:2007年
公開国:アメリカ、イギリス、フランス
時 間:121分
監 督:ピーター・ウェーバー
出 演:ギャスパー・ウリエル、コン・リー、リス・エヴァンス、ケヴィン・マクキッド、スティーヴン・ウォルターズ、リチャード・ブレイク ドートリッヒ、ドミニク・ウェスト、チャールズ・マックイグノン、アーロン・トーマス、ヘレナ・リア・タコヴシュカ、イヴァン・マレヴィッチ、ゴラン・コスティッチ、インゲボルガ・ダクネイト 他
ノミネート:【2007年/第28回ラジー賞】ワースト前編・続編賞、ワースト・ホラー映画賞
コピー:すべてが明らかになる

1944年のリトアニア。戦禍に巻き込まれ非難した山小屋で両親を亡くしたハンニバル少年は、妹ミーシャと2人で隠れ住んでいた。しかし、逃亡兵集団が山小屋を占拠し、ミーシャは彼らに殺害されてしまう。なんとか脱出したハンニバルは、その後、孤児院で成長するも、かつて自分が生活していた屋敷が孤児院として接収されており、そこで生活することに耐えられず脱走する。そして唯一の親族である叔父を訪ねてパリへ向かう。しかしすでに叔父は死んでおり、その未亡人である日本人女性レディ・ムラサキに温かく迎えられる。ハンニバルはそこで安心した生活をすごすことができたが、それと反比例して押さえ込んでいた復讐の念を沸き立たせていく…というストーリー。

『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』を観て、比較的質の良いビギニング物を思い出したので、再度鑑賞。

かといって、不満な点がないわけではない。本作のハンニバルが、『レッド・ドラゴン』のレクター博士に繋がっているような気がしないという意見が多いのも事実。確かに、これまで描かれてきた彼の行動の根本原因だと納得させる説得力がいまいち不足していると思う。本作で妹の復讐をする青年ハンニバルが、『レッド・ドラゴン』において、演奏するフルート奏者を見て「美味そう…」と思うレクター博士になっていくといわれても、いささか腑に落ちないものがある。
その違和感の一番の理由は、レクター博士の知的な振る舞いが、本作のラストでアメリカ大陸に渡った後に獲得されたとは思いがたい点か。要するに、『羊たちの沈黙』のハンニバルの理知的で人並みはずれた洞察力を持ちながら情に欠ける人間性が、後天的に獲得されたものとは考え難いということ。いや、後天的に獲得はされるようなレベルではない…というのが正しいかな。
つまり、本作において、もっと“元々の性向・資質・能力だった”という点を強調すべきだったと思うのだ。犯罪者が幼少期のトラウマによって生まれるという理屈に傾倒しすぎていると思う(かならずしも、幼少期に虐待を受けたりトラウマを抱えた人間が、猟奇的な犯行を犯すようになるわけではないからね)。本作のハンニバルは情の部分が強すぎる。

でもまあ、原作のある話だし(未読だが)、そこからストーリーを大きくはずすわけにもいかないだろうから、仕方がない。これまでの“レクター博士”作品によってハードルが上がっているだけで、本作自体のデキは佳作といってよい(すくなくとラジー賞にノミネートされるほど悪くほど悪いとは思えない)。戦後まもなくの雰囲気もよく出ているしね。そこそこお薦め。
でも、“ビギニング”で全てを語らないといけないルールもないが、本作と『レッド・ドラゴン』の原作は無いので、やはり本作で語りきるべき…と、なかなか複雑な思いにさせてくれる作品だ。

各作品には、蝶や拘束衣、刺青など、ビジュアル的なアイコンがあったが、本作でのそれは“日本文化”だったと思う。しかしその描写が弱い。もしかすると、外国人にとってはあの程度の日本描写で充分なインパクトがあったのかもしれないが、私には不足ぎみ。おまけに、日本ぽくないのには若干閉口してしまう。



負けるな日本

 

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image1606.png公開年:1992年 
公開国:アメリカ
時 間:92分
監 督:ブライアン・デ・パルマ
出 演:ジョン・リスゴー、ロリータ・ダヴィドヴィッチ、スティーヴン・バウアー、フランシス・スターンハーゲン、グレッグ・ヘンリー、トム・バウアー、テリー・オースティン、アマンダ・ポンボ、ガブリエル・カーテリス 他




児童心理学者であるカーターは、我が子を研究対象とするために、2年前から休業中。妻が外で働き自らが主夫を行う生活をしている。ある日友人のカレンの子供を研究対象として誘拐しようとしたカーターだったが、カレンを麻酔で眠らせたまでは良かったが、犯行が発覚しそうになり取り乱してしまう。しかし、突然現れた双子のケインのアドバイスで窮地を救わる。その後、町では奇妙な事件が多発するのだったが…というストーリー。

前日の『マジック』と似たようなテーマの作品をチョイス。サイコ描写は『24人のビリー・ミリガン』の知識をそのままぶち込んだレベルで、今となっては目新しさもないし、逆に古臭い印象。ただ、デ・パルマもサイコ描写で直球勝負したいわけではないらしく、父親の存在を登場させた点から考えると、サスペンスの味付けとして利用しているだけらしい。

公開当時はどうだったか知らないが、双子だなんていったって多重人格だってことはバレバレだし、なんといっても、開始10分も経たないうちにサクっと犯行が始まってしまうという、異様な展開の速さに面食らう。あとは、ありがちな多重人格モノの流れで展開するだけなんじゃないの?と考えていると、例の父親の件が始まるわけだ。父親も他純人格の一つ?と思わせる演出も、一つのミスリードのつもりかもしれない。沼から上がったのが妻?と思わせるのもミスリードのつもりかもしれない。そして、全編にわたってデ・パルマ節が炸裂で、ラストの子供キャッチシーンなどいかにもなんだけど、それらあらゆる演出がどうも功を奏していない。

特に、沼から上がった女性についてだが、カレンなんだか妻なんだか判別が付かなくて、わけがわからなくなってしまった。私は、はじめから見直してしまった始末(早送りだけど)。欧米人の顔の区別が付きにくいといってしまえばそれまでだけど、髪の毛のウェーブのかかり具合だとか表情とか、すごくわかりにくい(仮にわざとだとしても無意味だと思う)。
父親の件は、やはり荒唐無稽すぎて、私はどうも興醒めしてしまった。デ・パルマのファンなら別だが、そうでなければ、是非モノで観る必要はないだろう。お薦めしない。

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image1603.png公開年:1978年 
公開国:アメリカ
時 間:107分
監 督:リチャード・アッテンボロー
出 演:アンソニー・ホプキンス、アン=マーグレット、バージェス・メレディス、エド・ローター、E・J・アンドレ、ジェリー・ハウザー、デヴィッド・オグデン・スタイアーズ 他
ノミネート:【1978年/第32回英国アカデミー賞】主演男優賞(アンソニー・ホプキンス)




人形を使った腹話術で人気者となった元手品師のコーキー。メジャーなTV局からのオファーを受けるが、契約条件として求められた健康診断を拒否したことで、マネージャーと諍いを起こし、突然故郷へ帰ってしまう。彼はそこで、かつて恋心を抱いていた女性ペギーと再会。彼女は既に人妻であったが、夫のいない間に愛を育むのだった。一方マネージャは、コーキーを捜索し続け、とうとう居場所を突き止めるのだが、コーキーのただならぬ様子を目撃し…というストーリー。

ありがちな二重人格というギミックに、腹話術の人形という要素を加え、且つ、人形側が人間側の人格を支配し始めるという着眼点が秀逸である。実際の精神医学の症状としては、まあ有り得ないだろうが、フィクションのギミックとしては全然アリ。

人形を5分使わないでいられるか?って、その他の場面では全然5分以上使わずにいるんだから何とかなりそうなもので、そう考えると、健康診断で精神鑑定なんかしないんだから、なんとかなったんじゃね?と思わわなくはないのだが、それが気にならないほど、アンソニー・ホプキンスの演技は素晴らしい。レクター博士の原点と言われているけれど、確かに習作って感じ。
二つの殺人も、特別な超人的能力を発揮したわけでもなく、それが逆にリアルでよい。

惜しむらくは、やはり昨今のサイコパス作品と比較するとおとなしい点。自傷で終わるというのは、常識的でインパクトに欠けると感じてしまう。とはいえ、近頃みられない独特の雰囲気を醸し出せている作品で、低予算ムービーのお手本的作品といえると思う。この手の作品が好きな方には、軽くお薦め。

#なぜか『ハンニバル・ライジング』が観たくなってきた。

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image0513.png公開年:1998年 
公開国:アメリカ
時 間:104分  
監 督:ガス・ヴァン・サン
出 演:ヴィンス・ヴォーン、アン・ヘッシュ、ジュリアン・ムーア、ヴィゴ・モーテンセン、ウィリアム・H・メイシー、ロバート・フォスター、リタ・ウィルソン、チャド・エヴェレット、フィリップ・ベイカー・ホール、アン・ヘイニー、ランス・ハワード、ジェームズ・レグロス、ジェームズ・レマー 他
受 賞:【1998年/第19回ラジー賞】ワースト監督賞(ガス・ヴァン・サント)、ワースト・リメイク・続編賞

恋人との結婚を望むマリオンは、出来心で会社の大金を横領して逃亡する。逃亡中に、豪雨にあったため人里離れたモーテルに宿泊する。そこは青年ベイツが年老いた母親の面倒を見ながら、一人で経営しているさびれたモーテルだった。彼女がシャワーを浴びた時、突然侵入してきた人物が彼女に襲いかかり…というストーリー。1960年のヒッチコック監督による古典サスペンス『サイコ』のリメイク。

前日のオリジナル『サイコ』に続いて、リメイク版を。
オープニング、カメラアングルやカット割り、ストーリー展開にセリフ、事件の展開を音声だけでかぶせる演出までまったく同じ(変わったのは、物価とか、車の値札がついてるとか、覗き穴を見ている様子とか、本筋とはあまり関係ない部分)。それはもう同じというより複製の域。『椿三十郎』のリメイク版を思い出してしまった。リメイクの意味は?と問いかけずにはいられない。大学生の卒業研究作品とか、TV局制作ドラマのイチ企画モノっていうなら許すけど、これならフィルムに着色しただけのほうがよっぽどよくはないだろうか。
とはいえ、1960年にはすでにカラー技術が確立されていたにもかかわらず、ヒッチコックはあえてモノクロにした、、、と聞いたことがある。だから、カラーすることを含め現代の技術を加えたいなら、もう一押し、いや二押しくらいしないと、まともな“リメイク作品”として評価を得るのは難しいだろう。リスペクトのあまり完コピしてしまうという罠に陥り、監督自らのイマジネーションを存分に発揮できなかったこと。これが失敗原因のすべてである。

#リメイク版『椿三十郎』が最後の最後の演出だけが違うように、本作も女装したノーマンが背後から襲ってくるシーンの繋ぎとか、分析医の回りくどい説明とかを治したかっただけなのかも…

オリジナルでアンソニー・パーキンス演じる神経質ぽかったノーマンは、本作では短髪のぽちゃぽちゃ大男に。さらにジュリアン・ムーアが妹って…(まあ、すごく若作りしてるけど)。オリジナルをまったく知らずに観れば、もしかしたらOKか?と思えなくもない。でもそれはリメイク版のデキがいいという意味ではなく、完コピのおかげで要所要所のツボが押さえられているからであり、ヒッチコックのすごさを証明しているにすぎない。

オリジナルを未見ならば、本作でもいいかもしれないが、さすがにお薦めはしない。

#血はなぜか白黒のほうが血に見えるから、不思議だねえ。

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imageX0006.png公開年:1960年 
公開国:アメリカ
時 間:109分  
監 督:アルフレッド・ヒッチコック
出 演:アンソニー・パーキンス、ジャネット・リー、ジョン・ギャヴィン、ヴェラ・マイルズ、マーティン・バルサム、サイモン・オークランド、ジョン・マッキンタイア、ジョン・アンダーソン、パトリシア・ヒッチコック 他
受 賞:【1960年/第18回ゴールデン・グローブ賞】助演女優賞  ジャネット・リー
【1992年/アメリカ国立フィルム登録簿】 新規登録作品


アリゾナに住むマリオンとサムは昼間から密会。結婚をねだるマリオンだが、サムは経済的な理由をつけてはぐらかす。その後出勤したマリオンは銀行に預けるようにいわれた大金を出来心から横領してしまう。逃避行の末、あるモーテルにたどり着いた彼女はそこの経営者ノーマンと会話を重ねるうち、自首しようと心に決める。しかし、部屋でシャワーを浴びるマリオンに、突然侵入してきた影が襲いかかり…というストーリー。

実は、以前に98年のリメイク版を誤って借りてしまい冒頭だけ観たのだが、名作なのにリメイクを先に観ちゃうのってどうなの?と思い、途中で止めてしまったことがあった。しかし、その後すぐにオリジナルを借りたか?というと、別の作品に浮気してそのまま観ずじまい。先日、BSで本作が放送されたので、チャンス!とばかりに録画して、この度、鑑賞に至ったわけである。明日は続けてリメイク版を観ることにする。長年の宿題をやっと達成である。

往年の名作なのでネタバレしても問題ないだろうが、未見の人は以下読まないでね。

はじめの横領の展開と、タイトルの“サイコ”が結びつかなかったが、30分経過したくらいから、それまでタブーとされていた精神異常犯罪にスポットを当てた問題作に変貌。
時間も適当で、内容も複雑ではないし、テンポも良く飽きさせない。引きの画が少なく、漫画のようなアップショットの連続が多いが、それが妙な閉塞感と緊張感を醸し出している。全編にわたってこのテンションの張りが維持されているのは、実に秀逸。アンソニー・パーキンスの個性的な表情と演技力も目を惹く。

しかし、なんといっても、この人が主人公として展開していくのだろうな…と疑いもしなかったのを裏切ってくれただけでも、私にとっては充分衝撃である。

条理も救いも一切ないラストというのは、当時としてはかなり新しく感じられたことだろう(あまりヒッチコック作品は観たことが無いのだが、ラインナップ中、毛色が違う一作なのではなかろうか)。アメリカ国立フィルム登録簿に登録されているが、純粋に名作というよりも、現在まで脈々と続く“サイコ”物のパイオニアとしての評価が大きいのだと私は考える(実際に、こういう症例があるかどうかなんて、どうでもいいレベル)。

#パート4まであるらしいのだが、これらはレンタル可能なのだろうか。出会ったら、借りてみたいかも(まあ、他はヒッチコック作品ではないから、微妙なのかもしれないけど)。

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image1458.png公開年:2008年 
公開国:アメリカ
時 間:94分  
監 督:ティム・イアコファーノ
出 演:テッシー・サンティアゴ、フランク・ホエーリー、クリス・ブルーノ、バート・ジョンソン、エリザベス・バロンデス、エイミー・ウォルデン、チャールズ・ハルフォード 他





犠牲者に対し心肺停止と蘇生を繰り返し、相手が殺してほしいと懇願するまで続けるという猟奇殺人犯カスプ。この凶行を阻止するため、カスプの最初の犠牲者だったマヤが投入される。彼女は、1年間の昏睡状態の後に他者の内面世界へ入り込む不思議な能力を身につけ、それを活用してFBIや保安官と共にカスプを追いつめるも、あと一歩のところで取り逃がしてしまう。やがて、再び犯行に及んだカスプは彼女へのヒントをわざと残していき、彼女はそれをもとにカスプに迫るのだったが…というストーリー。

????これは本当に続編か?前作は心理学者が主人公だったはずだし、とても斬新な映像センスだったことが強く印象に残ってるのだが(内容はさほどおもしろくなかったけど)、本作とは共通項が無いような…。
半分まで観て、どうも釈然としないので、調べてみたが、監督も脚本も別人だし、主人公の設定も別物。共通点は、人の精神に入るということだけか。
前作は、暗さと残酷さが共存して、実に幻想的な世界で目を惹いたのだが、その要素がまったく本作にはない。何が“2”なのか。これはサギに近い。面白いというなら許そうとも思うが、ヒドくつまらない。犯人はすぐ検討がつくし、謎解きのつもりでつくっているのだろうが、まともな謎解きになっていないし、残酷さも中途半端。1作目に失礼だから、せめて迷惑をかけないように別の映画として出してあげようよ。

もちろんお薦めしない。というか、100円レンタルの金額すら惜しい。これを観て、時間がもったいなかったと思う人間はいないはず。駄作警報発令。

#そりゃ、日本未公開だわ。

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image1454.png公開年:2008年 
公開国:カナダ、アメリカ
時 間:168分  
監 督:ジョナス・アカーランド
出 演:デニス・クエイド、チャン・ツィイー、ルー・テイラー・プッチ、クリフトン・コリンズ・Jr、パトリック・フュジット、ピーター・ストーメア、バリー・シャバカ・ヘンリー、エリック・バルフォー、ポール・ドゥーリイ、チェルシー・ロス、トーマス・ミッチェル、リアム・ジェームズ、マンフレッド・マレツキ、アルヌ・マクファーソン 他
コピー:美しき殺人鬼の罠に、世界が堕ちる


妻を病気で失ったエイダン・ブレスリン刑事は、仕事が忙しいことにかこつけて手をかけてこなかった2人の息子との関係に悩んでいる。そんなある日、銀のトレーに生きたままペンチで抜かれたと思われる大量の歯が発見され、その現場には“COME AND SEE”というメッセージが残されていた。続いて、中年女性メリー・アンが拷問殺人の犠牲者に。そのショッキングな死体の第一発見者は彼女の養女ある残る東洋系少女クリスティン。ところが捜査が行き詰まる中、クリスティンは自分がメリー・アンを殺害したと告白、不敵な笑みを浮かべて共犯者による猟奇殺人はまだ続くとブレスリンを挑発する…というストーリー。

黙示録の名前くらいは聞いたことあれど、四騎士となると、日本人にはあまり馴染みはないだろう。カトリック系でも宗派によっては黙示録を正式な聖典に含めない場合もあるし、プロテスタントにいたっては論外。『セブン』の七つの大罪は旧約聖書なので、カトリックどころか、ユダヤ教もイスラム教まで聖典の一つなのだから、その知名度・理解度には雲泥の差があると思われる。

そういう私も四騎士が黙示録に出てくるくらいのことは知っているけれど、その色や行動や意味についてはさっぱり。本作の中でも滔滔と説明的なセリフが出てくるところをみると、やっぱり本国でも知らない人が多いということだろう。
まあ、その説明を聞いても、「キカイダー四人衆って、黙示録の四騎士がモチーフなんだろうなぁ…」とか、そういうことしか浮かばない。元々イメージが無いのだから、そこからおどろおどろしいイメージが涵養されるはずもなく、仕方が無いので、スプラッタ的・スナッフムービー的要素を加味しないと、緊張感が保てなくって、結局、R指定になっているという有様。

ネタバレになりそうだが…、15年前ならいざしらず、いまさらこんなオチでは、だれも納得しないだろう。あまりに容易に読めすぎて、これはミスリードしているのであって、本当は別のオチがある、、と、私は信じて疑わなかったのだが、びっくりなことにそのまま。脚本の後半はぼやけまくって、結局、四騎士って誰と誰のことだっけ?と考えてしまううような始末。もちろん見返す気などおこらず。児童虐待だといわれてもピンと来ないレベルだし。

『セブン』が七つの大罪で、本作が四騎士ならば、面白さも7分の4くらいか?と言いたいところだが、7分の1くらいだと思ったほうがいい。とりあえず、新作でレンタルすることはやめよう。旧作(それもキャンペーンかなにかで最安)でレンタルして、なんとか許される程度である。要するにお薦めはしないということ。

#チャン・ツィイーにとって、本作のキャリアはマイナスなのでは?(というか、本作のオファーを受けなければいけないような状況なのかな…)。
 

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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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