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公開年:1999年
公開国:アメリカ
時 間:120分
監 督:ピーター・カソヴィッツ
出 演:ロビン・ウィリアムズ、ボブ・バラバン、ハナ・テイラー・ゴードン、アーミン・ミューラー=スタール、リーヴ・シュレイバー 他
コピー:笑ってごらん、命をかけて。
第2次大戦中、ナチス占領下のポーランド・ゲットー。ある夜、元パン屋のジェイコブは、ドイツ軍司令部のにて、ソ連軍が400キロ先まで迫ってきているというラジオニュースを耳にする。翌日、この朗報をうっかり友人に教えてしまうと、またたく間にゲットー中に流れ出し、ジェイコブがラジオを持っているという嘘までも広まる。ラジオを持っていることがナチスに伝われば重罪に処されるのだが、ジェイコブの話が広まってから自殺する者がいなくなったことから、彼は、危険も顧みず、解放近しという嘘のニュースを伝え続け、ユダヤ人に生きる希望を芽生えさせていこうとする…というストーリー。
第二次大戦下のポーランド・ユダヤ人・ゲットー、これがテーマの映画はワンサカあるので、食傷ぎみという人も多いだろう。しかし、設定としては究極的に重いのに、よくもここまですっきり・さっぱりまとめ上げたものだと感心する。殺戮・迫害という状況は変わらないのだが、実にコミカルに進行し、他のゲットー映画とは、一味違う。ラストもそこそこの清涼感。受賞歴こそないが、そこそこの秀作といってよい(重いテーマを軽妙に仕上げられているのは、ロビン・ウイリアムスの力量によるところも大きいか)。
ストーリー以外でも、厳格な一神教のくせになにやらコックリさん的なことをやっていたり、だれかがイヤな発言をした時にみんなで唾を吐いて穢れを祓うみたいな行動をしたり、なにやら日本人にも共通する行動をとるので、なかなか面白いと感じるところがあった。
難点をいえば、テンポに緩急がないために、中盤あたりで若干疲れてくる(というか飽きてくる)。もうすこしメリハリを利かせるために、別のエピソードを入れるべきだったろう。そこが秀作と言い切れない、正面切ってお薦めできない理由ではある。ただ、最近、ガッカリな映画が続いていたせいか、本作でも充分満足した。
公開年:2004年
公開国:カナダ、イギリス
時 間:96分
監 督:レア・プール
出 演:ウィリアム・ハート、マーク・ドネイト、パスカル・ビュシエール、ラオール・トゥルヒロ、スティーヴ・アダムス 他
コピー:世界で一番美しい神秘の蝶に会いたい。余命わずかな少年に残されたたった一つの最後の願いが 奇跡を起こす。
キラキラと輝く青い天使が、ちいさな心に舞い降りた。
末期の脳腫瘍に冒され、余命数ヶ月と宣告された10歳の少年ピートは、中南米の熱帯雨林にしか生息しない神秘の青い蝶“ブルーモルフォ”と直接見て触れることが願い。それを知った母親は、彼の尊敬する世界的な昆虫学者オズボーンへ直談判に行く。最初は、断るオズボーンだったが、ピートの熱意負け、南米行きを決意する…というストーリー。
あらすじ以上の内容はない。ただ、とにかくとにかく、コスタリカでロケしたという熱帯雨林の生物たちの姿が美しいし面白い。虫や鳥がジャングルの中で見せる生き生きした姿の前では、人間社会のことなど小事に見えて、人間ドラマの部分が茶番に見えて仕方が無い。子供の病気の件なんかサブストーリーくらいの扱いにして、自然をメインにひたすた写したほうがよかったと思う。逆にそうすることで、人間ドラマが生きたに違いない。そうすればカルト的な人気になっていたかもしれない。
そのためには、ミュージックPVの監督なんかを起用するとよかったかもしれないのだが、本作な難病の子供に希望を与える団体が援助しているという噂もあったので、その部分を判りやすく入れる必要があったのだろう。スポンサーが内容に影響を与える悪い例といえる(ただ、本作をみて難病の子や家族が元気付けられるとは到底思えないのだが、皆さんはどう思うか)。
もう一つ、悪い点というか、製作者として罪なところがある。本作は実話ベースで、実際の昆虫学者のエピソードらしいのだが、そのくせ、虫の扱いがありえないのだ。貴重な蝶を捕まえて羽を持つだろうか。かごにいれるだろうか(三角紙というやつにいれるのでは)。注射で虫を殺すか(大昔の昆虫解剖セットじゃないんだから)私は昆虫採集については、素人同然だが、ものすごく違和感を感じる。映画をつくる時に、こういう点をチェックすオブザーバーを置かなかったのだろうか。また、モデルになった昆虫学者はクレームを言わなかったのだろうか。本当に疑問だし、そういう製作姿勢は許されるのだろうか。
まあ、夢を与えるのはいいことだが、そういう詰めが甘いことで興醒めさせる必要はない。
再度いうが、本作は、自然メインで撮ったら面白かっただろう。なにやらドキュメンタリーっぽい映画の新たなヒントを得られたようなそんな気がする(もちろん、本作は反面教師という役割だけど)。100円レンタルで損した気分にならないかどうかは、半々というところなので、特段お薦めはしない。
公開年:2006年
公開国:アメリカ
時 間:128分
監 督:スティーブン・ギャガ
出 演:ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、アマンダ・ピート、クリス・クーパー、ジェフリー・ライト、クリストファー・プラマー、ウィリアム・ハート、マザール・ムニール、ティム・ブレイク・ネルソン、アレクサンダー・シディグ、マックス・ミンゲラ、ジェイミー・シェリダン、ウィリアム・C・ミッチェル、アクバール・クルサ、シャヒド・アハメド、ソネル・ダドラル 他
受 賞:【2005年/第78回アカデミー賞】助演男優賞(ジョージ・クルーニー)
【2005年/第63回ゴールデン・グローブ】助演男優賞(ジョージ・クルーニー)
コピー:地球は陰謀でできている。
長年危険な諜報活動に従事してきたCIA工作員バーンズは引退を決意だったが、最後に極秘指令が下される。ワシントンの大手事務所で働く弁護士ベネットは、アメリカ石油企業コネックス社による大型合併を巡る調査を任される。。スイス在住のエネルギーアナリストのブライアンは、息子の事故をきっかけに、中東王族ナシール王子の相談役に抜擢される。ナシールの国に出稼ぎに来てパキスタンの青年ワシームは、突然の解雇に遭い、路頭に迷う。一見無関係な彼らの運命は、大きなうねりに飲み込まれていく…というストーリー。
本作を「解りにくい」として批判する人もいるが、残念ながらそれは映画のつくりの問題ではなく、基礎知識が無さ過ぎるのではなかろうか。別に中東情勢のプロでなくても新聞記事レベルの知識で充分理解できるはず。娯楽作品ではないので、野球のルールを知らない人がドカベンを観ても、いまいち面白くないのと一緒で、せめて9.11の後、どういう経緯でアメリカがイラクに侵攻したか、何となくの程度でもわからない人は、観ていてもちょっとツライかもしれない。
私は、他作品のレビュで、わざとらしかったり獲って付けたような説明をする映画を批判しているが、本作は、その説明がさりげなくて実にうまいと思う。これだけ巧みに背景や状況を説明してくれているのに、判りにくいという人がよくわからない。
100年前まで殺しあっていた人間がまたもとに戻るだけ…というセリフとか、神学校の先生が自由主義の敗北を熱く語ったりするシーンなど、うすら寒さすら覚えるくらいだ。特に後者は、考えさせられる。正直、神学校の先生が言っていることなんて、イスラム原理主義に偏向したいささか的が外れた理論なのだが、あれを子供に刷り込んで形成された社会は、その偏狭さはなかなか解消されるものではない。中国や韓国の反日教育も同じだし、日本だって一部の組合員による偏向教育も程度の差はあれ同じこと。
中東の裏側では、こんな恐ろしいことが行われているのだなぁ、、、アメリカなんてロクな国じゃねえ、近いうちに滅びるぞ…と思いかけて、もう一人の自分が“待った”をかけた。冷静になったら製作サイドの政治的意図が臭ってくるではないか。いかんいかん、あぶないあぶない。これはもっともらしいけれど、プロパガンダ映画っぽいぞ!少なくとも、これに近いようなことがあるかもしれないけれど、これが真実だと信じ込むのだけはやめよう。
もう一度いうが、娯楽映画ではないので、これを観たからといってストレス解消にもならないし、知的になれるわけではない。見る価値はあるか?というと無い。もっともらしい話に騙されてはいけないという、戒めにはなる。
公開年:2006年
公開国:アメリカ
時 間:103分
監 督:ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス
出 演:グレッグ・キニア、トニ・コレット、スティーヴ・カレル、アラン・アーキン、アビゲイル・ブレスリン、ポール・ダノ、アビゲイル・ブレスリン 他
受 賞:【2006年/第79回アカデミー賞】助演男優賞(アラン・アーキン)、脚本賞(マイケル・アーント)
【2006年/第32回LA批評家協会賞】ニュー・ジェネレーション賞(ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス、マイケル・アーント
【2006年/第60回英国アカデミー賞】助演男優賞(アラン・アーキン)、オリジナル脚本賞(マイケル・アーント)
【2006年/第22回インディペンデント・スピリット賞】作品賞、監督賞(ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス)、助演男優賞(アラン・アーキン、ポール・ダノ)、新人脚本賞(マイケル・アーント)
【2006年/第12回放送映画批評家協会賞】アンサンブル演技賞、脚本賞(マイケル・アーント)、若手男優賞(ポール・ダノ)、若手女優賞(アビゲイル・ブレスリン)
【2006年/第19回東京国際映画祭】最優秀監督賞(ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス)、最優秀女優賞(アビゲイル・ブレスリン)
【2006年/第32回セザール賞】国映画賞(ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス)
コピー:夢と希望を乗せて、黄色いバスは行く
アリゾナ州に住むフーヴァー一家は、問題を抱えた人間揃い。父親リチャードは人を見下した人生成功理論を振りかざし、それを出版して一儲けを目論む。長男は、そんな父親に反抗して無言の行を続け、9歳の妹オリーヴは無謀にもミスコン優勝を夢見る。ヘロイン常習の祖父は好き勝手を言いたい放題。そこへゲイで自殺未遂をした伯父が加わり、ますます混沌とした状態に。母親はそんな彼らをなんとか取り持とうとするが一向にバラバラのまま。そんな時、オリーヴ念願の美少女コンテスト出場のチャンスが訪れるが、旅費節約のため、壊れかけのミニバスに家族全員で乗り込んで、開催地のカリフォルニアを目指すことになるのだが…というストーリー。
昨日の『ダック・シーズン』のがっかりを、一気に挽回させてくれた、傑作ロード・ムービーだ。
特徴的なキャラを設定して、あとは旅にでも出してみて、さてどうなるかな…的な感じの作り方で、もしかすると結果オーライ、偶然うまいこと仕上がったってことなのかもしれないのだが(監督にしても脚本家にしても、その後、活発に作品に参加しているわけでもないようだし)、仮にラッキーパンチだったとしても、喰らってみる価値のあるパンチだと思う。
むかついてくるくらいのダメ男ばかりのメンバーだし、旅程でのエピソードも突飛に見えるのだけど、冷静になって考えれば、言うほど常軌を逸しているわけでもないのだ(それが証拠に、始めは唯一のまともなキャラに見えた母親も、話がすすむにつれて、他のキャラと変わらなくみえてくる)。その絶妙加減が、“ゆるさ”に繋がって、なんともいえない雰囲気を作り出して、私は引き込まれた。
ミスコン出場をやめさせようとする家族の意見は、一昔前の日本で流行った「ナンバーワンじゃなくオンリーワン」的な考え方と捉える人がいるかもしれないが、私はそうじゃないと思う。だから、本作は勝利至上主義批判をしたい作品でもないと思う。だって、オンリーワンは、ある意味、負けを負けと認めない姿勢だけど、本作は負けは負けとしてまず受けきる…っていうプロレス的な姿勢でしょ。全然違う。
だから、壊れた家族がどうやって修復されていくか…ということを描いた物語だとも思わない。負けない人生なんて人生じゃないんだから、目を背けるなよ!っていうメッセージを、私は受け取った。だって全員負け犬で、その負けていることを認められないが故に、奇行に至っている人ばかりだものね。オリーブを守ろうとして、家族全員で揃って負けて、全員でその負けを正面切って受け切って、全員が飄々として笑ってるんだもん。こっちまで清清しくなってくるよ。
それにしても、幼女のミスコンなんざが各地で開催されているアメリカって所は、頭がおかしいよ。
あのミスコンを台無しにした家族のほうに嫌悪感をいだく人がいるのではないかと、私は、想像している(そういう輩は絶対いる)。趣味や考え方の相違なのでとやかく言うつもりはないが、そう思うような人とは、ちょっと友達にはなれませんな。単純に気色悪いでしょう。幼女に大人のまねごとをさせるのなんて。させるほうも、それを見て喜ぶほうも、性的倒錯者だよ。だから、オリーブが、ストリッパーまがいのダンスを披露したのには、拍手喝采。溜飲が下がるよ。なんでオリーブの踊りを見て、他の大人たちが嫌悪を抱いたかって、それは、一皮剥いた自分をみさせられたから。それでも、それが自分の姿であることに気付かないアメリカ人。救いがないね。
とにかく、傑作。引き合いにだして申し訳ないけれど、同じロードムービーの『僕の大事なコレクション』の2倍くらい面白い。強くお薦めする。
公開年:2004年
公開国:メキシコ
時 間:90分
監 督:フェルナンド・エインビッ
出 演:ダニエル・ミランダ、エンリケ・アレオーラ、ディエゴ・カターニョ・エリソンド、ダニー・ペレア、ディエゴ・カターニョ 他
ノミネート:【2005年/第21回インディペンデント・スピリット賞】外国映画賞
コピー:アヒルだって空を飛ぶ。
日曜日の昼、留守番を頼まれた男の子のフラマは、大親友のモコとTVゲームで時間をつぶすことに。そこへ、隣の部屋に住む年上の女の子リタが、オーブンを使わせてほしいと押しかけてくる。フラマとモコはピザを頼むが、しかし11秒遅かったと言いがかりをつけて支払いを拒否。すると宅配人のウリセスは金を受け取るまで動かない、と玄関に座り込んでしまい、四人の不思議な昼下がりが始まる…というストーリー。
他にも色々な映画祭で受賞しているようなのだけど、よく知らないので記載していない。特にヨーロッパでは高い評価を得ている模様。しかし、メキシコのアカデミー賞を総ナメ状態だったらしいのだが、私には「何が?どこが?」という感じ。
本作についてのコメントや紹介文をよむと、とても好意的であることが多いのだが、私にはピンとこなかった。さらには本作を“コメディ”と分類しているところもあるのだが、私は、一箇所たりともクスりともしなかった。“普通の昼下がりを淡々と表現しつつも、笑わせたりホロリと泣かせたりしてくれる…”とかいうご意見には、まったく共感できず。一生懸命良さを見つけようとしたが、どうも私とは合わないようで、お奨めしようがない。
別に、特段悪い作品だとは思わないのだが、ある日、こういうことがありました…。ああ、そうですか…。でおしまいな感じ。ホラー系の映画を3本連続で観せられた後に観たら、確かにほっと心温まるかもしれないけど…。
もうしわけない、本作についてはこれで勘弁して欲しい。毒の無さ加減が、まったく私の好みとズレていた…ということで。
公開年:1982年
公開国:アメリカ
時 間:137分
監 督:ジョージ・ロイ・ヒル
出 演:ロビン・ウィリアムズ、メアリー・ベス・ハート、グレン・クローズ、ジョン・リスゴー、ヒューム・クローニン、ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン、ポール・ヘンリード、クロード・レインズ 他
受 賞:【1982年/第48回NY批評家協会賞】助演男優賞(ジョン・リスゴー)
【1982年/第8回LA批評家協会賞】助演男優賞(ジョン・リスゴー)、助演女優賞(グレン・クローズ)
子供は欲しいが夫は欲しくないというポリシーの看護婦のジェニーは、意識不明の傷病兵と一方的にセックスし妊娠。生まれた子供はガープと名づけられ、ジェニーはその子をひとりで育て、高校に通わせる。やがてガープは作家になり、レスリング部のコーチの娘と結婚し、よき父親となる。一方、ジェニーは 『性の容疑者』という題名の自伝を書いてベストセラー作家になり、一躍フェミニストたちの憧れの的になる。彼らは幸せな人生を送るかに見えたが…というストーリー。
アメリカでは1980年あたりに大ベストセラーになった小説が原作らしいのだが、本作を観た限りで言わせてもらうと、原作の面白さをそのまま映像作品にすることには失敗したようだ。
おそらく原作は、当時の時代の空気を、ジョン・アーヴィングの口から毛穴から取り込んで、すべてを指先に集めて書いたような、作品なんだろうなと、なんとなく匂いは感じる。しかし本作は、動いている時代の波のようなものが一切感じられず、そこには、周囲の人間や社会を気遣っているようなことを口ではいうが、決定的に他者に共感する能力が欠けている人間ばかりが登場する。私はいささか気分が悪くなってしまった。
ネタバレにもなってしまうが、、、、見るに耐えないようなくだらな事故で、子供一人を殺し、もう一人の子供の体に瑕疵をつくるようなことをしているのに、周囲の大人が一番に気にしているのは、バカな大人を救うことである。胸クソ悪い話にもほどがある。
137分もあるのに、脚本の構成がものすごく悪いせいか、メリハリがない。質のいい原作におんぶに抱っこで、とりあえずなぞりさえすれば何とか成立するとでも思っていたのではなかろうか。絶対にこんなレベルの内容がベストセラーになるわけがないとは思うので、原作はもっと違うと信じたいのだが、だからといって原作を読んでみる気をおこさせない。そんなレベルの映画だと、私は思う。好みは別れるところだが、私はお薦めしない。
#DVDに日本語吹替え音声がないところを見ると、TV放映は無かったんだろうな。まあ、感動させるわけでもないし、かといって深く考えさせたり、尖った表現があるわけでもないし、微妙な作品だもの。私がTV局の人間なら放映権は買わないもんなぁ。
公開年:1988年
公開国:アメリカ
時 間:126分
監 督:アラン・パーカー
出 演:ジーン・ハックマン、ウィレム・デフォー、ブラッド・ドゥーリフ、フランシス・マクドーマンド、R・リー・アーメイ、ゲイラード・サーテイン、スティーヴン・トボロウスキー、マイケル・ルーカー、プルイット・テイラー・ヴィンス、パーク・オーヴァーオール、ケヴィン・ダン、バディア・ジョーラ、トビン・ベル、リック・ウォッシュバーン、トム・メイソン 他
受 賞:【1988年/第61回アカデミー賞】撮影賞(ピーター・ビジウ)
【1989年/第39回ベルリン国際映画祭】男優賞(ジーン・ハックマン)
【1989年/第43回英国アカデミー賞】撮影賞(ピーター・ビジウ)、編集賞、音響賞
1964年の夏、ミシシッピー州ジュサップの町で、三人の公民権運動家が行方不明となる。その捜査のためにFBIは、元郡保安官でt叩き上げのルパートとハーバード大出のエリートであるアランを派遣する。しかし、町の人々はあからさまに敵意を示し、さらに少しでも彼らに協力的な態度を見せた人間は、家を焼かれたり、リンチにあうなどし、口を重く閉ざすことになるのだった。遅々として捜査は進まず苛立つアランに対し、ルパートは、保安官スタッキーの仲間たちが事件に関わっているという確信を抱くのだが…というストーリー。
三人の公民権運動家が殺害される事件は史実であるが、その時の捜査官の働きっぷりについてはフィクションのようである。ただ、当時の町の状況は本作どおりのようだ。
ジーン・ハックマン演じるルパートは「南部の白人が本当に憎んでいるのは黒人ではなく貧しさなんだ」と語るが、これはある意味、真実である。自論だが、この世の人間がとる行動には二種類がある。それは、自分が他人より優位に立ちたい場合に、自分の能力を高めようと努力するか、周りの人間を落としめて相対的に自分を上位にするかのいずれかである。あなたの周りにも、後者の行動をとっても、はずかしともなんとも思わない人間が必ずいるはずである。
人間は物事(特につらいこと)の理由を考えてしまう。何で私だけこんなにつらいのだろう…と。そして答えがみつからない場合は、容易な答えをさがしてきて納得しようとする。アメリカ南部の白人も、自分の貧しさの理由を、黒人のせいだと結びつけた(性格にはWASP以外だが)。その結びつけは、当初はおふざけのようなものだったかもしれないが、次第にもっともらしい理論形成をしていく。その中で子供が成長すると、その理屈の産まれた経緯は忘れらされ一人歩きする。もうこうなると止められない。産まれた理由は消失しているのだから、自然現象のようにそれが正しいと信じて疑いすらしない。他州の人間から非難されても、何を馬鹿なことを…という反応になるのは、もっともなのだ。
今では黒人の大統領が生まれ、本作の舞台であるフィラデルフィアにも黒人市長が生まれている。隔世の感はあるが、現在でもKKKは存在するし、人種差別という言葉が死語になったわけでもない。
人種差別は、無知や無慈悲さや不正な教育のせいで生まれると思う方もいると思うが、発端は自己顕示欲の間違った発露によっておこる。規模は小さいがいじめも同じロジックで発生すると私は思っている。
話は変わるが、そういえば、本作の元ネタである三人の公民権運動家殺害事件の容疑者(KKKのメンバー)が2005年になって逮捕されるというニュースがあったと思う。それも、死刑に時効がないからなのだが、最近の日本でも死刑の時効撤廃が考えられているところで、地味に結びつく。
もしかすると、本作は、今こそ観るべき映画なのかもしれない。ジーン・ハックマンの演技もものすごくよい(同じ刑事を演じた『フレンチ・コネクション』よりも、本作のほうが好きである)。未見の人は、是非観て欲しい作品だ。
公開年:2001年
公開国:アメリカ
時 間:168分
監 督:マーティン・スコセッシ
出 演:レオナルド・ディカプリオ、キャメロン・ディアス、ダニエル・デイ=ルイス、ジム・ブロードベント、リーアム・ニーソン、ヘンリー・トーマス、ブレンダン・グリーソン、ジョン・C・ライリー、ゲイリー・ルイス、ロジャー・アシュトン=グリフィス、バーバラ・ブーシェ、リーアム・カーニー、スティーヴン・グレアム 他
受 賞:【2002年/第69回NY批評家協会賞】男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)
【2002年/第28回LA批評家協会賞】男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)、美術賞(ダンテ・フェレッティ)
【2002年/第60回ゴールデン・グローブ】監督賞(マーティン・スコセッシ)、歌曲賞(U2“The Hands That Built America”)
【2002年/第56回英国アカデミー賞】主演男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)
【2002年/第8回放送映画批評家協会賞】主演男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)
コピー:この復讐が終われば、愛だけに生きると誓う。
すべては、愛のためのに。
1846年、ニューヨークのファイブ・ポインツでは、アメリカ生まれによる組織“ネイティブズ”とアイルランド移民の組織“デッド・ラビッツ”が対立。その決闘により、デッド・ラビッツのボスであるヴァロン神父は、ネイティブズのボス・ビリーに殺された。ヴァロン神父の子・アムステルダムは少年院に投獄され、復讐を誓いながら15年の歳月が過ぎる。ファイブ・ポインツは、ネイティブズに仕切られ腐敗し、デッド・ラビッツは既に壊滅していたが、アムステルダムは復讐のため素性を隠しビリーの組織に潜り込むのだが…というストーリー。
TV放映をしていたけれど、チャンネルを合わせたら最後のほうだったので、再度DVDで観た。二度目の鑑賞かな。
スコセッシ作品といえば、“カトリック”“イタリア系移民”“イエス・キリストの投影”と、お約束なのだが、“イタリア移民”ではなく“アイルランド移民”と変わっているだけで、本作もパターンははずれていない。
アカデミー賞がなかなか獲れなかったわけだけれども、私のようにたいして詳しくない人間でも、作品は違えども同じテーマ(というか要素)が繰り返されていることには、気付く。よく考えるとそういう意味ね…程度ならいいんだけども、判りやすすぎるわけで、いくら個々の作品のデキが良くても、「また同じだね」という感が拭えない以上、いま一歩受賞にいたらなかったのもわからなくもない。
ハリウッドはユダヤ系社会だし、このテーマをよしとするとは思わないし。その後、雇われ監督としてメガホンを振るった『ディパーテッド』で作品賞を受賞するわけだが、雇われ監督だったために、この明らさまな要素が軽減したことが功を奏したと私は思っている。元々彼の才能は評価していたけれど、お約束パターンが鼻についていた人や、賞をあげるきっかけがほしかった人には、待っていました状態だったろう。
9.11によって、公開が延期された理由は、民族対立がニューヨークで行われていたという史実が、当時の社会感情にそぐわないと判断されたようだが、とにかく、ニューヨークにこういう血なま臭い歴史があったことを、アメリカ人でも知らない人が多かっただろうから、意味深い作品だと思う。
実のところ、ドラマとしての面白さがそれほど秀でているとは思わないし、感情が揺さぶられるわけでもないし、考えさせられる内容でもないので、これだけ暴力的でエグいシーンがあるにもかかわらず、総合的にはとんがった所がない映画である。移民の歴史を身近に感じている人には感じるところはあるのかもしれないけれど、お薦めしてまで観てもらう内容ではない。今後、TV放送があるときには、観ればいいんじゃないか…その程度のお薦め具合だ(ただ、尺が長いので地上派放映時は、間違いなくカットされるとおもうけどね)。
終わり方が、なにやら香港映画っぽい感じがして、その後の『インファナル・アフェア』リメイクである『ディパーテッド』の萌芽が感じられるのは、私だけだろうか(私だけだろうな…)。
公開年:2006年
公開国:ドイツ
時 間:138分
監 督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出 演:ウルリッヒ・ミューエ、マルディナ ゲデック、セバスチャン・コッホ、ウルリッヒ・トゥクール、トマス・ティーマ、ウルリッヒ・ミューエ 他
受 賞:【2006年/第79回アカデミー賞】外国語映画賞
【2007年/第74回NY批評家協会賞】外国映画賞
【2006年/第32回LA批評家協会賞】外国語映画賞
【2007年/第61回英国アカデミー賞】外国語映画賞
【2006年/第19回ヨーロッパ映画賞】作品賞、男優賞(ウルリッヒ・ミューエ)、脚本賞(フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク)
【2006年/第22回インディペンデント・スピリット賞】外国映画賞
【2007年/第33回セザール賞】外国映画賞(フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク)
コピー:この曲を本気で聴いた者は、悪人になれない
1984年、冷戦体制の東ベルリン。国家保安省の局員ヴィースラー大尉は、反体制的疑いのある劇作家ドライマンとその恋人の舞台女優クリスタを監視し、反体制の証拠を掴むよう命じられる。さっそくアパートには盗聴器を仕掛け徹底した監視を開始するが、音楽や文学を語り合い、深く愛し合う彼らの世界に、だんだんと共鳴してしまい…というストーリー。
この、数々の受賞歴はダテではない。よくできた作品だと思う。
ただ、評価が難しい点が一つある。ヴィースラーが心変わりしていく過程が、いまいちぼんやりしているところだ。観る人によっては、そんな冷徹な上に他人に講義までするような人間が、自分の信条や地位を度外視するほど、心変わりするだろうか?という疑問が湧くと思う。それが腑に落ちるような演出というか説明はできていないと思う。とはいえ、もっとわかりやすく対象者に心酔していくところや揺れる心情をちりばめたほうがいいのか、本作のようにどっちつかずの線のままのほうがいいのか、正直なところ胸をはってどちらが正解か言い切れないのが心苦しい。
ただ、原題は『DAS LEBEN DER ANDERN』で“他人の生活”みたいな意味だと思うが、それを『善き人のためのソナタ』にしたり、このコピーを付けているということは、日本の配給会社は、その答えを、この音楽を聴いたことがきっかけで心変わりしたと解釈したということだろう。残念ながら、私の感性は、その曲だけで心変わりしたとは見ない。むしろ、自分の揺れる心に気付かせたきっかけだと思うくらいだ。
まあ、難点はそれくらいで、総じて良くできている。パッケージや紹介文で重そうな映画だと思われるかもしれないが、比較的軽妙な仕上がりになっている。未見の方は是非観て欲しい。まず、損はしないと思う。ラストの重ね重ね具合(観ればわかる)など、ドイツ映画らしいと思うし、ちょっぴりいい気分にさせてくれた。
なんといっても、作品を観ながら、色々と思索を巡らせることができたというのは、しっかりと映画に没頭させてくれた証拠だろう。私は、本作を観ながらこんなことを考えていた。
まず、国民の情報を病的に探り集める国家機関。社会主義国家のバカバカしさを表現しているわけだが、冒頭のナレーションで、その病的さをあえて語っているのはちょっと別な意味を含んでいるのかな?と。今の民主主義国家では、この他人の生活を覗く行為は、国家機関ではなく、言論の自由というもっともらしいおもちゃを武器にしたパパラッチまがいの報道機関が行っているのだ…というシニカルな視点。
他には、社会主義や共産主義体制は崩壊したけれでも、本作に観られるようなかつて東欧諸国は、マルクスやエンゲルスの共産国家にいたる過程を無視して、一足飛びで社会主義体制になってしまったのだから、こういう状況になるのはあたりまえだ…という歴史学的視点(充分に自由主義経済が揺籃して、その先に社会主義体制が生まれるといっていたんだから、充分に自由経済を発展させればよかったのに、目先の貧富の差に我慢ならず、過程を無視したバカどもがつくった体制だから、こうなるのは当たり前…という意味。まあ、映画の批評とは直接関係ないから、この話は広げない)。
ドイツは解放後に統一したけれども、文化や経済格差によって、しばらく苦しんだ(今も苦しんでいるか?)。北朝鮮・韓国が統一することになった場合、それ以上の差があるがうまくいくか?私はドイツの程度が限界だと思う。だから、朝鮮半島はドイツのような統一はまず無いということ。それは片方が(どちらかかはいわずもがなだが)瓦解して、難民状態に近い形で吸収される結末しかない。そして場合によっては他国がその国土の一部を望み、すべてが統一されない危険もはらんでいる。
とかとか、いろいろ考えさせてくれる傑作だ。
公開年:2002年
公開国:アメリカ
時 間:94分
監 督:ピート・ジョーンズ
出 演:エイダン・クイン、ボニー・ハント、ケヴィン・ポラック、ブライアン・デネヒー、エディ・ケイ・トーマス、アディール・スタイン、マイク・ワインバーグ 他
コピー:あの夏の日。ぼくが見上げた空は今までで一番遠かった─。
カトリックの家庭に育つ8歳のピートは消防士の父と母と7人の兄弟の家族。夏休みの前にシスターから、天国にいけるかどうかは、夏の行ないで決まると言われ、気になってしかたがない。兄から、異教徒をカトリックに改宗させれば聖人になって天国に行ける、と聞かされ、早速ユダヤ教の教会堂へ行く。やがて、教会のラビとその息子ダニーと仲良くなり、ダニーを改宗させようとするのだが…というストーリー。
レモネードのくだりなんてはじめのところだけだし、全体の内容を表すものでもないのだが、これをタイトルにしてしまう日本の配給会社のセンスがよくわからない。原題は『STOLEN SUMMER』で全然違う…といいたいところなのだが、『STOLEN SUMMER』自体も直訳すれば“盗まれた夏”ということで、それも意味がわからない。天国へいくことに執心してしまい夏休みが台無しになったってこと?なにかピンとこない(意味を知っている人がいたら教えて)。
実は、一度観始めて、始めの15分くらいでやめていた。病気の子供がでてくる話で、おそらく死んでいくんだろうな…という、悲しい展開が見え見えで、なんか観進めるのがつらくなってしまったのだ。とはいえ、このまま放置しておくわけにもいかないので、2ヶ月のブランクをあけて、再開。
シナリオの盛り上がりの波のバランスが悪い。かなり後ろにになって、ピートの父親が暴れはじめるまで(実際に暴れるわけじゃないよ)、観ている側の感情は揺れて来ない。宗教の壁を越えることに対して、もっと周囲の大人の抵抗があったりして、子供達が不条理を感じてモヤモヤしたりする場面があったりすれば、もっとよかったのかもしれないが、なかなか物わかりの良い大人ばかりが登場する。
ベン・アフレックとマット・デイモンが新人発掘のために開催した脚本コンテストの選出作品らしいのだが、それほど光ったシナリオとは思えない。宗教を超えた人間同士のつながりがあるはずだ…というメッセージ自体、若いなぁ…と思う。申し訳ないが、浅い。重いテーマをあっさりとしたノリで語ってみた…とか、そういうテクニックではなくて、単に含蓄のない浅い内容だと、私は思う。もうしわけないが、お薦めはしない。
話は変わる。
ラストの方で、父親がピートに「ダニーがユダヤ人だからって、彼を天国にいかせないと思うか?」みたいなことをいい、それに対して「(カトリックである必要はないんなら)もう、シスターの話を聞かなくてもいいね」「ははは」みたいなやり取りがあるのだが、それって、鎌倉時代に日本で新仏教が生まれたロジックと一緒。だから、私は、別に新鮮だとも特段いい発想だとも思わない(新仏教なんて、出家しなくても仏になれるとか、題目を唱えれば仏になれるとか、実際に戒律を放棄してしまってるくらいだからね。素直に笑えないかな)。
公開年:1991年
公開国:アメリカ
時 間:108分
監 督:テリー・ギリアム
出 演:ロビン・ウィリアムズ、ジェフ・ブリッジス、マーセデス・ルール、アマンダ・プラマー、キャシー・ナジミー 他
受 賞:【1991年/第64回アカデミー賞】助演女優賞(マーセデス・ルール)
コピー:ふたりのドラマは、やさしくアナーキー
過激なトークで人気のDJのルーカスは、放送中での不用意な言動がもとで乱射事件を誘発し、今は転落人生。また、教授だったというヘンリーは、その乱射事件で妻を失い、過去を捨ててホームレスとなっていた。共に心に深い傷を負った二人は出会い、奇妙な友情で結ばれるが…というストーリー。
おそらく、何度かレンタルしたりTV放送を見たりで、4度目くらいの鑑賞と思われるが、半分以上、内容は忘れていた。
テリー・ギリアムのフィルモグラフィを眺めれば、精神世界を独特のセンスで映像表現してみたり、そうでなければ大人のファンタジーのような作品が多いのだが、本作においては、ロビン・ウィリアムズの幻覚に現れる、炎の騎士くらいなもの。そういう意味で、彼にしては“普通の作品”といえるかもしれない。
毎度のことでもうしわけないが、十字軍とか聖杯伝説とかアーサー王とか、ある程度の知識こそあれど、それに付随するワクワク感的なものがないので、いまいちピンと来ていない(本国の人たちは、もうちょっと別の何かを感じて、楽しめているのではないかと、ちょっと不安にはなるが、私の不勉強の致すところなのでしょうがない)。
物語の始めは、正常な人間と異常な人間に差があるように見せて、ストーリーが進むにつれて、その境界があいまいになっていき、最後は判然としなくなっていくのだが、ちょっとあからさまな主張に感じられ、私は好きではない。
残り20分まで散らかすだけ散らかして、あとはどうやってまとめるか、、という所が評価のしどころなのだが、決してスカっとした締め方でもないし、ウマい!という仕掛けでもなく、なんとなく必然性がよくわからない方法で終わらせてしまった感じ。テリー・ギリアムらしくないハッピー・エンド作品という人もいるようだが、私にはハッピーエンドには見えないんだよな(わざとそのあたりをぼんやりさせようとしているのかもしれない)。
あくまで私の好みとして言わせていただくが、テリー・ギリアム作品としてみれば物足りない。それを忘れたとしても、凡作とは言わないが、ピリっとしない作品。
#裸で公園で踊るのは、なんとなく気持ち良さげだけどね
公開年:2000年
公開国:アメリカ、フランス
時 間:97分
監 督:サリー・ポッター
出 演:クリスティーナ・リッチ、ジョニー・デップ、ケイト・ブランシェット、ジョン・タトゥーロ、ハリー・ディーン・スタントン、パブロ・ベロン、オレーグ・ヤンコフスキー 他
コピー:お父さん あなたは どこにいるのです
1927年、ロシア。ユダヤ人の寒村に住む少女フィゲレは母を亡くし父と祖母と暮らし。貧しさのため父は出稼ぎ渡米する。しかし、ナチスの侵攻により村は焼き払われ、戦火の荒波の中フィゲレはひとりイギリスへと流れ着き、キリスト教の家庭に預けられる。10年後、成長したスージーは父を探す旅に出る。スージーは旅費を稼ぐためパリでコーラス・ガールとして働くことになるが…というストーリー。
『スターリングラード』と同じ時代というか背景というか、要するにユダヤ迫害が下地の内容である。ユダヤ迫害ものはワーナー配給が多いが、本作はユニバーサル(ユニバも創始者はユダヤ人だが)。
クリスティーナ・リッチとジョニー・デップといえば、『スリーピー・ホロー』を思い出すが、『スリーピー・ホロー』のクリスティーナ・リッチは、つぼみのような少女のアイコンであったが、本作での風貌は『モンスター』の彼女に近い。はじめのかわいい子役とが、クリスティーナ・リッチの差が少し痛い。こんなになっちゃった…って感じ。
本作のシナリオは大波小波がないというか、じつに単調。流転した幼少期によりアイデンティティが喪失して、自分は何者なのかを探し求める…とか、とにかく父を探すために、困難な状況の中、がむしゃらに行動する…とか、そういう要素は見られず。どちらかといえば、状況に流さている感が強く感じられ、軸のないストーリーと感じた向きも多いだろう。流されるなら流されるなりの、喪失感とか悲哀とかがあるのだが、それも中途半端。
ヨーロッパにおける人種問題や当時の情勢が日本人にはわかりづらいという側面も無いとはいわないが、やはり根本的に強いテーマが無いことが致命傷なのだ。
主役級のジョニー・デップ、ケイト・ブランシェットを贅沢につかっているが、彼らでなければならない理由も、その効果も特に見られない。彼らはしっかり仕事はしてるのだが、役割を果たそうにも、シナリオにおける彼らの存在意義が不明確極まりないので、がんばりようが無い…といったところ。
仰々しくも、このような邦題を付けているが、特段目を見張るような歌声ではないし、そこにフォーカスを当てたのも逆効果だろう(原題は『THE MAN WHO CRIED』で歌とは関係ないし。それにしても、原題の“MAN”とは誰のことなのだろう)。
受賞歴が無いのも納得のデキ。よっぽどお好みの役者が出ていないかぎり、本作を観る価値はない。お薦めはしない。
公開年:1932年
公開国:アメリカ、フランス
時 間:113分
監 督:ダーレン・アロノフスキー
出 演:グレタ・ガルボ、ジョン・バリモア、ジョーン・クローフォード、ウォーレス・ビアリー、ライオネル・バリモア 他
受 賞:【1931~32年/第5回アカデミー賞】作品賞
ベルリンのグランド・ホテル。製造業社長のプレイジンクは事業が傾き他社との合同を模索中。踊り子グルシンスカヤは人気が凋落しつつあり気力を失っていた。多大の借財を負って盗賊に身をやつすガイゲルン男爵はグルシンスカヤの宝石を狙う。魅力的な女速記者のフレムヘンは、プレイジンクに雇われる。プレイジングの会社の経理をしていたクリンゲラインは死期が迫り自暴自棄となり、有り金でグランド・ホテルで豪勢に散在していた…というストーリー。
本作を観ようと思ったのは、群像劇『ショート・カッツ』を観たから。“グランド・ホテル方式”という言葉があるくらいで、群像劇の一形態である。同一時間・同一空間における複数人の行動を、同時進行的に描く手法である。これをつかった初めての作品ということで、この名が冠されている…というのは、映画検定では定番の問題ですな(受験する気はまったくないけど、書籍は持っている)。
かねてから、どういうものだったのか、資料研究として見てみたかったのだが、いい機会だった。
1932年の作品にしては、きちんとした群像劇になってはいて、予想していたよりは古臭さくは無かった。しかし、現代の群像劇というと、ハードだったり奇を衒った展開が多いせいか、非常におとなしく感じた(仕方ないけれど)。
映画とはいえ、舞台の延長みたいな感じで、カット割というか画角に奥行きが無いのには、目が飽きてしまった。
まったく重なり合う要素がなかった二人が、同じ人物に好意をもっていたというだけの共通点で、結ばれるといオチは、当時、好まれたノリだったんだろうね(今、これをやったら、なんだこれ?ってなる)。
#余談だが、よく、西洋人は日本人の顔の見分けがあまりつかないなんていうことを聞くが、逆も一緒である。油断して観ていたら、本作の登場人物を混同してしまった。
資料として観たわけだが、途中から純粋に楽しめるかも…と若干期待もしていたのだが、それは無かった。よっぽど古い作品や往年の名優に興味がある人や、映画検定のお勉強とかでもないかぎり、本作は観る必要はない。
#男爵役のョン・バリモアは、ドリュー・バリモアのおじいさんですかな。
公開年:2008年
公開国:アメリカ、フランス
時 間:109分
監 督:ダーレン・アロノフスキー
出 演:ミッキー・ローク、マリサ・トメイ キャシディ、エヴァン・レイチェル・ウッド、マーク・マーゴリス、トッド・バリー、ワス・スティーヴンス、ジュダ・フリードランダー、アーネスト・ミラー、ディラン・サマーズ 他
受 賞:【2008年/第65回ヴェネチア国際映画祭】金獅子賞(ダーレン・アロノフスキー)
【2008年/第66回ゴールデン・グローブ】男優賞[ドラマ](ミッキー・ローク)、歌曲賞(曲/詞:ブルース・スプリングスティーン“The Wrestler”)
【2008年/第62回英国アカデミー賞】主演男優賞(ミッキー・ローク)
【2008年/第24回インディペンデント・スピリット賞】作品賞、主演男優賞(ミッキー・ローク)、撮影賞(マリス・アルベルチ)
【2008年/第14回放送映画批評家協会賞】歌曲賞(ブルース・スプリングスティーン“The Wrestler”)
コピー:人生は過酷である、ゆえに美しい。
ランディは80年代に大活躍したプロレスラー。現在でも彼は老体に鞭打ちながら小さな地方興行で細々と現役を続けている。私生活では、トレーラーハウスに一人で住み、スーパーマーケットのアルバイトで生活費を稼ぐ日々。そんなある日、長年のステロイド常用が原因で心臓発作で倒れ、引退を余儀なくされる。レスラーではない生き方に戸惑いと不安を覚えたランディは、馴染みの年増ストリッパーに安らぎを求めたり、疎遠となっていた娘との関係を修復しようとするが、すべてがうまくいかず…というストーリー。
米アカデミー主演男優賞にノミネートされ、久々に表舞台に名の出たミッキー・ローク。往年の色男のアイコンとしての彼は存在しない。ボクシングによる顔面破壊と、重ねた整形が実際の今の姿だが、老レスラー役は、なかなかピッタリ。プロデューサーのキャスティングの勝利か。
ゴールデン・グローブや英アカデミーの男優賞は受賞しているので、もちろん成功ではあるのだが、私の評価はちょっぴり微妙。本作での彼のボディは、実際にステロイド等、薬物のなせる業だろう。ちらっと見えた彼の爪。丸く湾曲しており、多分薬物の影響。だから役作りというよりも、うまく見つけてもらったということだと思う。
ただ、『シン・シティ』のようにキワモノ的な役が多かったので、本作が一つの分岐点になれば、いいですな。
ストーリー自体は、良くある話。いいか悪いかは別として、「こんな不器用にしか生きられないやつもいるんだよ…、バカにするのはかまわねぇけど、うまく立ち回って実のねぇヤツよりはマシだと思わねぇか?」という、ノリは、男目線で言わせてもらえば、批判のしようがなくって、ある意味ズルいともいえる。ラストのスパっと感は、終始そのノリを貫いた証。フラフラしないで走りぬいた姿勢は評価したい。
日々のお仕事に疲れた人は、観た後、とりあえず明日は仕事をがんばろうかな…という気になるかもしれないので、そういう人(?)にはお薦めしよう。
#技術的には、ラストシーンでハウリング音を効果的に使っているのは、おもしろい演出で参考になった。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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