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公開年:2003年
公開国:ベルギー、オランダ
時 間:123分
監 督:エリク・ヴァン・ローイ
出 演:ヤン・デクレール、ケーン・デ・ボーウ、ウェルナー・デスメット、ヒルデ・デ・バールデマーカー、ヘールト・ヴァン・ランペルベルフ、ヨー・デ・メイエレ、ジーン・ベルヴォーツ、フィリップ・ペータース 他
ヴィンケ刑事は、12歳の娘に売春をさせていた父親を逮捕するために囮捜査で潜入していたが、正体バレたために警官隊が突入。抵抗したため父親は射殺さて、娘のビーケは保護される。一方、殺し屋のレダは、ベルギーに土地勘があったため、ベルギー内のとある殺人を依頼される。彼はアルツハイマーを煩っており、最近その進行が著しかったため辞退したが、強固に依頼され仕方なく受諾する。最初の標的だった都市開発局長カンプの殺害には難なく成功したが、次の標的が12歳の少女ビーケだったため、殺しを中止する。レダは標的が子どもだったために殺しを止めたことを伝えたが、依頼人は次の殺し屋を雇い…というストーリー。
2007年公開のアメリカ映画『ヒットマン』のDVDジャケットのパクリ…と思ったら、本作のほうが古いんだけどどゆこと?(DVD化は後ってことか?)なんじゃこりゃ…って、ジャケットを手に持て見ると“ヨーロッパ映画祭 大阪市賞”…なんじゃそりゃ。なんか大阪で開催された映画祭らしい。大阪人の心を打つ作品だったってこと?
#その映画祭以外は、日本未公開だったみたいだけどね。
長年ヒットマンをやっている男で、もうけっこうなジジイ。子供にヒドイことをするやつは許せなくて、アルツハイマーで…。アルツハイマーであることが主人公のキャラクター設定において重要な役割を占めているんだけど、本当にその要素がないと成立しないのか?ストーリー構成の面から改めて考えてみると、必ずしもそうではない。
悪者側からハメられて犯人とみなされてしまうというのは、昨日の『グリマーマン』と同じ流れ。その悪者達からも追われるが警察からも追われるという流れは悪くない。ただ、
①子供を食いものにする奴らのことは許せないが、敵の敵は味方だからね…と警察に協力してホイホイと証拠を渡すわけにもいかない。
②証拠を渡したくてもアルツハイマーで思い出せなくて、脳が通常だったころの彼が残したであろうヒントを元に、証拠物件を探してまわることになる。
この①と②の親和性がいまいちよろしくない。まず、①と②のどちらか一方だけでもストーリーは成立する。むしろ、どちらかに比重を寄せたて膨らませたほうが味が出ただろう。
急激にアルツハイマーが進行したわけでもないだろうし、普通に考えれば記憶能力に欠陥のあるヒットマンなどというのは有り得ないのだから、なんでそこまでして仕事をする必要があるのか…という部分に説得力が欠けているのは問題。ここをしっかりと設定した上で、②をメインに展開すればよかったと思う。ヒットマンとして警察と協力することなんか論外と考えており、自分で始末を付けることしか考えていない。しかし、終盤はだんだん病状が進行し自分でも何がなんだかわからなくなってくる。警察に確保された時には、かなり記憶の退行が進んでいて、警察は少ない証拠から、謎解きをせざるを得ない…、こんな感じ。
やっぱり、警察とヒットマンが歩み寄って、悪者を法廷で裁こうとするところが、興醒めするんだろうな。この①と②は、両方のいいところを阻害していると思う。ここは、原作を多少無視してでも、ブラッシュアップすべきだった。
まあ、ベルギーでこういう作品が頻繁に製作されているのかどうかよく知らないが、あまり小馴れていない感じ。良く言えば粗削り、悪く言えば洗練されていない。そんなに悪い作品ではないが、お薦めできるレベルには遥かに及ばない作品。
ただ、別に、こんなパクリジャケットにする必要なんかあったかね…。充分にオリジナルな作品として成立してるし、こんなパロディ作品みたいな扱いって失礼なのではなかろうか。『ヒットマン』とまちがって借りても憤慨モノだし、いずれにしても、日本のDVD製作会社の失礼さが鼻に付く。
負けるな日本
公開年:1996年
公開国:アメリカ
時 間:91分
監 督:ジョン・グレイ
出 演:スティーヴン・セガール、キーネン・アイヴォリー・ウェイアンズ、ボブ・ガントン、ブライアン・コックス、ジョン・M・ジャクソン、ミシェル・ジョンソン、スティーヴン・トボロウスキー、ロバート・メイルハウス、リチャード・ガント、ウェンディ・ロビー、ニッキー・コックス 他
コピー:セガール・アクションの原点。
ロサンゼルスでは、被害者を十字架にかけられたキリストのように磔にする連続殺人事件が発生しており、市民はその犯人を“ファミリーマン”と呼んでを恐怖に慄いていた。ニューヨークから赴任してきたジャック・コールは、殺人課の刑事ジム・キャンベルと組んでファミリーマン事件に当たることになった。捜査を進めていく中、再びファミリーマン事件が発生するが、被害者はジャックの前妻で、ジャックの指紋が多数発見され、彼は窮地に立たされ…というストーリー。
“沈黙”してないセガール。
本作を観ると、スティーヴン・セガールってて使えない奴なのかも…と思ってしまう。その一番大きな要員は、彼の演じるキャラクターがサスペンスや謎解きモノとマッチしないという点である。
本作で彼の仕事の幅は狭まったと思うし、実際その後は沈黙シリーズという復讐とマーシャルアーツアクションだけの人になってしまった。
コールに殺人の濡れ衣を着せようとしたのはわかるが、結局、元々のファミリーマンの事件とは全く無関係ということなのか?ファミリーマンは野放しなのか?
密輸事件の話になって、コールの過去の話になるのだが、サイコスリラーテイストではじまっておきながら、後半は“ファミリーマン”のことはどこかに吹っ飛ばしてしまう。そんなことって許されるのだろうか。
“グリマーマン”というタイトルのとおり、たしかに光のようなアクションをみせてくれてはいるけれど、そう呼ばれていた過去があるという以上のものはなく、わざわざタイトルにするほどの意味も効果もない。
ミステリアスな過去をちらつかせているが、謎の人物である意味はあっただろうか。普通にニューヨークの腕利き捜査官だった男が罠にハメられる…という展開でも、何の問題もなかっただろう。セガール側のキャラ作りの要望に従っただけなのかもしれないが、無駄に謎の人物を強調しすぎていると思う。
まるで、思いつきでエピソードを並べたようなシナリオ。行き当たりばったりで、ぼんやりと固まっていない状態で製作を続けていたのでは?と思えてくる。
また、常に上から目線のコール刑事の態度が、ミステリアスを通り越して高慢なだけに思え、それがバディ物ととしてのおもしろさを阻害している。それでも、黒人刑事ジムを演じたキーネン・アイヴォリー・ウェイアンズという役者が、もうちょっとユニークな演技を見せてくれればバランスはとれたかもしれない。残念ながらセガールの個性と対峙できるレベルではなかった。この演技では、次にいい仕事がもらえたとは思えない。
セガールにとってもウェイアンズにとっても、そしてジョン・グレイという監督にとっても、ウィークポイントばかりにスポットが当たってしまって、後のキャリアの幅を狭めてしまった作品といえるのではないだろうか。
#まるで、セガールの出世作みたいなコピーだけど、実際は真逆だと思っている。
中古とはいえDVDを買ってしまったことを後悔してしまった作品。お薦めしない。
負けるな日本
公開年:2010年
公開国:アメリカ
時 間:101分
監 督:ネイサン・グレノ、バイロン・ハワード
出 演:マンディ・ムーア、ザカリー・リーヴァイ、ドナ・マーフィ、ブラッド・ギャレット、ジェフリー・タンバー、M・C・ゲイニー、ポール・F・トンプキンス、ロン・パールマン、リチャード・キール 他
ノミネート:【2010年/第83回アカデミー賞】歌曲賞(詞:グレン・スレイター、曲:アラン・メンケン“I See the Light”)
【2010年/第68回ゴールデン・グローブ】歌曲賞(詞:グレン・スレイター、曲:アラン・メンケン“I See the Light”)、アニメーション作品賞
【2010年/第16回放送映画批評家協会賞】歌曲賞(グレン・スレイター、アラン・メンケン、ザカリー・リーヴァイ、マンディ・ムーア “I See the Light")、長編アニメ賞
深い森に囲まれた高い塔の上に住むラプンツェル。彼女は驚くほど長い魔法の髪を持っている。母親から外の世界は恐ろしいので出るなと厳命されており、18歳になる今まで一度も外の世界に出たことが無い。しかし、自分の誕生日になると遠くの空に浮かぶ無数の灯りの正体が気になって仕方が無く、いつしか外の世界に出て、その灯りの正体を確かめたいと夢見ていた。そんな彼女の18歳の誕生日前日、王冠を盗みんで追われていた盗賊フリンが塔に迷い込んでくる。魔法の髪の力で彼を捕らえるが、自分を塔から出し“灯り”場所まで連れて行ってくれることを条件に、彼を解放することに。ついに外の世界に飛び出すラプンツェルだったが…というストーリー。
“髪長姫”という童話自体、日本で馴染みがなさすぎ。アメリカでは白雪姫レベルでメジャーな童話らしいんだけど、私はほぼ知らなかった。だから、「あの原作をこんな風にねぇ…」みたいな観方はできない。
#アメリカのディズニーランドでは、プリンセス陣の仲間入りをするんだろうね。
中川翔子の吹き替えは非常にウマかった。山ちゃんにディスられることのないレベルかと。それに歌もうまいじゃないか…と思ったら歌ってるのは別人だった。この点については、似た声質の人を見つけてきた人がエラい。実にシームレス。
ネット上で妙に評判がいいのだが、正直なところ「そこまでいいかぁ???」って印象。
元々お話を知らないのでワクワクしないってのもあるし、基本的に女の子向けのお話だっていうのもあるかもしれないが、誘拐された王女が突然訪れた男の手助けで脱出する話。ありきたりの設定で、ありきたりのオチ。話自体は正直おもしろくはない。
しかし、荒くれ男達が歌う酒場のシーンや、お馬さんとのやりとり、実に悪役らしいニセ母の妨害、髪を振り乱しての逃走劇など、冒険活劇だと頭を切り替えれば楽しめるかもしれない。そう、ファンタジーじゃなくアドベンチャー物なんだよ。
現代世相を反映しているというか、なんというか、童話らしくない部分に気付いてしまい、ノリ切れない面もあった。それは、塔を脱出するくだり。
外の世界に出る手助けをして欲しいってフリンに要求しているので、物理的に出られないのかと思っていたが、自分の髪を使ってスルスル出ることはできるんだよね。そりゃあ、母親(と思ってる人)を吊り上げるくらいだから自分も降りられるわな。要するに、外にでることを精神的に恐れているってこと。つまり精神的な虐待を受けて、心が病んじゃってるわけだ、この主人公は。
髪を切っちゃうと魔法が無くなっちゃうていうのも、明らさまな処女喪失の表現だし、こういうストレートな描写には、ちょっと「ん~~~」となってしまった。童話っぽくないなぁ…と。まあ、他のグリム童話と一緒で、原作の話はもっとエグいらしいから、それでも隠喩表現になってるんだろうけど、もうちょっと間接的な表現にできなかったかねえ。
CG技術に関しては極まったといってよいほどのレベルなのだが、人物に関してはちょっと変な方向に傾いている気がする。それは目の表現。目というか眼球の表現か。どうやら、頭蓋骨に眼球がうまっているモデリングを作って、眼球を動かすノリで目線を表現しているみたい。はっきりいって気持ち悪い。
もう、原画マンという概念がないのかもしれない。画竜点睛じゃないけど、目の表現を計算にまかせちゃうと、もう芸術じゃないと思うんだよなぁ…。
女の子向けなのにおっさんがここまで楽しめたのはスゴイ…と評価すべきなのか、まあまあの及第点というべきなのか、ちょっと判断にこまる作品。
#フリン(ユージーン)が生き返るギミックだけは、もうちょっと工夫して欲しかったかな。
負けるな日本
公開年:1996年
公開国:日本
時 間:127分
監 督:市川崑
出 演:豊川悦司、浅野ゆう子、高橋和也、喜多嶋舞、岸田今日子、宅麻伸、岸部一徳、萬田久子、加藤武、白石加代子、神山繁、吉田日出子、石倉三郎、石橋蓮司、西村雅彦、うじきつよし、井川比佐志、今井雅之、小林昭二、織本順吉、大沢さやか、横山道代、川崎博司 他
ノミネート:【1996年/第20回日本アカデミー賞】主演男優賞(豊川悦司)、音楽賞(谷川賢作)、撮影賞(五十畑幸勇)、照明賞(下村一夫)、美術賞(櫻木晶)、録音賞(斎藤禎一、大橋鉄矢)、編集賞(長田千鶴子)
天涯孤独の青年・辰弥は、ラジオの尋ね人として自分の名前が流れていることを知らされる。弁護士事務所に赴くと、辰弥が400年も続く資産家・田治見要蔵の遺児であることを知らされ、そこには母方の祖父・井川丑松という人物が待っていた。母親以外との肉親の登場に驚く辰弥だったが、その場で突然丑松は毒物により死亡してしまう。その後、辰弥は、田治見家の分家の未亡人・森美也子に付き添われて、田治見家のある岡山と鳥取の県境に位置する山村、八つ墓村を訪れた。辰弥が村に入ることで、彼の身に何かがおこることを案じた弁護士は、知り合いの探偵・金田一に警護を依頼するのだったが…というストーリー。
我慢しきれず、宅配レンタルで借りてしまったよ、市川版『八つ墓村』。
『女王蜂』までの4作のイメージが頭にある状態でハードル上がりまくりで観はじめたせいか、冒頭30分までのがっかり感は半端ない。
・オープニングが格好悪い。
・弁護士事務所シーンが、まったく野村版『八つ墓村』と同じ(アングルとか)。
・浅野ゆう子のトレンディ・ドラマ臭がものすごい。
・戦後まもなくが舞台なのに、なぜか、古い匂いがしない。
・豊川悦司の演技がポンコツ。
期待を裏切られて、「もうダメだ~~」ってなっちゃった人は、ここで脱落だろう。
ただ、そこをなんとか我慢して通過すると、この『八つ墓村』はものすごく味がでてくる。いや、良くなると言い切ってよいだろう。
・ストーリー展開が原作に近い(野村兄弟が出てくる。森美也子の動機がこっちのほうがよい。田治見春代の存在に意味がある。etc)。
・濃茶の尼や久野医師の殺害の流れがスッキリしている。
・無粋な金田一の謎解きダラダラ解説がない。
・実は豊川悦司は悪くない。不思議と慣れてくる。
服装が同じだったりするので、無意識に石坂浩二と比較してしまいがちだが、話が進むにつれて、市川崑が石坂浩二のコピーをつくりたかったわけではないことがわかる。飄々として掴みどころのない金田一像を新たに作りたかったのだと思う。まったく影を見せないが故に、逆にその裏の闇を匂わせる、案外、いいキャラだったのかもしれない。
ただ、語尾が微妙に早口になったりして、キャリアの浅さは感じざるを得ない。何作か重ねれられれば、必ず味を増していったと思うのだが、『悪霊島』と同様、単発に終わってしまう。決して金田一シリーズが飽きられていたというわけではない。そのころの片岡鶴太郎にによるドラマ版が9本も放送されていたのだから。そして、前年の1995年に鶴太郎版『八つ墓村』が放映されている。そんなときに映画版をわざわざつくる制作会社がおかしいのだ。フジテレビジョン・角川書店・東宝の製作なのだが、鶴太郎版ドラマってフジテレビだからね。どういうマーケティングをやってイケると思ったのか、ものすごく不思議。
#豊川悦司による金田一耕助キャラは、稲垣吾郎に引き継がれたってところかな。彼に闇は全然感じなかったけど(稲垣吾郎って5作もやれたんだから大成功だよな)。
野村版を評価する人は多いけれど、濃茶の尼や久野医師の殺害がダイジェスト的に処理されるのと、本作のようにガッチリ流れの中で表現されているのと比較すれば、本作のシナリオが優れているのは明白だろう。本作の金田一は、手紙のインクのくだりと、犯行の動機と手順をさらっと説明しただけで、あとは、映像の流れの中で理解できる。渥美清は何から何まで説明しちゃって、それ映画じゃないよ朗読だよ。
ただ、映像面では後半になっても改善しなかったのが残念。
照明の当て方のせいで薄っぺらくなってるのかもしれないが、画質の色合いもイマイチだし、なんといっても微妙にアングルがダサい(このカメラマン、好きじゃないかも)。プロダクションデザインっていうのかな、セットや小道具や衣装がぜんぜん時代の香りを放っていない。市川版の良さは画のインパクトが半分くらい占めているのだが…。
まあ、冒頭のがっかり感をなんとか及第点まで盛り返したってところかな。『病院坂の首縊りの家』よりは断然いいと思う。
加藤武や白石加代子、小林昭二らの常連は出てくれているしね(お、考えてみると浅野ゆう子は『獄門島』に出てるじゃなないか。立派に市川版金田一ファミリーだ(笑))。
#ただ、ラストは歌じゃなくて、ズバっと終わるべきだな…。
負けるな日本
公開年:1998年
公開国:アメリカ
時 間:128分
監 督:リチャード・ドナー
出 演:メル・ギブソン、ダニー・グローヴァー、ジョー・ペシ、レネ・ルッソ、クリス・ロック、ジェット・リー、ダーレン・ラヴ、トレイシー・ウルフ、デイモン・ハインズ、エボニー・スミス、スティーヴ・カーン 他
ノミネート:【1999年/第8回MTVムービー・アワード】アクション・シーン賞(メル・ギブソン、ダニー・グローヴァー:カーチェイス・シーン)、ブレイクスルー演技賞[男優](クリス・ロック)、コメディ演技賞(クリス・ロック)、悪役賞(ジェット・リー)
【1998年/第19回ラジー賞】ワースト助演男優賞(ジョー・ペシ)
コピー:最悪の事態発生!奴らが昇進した!!
ロス市警刑事のリッグスとマータフは、ローナとリアンが妊娠していることを、任務中にお互いから知らされる。それから9ヶ月後、2人がレオと釣りに出かけると、不審な大型船に遭遇する。突然銃撃してきたため応戦。乗船して船員との格闘の末に大型線を座礁させるが、残った船員は取り逃がしてします。その船は中国からの密航船である事が判明し、船にいた密入国者が次々と入管に連行されていく中、マータフは避難用ボートの中に隠れていたホン一家を発見する。マータフは違法と知りながら彼らを自分の家に匿ってしまう。そんな時、2人の無謀な捜査が原因でロス市警が保険を打ち切られてしまったため、ロス市警は2人を警部に昇進させ、デスクワークをさせておくことにしたのだが…というストーリー。
中国マフィアの台頭が問題になっていた頃。いまとなっては中国人よりも韓国人が厄介な存在に(古い映画になっちゃったな)。
前作から6年も経過しての、まさかのファイナル復活。この6年の間に、メル・ギブソンは『ブレイブハート』で監督賞に作品賞をゲット。そりゃあ後ろ髪も無くなるわ。
結局4作全部をリチャード・ドナー監督が皆勤賞。シリーズ作品を同じ監督が始めから最後まで全部手掛けるって、あるようで無い。メイン配役だけでなくサブ配役まで皆勤賞なのもすごい。やっぱ奇跡のシリーズなんだよ。
#ちなみに、“3"と本作の間に、メル・ギブソン主演で『陰謀のセオリー』(1997)という作品を撮っている。『リーサル・ウェポン』を越えるクレイジー(というかモノホンのクレイジー)っぷりで、そのブチ切れ具合が好き。また、その前年にはメル・ギブソンとレネ・ルッソが夫婦役の『身代金』なんてのもある。どちらも好きでDVD購入済。そいつらもまた観たくなってきたぞ。
冒頭のトンデモ逮捕劇のさなかに、お互いにローナとリアンの妊娠を知ってしまうリッグスとマータフ。それから、あっという間に臨月の頃までタイムスリップ編集。だらだらしないのが、ドナー流。
前作は降格で、今回は昇進。犬は2匹とも飼っていてホっと安心。脱臼ネタに精神科医のくだりと、お約束のエピソードは全て盛り込まれており、これまで観たファンはニヤリとしないわけがない。128分と、これまでの中では最長で、若干冗長と思われるかもしれないが、それはラストなので許そうじゃないか。
“3”までで同じレベルのハチャメチャ具合になったリッグスとマータフだったが、脱法具合ではとうとうマータフが追い抜いた。肉体の老いを痛感するリッグスが落ち着き気味になっているのと比較して、もっとロートルなマータフのほうがブチギレぎみになることが多かった。ラストの戦いは、人の心を踏みにじった奴らに対する怒りと、ファミリーに対する無限の愛に加えて、自分の中の消えかかった種火みたいなものを最後に輝かせよう…みたいなそんな感情が入り混じった感じだった。
本作ではあまり事件には絡まなかったレオだったが、最後の大団円ではキーマンに。墓地でのカエルのエピソードは何がなんだかよくわからないけど、なんか苦笑いとほっこりが混ざった不思議な気持ちにさせてくれる。いい歳こいた妊婦のくせにじゃじゃ馬っぷりはそのままのコールもいい味。妊婦アクションなんて、『リーサル・ウェポン』シリーズならではだろうな。
とはいえ、ストーリー自体は、さすがに4作目ともなると疲弊しているのだが、ジェット・リーが初悪役のキャラを見事に演じきってくれたおかげでなんとかバランスがとれている印象。毎回、味のあるキャラが新登場して、次回作に繋がるわけだが、今回新登場のクリス・ロック演じるバターズ刑事は、残念ながらジョー・ペシやレネ・ルッソのレベルには未達。本当のラストっていう状況を覆すには力不足だったか(まあ、それは仕方が無い)。
いや、いいのいいの。私は最後の墓地→病院の流れで、100%涙が出そうになる。何度観ても、こんなにすっきりとほっこりが確実に感じられる作品は無いよ。4作まとめて観るべし。超お薦め。
負けるな日本
公開年:1992年
公開国:アメリカ
時 間:118分
監 督:リチャード・ドナー
出 演:メル・ギブソン、ダニー・グローヴァー、ジョー・ペシ、レネ・ルッソ、スチュアート・ウィルソン 他
受 賞:【1993年/第2回MTVムービー・アワード】アクション・シーン賞(メル・ギブソン:メル・ギブソンが乗っていたバイクのクラッシュ・シーン)、コンビ賞(メル・ギブソン、ダニー・グローヴァー)
ロス市警の刑事リッグスとマータフは、ビルに仕掛けられた爆発物の処理に失敗し、巡査に格下げされてしまう。制服を着て市中をパトロールしていると、現金輸送車を襲撃する強盗に遭遇。大捕物の末、逮捕したものの、犯人は取調室で何者かによって射殺されてしまう。その犯人が持っていたのは、密売された警察の押収武器と特殊弾薬“コップ・キラー”。捜査をしようとするリッグスだったが、内務調査部のコールが介入してきて…というストーリー。
ロス暴動のあった年のお話(古い映画になっちゃったな)。
「何よ。もう一回やれっての?」くらいの軽いノリって感じ。だったら悪ノリしちゃいますよ~ってな調子に見える。禁煙中だから犬用ビスケット食ってろ!⇒その後に狂犬登場…って、こういう安易なレベルの伏線も、臆面も無く波状攻撃されると、逆に心地よい。
前作でトレーラーハウスを破壊されたリッグスはどこで暮らしている?新登場の黒いワン公もなかなか可愛いけれど、そういえば元々飼ってたワン公はどこいった(ちゃんと次作で判明するが)?マータフ家は、そんなにいろんなものを破損されてるのに破産しないのか?などなど、細かいことなんか、まったく気にする様子もなく、ひたすら、能天気に軽口を叩き合い、次から次へと破壊と暴走を繰り返す。前作でぶっ放された弾丸の数も相当だったが、本作はそれ以上。
マータフの子供たちも成長し、元々制御不能ぎみだったけど、本作では完全にお手上げ状態で、マータフ本人も笑っちゃうしかない。
ジャケット映像でわかるとおり、二人の間からのぞくレオ・ゲッツ。彼がいなければ続編はなかったかと。そんなレオはますます暴走して、観ているこっちもイライラするくらい鬱陶しい。だけど、それ以上に、ちょっとやりすぎなんじゃねえ?ってくらい、リッグスとマータフに虐待されまくり。
リッグスにも幸せになって終わっていただきましょうくらいのノリで登場させたと思われる、レネ・ルッソ演じるコール。完全なツンデレキャラで、二人の恋愛模様はまるで漫画。でも、前作のレオがそうであったように、本作でコールが登場したからこそ、“4”ができたといってよいだろう。こういうキャラが続けざまに登場する奇跡のシリーズが、リーサル・ウェポンなのだ。
まあ、実のところ、好き勝手にめちゃくちゃやってる感じで、本作の完成度は高くないと思う。最後はふわっとした終わり方で、リチャード・ドナーの「もう、これでいいよね?」って声が聞こえてきそうな感じ。
まさか、最終作での大団円がレオとコールによって成されようとは…。まあ、“3”まで観て途中でやめる人はいないよね。
負けるな日本
公開年:1989年
公開国:アメリカ
時 間:118分
監 督:リチャード・ドナー
出 演:メル・ギブソン、ダニー・グローヴァー、パッツィ・ケンジット、ジョー・ペシ、ジョス・アックランド 他
ノミネート:【1989年/第62回アカデミー賞】音響効果編集賞(Robert Henderson、Alan Robert Murray)
ロス市警の刑事リッグスとマータフは麻薬がらみの裁判で証人となる銀行員レオの警護を命じられる。二人が警護しているにも関わらず、レオは命を狙われ続ける。二人はレオが麻薬組織から金をくすねていたために狙われていること聞き出し、そのボスのアジトに踏み込む。しかし、そのボスは、ラッドという駐米南アフリカ領事で、外交官特権で逮捕も拘留もできない。あきらめ切れない二人は、執拗に南ア大使館に嫌がらせを繰り返し、徐々に犯人達を追い詰めていくが…というストーリー。
まだ南アフリカにアパルトヘイトが存在していた時代のお話。そして、アーリア系がナチスドイツのアイコンとしてアメリカ映画の悪役だった時代のお話(古い映画になっちゃったな)。昔、観たときは、マンデラが誰なのかピンときていなかったわ。
リチャード・ドナーは別に続編を作るつもりもなかっただろうし、あわよくば今後も…なんて考えてはいなかっただろう。本作がおもしろくなればそれでいい、ある意味“一作入魂”だから、遠慮のない過激な演出をまさに“サービス”してくれている。過激になりすぎて、次のシーンで歩いてるのがおかしいでしょってレベル(笑)。アホか!ってくらいの銃撃戦は、味方に当たらないのがおかしいとは思いつつも、興醒めしないのは作品の勢いの賜物。
マータフもいつのまにかノリノリで、リッグス寄りになっちゃってー。さらにマータフだけじゃなく、署の仲間ともうまくやっている様子。いい感じでリハビリもできてて、お話もコメディ調が強くなった(お祭り気分だね)。1作目はあまりに寂しい日常で、そんなトレーラーハウスにいたら、気がくるっちゃうわ…なんて思ったけど、今回は何かうらやましく感じられるほど自由でいい感じ。あいかわらず、ワン公もかわいい。
なーんて思っていたら、終盤は一転、仲良くなった署の人たちは、丸々お亡くなりになっちゃうわ、奥さんの件まで判明しちゃうわ(都合のよすぎる展開だけど、リチャード・ドナーがこれでおしまいのつもりで作っていた証拠)。その、「うぉ~~~~」って感情そのままに、スカっと大破壊を敢行してくれる。まあ、秘書のリカちゃんは、関係をもった時点で死亡フラグ立ちまくりだったけど、海の中で発見シーンはインパクトあったわな。
このシーンもそうだけど、諸々の小ネタのエピソードは“3”以降の続編にしっかり出てくるのでニヤっとしちゃう。そういうところはリチャード・ドナー、ものすごくうまい。
ジョー・ペシ演じるレオ・ゲッツは浮きまくりのヘボキャラなんだけど、話が進むにつれて味が沸いてくる。さすがジョー・ペシ、ちょい役のはずなのにタダでは終わらない。レオ・ゲッツがいなかったら“3”が作られることはなかったと確信している。
“2”のDVDは吹替音声がついている。しかし、“3”以降と声優さんがちがう。まあ、違うのは仕方ないんだけど、リッグスとマータフの声優さんの声質が似ていて、聞き分けにくい(ちょっとヘタクソだし)。
邦題の“炎の約束”の意味はよくわらん。
#あ、ちなみに、今日で丸々2年です。よくもまあ2年も毎日。いつも読んでくれている人、ありがとう。
負けるな日本
公開年:1987年
公開国:アメリカ
時 間:110分
監 督:リチャード・ドナー
出 演:メル・ギブソン、ダニー・グローヴァー、ゲイリー・ビューシイ、ミッチェル・ライアン、トム・アトキンス 他
ノミネート:【1987年/第60回アカデミー賞】音響賞(Dick Alexander、Bill Nelson、Vern Poore、Les Fresholtz)
ビルのベランダから若い女性が飛び降りて死亡した事件。LA市警のベテラン刑事のマータフは、死んだ女性がベトナム戦争の戦友の娘だと知り愕然とする。捜査にあたるマータフは、麻薬課から移動してきたリッグス刑事とコンビを組まされる。リッグスは妻が交通事故死したショックを引きずっており、死ぬことを厭わない問題行動をとる刑事だった。はじめは年金狙いかと疑っていたが、自殺用の弾丸を持ち歩くほど病んでいる彼にゾっとするマータフ。そんな2人がハチャメチャな捜査を続け、なんとか事件の背後に麻薬密売組織があることを突き止めるが…というストーリー。
日本がアメリカの不動産を買いまくって日本脅威論が普通に囁かれていた時代の作品(古い映画になっちゃったな)。
ちょっとネジの外れているはみだし刑事のドンパチアクション物。同じノリの作品として『ダイ・ハード』が挙げられるが、そちらは映画史に残る文句なしの名作。でも、本作をそこまで評価する人はいない。確かに1作目の単体で比較すれば、『ダイ・ハード』のほうが上なんだけど、シリーズの完成度を考えるとダイハードよりもリーサル・ウェポンのほうが遥かに遥かに遥かに上。
やはり、『ダイハード』にはない、主人公の変化・成長・癒しがある点が大きい。マクレーン刑事は、結局マクレーン刑事のままだからね。
それにシリーズとしてみれば、“仲間”“ファミリー”という要素が秀逸。『ダイ・ハード』にもパウエル巡査みたいな魅力的なキャラはいるけれど、シリーズ的には単発でしかない。『リーサル・ウェポン』は続編を重ねる度に魅力的なキャラが登場し、彼らとのやり取りをまた見れるのか!とワクワクさせてくれた。4作目の最後でグっとこない奴なんかいるもんか!そんな人は人非人だ!って思うくらい、このシリーズが好き。
1作目の本作では、自殺用に特殊な弾丸を持ち歩くほど崩壊寸前のリッグスと、まじめ刑事のマータフのコントラスト、そして、犬しか心を許す相手がいないリッグスと、温かい家族に囲まれて誕生日を祝ってもらうマータフというコントラストが、次第に同じ色合いになっていくのが心地よい。その、ギスギスした人間関係が徐々に丸く変わっていく安心感と、めちゃくちゃな破壊アクションの波状攻撃が愉しい。
特徴的な、ギターサウンドのBGMも大好き。軽妙なやり取りも、ある意味古臭くてお約束。敵が特殊部隊でリッグスに近い存在だって流れもお約束。でも、そのお約束の強引さが決してイヤじゃない。
その後に刑事のバディ物は何作も作られたけど、ここまでうまく噛みあったものは無いと思う。そう、刑事のバディ物としては最高峰なんだよ。もちろんお薦め。
今回はDVDで鑑賞したわけだが(購入済)、1作目だけ吹き替え音声がない。TV放映時の吹き替えはあるはずなので、なんとかなりそうだけどね。BOX化の暁には…と期待していたがそれもかなわず。ブルーレイ化の暁には…と期待していたがそれもかなわず。それが出ていればブルーレイデッキを買おうと思っていたのに…。もう、何年も待ってるのになぁ(TV放映があったら録画しないとダメかな)。
#おや?『リーサル・ウェポン』祭、開催の予感(笑)。4作目の胸アツまで突っ走る!
負けるな日本
公開年:2005年
公開国:アメリカ、フランス
時 間:110分
監 督:ジャン=フランソワ・リシェ
出 演:イーサン・ホーク、ローレンス・フィッシュバーン、ジョン・レグイザモ、マリア・ベロ、ガブリエル・バーン、ジェフリー・“ジャ・ルール”・アトキンス、ドレア・ド・マッテオ、ブライアン・デネヒー、マット・クレイヴン、キム・コーツ、コートニー・カニンガム、アイシャ・ハインズ、カリー・グレアム、ヒュー・ディロン、ピーター・ブライアント 他
コピー:脱出劇アクションの頂点、遂に誕生!!!
大雪のデトロイト。大晦日の今日で閉鎖となる13分署は、ほとんど引越しも済んでおり閑散としている。ローニック巡査部長は、ベテラン警官ジャスパー、警察秘書のアイリス、そして心理カウンセラーのアレックスたちと13分署で新年を迎えようとしていた。そこへ、吹雪のため護送できなくなった凶悪犯ビショップを含むら犯罪者たちが一時避難してくる。彼らを一時的に拘置所に収容すると、その矢先に、何者かが署内へ強行的に侵入。ローニック達はなんとか阻止するも、何故か署は武装した人間達に包囲されており、外部との通信も遮断されてりまう。そんな状況の中、正体のわからない敵と戦うことに…というストーリー。
けっこうしっかりとしたプロットだしテンポもよい。前半までは、なかなか好感が持てるなと。76年のジョン・カーペンター監督作品のリメイクだそうだが、観終わってから知ったが、オリジナルは観たことがない。元の話が良いのか、ブラッシュアップしたのかはわからないが、しっかり練られているってことだね。
ただ、中盤から何か歯車がかみ合っていないような変な感じになってくる。
オリジナルからそうなのもしれないけど、署を包囲している敵の正体を、謎解き的に引っ張ることはできなかったのだろうか。あまりにあっさり判明してしまって、後半はただのドンパチしか残っていないのが、実にもったいない(ここは、膨らますべきだと思うんだけどなぁ)。
せめて、一緒に収容される犯罪者たちに、もうちょっと個性とかバックボーンを持たせていれば、そのドンパチもおもしろくなったと思うのだが。どうも薄っぺらい。
それに、根本的に“要塞”じゃないよな。諸々の事情で不釣合いなぐらいに武器やら装甲車なんかがあって、少ない人数でも善戦しちゃうとか、そういう展開なのかと思っていたが、古い銃器くらいしかないんだもの(ワクワク感がいまいち)。単に、古い建物に篭っただけのような…。
いかにもビッチで死亡フラグ立ちまくりの女が死なないという、裏をかいてくれたのはおもしろかったが、その反面ローレンス・フィッシュバーンが良くない。ローレンス・フィッシュバーンって全然悪役が似合わないでしょ。だから、「ああ、単なるの悪役で終わらないんだろうな…」と早々にフラグが立ち、実際そのとおり味方サイドになる。そこで、私の中で緊張感が途切れてしまったかな。
まあ、及第点。リメイクしようって気をおこさせるほどの、オリジナルってやつを探して観てみたくなったかな。『要塞警察』ね(近所のレンタル屋にあるかな…微妙)。
負けるな日本
公開年:1975年
公開国:日本
時 間:106分
監 督:高林陽一
出 演:中尾彬、田村高廣、新田章、高沢順子、東竜子、伴勇太郎、山本織江、水原ゆう紀、加賀邦男、東野孝彦、石山雄大、海老江寛、沖時男、原聖四郎、小林加奈枝、三戸部スエ、服部絹子、中村章、常田富士男、村松英子 他
岡山県にある一柳家の屋敷で、長男・賢蔵と久保克子の結婚式が行われていた。式は、賢蔵の妹・鈴子が琴を披露するなどして、滞りなく終了。その夜、屋敷内に悲鳴と琴を掻き鳴らす音が響き渡る。親族が夫婦の寝室である離れへ行くと賢蔵と克子が血まみれで惨殺されていた。部屋には三本指で拭った血の跡が残されており、離れの庭には犯行に使われたと思しき日本刀が刺さっていたが、季節外れに積もった雪の上には足跡は一切無く、離れは密室状態であった。警察の捜査で、怪しい三本指の男が出没していたことが判明するが、その後の足取りは掴めず捜査は暗礁に乗り上げる。そこで、克子の父・銀造は、知り合いの探偵・金田一耕助を呼び寄せる…というストーリー。
本当に今日で金田一は終わりにする。
金田一耕助シリーズの第1作だから“ビギニング”みたいなものか(劇中で別の事件を解決して名は知られている設定になってるから、厳密に言えばビギニングじゃないけど)。だから、原作の舞台は昭和12年で一番古いんだけど、この映画も『八つ墓村』のように、舞台を現代(当時)に変更している。
本作の場合は、『八つ墓村』とは違って、単に、ロケ地やらセット・小道具を昭和12年にするのが大変だったから現代にしちゃっただけ…って気がしないでもない。だって、時代が持つ雰囲気を大事にしているようにはまったく見えないんだもの。
中尾彬が演じる金田一耕助はズボン姿。それで田舎町にやってきた異邦人の雰囲気が出ていればいいのだが、他にも洋装の人が多く出てくるのでその効果は無い(その効果を狙ったかどうかも怪しい)。もし、舞台の年代がもっと古く、こざっぱりとした洋服の人がめずらしく、村の中で浮きまくっているような状況になれば、ものすごくよかったと思うのだが(結局は、市川版の和装だって、異質な風貌の演出だからね)。
もし、このスタイルが成功していれば、後の金田一耕助像は大きく変わっていたと思う(それがいいかどうかはわからんが)。
で、『本陣殺人事件』というのは、和室で密室トリックを表現した作品として有名なのだが、根本的に原作のトリックに無理がある。実際に映像にしてみると、原作を読んで感じた以上に無理がある。
おまけに、本作でのトリックの表現があまりにもヘタクソ。本作を観て、「おお!すごいトリック!」と思う人が何人いるか。まず、いないと思う。ものすごく立体的な空間表現を要するトリックなんだけど、すごく薄っぺら(どうかんがえても、日本刀が欄間(っていうのか?)を越えるとは思えない。で、ひどいことに、本作では欄間を綺麗に越える映像が無い。
同様に鎌がどう機能しているのか、はたまた、このトリックの発動条件は何か、すべてが綺麗に描けていない。トリックがメインで、トリックをきっちり描けないなんて、どうしようもないよね。
これまで観た金田一作品は、トリックの巧妙さについて直球で勝負してはいない。むしろ、人の情念や我欲、舞台の持つ雰囲気を愉しんでいる。では、本作にある“人の心”は何かといえば、いい年したおっさんの極端な潔癖症。う~~ん。
トリック表現もだめ。人間ドラマもだめ。雰囲気もだめ。そういう意味では、映画版の金田一作品の中で、ズバ抜けてデキが悪いように思える。残念ながら観る価値はないかな。お薦めしない。
#鈴子ちゃんの死の意味が私にはわからん。
負けるな日本
公開年:1981年
公開国:日本
時 間:132分
監 督:篠田正浩
出 演:鹿賀丈史、室田日出男、古尾谷雅人、岸本加世子、中島ゆたか、大塚道子、二宮さよ子、宮下順子、原泉、武内亨、伊丹十三、岩下志麻 他
コピー:鵺の鳴く夜は恐ろしい……
昭和44年。金田一耕助は、瀬戸内海を航行中のフェリーが海に浮かぶ男を発見。救出するも「あの島には恐ろしい悪霊が…、鵺の鳴く夜は気をつけろ」という言葉を残し絶命する。金田一耕助は刑部島出身の富豪・越智竜平の依頼により人捜しをするため岡山県に来ていたが、フェリーで絶命した男が探していた男と知り愕然とする。金田一は、手掛かりを追うために、旅の途中で知り合ったヒッピー青年の五郎と一緒に、刑部島に渡るが、そこで身の毛もよだつ惨劇に遭遇する…というストーリー。
もう、そろそろ金田一シリーズはいいだろう…という声が聞こえてきそう。
ちなみに、『悪霊島』は、横溝正史が最後に書いた金田一シリーズ。
『獄門島』の和尚役の佐分利信が出演していたり、鹿賀丈史の風貌や頭を掻きむしる様子を見ると、角川が石坂浩二×市川崑の金田一耕助を引き継ごうとしているっていう意図がはっきりわかる(悪いことではない。元々原作は角川だしね)。
篠田正浩の演出は、シンプルで判り易くて横溝正史のテイストにマッチしている。これにインパクトと遊び心さえ加わわっていれば、市川崑に匹敵する出来映えになったことだろう。
#五郎を狂言回しにするのはセンスないと思うけどね。
岩下志麻の美しさは異常で思わず息を呑むほど(旦那が撮ってると考えるとちょっと気持ち悪いけど)。岸本加世子の野暮ったさはハンパないが、二役の演じ分けだけじゃなく、若いのにしっかりとした演技力を発揮。その他の出演陣も豪華で角川の気合の入れようがよくわかる。
まあ、肝心の鹿賀丈史が、独り言でもガッチリ口調だったりして一本調子なのが気になるけれど、石坂浩二とは異なるちょっと熱いキャラを目指していたと考えれば、まあアリだろう(見た目の味はあるよ)。
#『本陣殺人事件』で金田一耕助を演じた中尾彬が、あっさり殺される役ってのも面白いね。
結構、成功していると思うんだけど、その後シリーズ化されなかったのは映画のデキの問題ではなく、横溝正史ミステリーの仰々しさや(悪くいえば)粗さが、時代に合わなかっただけな気がする。
シャム双生児のくだりがあるのでTV放映はしにくいし、ビートルズの楽曲の版権の問題でしばらくDVD化されていなかったりして(今はカバー楽曲に差し替えて普通にレンタルしている)、人の目に触れる機会が少なかった作品かもしれない。こんな作品もあったんだ…と思う人は是非観て欲しい。そこそこお薦めの1本。
#市川崑は、『獄門島』じゃなくって、年代を古く変更して『悪霊島』を撮ればよかったのに。
負けるな日本
公開年:1977年
公開国:日本
時 間:151分
監 督:野村芳太郎
出 演:渥美清、萩原健一、小川真由美、花沢徳衛、山崎努、山本陽子、市原悦子、山口仁奈子、中野良子、加藤嘉、井川比佐志、綿引洪、下絛アトム、夏木勲、田中邦衛、稲葉義男、橋本功、大滝秀治、夏純子、藤岡琢也、下絛正巳、山谷初男、浜田寅彦、浜村純、吉岡秀隆 他
関東の空港で航空機誘導員をしている寺田辰弥。ある日、自分の名前が新聞の尋ね人欄に載っており、大阪の弁護士事務所で面談をすることに。生い立ちや背中の火傷痕から尋ね人本人と認められ、そこで母方の祖父であるという井川丑松と面会。しかし、丑松は、その場で突然、苦しみもがき絶命してしまう。辰弥は、父方の親戚筋にあたる森美也子の案内で生れ故郷の八つ墓村に向かうこと。辰弥は美也子に、腹違いの兄・多治見久弥が病床にあり余命幾ばくもなく跡継ぎもいないため、辰弥が多治見家の後継者であることを告げる。しかし、辰弥が帰郷すると殺人事件が発生。村人は、八つ墓村でおこった過去の事件の祟りであるとして騒ぎはじめ…というストーリー。
市川崑ではない金田一作品を。監督は野村芳太郎、『砂の器』の人。また、『男はつらいよ』の渥美清が金田一耕助を演じているってので有名。横溝正史ブームのまっただなか、東宝に対抗して松竹が製作した作品。
#東宝にも松竹にも両方に出演している大滝秀治は、なかなかの強者だ(笑)。
萩原健一の演技がポンコツすぎで、長ゼリフが聞くに堪えない。こりゃダメだ…と諦めかけたところで、無口になってセリフが少なくなるのがおもしろい。
市川崑版と如実に差があって、非常に興味深い。原作が好きな人には結構評判がよかったりするのだが、個人的にはイマイチ好きではない。なかなかの興収だったらしいが、その後、シリーズ化されなかったのは、すごく理解できる。
まず、『砂の器』でもそうだったのだが、野村芳太郎の演出はまわりくどくていけない。なんで、このシーンを長々と廻すのか…と、思う所が多い。例えば、本作でそれが一番顕著なのは、終盤に洞窟の中を歩き回るシーン。だらだらと時間をかけて濡れ場に突入すれば、うまいことミスリードできる思っているのだろうか。ちょっと浅はか。
また、戦後まもなくという金田一シリーズ特有の時代背景を放棄して、舞台を現代(当時)にしている。これがいったいどういう効果を狙ったものなのか。今でも地方に残る因習という部分をクローズアップして、“今、おこっているオカルト話”という方向性を出したかったのかな。そう、本作はオカルト臭を意図的に強めている模様。伝説を利用した殺人という域を越えて、本当に怨念のなせる業という色合いを濃くしている。
なぜか、犯人を変更した『獄門島』よりも原作レイプな感じがするのが、不思議である。
最後、金田一耕助が村人たちに対して、事件の謎解きをするのだが、そこがなんともいけない。延々と渥美清が言葉で説明し続けるのである。市川崑版に馴れているせいもあってか、あまりのビジュアル表現不足に朗読なんじゃねえかと思えるほど。せっかく映画なんだから、がんばれよ…といいたくなる。
なるほど、市川崑版金田一と一番異なるのは“クール”さだな。同年公開の『悪魔の手毬唄』『獄門島』と比較すると、とにかく野暮ったい。こういう諸々の要素が重なって上映時間もとにかく長い。
ちなみに、『八つ墓村』は横溝正史の金田一シリーズで一番多く映像化されている作品。なんといっても、実際の事件“津山三十人殺し(1938年)”がモデルになっている点は大きいかと。この事件は、1982年に韓国人に塗り替えられるまで、個人による大量殺人者数でぶっちぎりのトップ(誇れる話ではない)だったわけだが、この事件を知らなくても、念入りな事件考証が下敷きになっているせいか、むちゃくちゃな大量殺人なのに、どことなくリアリティが漂う。本作の一番の魅力といえるだろう。
ということで、1996年の市川崑版の『八つ墓村』と比較してみようじゃないかと思ったが、近所のレンタル屋には置いていなかった。宅配レンタルで入手してみるか…。
#市川崑ならじいちゃんが死んだところでタイトルかなあ(笑)。
負けるな日本
公開年:1977年
公開国:日本
時 間:143分
監 督:市川崑
出 演:石坂浩二、岸惠子、若山富三郎、仁科明子、北公次、草笛光子、永島暎子、高橋洋子、中村伸郎、加藤武、大滝秀治、小林昭二、辻萬長、山岡久乃、林美智子、渡辺美佐子、岡本信人、白石加代子、頭師孝雄、常田富士男、大和田獏、松田春翠、三木のり平、辰巳柳太郎 他
受 賞:【1977年/第20回ブルーリボン賞】助演男優賞(若山富三郎)
昭和27年。岡山県鬼首では、20年前に起きた殺人事件をきっかけに仁礼家と由良家の対立が続いていた。その事件は未解決で、当時捜査に関わっていた磯川警部はいまだにその事件の謎を追っていた。磯川は、他の事件で手腕を発揮した私立探偵・金田一耕助に調査を依頼する。2人は事件の鍵を握ると思われる被害者の未亡人リカに当時の様子を聞くことから調査を開始。折しも逃亡した容疑者の娘千恵が有名歌手になって帰郷する日だったが、時を同じくしてリカの息子・歌名雄の婚約者である由良家の娘泰子の遺体が発見され…というストーリー。
金田一シリーズの中では、“犯行”の部分で強引さが目立ち、演出面でも奇妙な点が多い作品だとおもう。
(以下ネタバレ注意)
妻子がありながら同じ村の3人と並行で恋愛するという離れ業に加え、百発百中という状況が、あまりにもマンガ。
千恵子が犯人に抱きついちゃう精神状況はよくわからないし。青池リカは名家の家督を狙っていたわけでもないし、鬼首村にこだわる理由もないし、とっと子供を連れて誰も知らない土地に行きゃあ万事解決。そうすりゃ近親相姦の可能性も皆無になるんだからなぜそうしないのか。根本的に何かがおかしい。その他諸々、原作のほうがデキがいいという指摘が多い作品。
し・か・し。その反面、シリーズの中で一番メロ・ドラマしており、それゆえに人気はとても高いのである。彼女を見守るように20年間も捜査を続ける磯川警部。おっさんの純情と悲恋の結末がなんとも泣かせてくれる(演じる若山富三郎の無骨さが実によい)。映画というのは、理詰めで簡単に評価が決まらないから、おもしろいのである。
『モロッコ』を大胆に引用して、娯楽産業の衰退をスッと説明したり、一方で手毬をつく日本人形風のお面4人の少女の幻想的な映像を差し挟んでみたりと、常人ならざる表現力。もう、映画の演出というよりも、限られた時間の中でいかに簡便な手法で且つインパクトをもって理解させるか…というプレゼン能力に近い。
早々に、岸惠子演じるリカに“犯人さんフラグ”が立つのだが、そんなことくらいではまったく興醒めしない。それどころかどんどん惹きこまれるという、市川崑節大炸裂の一作。お薦め。
#ちなみに、加藤武演ずる刑事は等々力ではなく、立花捜査主任である。
負けるな日本
公開年:1977年
公開国:日本
時 間:141分
監 督:市川崑
出 演:石坂浩二、司葉子、大原麗子、草笛光子、東野英治郎、内藤武敏、武田洋和、浅野ゆう子、中村七枝子、一ノ瀬康子、佐分利信、加藤武、大滝秀治、上條恒彦、松村達雄、稲葉義男、辻萬長、小林昭二、ピーター、三木のり平、坂口良子、お七、池田秀一、三谷昇、荻野目慶子 他
昭和21年。終戦直後の引き上げ船で死んだ鬼頭千万太が遺した手紙を届けるために、金田一耕助は、千万太の故郷・獄門島へと向う。金田一は千万太の訃報を伝えると鬼頭家に客として迎えられる。その日は、島の千光寺の釣鐘が返却され、千万太の従兄弟である一(ひとし)の無事が知らせらるという吉事が重なっていた。翌日、千万太の通夜が行われたが、千万太の妹3人のうちの一人・花子が失踪。ほどなく、足を帯で縛られ、桜の枝からぶら下げられた花子の遺体が発見される。密かに千万太の戦友・雨宮から鬼頭家の調査を依頼されていた金田一は、3姉妹の出生に秘密があるのではと探り始めるのだが…というストーリー。
まだまだ市川崑祭開催中。いや、もう金田一耕助祭になってきた…。終戦直後の混乱という、金田一耕助シリーズにありがちなド直球の設定である。舞台は昭和21年なので、市川崑版としては3作目だが、エピソードとしては一番古い話になるだろう。
結局は5作品がつくられるが、3部作として有終の美を飾ろうとしていたらしく、その気合が随所に見られる。しかし、それを説明すると完全ネタバレになってしまうので、警告発令。
(以下、完全にネタバレ注意)
『犬神家の一族』『悪魔の手毬唄』と女性が犯人で、その情念が僻地の因習と絡み合った内容が続き、それに独特の市川演出が付加されて、もう様式美といっていいレベルにまで昇華されている。この流れで3作目も…ということなんだろうが、実は、『獄門島』の原作の犯人は女性ではない。3姉妹の全員を手にかけるのは和尚なのだ。
犯人を変えるなんて原作への冒涜、横溝正史を馬鹿にしているのではないか…と思ってしまうが、はっきりいってこの映画版の方が、オチとしてはしっくりくる。横溝正史が難色を示した…という話も聞かないので、むしろ面白がってOKしたんだろうなと思われる。
原作には、シリーズ唯一といえる金田一耕助の恋愛エピソードがあるのだが、軽く匂わすだけでそのあたりはバッサリと割愛。これも統一感を重視してのことかと。
市川版金田一シリーズとしての様式美といえば格好いいが、3部作としての概観の問題にこだわっただけと揶揄されても仕方のないところ。それをねじ伏せて、きっちり仕上げのはさすが市川崑。シリーズすべて140分前後あるのだが、まったくその長さを感じさせないのがスゴい。
#でも、ここまできっちり3作つくりきったのなら、4作目なんか作らなきゃよかったのに…と思うのは私だけか?
だが、結果として女性犯人を3作続けてしまったことで、マンネリと感じられてしまったという側面もあり、この点は皮肉というかなんというか。
もう1点、本作にまつわるエピソードといえば、俳句用語である“季違い”と“気違い”を懸けたキーワードについて。この同音異義語は、事件の謎を解く上で必須ポイントなのだが、如何せん“気違い”が放送禁止用語だったために、TV放映時にはピー音になったとのこと。いやいや、金田一が謎を解くきっかけになった根本のポイントがピー音になってしまったのでは、観た人は何がなにやらわかるはずもない。放送された日の人々のポカーンを想像すると、笑いを抑えることができない。
言葉狩りの馬鹿どもめ!と言いたいところだが、それ以前に、その状態で放送しようとしたTV局よ…。そういう意味では、本作は『病院坂の首縊りの家』並の“奇作”といえなくも無い。
まさか、明日も金田一耕助祭じゃねえだろうな!と声が聞こえてきそうだが、否定できない(笑)。
#それにしても、本鬼頭だ分鬼頭だと、本家・分家で簡単に片付いてしまうようなところに、偏執的な設定をくっつけるのが横溝正史は本当にウマい。今、クリエイターに必要なセンスはコレだよなぁ…。
負けるな日本
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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