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公開年:2000年
公開国:アメリカ
時 間:164分
監 督:ローランド・エメリッヒ
出 演:メル・ギブソン、ヒース・レジャー、ジョエリー・リチャードソン、ジェイソン・アイザックス、クリス・クーパー、チェッキー・カリョ、ルネ・オーベルジョノワ、リサ・ブレナー、トム・ウィルキンソン、ドナル・ローグ、レオン・リッピー、メアリー・ジョー・デシャネル、アダム・ボールドウィン、ミカ・ブーレム、スカイ・マッコール・バートシアク、トレヴァー・モーガン、グレゴリー・スミス、ローガン・ラーマン 他
ノミネート:【2000年/第73回アカデミー賞】撮影賞(キャレブ・デシャネル)、作曲賞(ジョン・ウィリアムズ)、音響賞(Lee Orloff、Greg P. Russell、Kevin O'Connell)
【2001年/第10回MTVムービー・アワード】男優賞(メル・ギブソン)

1776年、サウス・キャロライナ州。かつてフレンチ・インディアン戦争で名を轟かせた英雄ベンジャミン・マーティンは、今では18歳の長男ガブリエルを頭に7人の子供の父親となっていた。妻には先立たれ、農夫として平穏な暮らしをしている。アメリカ13州の民はイギリスからの圧政に苦しんでおり、各地で解放を叫ぶ声が上がり、とうとうアメリカ本土を主戦場とする独立戦争に突入する。ガブリエルは愛国心を燃やし、ベンジャミンの反対を押し切って入隊してしまう。その2年後、負傷したガブリエルが我が家に戻ってくる。傷の治療を施すが、そこにイギリス軍のタヴィントン大佐が押しかけてくる。大佐は、ガブリエルにスパイ容疑をかけて連行。さらに、それを防ごうとした次男トマスを射殺した上、家を焼き払ってしまった。怒りが頂点に達したベンジャミンは、3男ネイサンと4男サミュエルを引きつれ、ベンジャミンを連行しているイギリス軍を森で待ち伏せし、奇襲攻撃をかける。一小隊全員を抹殺しガブリエルを奪還する。ベンジャミンは、かつての戦友で、現在は米国軍司令官のバーウェル大佐の下を訪れ、民兵を率いて参戦することを告げる…というストーリー。

南北戦争が舞台の作品は多いが、案外、独立戦争の映画は少ない。色々理由はあると思うが、まず、戦争の形態が絵にならない。観た人はお判りだろうが、一列に並んだ兵隊が、両陣営から進んできて銃を撃ち合うという戦法が、はっきりいってアホらしく見える。おそらくしっかりと時代考証はされている。銃の命中度が低いので、この戦法は事実なんだろう。でも、事実だからといってアホらしいことには変わりがない。

そして、この独立戦争が、フランスからの援軍によって勝利が得られるという、“独立”の名にそぐわない展開であることも大きいと思う。本作はフランスの援軍が到着するまでを描いている。アメリカ人にとって、独立戦争が、あくまでアメリカとフランスの連合軍の勝利であり、アメリカの代名詞たる“自由”がフランスからもたらされたものであること、それを改めて再確認させられるのはおもしろくないことなのかもしれない。

ということで、ストーリーは戦況にはあまり焦点が当たっていない。今はいいおっさんになってしまったが実は最強の英雄というキャラクターを主人公に据え、息子を殺されたとう私怨からスタートして、家族を守る=国を守るという構図を作っている。最後の最後まで、息子の敵討ちだ。子供のおもちゃであるブリキの兵隊で弾丸を作るシーンなど、センチメンタルを煽るシーンは随所にみられる。

とはいえ、あくまで歴史物としての方向性は放棄したくなかった模様。子供を殺してみたり、普通の死亡フラグだったらガブリエルを殺すところを妻を先に殺してみるとか、ハリウッド娯楽映画のお約束からはずす工夫は見られる。でも、そのせいで上映時間が長くなるという弊害もある。

統一した軍服をきて、指揮命令体系きてさえいれば軍隊ではあるので、民兵とはいえ軍隊なのは間違いないのだが、その行動はゲリラ的。相手の装備を自分の物にしていいというのが、戦時ルールに敵っているのかは詳しくないので不明。でも、綿花畑で、両側から撃つとかはありえないな…。

メル・ギブソンは、『ブレイブハート』などと同等にキレのあるアクションを披露。ヒース・レジャーは若手俳優らしからぬ渋い演技力を発揮。また、ロケシーンの壮大さは認めざるを得ない。しかし、結局、私怨の枠を超えることなく、“愛国”という名を冠するほど壮大な愛に昇華することなく終了してしまった。

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公開年:1984年
公開国:アメリカ
時 間:132分
監 督:ランドール・ウォレス
出 演:レオナルド・ディカプリオ、ジェレミー・アイアンズ、ジョン・マルコヴィッチ、ジェラール・ドパルデュー、ガブリエル・バーン、アンヌ・パリロー、ジュディット・ゴドレーシュ、エドワード・アタートン、ピーター・サースガード 他
受 賞:【1998年/第19回ラジー賞】ワースト・スクリーン・カップル賞(レオナルド・ディカプリオ)
コピー:この夏、あなたは2人のディカプリオを目撃する… 静と動 繊細と大胆 優しさと激しさ
今あなたは、2人のディカプリオを目撃する…


1662年、パリ。度重なる戦争によって民衆は飢えに苦しんでいたが、若き暴君ルイ14世は宴にうつつを抜かす日々で、暴動寸前だった。前王ルイ13世の親衛隊だったアラミス、ポルトス、アトスは既に引退していたが、ダルタニアンだけが銃士隊長としてルイ14世に仕えていた。ルイ14世は、宴で見かけたクリスティーヌに一目惚れ。しかし、クリスティーヌはアトスのひとり息子のラウルの恋人だった。ラウル銃士隊所属だったが、王はラウルを戦地の最前線に無理矢理に配置換えし、その結果戦死してしまう。息子を溺愛していたアトスは王に復讐を誓う。一方、敵対するイエスズ会に頭を悩ませた国王は、アラミスを呼び出し、イエスズ会の首魁を探すよう命じる。しかしその首魁こそアラミスであったのだ。アラミスはかつての盟友を集め、とある作戦に協力を求める。アトスとポルトスは受諾するが、ダルタニアンは拒否する。三銃士はバスティーユ牢獄に幽閉されている仮面の男を救い出すために潜入するのだったが…というストーリー。

個人的に、三銃士自体に、思いいれどころか馴染みがない(子供の頃に読んだことがない)。でも、ポルトスのお馬鹿キャラに、策士アラミス、偏屈だが情が深いアトスと知らない人にもキャラが良くわかる演出になっているのはさすがかと。成長した姿がいまいちピンとこないダルタニアンには、影の主人公としての役割が与えられる。ちょっとネタバレになってしまうが、“仮面の男”というタイトルは、ダブルミーニングになっていて、一応、ラストまで観ると、そのタイトルは納得できる(もっとネタバレになってしまうが)。

たしかに仮面の男がキーになっているお話なのだが、前半は、仮面の男の話がなくてもルイの悪逆非道っぷりがすばらしく、純粋な革命劇、復讐劇として十分に成り立ちそうなほど。でも、ルイ14世といえば“太陽王”といわれたほどの善王。歴史とは異なるのは明白なわけで、先の展開はバレバレですわな。チラチラと“仮面の男”がどこででてくるのかな…と頭をよぎるので、邪魔に思えるほど。むしろこのタイトルにしなければよかったのに…さえ。その辺の展開を先回りするだけの知識がない人には、逆に素直に楽しめる幸いが待っている。

ちょっと無駄なくだりだったな…と思うのはクリスティーヌ。息子の死に対する恨みの原因でさえあればよかったわけで、あんな 死に方をするだけならば、いらなかったかと…。母親の病気をなんとかしたいという理由があったにせよ、愛する人間が死んだ直後に王にあっさり陥落してしまったクソビッチにしか見えないわけで、死んだラウルはおろか、結婚を勧めたアトスが報われない。
根本的に、仮面の男のすり替わり劇のハラハラで盛り上がっている時に、ぎゃぁぎゃぁ喚かれるのも邪魔だった。物にされたあとにあっさりポイ捨てされて、恥じて死ぬという展開にして、120分くらいに編集してもよかったかなと思う。

(以下、完全にネタバレ)
ダルタニアンがルイとフィリップの父であることと、ダルタニアンが死んでしまうこと。両方ともなかなかの仕掛けなのだが、この二つの要素は盛りだくさんすぎな気がする。どちらかだけでよかったのではないだろうか。
#根本的に、勝手にダルタニアンを殺してしまうシナリオはもいかがなものかと思うが…。

結果的に、仮面の男が出てくるまででピークを迎え、あとはラストに向かって、じわじわとボルテージが下がっていくという印象なのが、ちょっと残念か。ハリウッド的なノリと、ヨーロッパの物語の雰囲気が、交通事故をおこしそうな部分もあったがなんとか持ち堪えている。結果的になかなか楽しめたのは事実。

#またもや、ラジー賞が意味不明。別にディカプリオの演技はひどいとは思えない。ネイティブの英語が判る人には、耐えられないような大根演技なのだろうか?判らんねぇ。

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公開年:2011年
公開国:ポーランド、スウェーデン
時 間:96分
監 督:レフ・マイェフスキ
出 演:ルトガー・ハウアー、シャーロット・ランプリング、マイケル・ヨーク 他
コピー:摩訶不思議 寓話の世界に迷い込む






16世紀のヨーロッパ、フランドル地方。農村地帯では、牛を売ったり、風車小屋で小麦を挽いたりと、いつもどおりの生活が行われている。しかし、そんなのどかな様子とは裏腹に、征服してきたスペインのカトリック勢力によるプロテスタントの迫害が、繰り広げられていた。芸術品収集家のヨンゲリンクは、この様子を絵で表現してほしいと、友人で画家のブリューゲルに依頼する。ブリューゲルは、それに応え着手するする。彼の心の目に映る風景には、十字架を背負わされたキリストや、嘆く弟子たち、祈る聖母マリアらが現れ…というストーリー。

まず、予備知識がないと、全然だめな作品。ただでさえ、はじめの20分は上のあらすじの冒頭に書いたような、農村での出来事が、淡々と写されるだけ。タイトルのとおり、絵画のような興味深い画が連続すると期待したのだが、普通の農村の様子が続くので、ここで、40%が眠りにいざなわれると思われる。

予備知識①。ブリューゲルは実在の画家である。作中で絵を描いてと頼まれるくだりもおそらく実話で、出来上がた絵は『十字架を担うキリスト』として現存している。有名なシーンを奥行きのある構図で大胆に描いた作品である。

予備知識②。当時、宗教改革がおこっている。マルチン・ルターのあれだ。舞台になった地域はプロテスタントだったが、カトリックのスペインに支配されてしまい、迫害されている。作中の迫害している勢力がスペイン人ということ。

予備知識③。キリストへの弾圧と、プロテスタントへの弾圧を重ねて描こうとしている。キリスト以外にも、つるし首になっている人の姿があり、キリスト弾圧時の様子とはちょいと違うかな?という描写がちらほら見受けられる。

なるほど、そういうことですか…と、判ったとして、その先のどういうお話があるかというと、がんばって描きあげましたとさ…という感じで終了。美術史の一場面を映像化してみました…と、そういうことかな。物語と呼んでよいのか甚だ疑問なレベルだった。
邦題がこんなかんじだから、映像にはものすごく期待したんだけど、それほどでも…っていうのも実にイタイ。評価がしにくい。

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image1096.png公開年:2006年
公開国:中国、日本、香港、韓国
時 間:133分
監 督:ジェイコブ・チャン
出 演:アンディ・ラウ、アン・ソンギ、ワン・チーウェン、ファン・ビンビン、ウー・チーロン、チェ・シウォン 他
コピー:10万人の敵に たった1人で挑む。
戦乱の中国──歴史上に忽然と現れ消えた、墨家(ぼっか)という戦闘集団がいた。天才戦術家[革離]、彼の使命は、戦わずして守ること。



紀元前370年。中国の戦国時代。趙と燕との二大国の戦争に巻き込まれた小国・梁は、燕へ向かう将軍・巷淹中が率いる10万の趙軍の侵攻による陥落寸前。そこで梁王は、“非攻”という専守防衛の思想を掲げる“墨家”に支援を依頼する。しかし、やってきたのは革離と名乗る粗末な身なりの男が一人。落胆する梁の人々を尻目に、革離は機転の利いた方法で趙軍の先遣隊を追い払い。梁軍の指揮は一気に上がる。巷淹中は革離の実力を見て、梁城の攻略は簡単ではないと悟り、一旦引き下がり攻撃の再準備を計ることに。梁は全権を革離に預け、攻撃への備えをすべて彼に任せる。そして、趙軍との総力戦を知略を駆使して凌ぎきることに成功するのだったが…というストーリー。

酒見賢一の歴史小説を漫画化した『墨攻』を全巻持っている。原作とどのくらい違いがあるのかは不明だが、この漫画、すごく好き。
まず、主人公の革離がものごっついブサイクというのがシンパシーを感じるし、格好いいは正義!みたいなバイアスが、はじめっから完全排除な構成なのが実によろしい。しかし、本作のアンディ・ラウはすっかり美男なので、そういう要素は無い。

墨子の考え方というのがまたおもしろい。時は戦国時代だというのに、兼愛・非攻などの思想をぶちあげて実行するという、ガンジーの非暴力主義はおろか、仏教すらまともに伝来していなかったであろう時代に、この先見性は異常。そして、時代を先取りしすぎたのか、その即席はスパっと歴史から消えてしまう。単に時代にマッチしていなかったというよりも、これを本気で実行するのは、民主主義を実現するよりも難しい。中国大陸には、貨幣経済社会がはち切れんばかりに揺籃した時代は数度ある。でも、資本主義は発芽しなかった。中国には可能性だけが無数に表れ、結実せずに終わるという、実験場的な運命が染み付いているのかもしれない(今は何の実験中なのか…と考えると非常に面白い。いずれにせよ失敗しか待っていないのだが…)。

専守防衛という日本の防衛体制に比較してみることができるのもおもしろい。日本は自国のみ防衛するが、墨家はこまった国があれば、その防衛のために、恩や義理はおろか敵味方も関係なく手助けする。こまった人を見殺しにできない…といえば聞こえはいいが、防衛とはいえ、やることは戦闘である。攻めてきた人間はもちろん殺すわけで、クールダウンさせるための緩衝材なんて呑気なこともいっていられない。攻める攻められるはその時の情勢次第なので、正義・悪とは無関係。ある意味、都合のいいように利用されてしまう。
でも、革離は、国同士の戦争で無碍に殺されていく庶民を助けにはいられず、その能力を、こまった領民のために全力で使ってしまう。博愛だとかいうけど、悪く言えばかなり近視眼的な考え方で、行動しているのも事実。その考えを簡単に国家レベルに当てはめてしまえば、収集が付かなくなるのは明白。そして実際に、何の見返りももとめずに差し出した手なのに、その手はいつも傷だらけ、血まみれになってしまう。
それは判っているけれど、やっぱりこまった庶民には手を差し伸べずにはいられない。この賢いバカっぷりが実に魅力的なのだ。。

原作では、既に墨家自体が堕落しており(むしろ当然ではあるのだが)、理想に邁進する革離が墨家から狙われる存在になっており、その辺もなかなかおもしろいのだが、さすがに二時間の映画にそこまで盛り込むわけにはいかない。
そのかわり、原作よりも梁王のクソっぷりは、際立って演出されていると思う。

ちなみに原作では、疲弊した革離と声を失った女性は東へ東へ逃れて、やがて日本に渡って、幸せに暮らす…というオチなのだが、さすがにそれをやると中国で公開はできない(笑)。おかげで、最後は単なる悲劇になってしまい、非常にモヤモヤして終わる。

明らかに、墨子の思想が現代日本の一部の思想に似通っていることに、原作者は注目していると思われる。しかし、その理想を実現するには、かつての墨子が衰退したように簡単には実現できないし、マクロ的に整合性、合理性を確立する必要がある。さて現代の皆さんはどう思いますか?どう考えますか?というメッセージがこめられていると私は思う。
まあ、闇雲に原発反対!とぶち上げるだけの人がたくさんいて、それに賛同する人た相当数いる日本では、まだそれを熟考する土壌すら醸成されいないレベルかもしれないな。
あ、そういうメッセージ性は、映画には無いッス(笑)。大体にして英題の“A BATTLE OF WITS”は、知力戦って意味なんだろうけど、墨子の思想のポイントってそこじゃねえしなぁ…。

#あと、小国とはいえ城の規模感が小さすぎなのが、気になったかな。

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image0249.png公開年:2002年
公開国:フランス、イタリア、ドイツ
時 間:116+116分
監 督:イヴ・シモノー
出 演:ジェラール・ドパルデュー、ジョン・マルコヴィッチ、クリスチャン・クラヴィエ、イザベラ・ロッセリーニ、アヌーク・エーメ 他





1796年「アルコレの戦い」、1798年「エジプト遠征」の成功によってフランス民衆の人気を得たナポレオンは、クーデターにより第一統領にとなる。その後、皇帝となり、1805年「アウステルリッツの戦い」、1807年「アイラウの戦い」に勝利を収めロシアと平和条約を締結。イギリス以外の全ヨーロッパを勢力下に治め、その権勢は頂点に達しかたに思えたが…というストーリー。

TVムービーらしいのだが(CMポイントがある)、どちらも映画然としたオープニングとエンドロールがあり、実に丁寧につくられたクオリティの高い作品だった。エピソード1と2に別れており、それぞれ約2時間。クオリティは高いがとにかく長いのが玉に瑕。

皇帝になった後もしばらく権勢は衰えなかったが、徐々に軍事的失敗が重なり、対仏大同盟に貶められエルバ島幽閉。しかしウィーン会議のゴタゴタの間隙を縫って復権するも百日天下に終わるまでが描かれる。ナポレオンに関する書籍を読むよりも、当時のヨーロッパの状況とナポレオンの行動の関係がすっきりと腑に落ちる作品。

ウィキペディアのナポレオンのページを読みながら観たのだが、非常に面白かった。とりあえず史実と思われる流れに忠実に作ろうとしているのがわかるし、ジョセフィーヌの戴冠の場面など、有名な絵にできるだけ近づけようと努力している。数々の逸話で伝えられている有名なセリフもしっかり盛り込まれている。

ナポレオン役の人もジョセフィーヌ役の人も残っている絵画などのイメージに近く、違和感は皆無に近い。その中で、タレーランを演じたジョン・マルコヴィッチだけが異彩を放っている。

本作を観る限りだと、ほんの少しだけ血の気が少なければ無双状態だった気がする。とはいえ、やはり、日本民法の礎を作った大天才だけのことはある圧巻の生き様だった。

あまり軍事のことは詳しくないが、本作で描写されている白兵戦の様子が実に馬鹿馬鹿しくみえる。銃剣を持った兵士が歩いて衝突し、ただ刺しあうだけの消耗戦。やってて馬鹿らしくならないのか、甚だ疑問に感じながら鑑賞していた。これなら、両軍から武将クラスが「やあ我こそは~」ってやったほうが、意味があるように思える。

まあ、とにかく長かったけど、興味深く観続けることができた良作。

 

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image1682.png公開年:1997年
公開国:アメリカ
時 間:155分
監 督:スティーヴン・スピルバーグ
出 演:マシュー・マコノヒー、アンソニー・ホプキンス、ジャイモン・フンスー、モーガン・フリーマン、デヴィッド・ペイマー、ピート・ポスルスウェイト、ステラン・スカルスガルド、ナイジェル・ホーソーン、アンナ・パキン、キウェテル・イジョフォー、ジェレミー・ノーサム、ザンダー・バークレイ、ラザーク・アドティ、アラン・リッチ 他
受 賞:【1998年/第11回ヨーロッパ映画賞】世界的功績賞(ステラン・スカルスガルド「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」の演技に対しても)
【1997年/第3回放送映画批評家協会賞】助演男優賞(アンソニー・ホプキンス)
コピー: 自由は人が持つ 生まれながらの権利

1839年。キューバ沖でスペインの奴隷船アミスタッド号で運ばれていた奴隷53人が暴動をおこし、乗務員を殺害し、船を占拠する。アフリカに戻ろうとするが、操船できない彼らは、2ヶ月後にアメリカ沿岸警備船に捕まり、そのまま投獄される。そして、乗務員殺害の罪で起訴され死刑確実と目されていたが…というストーリー。

ありがちな奴隷解放の話…と思いきや、奴隷の所有権をめぐっての攻防から話が始まる。奴隷の所有権を主張する3者と奴隷を解放したい団体の4陣営による争いが、“民事法廷”で繰り広げられるのが実にユニーク。
また、それが言葉を解しない人が訴訟の対象であり、その中で培われる、奴隷と弁護側との友情という展開。

無駄に説明的なやりとりが極力排除されていて良い。さすがスピルバーグって感じ。例えば、数字のアフリカ言語を言いながら、言葉のわかる人を捜すくだり。一人の黒人が反応した後に、次のカットでは、もう部屋の中でその黒人と打ち合わせをしている。そして、いきさつを語っている法廷シーンにオーバーラップしていく。
「実は、これこれこういう事情で言葉のわかる人を捜しているんだけど…」なんてまどろっこしいシーンは一切ない。とてもよい編集センス。

奴隷が白人による搾取というよりも、内部の抵抗勢力の手助けによって成立している事実にスポットが当てられているのも興味深い。

黒人たちは聖書に救いを求めるようになるけれど、奴隷や現地人の大量虐殺の許可を出したのは、カトリックの法王だったりするんだけどね…。反面、カトリックは無償の慈悲の実践を説くという二面性を持っているわけで、裁判長がカトリックに変わることで、アメリカ最大の内戦・南北戦争に繋がっていくのもおもしろい。

最後は決してハッピーエンドではないけれど、アメリカがアメリカになる重要なプロセスを、スマート且つ克明に描いた名作。ちょっと長めになっているけれど、端折ることができない史実なので致し方ない。そこは、すばらしい編集でカバーしているから。文句なしのお薦め。
#それにしても、スペイン馬鹿まるだし。




負けるな日本

 

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image0674.png公開年:1960年
公開国:アメリカ
時 間:197分
監 督:スタンリー・キューブリック
出 演:カーク・ダグラス、ローレンス・オリビエ、チャールス・ロートン、ピーター・ユスティノフ、トニー・カーチス、チャールズ・ロートン、ジーン・シモンズ、ジョン・ギャヴィン、ウディ・ストロード、ジョアンナ・バーンズ、ニナ・フォック 他
受 賞:【1960年/第33回アカデミー賞】助演男優賞(ピーター・ユスティノフ)、撮影賞[カラー](ラッセル・メティ)、美術監督・装置賞[カラー](Alexander Golitzen:美術、Eric Orbom:美術、Russell A.Gausman:装置、Julia Heron:装置)、衣装デザイン賞[カラー](Bill Thomas、Valles)
【1960年/第18回ゴールデン・グローブ】作品賞[ドラマ]
コピー: 大ローマ帝国にたった一人で挑んだ男スパルタカス、その愛と感動の生涯!!空前の巨費と最高のキャストでハリウッドの情熱が この巨大なスペクタクルを 甦えらせた--

鉱山で強制労働させられていた奴隷スパルタカスは、奴隷商人バタイアタスに買われ、剣闘士として訓練されることに。ある日、ローマの将軍クラサスが訓練所を訪れ、剣闘士同士の真剣勝負を見たいと言い出す。スパルタカスは、その闘いに選出され、対戦相手の黒人ドラバと激しい戦闘を繰り広げるが最終的に追い詰められ、いよいよトドメをさされる段に。しかし、ドラバは突然、観客席のクラサスを襲撃。ドラバは衛兵に殺され、スパルタカスは命拾いをする。しかし、ドラバの死をきっかけに、剣闘士達に不穏な空気が流れはじめる…というストーリー。

前半は、奴隷達の革命劇。後半は、元老院の権力争い(クラサスVS.グラッカス)と、奴隷達の友情と悲しい境遇が並行して語られる。じゃあ、無骨な男同士の争いばかりかというとそうではなく、奴隷同士のピュアな恋愛メロドラマも展開される。かなり長めの作品だが、理屈ぬきで目は離せない面白さ。キューブリック特有の難解さは無く、作品の中で一番おもしろいかもしれない。
#まあ、元々は別監督で撮ってたみたいだけどね。

板と板の間から闘いを見せたりする臨場感溢れる演出も良いし、小屋の中で相手と見つめあう剣闘士達の諦めと闘争心の入り混じった絶妙な表情など、役者たちの演技も大変よろしい。

途中、「闘いはくだらん。獣でも戦いを知っている。だが美しい詩は作れん」というスパルタカスのセリフがあるが、これがこの作品の底辺に流れる人間賛歌を象徴しているではなかろうか。

結果が悲劇になるところもまた良い。決して自分が命を落とすことは怖くないスパルタカスだが、最期に子供を見たことで、安心して死ぬことができたのか、逆にに妻と子供の将来を慮って死ぬのが怖くなったのか…。いずれにせよ、彼が“自由”の美名の下で死ねたことは間違いないだろう。

大スペクタクルとメロドラマと男の生き様が、うまく渾然となった名作だと思う。お薦め。



負けるな日本

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image0962.png公開年:1975年
公開国:アメリカ
時 間:185分
監 督:スタンリー・キューブリック
出 演:マリサ・ベレンソン、パトリック・マギー、ハーディ・クリューガー、ライアン・オニール、スティーヴン・バーコフ、マーレイ・メルヴィン、パトリック・マギー 他
受 賞:【1975年/第48回アカデミー賞】撮影賞(ジョン・オルコット)、音楽[編曲・歌曲]賞(レナード・ローゼンマン)、美術監督・装置(Roy Walker、Ken Adam、Vernon Dixon)、衣装デザイン賞(ミレーナ・カノネロ、ウルラ=ブリット・ショダールンド)
【1975年/第10回全米批評家協会賞】撮影賞(ジョン・オルコット)
【1975年/第1回LA批評家協会賞】撮影賞(ジョン・オルコット)
【1975年/第29回英国アカデミー賞】監督賞(スタンリー・キューブリック)、撮影賞(ジョン・オルコット)
コピー:《風雲児》バリーの華麗なる愛と冒険の大ロマン!

18世紀中頃のアイルランド。農家出身のレイモンド・バリーは、初恋相手の従姉が婚約したことに納得がいかず、相手のイギリス人に決闘を申し込む。裕福な婚約者の資産を無にするつもりなどさらさらない親族は、バリーの銃弾を麻弾にすりかえる。決闘の末に相手を殺害してしまったと思い込んだレイモンドは、罪に問われることを恐れ村を出る。母親から逃走資金を入手したものの、ダブリンへ向かう途中で盗賊に奪われてしまい、仕方なく英軍の兵員補充に志願、大陸へ渡り七年戦争に従軍する。軍の中で頭角をあらわしたレイモンドだったが、親友の死に直面し脱走。将校に化けて同盟国プロイセンに渡るが、プロイセンの将校ポツドルフ大尉に変装を見抜かれてしまい…というストーリー。

昨日に続いて長い作品。あらすじを語ろうにもとてもまとめ切れないほどで、大河ドラマのダイジェストくらいイベント盛りだくさん。アイルランド人の一兵卒が貴族階級にのしあがり、諸々あて没落してく過程を描いているなのだが、本当に長くて一回で観きることができなかったくらい。バリーの生い立ちが、成功と失敗を交互にくりかえす人間万事塞翁が馬的な展開で、且つすべてが“虚栄心”というテーマで貫かれている。
前半はわらしべ長者的なのほほんとした空気があるが、後半はイラっとくるほど、主人公の観方が変わるのも特徴か。

何の予備知識もないで鑑賞すると、観るべきポイントがわからず、ちょっとつらいかもしれない。ストーリーは原作あり作品なのでキューブリックらしさ満開というわけではない。他のキューブリック作品とは毛色こそ違えど、完璧主義者の彼らしい、病的ともいえる衣装・セット・小道具の数々なのだが、この話の世界観を興醒めすることなく、完璧に作りこんでやる!っていうそっちのほうにスイッチが入っちゃった作品だといえる。

その病的なスゴさは、ヘタなヨーロッパ文化史の教科書なんかよりも、すっと理解できるくらい。文化的な時代考証に穴がないのがすごい。当時の男性は白塗りでほくろをつけていて、公家も真っ青の風体。当時の決闘方法や戦争の仕方なんか、なんでそんな方法やねん?!と首を傾げたくなるのだが、それも史実。貴族階級のアホな暮らしっぷりも手にとるように判り、クレイジーな時代がよく表現されている。
この作品の逸話としては、NASA向けのレンズを使ってロウソクの光だけでで撮影したというのが有名。たしかに1975年の作品と考えれば、ものすごいズバ抜けた技術、映像美。黒澤明も敗けているかと思う。

ただ、毎度のことだが、映像美がウリの作品のくせに、吹き替え音声がなくて、画面に集中させてもらえないのが、非常に残念。ブルーレイ化のあかつきには何とかして欲しいものだ。
ただ、ヨーロッパ文化史にでも興味がない限り、あえて観なくてもいいかも。ものすごいけど薦めする気はおきないというめずらしい作品。



負けるな日本

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image0079.png公開年:1962年 
公開国:アメリカ
時 間:207分
監 督:デビッド・リーン
出 演:ピーター・オトゥール、アレック・ギネス、オマー・シャリフ、アンソニー・クイン、ジャック・ホーキンス、アーサー・ケネディ、クロード・レインズ、ホセ・ファーラー、アンソニー・クエイル、ドナルド・ウォルフィット、マイケル・レイ 他
受 賞: 【1962年/第35回アカデミー賞】作品賞、監督賞(デヴィッド・リーン)、撮影賞[カラー](フレデリック・A・ヤング)、作曲賞(モーリス・ジャール)、美術監督・装置賞[カラー](ジョン・ボックス:美術、John Stoll:美術、Dario Simoni:装置)、音響賞(John Cox)、編集賞(Anne V. Coates)
【1962年/第20回ゴールデン・グローブ】作品賞[ドラマ]、助演男優賞(オマー・シャリフ)、監督賞(デヴィッド・リーン)、撮影賞[カラー](フレデリック・A・ヤング)
【1962年/第16回英国アカデミー賞】作品賞[総合]、作品賞[国内]、男優賞[国内](ピーター・オトゥール)、脚本賞(ロバート・ボルト)
【1991年/アメリカ国立フィルム登録簿】新規登録作品

1916年、カイロに赴任中の英国軍少尉ロレンスは、トルコの偵察任務をうける。トルコではアラブ諸国の独立の気運が高まっており、その動きを中東進出の足掛かりにしようとする思惑がイギリスにあった。ロレンスは偵察目的であった任務を逸脱し、武力も組織も脆弱な反乱軍を指揮して、ゲリラ戦を敢行。ついにはオスマントルコの重要拠点アカバを陥落させるに至る。その功により、指揮官として再びトルコ打倒を命じられるロレンスだったが、アラブ諸族間の諍いが発生し、且つ、考え方の違いにより本国からも孤立していく…というストーリー。

#なぜか古めの作品が多い、今日このごろ。

まあ、冒頭のお亡くなりになるシーンから、この大スペクタクルな展開はなかなか予想がつかないだろう。そして、大スペクタルゆえにこれが実在の人物、実際の出来事とは思えないほど。ああ、事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだ。

ビザンチン帝国を滅ぼしてから400年間もアラブを支配していたオスマントルコ。その支配が衰え始めて久しく、アラブ諸族のトルコに対する不満もピークに達しており、それをイギリスが利用しようとするという構図である。ロレンスはその尖兵であり工作員でありアジテーターだったわけだ。本作でも、トルコは完全に落ちぶれた悪役扱いで、アラブからの嫌われっぷりもよく表現されている。

その後、世界史のお勉強のとおり、アラブ諸国が曲がりなりにも一生懸命戦ったおかげでトルコに勝つ。しかし、イギリスがちらつかせた独立などは夢のまた夢。イギリスとフランスがやってきてトルコの代わりに分割統治を図る。フサイン=マクマホン協定にサイクス・ピコ協定、バルフォア宣言と現代史的には重要なポイント(そのころになると三学期のおわりの方だったりして、気合が入ってない時代だったりするけど)。
さらに、パレスチナにユダヤ人の入植は認めるは、イスラエルの独立支援はするわ、現在のパレスチナ問題の原因はイギリスがつくったのである。これに石油がプラスされれば、ほぼすべての要素が揃うといってよかろう。
#お気づきだと思うが、中東から石油が出ていない時代のお話である。

私は、イスラエル建国の理屈がまったく理解できない。ナチスに迫害されたからといって、また、かつてパレスチナの土地に住んでいたからといって、そこに住んでいた人間を追い出していい理屈などあるはずがない。こんなアホな所業は無いと思っているが、それもこれもすべてイギリスの後ろ盾のせいである。第一次世界大戦ころのイギリスのやったことは、後に禍根を残したことが多すぎる。

タイトルのとおりロレンスが主人公で出ずっぱりなのだが、実のところ彼は狂言回しだと思う。前半はイギリスによる中東への野心とちょっかい。そして後半は戦闘の繰り返しの歴史。ロレンスはそれに翻弄されたにすぎない。
個人に苛烈なまでの意志があったとしても、その理想のとおり世界は動かない。そして理想と現実のギャップは若いときほど大きい。しかし、ロレンスが経験したこの歴史は、あまりにも一人の人間が負うには重すぎた。老獪な先達にあまりにも利用されすぎてしまい、私ならとてもまともな精神でいられないと思う。単なる歴史劇を超えた、哲学的なものすら覚える。

ただ尋常じゃないくらい長くて、まったく苦痛に感じなかったいえば嘘。しかし、それ以外にケチをつける箇所はない。この長さを乗り切る覚悟は必要だと思うが、一度は観ておくべき作品かと。





負けるな日本

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image1650.png公開年:2010年 
公開国:アメリカ、イギリス
時 間:140分
監 督:リドリー・スコット
出 演:ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、マーク・ストロング、ウィリアム・ハート、マーク・アディ、オスカー・アイザック、ダニー・ヒューストン、アイリーン・アトキンス、ケヴィン・デュランド、スコット・グライムズ、アラン・ドイル、レア・セドゥー、マックス・フォン・シドー、マシュー・マクファディン、ダグラス・ホッジ、ロバート・パフ、ジェラルド・マクソーリー、サイモン・マクバーニー 他
コピー:彼は闘いのカリスマ。その生き様は伝説。

12世紀末。獅子心王リチャード1世が率いる十字軍に参加していた弓の名手ロビン・ロングストライド。イングランドへの帰還のさなか、フランス軍と交戦中にリチャード王が死亡すると、褒賞は得られずと判断し部隊から離脱。仲間とともに故郷を目指すが、途中で、リチャード王の王冠を持ち帰る使命を帯びたロバート・ロクスリーが待ち伏せされ殺される現場に遭遇。瀕死のロバートから、王冠の返還と自分の剣を父ウォルターに返却するよう頼まれたロビンは、ロバート・ロクスリーになりすましイングランドへ帰還。王冠をリチャード王の母に返したあと、ノッティンガムへ。そこには、ロバート・ロクスリーの父である領主ウォルターと、夫の帰還を待ちわびる妻マリアンがいた。ロビンは、相続人不在による領地の没収を恐れるウォルターから、そのままロバートとしてこの地に留まってほしいと依頼される。権力には特段興味はなかったが、ロビンの生い立ちを知るそぶりを見せるウォルターの口ぶりに、それを聞き出すために承諾をする。一方、兄の死により新王となったジョンだったが、重用していたゴドフリーが密かにフランスと通じており、その姦計によって民衆の反発が発生し、イギリスは内戦寸前となってしまい…というストーリー。

アクション映画にカテゴライズされることが多いみたいだけれど、限りなく歴史劇。まだ、フォーカスが当たっていない時代やキャラが存在するイギリスの歴史、奥が深いな。
非常に楽しめたので、内容については、あまり言及したくないが、簡単にいうと“THE 民主主義の教科書”。

“自由”とは「人間であれば生まれたときから平等に付与されているもの」と教科書的にはそういうことだけど、それはあくまで方便。それが方便だということに気付かない奴らは歴史を学んでいないから。そういう輩は“自由”と“勝手”に区別が付かない。意外にもそういう考え違いをしている輩は教師に多く、その教師から学んだ若い世代にも多い。平然と“金儲けをして何が悪い”と言うのもその眷属である。

じゃあ、“自由”ってのは何か?意外と思うかもしれないが、自由とは“自由”単独では存在しえない。自由を阻害する何かがあって、その阻害から逃れることを自由というのだ。

自由を阻害するもの、本作でいえば王政である。打倒すべきものが存在する間、または打倒すべきものの記憶が明確な間は、自由とは何かをリアルに感じられ、自由を謳歌できる。しかし自由を獲得した後、世代をいくつか重ね、自由を阻害するものの記憶が薄れると、“自由”はもっともらしく権利を主張するための道具としてだけ存在するようになる。そう、平和が自由を喪失させるという、驚くべき事態が生じる。そして、今がその時代である。
そういう意味で、本作は観る価値がある。自由とは何か。自由のために人はどうあるべきか。そして今、本作のジョン王に相当するもの、つまり闘うべき相手は何なのか(東電でも現政府でもないだろう)。

『グラディエイター』よりも無骨で且つ意味のある作品。リドリー・スコットとラッセル・クロウは、さらなる高みを目指そうとしているように見える。本当にそういう意図で製作しているのならば、無条件に感服する映画人たちである。

子供の頭のリンゴを射るイメージしかない人。まったく違う話なので、そのイメージは捨てるように。強くお薦めしたい。休日にじっくり観たい作品。




負けるな日本

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image1250.png公開年:1985年 
公開国:アメリカ、イギリス、ノルウェー
時 間:125分
監 督:ヒュー・ハドソン
出 演:アル・パチーノ、ナスターシャ・キンスキー、ドナルド・サザーランド、ジョーン・プロウライト、デイヴ・キング、スティーヴン・バーコフ、ジョン・ウェルズ、アニー・レノックス、デクスター・フレッチャー、シド・オーウェン、リチャード・オブライエン、ポール・ブルック、フェリシティ・ディーン、ロビー・コルトレーン、グレアム・グリーン 他
ノミネート:【1985年/第6回ラジー賞】ワースト作品賞、ワースト主演男優賞(アル・パチーノ)、ワースト監督賞(ヒュー・ハドソン)、ワースト音楽賞(ジョン・コリリアーノ)

1776年。トムとその息子ネッドは、毛皮を売るためにニューヨークを訪れる。ニューヨークではイギリスからの独立の気運が高まっており、彼らはの船は独立軍に接収されてしまう。船の代金を求めて交渉していると、その最中にネッドが独立軍に入隊してしまい、仕方がなくトムも入隊し同行するハメに。その後、ルックリン郊外での戦闘のさ中、トムは、デイジーという裕福な商家の娘から施しを受ける。彼女は、独立派に心酔していており…というストーリー。

タイトルのレボリューションは、もちろん革命の意味。われわれはアメリカ独立“戦争”と呼ぶが、彼らは、アメリカ独立革命と呼ぶ。フランス革命と同様の自由を勝ち取った革命なのだ!と認識しているから。だから本作のタイトルはレボリューション。

アメリカ人にとって非常に重要な戦争でありながら、この戦争をテーマ扱った映画というのは多くない。本作と『パトリオット』ぐらいではないかな。南北戦争が舞台の映画はたくさんあるけどね。でも、本作を観て、何で映画として扱われることが少ないかが理解できる。それは、ドラマチックな事件もあまりないし、ヒーロー的な軍人もいないから。そして、結局、その勝利を得た重要なポイントは、他国フランスの支援があったということで、自分で勝ち取ったというカタルシスが皆無だから。

では、その薄い舞台を、ドラマ性で補えているか?というと、残念ながらできていない。何で裕福な家の娘がその身を危険にさらしてまで革命派に加担するのか、その理由は描かれていない。そして、そんなおぼこ娘が、くたびれて小汚い子持ちのオヤジの何が良くて恋に落ちるのか、さっぱりピンとこない。そして、最後は、ドラマチックを超えて単なるご都合主義としか思えない再会には、「何それ?」という思いしか湧いてこない。

ただ、同時のアメリカでの人々の様子や、戦争の仕方。ネイティブアメリカンとイギリスの関係など、社会科の資料的には、すごく興味深い作品だと思う。王政からの自由は勝ち取ったけれど、結局は別の支配者が現れる。いやいや、それでも自分で勝ち取った自由は尊いと彼らは思うわけである。アメリカ人の自由に対する基本的な考え方もよくわかると思う。

まあ、いずれにせよ、よほど世界史的な興味でもない限り、観る必要のない作品。大作然としているが、シナリオはポンコツだと思うので、お薦めしない。

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image1612.png公開年:2009年 
公開国:イギリス、アメリカ
時 間:94分
監 督:ジャン=マルク・ヴァレ
出 演:エミリー・ブラント、ルパート・フレンド、ポール・ベタニー、ミランダ・リチャードソン、ジム・ブロードベント、トーマス・クレッチマン、マーク・ストロング、イェスパー・クリステンセン、ハリエット・ウォルター、ジュリアン・グローヴァー、マイケル・マロニー、ミケーラ・ブルックス 他
受 賞:【2009年/第82回アカデミー賞】衣装デザイン賞(サンディ・パウエル)
【2009年/第63回英国アカデミー賞】衣装デザイン賞(サンディ・パウエル)、メイクアップ&ヘアー賞(Jenny Shircore)
【2009年/第15回放送映画批評家協会賞】衣装デザイン賞(サンディ・パウエル)
コピー:18歳で即位し、英国を最強の国家に導いた若き女王。その愛と真実の物語。
この国と、あなたを守る。

19世紀イギリス。国王ウィリアム4世には子がなく、姪のヴィクトリアが筆頭の王位継承者であったため、母のケント公夫人は、彼女を厳しい監視下に置く。国王が病に倒れると、彼女を利用して権力を握ろうと、様々な人間が彼女に近づく。ベルギー国王レオポルドの命を受けてヴィクトリアに近づいたアルバートも、当初は夫の座を狙う一人に過ぎなかったが、純粋に彼女に心を奪われてしまった彼は、素直に自分の気持ちを打ち明け、彼女も心を開いていくのだった。そんな中、ついに国王が崩御し、ヴィクトリアはわずか18歳で女王に即位するのだが…というストーリー。

先に家族が観て、つまらなかったという感想だったので、期待していなかったのだが、何を言うか。なかなか面白かったじゃないか。

前半は、彼女を利用しようという人々と、それを押しのけて自ら運命を切り開こうとする丁々発止の様子が非常に面白い。エミリー・ブラントの顔立ちは、運命を自ら切り開く強さと、愛に生きる女らしさの両方を兼ね備えていて、ぴったりのキャスティングだと思う。ヴィクトリアという名に、名前負けしていない(その反動で、出てくる男どもはヤサ男ばかりなのかな)。

即位後の議会と王室のこじれ具合も面白く、民衆のバカさ加減もよく表現されている。しかし、それら諸々を経て且つ最長の在位期間だった彼女が、いかにしてイギリス史上“最も輝かしい時代”を築いたか…という点は、最後にナレーションで語られておしまい。さすがに、幸せに暮らしましたとさ…という終わり方は、史実なので仕方がないにせよ、やはり物足りないか。単なる理想や理念を超えてウマくやったはずなんだけど、うまくいきすぎてどうがんばってもドラマにはならなかったんだろうね。『エリザベス』や『ブーリン家の姉妹』の血生臭さやエグさはまったく無いので、そのノリを期待しちゃうと拍子抜けするのは仕方が無いか。

ヴィクトリア女王のことをあまり知らなかったせいもあると思うが、結構新鮮に観ることができた。軽くお薦めしておこう。

ところで、製作にスコセッシが名を連ねているのだが、この手の作品に関わるのって珍しくないかな。もしかして、今後、こういう作品を手がけようと思ってるとか?
#それにしても王室モノで美術賞とか衣装デザイン賞とか、このパターンは飽きたね。

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image1033.png公開年:1968年 
公開国:イギリス
時 間:135分
監 督:アンソニー・ハーベイ
出 演:キャサリン・ヘプバーン、ピーター・オトゥール、ティモシー・ダルトン、アンソニー・ホプキンス、ナイジェル・テリー、ジョン・キャッスル 他
受 賞:【1968年/第41回アカデミー賞】主演女優賞(キャサリン・ヘプバーン)、脚色賞(ジェームズ・ゴールドマン)、作曲賞(ジョン・バリー)
【1968年/第34回NY批評家協会賞】作品賞
【1968年/第26回ゴールデン・グローブ】作品賞[ドラマ]、男優賞[ドラマ](ピーター・オトゥール)
【1968年/第22回英国アカデミー賞】主演女優賞(キャサリン・ヘプバーン)、作曲賞[アンソニー・アスクィス映画音楽賞](ジョン・バリー)

1183年のクリスマス・イブの夜。西ヨーロッパ全土を勢力化に納めるイングランド国王ヘンリーは、肉体的に壮健ではあったが、50歳を迎えて後継者のことを考えざるを得ない。しかし、家族は絶えずヘンリーに対し反乱を繰り返し、フランス王とも領土問題で長年争っている状態。いよいよこの問題に終止符を打とうと、軟禁中の妃エレノア、息子のリチャード、ジェフリー、フランス王のフィリップを自分が滞在するシノン城に呼び寄せる。ヘンリーが後継にと考える末子のジョン、そして愛人のフランス王女アリースを加え、彼らの駆け引きが繰り広げられる…というストーリー。

実をいうと、プランタジネット朝とかアンジュー帝国とか、このあたりの歴史知識は乏しくて、正直言うとピンときていない。実におはずかしい限り。婚姻やら何やらで領地が行ったりきたりしてる状態で、現在の国の概念とはまるで異なるからね。実際、本作におけるヘンリーの版図もイングランドとフランスのそれぞれの文化が混在しているわけだし、本当に苦手な時代なのだ(こんなだから歴史の教員にはなれないわけである)。当時の王様の生活レベルはこんなものなんだな…と、歴史の雰囲気を掴む意味ではいい教材になる作品ではあるけれど。

設定は史実に基づいているようだが、これを歴史劇といってよいのかどうか。たしかに背景は忠実と思われるが、愛と欲と憎しみが絡み合ったお家騒動の1日を、丁々発止のやりとりで見せる作品であって、歴史的なおもしろさを見せたいわけではない(元は舞台劇らしいね)。はじめ、「ちょっと舞台背景がよくわからないぞ…」と臆していたのだが、そこは別に知らなくてもどうでもいいのか…と気づくと少しは楽に観られるようになった。
字幕の訳のせいかもしれないし、単に感覚的に理解できないだけかもしれないが、肝心の跡継ぎ争いの駆け引きでニュアンスのわからない部分がけっこう多く、「それってどういう理屈?」って首をかしげることも。舞台劇を観馴れている人にはOKなのかもしれないけれど、最後のノリなどは、私には理解不能。このラストに限らず、どう愉しめばいいのか困惑してしまう部分が満載だったのも事実である。

受賞歴的には、キャサリン・ヘプバーンの方が評価は高いようだが、ワタクシ的にはやりすぎな印象で、どちらかといえばピーター・オトゥールら男優陣の演技のほうが共感をもてた(アンソニー・ホプキンスだと、はじめ気づかなかったんだけどね)。

登場人物の行動に気持ち悪さも感じるし、ジョンのバカっぽさの演出も田舎くさい演出に思える。同年代の作品で今観てもさほど古く感じない作品は多々あるが、本作はものすごく古臭さを感じる。こういう展開や終わらせ方は現在では許されそうになく、色んな意味でハードルが高い作品で、非常にお薦めしにくい。

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image0144.png公開年:1998年 
公開国:イギリス
時 間:124分
監 督:シェカール・カプール
出 演:ケイト・ブランシェット、ジョセフ・ファインズ、ジェフリー・ラッシュ、クリストファー・エクルストン、リチャード・アッテンボロー、ファニー・アルダン、キャシー・バーク、エリック・カントナ、ジェームズ・フレイン、ヴァンサン・カッセル、ジョン・ギールグッド、ダニエル・クレイグ、エミリー・モーティマー、ジョセフ・オコナー、エドワード・ハードウィック 他
受 賞:【1998年/第71回アカデミー賞】メイクアップ賞(ジェニー・シャーコア)
【1998年/第56回ゴールデン・グローブ】女優賞[ドラマ](ケイト・ブランシェット)
【1998年/第52回英国アカデミー賞】主演女優賞(ケイト・ブランシェット)、助演男優賞(ジェフリー・ラッシュ)、作曲賞[アンソニー・アスクィス映画音楽賞](デヴィッド・ハーシュフェルダー)、撮影賞(レミ・アデファラシン)、メイクアップ&ヘアー賞、英国作品賞[アレキサンダー・コルダ賞]
【1998年/第4回放送映画批評家協会賞】主演女優賞(ケイト・ブランシェット)、ブレイクスルー賞(ジョセフ・ファインズ:「恋におちたシェイクスピア」の演技に対しても)
コピー:世界の映画賞、堂々16部門受賞!!!
その瞳が、唇が、その存在が革命<ヴァージン・クイーン>25歳。

カトリック信徒であるメアリー王女によるプロテスタント弾圧が激化する16世紀イングランド。メアリー王女は、カトリック信者であり王位継承権のある腹違いの妹エリザベスを幽閉するが、病のために死去してしまう。世継ぎは弱冠25歳のエリザベスに。側近達は、国と安定のために、隣国との政略結婚を迫るが、彼女には、恋人のダドリーがおり…というストーリー。

昨日の『ブーリン家の姉妹』を観て、どうしても続けて本作を観たくなった(購入して持っている)。
とにかく『ブーリン家の姉妹』を観たおかげで、メアリー王女や周囲の言動が腑に落ち、エリザベスの立場がより理解できる。これまで5度以上、本作を観ているが、霧が晴れて別作品を観ているくらいの新鮮さを感じた(今日のレビューは『エリザベス』自体のおもしろさというよりも、『ブーリン家の姉妹』と連続で観ることの効能について語ることになりそうだ)。

ヘンリー8世の力量がどれくらいであったはよくわからんが、少なくとも、メアリー王女の治世においては、宗教的なゆり戻しや弾圧(ブラッディ・メアリーと呼ばれたくらいだから)によって、経済力も軍力もガタ落ちで、エリザベスが引き継いだ段階では、三流国家といってもよい。これが、ゴールデン・エイジとまで呼ばれる状態になるには、いかなる過程を経るのか…というのが本作の愉しさなのだが、もう一度いうが、『ブーリン家の姉妹』の姉妹を観たおかげで、スタート時点のマイナスっぷりが良く理解できて、エリザベスの言動、一つ一つがより重く感じられる。そして、エリザベスがアン・ブーリンの性格をしっかり引き継いでいることにも気付き、とても興味深かった。

若干、なんで前妃の娘のメアリーが王女になれちゃってるわけ?とか、メアリー・ブーリンの男子は庶子扱いで継承権はないのね…とか、いろいろ疑問は湧くとは思う。ヘンリーは第3王妃を迎えて、その間に男子が生まれるけど早死にして、またもや権力争いが勃発し、すったもんだを経て、イングランド史上初の女王になるんだけど、この2作品の間にも、たくさんすったもんだがあるので、そちらも映画化してほしい気もするね。

『エリザベス』はもう観たよって人も、騙されたと思って、是非『ブーリン家の姉妹』と連続して観てほしい。単なる王女様の波乱万丈ストーリーでは終わらない何かに変貌することを保証する。このセット、強くお薦め。
それにしても、本作は、ドラマの1シーズンくらいボリューミーなのに、たった124分という点も改めて驚き。

#話はかわるけど、本作のエリザベスの吹替えのデキが非常によろしい。幽閉されていて儚い頃や、即位したての頃の自信なさげな所や、絶対君主たれと振舞う時の違いをうまく表現できている。是非、吹替えで観ることをお薦めする。

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プロフィール
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クボタカユキ
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一日一シネマ。読んだら拍手ボタンを押してくだされ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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