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公開年:1975年
公開国:日本
時 間:89分
監 督:石井輝男
出 演:小川真由美、岡田裕介、金子信雄、田中邦衛、絵沢萠子、滝沢双、田島義文、近藤宏、河合絃司、相馬剛三、山田光一、山下則夫、土山登志幸、横山繁、亀山達也、岡本八郎、山本緑、宗田千枝子、岡久子、松井紀美江、田中筆子、津森正夫、南広、沢田浩二、清水照夫 他




ギャンブル狂いの西原房夫は、情婦の向田孝子から金をせびる生活を続けていたが、彼女の財産も付きかけていた。かつては、証券会社に勤務していた西原だったが、400万円ほど横領し競馬につぎ込んだことが発覚しクビになっていた。当時、医者の妻だった孝子が、財産を処分して不倫相手の西原を救ったため、刑事事件になることは免れていた。西原と孝子はそれから同棲生活を続けている。しかし、西原はひそかに一発逆転を狙っていた。昨今、多摩農協に連続しての脅迫状が舞い込む事件が報道されていたが、それは西原の仕業だった。実は、この脅迫状は警察の目をそちらに向ける為で、一方で三億円を強奪する計画を立てていたのだ。そんな、西原の挙動を不審に思った孝子が問い詰めると、計画を告白。借金に追われる生活にほとほと疲れ果てていた孝子は、西原の犯行を手助けすることを決めるのだったが…というストーリー。

オープニングで、実際に捜査に関わった刑事さんが出ててきて講釈をたれる。当時のこの事件に対する社会の反応を考えるとわからないでもないが、結局捕まえられなかった刑事が、時効を迎えようという時に、何かを偉そうに語る滑稽な姿。当事者が、嬉々として犯人の予測をする姿があまりにも滑稽に映し出されている。とにかく、警察機構を馬鹿にする製作側の意図が明確であることがわかる。
それにまんまと乗っかる馬鹿刑事。キャリア批判や、本作の内容に苦言を呈しているが、こんな馬鹿じゃ捕まらないだろうと、ある意味納得できる、冒頭の掴みである。

1975年12月10日時効成立の事件なので、それに合わせて公開をぶつけたのだろう。つまり時効前に製作されているわけで、下衆だとは思うが、商魂はたくましいと思う(興収に繋がったかどうかは不明)。

盗まれた金は東芝府中工場の社員のボーナスだったのは有名な話だが、保険がかかっていてしっかり翌日には支払われていたりと、日本国内で誰も損をしていない。この、誰一人悲しんだ人がいないというところが、ある意味で神格化に繋がって(というか、犯人の過大評価に繋がって)、捜査手法が曲がっていっているのが、本作を通してもよく覗える。

犯人像が正解か否かは別にしても、警察の不手際の連続については、事実をうまく綴れていると思う。本作のすごいところは、事件の経過や捜査の経緯、警察の不手際が全てといってよいほど、詳細に盛り込まれていること。wikipediaに書かれているレベルの内容なら、ほとんど描かれていると思う。90分未満なのになかなか。犯罪史的なおさらいの意味では、いい資料かもしれない。

しかし、”答えはこれだ!”的な内容をつくっては見たものの、これだけ人々の想像力をかきたてて、記憶に残っているであろう事件なだけに、明らかになっている事実との整合性はがっちり取らねばいけないわけで、荒唐無稽なフィクションでおもしろさを追求するわけにもいかず、面白みに欠けた結果になってしまった。
ギャンブル好きという設定が、3億円の行き先と絡められているのだが、それならだれも気付かないなぁ…という展開ではなく、もうすこし凝った仕掛けが欲しかった。また、ラストは、ひとりのはみ出し刑事が、勘で逮捕した犯人を、厳密には不法な取り調べで追い詰め続け、結局時効を迎えてしまうという内容。それまでの流れと比較すると、ダイナミックさに著しく欠けており、尻すぼみ感が著しい。

あ、色々文句は書いたけれども、三億円事件を扱った『ロストクライム -閃光-』なんかより、何倍もおもしろいのは事実。とてもユニークな作品だと思う。観て損だとは思わないはず。
ポイントは小川真由美だろう。くたびれながらもエロさただよう佇まいが、コントロールされてるのかコントロールしてるのか判然としないという、微妙な立ち位置にうまくマッチしていると思う。
#昔、片岡鶴太郎が金子信雄のモノマネをしていたけど、『仁義なき戦い』をみても全然似てねえと思ったのだが、本作の金子信雄は、まさにモノマネのそれだったわ。

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公開年:1964年
公開国:日本
時 間:95分
監 督:深作欣二
出 演:高倉健、北大路欣也、三國連太郎、江原真二郎、中原早苗、室田日出男、石橋蓮司 他







貧民窟で育った黒木三兄弟。長兄の市郎は、年老いた母の金を盗み、ヤクザの岩崎組に入り幹部となる。その後、次兄の次郎も家を出て、金持ちの愛人をやっている女のヒモとなり、一匹狼のワルとなり名を馳せていた。三男の三郎は、兄たちがいなくなった後、母親の世話をして看取ったが、すべてを押し付けていなくなった兄達を強く恨んでいた。その三郎も品行方正なわけではなく、同じ貧民窟に住むチンピラ達と徒党を組み、悪事を重ね無軌道な毎日を繰り返していた。そんな中、一匹狼でやっていくことの限界と、先行きの見えなさに不安を覚えた次郎は、国外脱出を思いつく。その資金として、岩崎組の麻薬取引現場を襲撃し、4千万の金品を計画。いつもの犯罪仲間の水原とだけでは遂行不可能なことから、三郎と仲間たちに話を持ちかける。兄への憎悪は強かったが、一人頭5万円の報酬に目がくらんだチンピラ仲間の説得もあり応諾。いよいよ決行となるのだったが…というストーリー。

深作欣二監督で、三兄弟に三國連太郎、高倉健、北大路欣也と豪華な配役なのに、あまり有名ではない作品。なぜだろう。イギリスのチンピラ映画なんかによくありそうな内容で、ガイ・リッチーなんかがこんなのを作りそう。深作欣二も若い頃なので、演出の荒削りさは否めないけど、もうちょっと評価されてもよさそうなものだ。でも、北大路欣也なんかも若くて、その若さ故の熱い演技が、本作を形成しているのも事実で、荒削りさが魅力となっているのは、間違いない。

三兄弟なので、タイトルの狼と豚と人間にそれぞれが当てはまるのかな?なんて思ったのだが、そうでもなさそう。メイン配役のそれぞれにスロットマシーンのドラムが割り当たっていて、それぞれ、狼と豚と人間のどれになるかなーっていう感じ。
確かに、だれが出し抜けるか?!っていう、目まぐるしく変わる展開。だが、話が進むにつれて、良い目が出る可能性が、ジワジワと減っていくという閉塞感が良い。

(ちょっとネタバレ)
で、最後に残る市郎に出た目は狼か豚か人間か。組織からの圧力を考えると、結局彼の命も無さそうで、三兄弟そろって豚で終わってしまうような気がする。
おそらく、なんでこの作品の評価が低いかというと、肝心の金が出てこないことだけでなく、その金の顛末で一エピソードつくれなかったからだと思う。誰か意外な人物が出し抜いていたりとかね。全員破滅でおしまいという展開にして悦に入ってしまいがちな、戦後育ち世代の悪い癖だと思う。
犬を食うところで、みなまで言わなくても彼らの出自が見えてくるわけだが、だからといって、そういうスラム的な部落出身者への差別を問題視している作品ではないところはよい。むしろ、ゾンビのような存在で描かれており。もっと彼らを生かすのも策だったかもしれない。金の顛末に彼らを絡めるのもよかっただろう。

良作だと思う。

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公開年:1978年
公開国:日本
時 間:110分
監 督:野村芳太郎
出 演:緒形拳、岩下志麻、小川真由美、大滝秀治、加藤嘉、田中邦衛、蟹江敬三、穂積隆信、大竹しのぶ、浜村純、鈴木瑞穂、山谷初男、石井均、江角英明、岩瀬浩規、吉沢美幸、松井範雄、三谷昇、山本勝、鈴木誠一 他
受 賞:【1978年/第2回日本アカデミー賞】主演男優賞(緒形拳)、監督賞(野村芳太郎『事件』に対しても)
【1978年/第21回ブルーリボン賞】主演男優賞(緒形拳)、監督賞(野村芳太郎『事件』に対しても)


印刷屋を営む竹下宗吉と妻のお梅。最近、火事をおこしてしまい再建の費用を要したことに加え、注文も減ってしまい火の車。やむを得ず、組合のルールを無視したダンピング受注で凌ぐ自転車操業。そんな中、宗吉の愛人・菊代が三人のの隠し子を連れて押しかけてくる。寝耳に水のお梅は激昂し口論となるが、結局お梅は子供を残して蒸発してしまう。手が掛かる上にかわいげのない子供たちをお梅がかわいがるわけもなく、自分が子供を作れなかったという負い目と嫉妬が加わり、宗吉と子供達に当たり散らす地獄の日々が始まる。一切の子供の面倒は宗吉が行ったが、育児などしたことがない彼が満足にできるはずもなく、とうとう末っ子のの庄二が栄養失調で衰弱してしまう。その後、療養を続ける中、庄二の顔の上にシートがかぶさりるという事故で死んでしまう。はたしてそれは事故だったのか故意だったのか…というストーリー。

決して庄二に直接手をかけたわけではない…ということで生じる不穏さ(シートか被さったことが原因ともいえず、あくまで栄養失調を原因とする衰弱死として処理されている)。さらに、良子がその後どうなったのか語られないことで生まれる濃霧のようなモヤモヤ感。

岩下志麻演じるお梅が、明確に鬼女として描かれていれば、観客の憎悪はそこに向うであろうが、稼業が火の車のときに突然夫の隠し子を3人も押し付けられ、その心中を察っするのが容易であると同時に、自分も同じように冷たくあたってしまうのではと幾ばくか共感してしまうというところが、この話の恐ろしさ。そして、岩下志麻が鬼女の形相をしようとも、おそらく視力が悪いためであろう、微妙に焦点がずれているような目つきが一層その魅力を増し、シビれるほどの綺麗さに目を奪われてしまうという罠。

その分、矛先は、愚鈍に振舞いながらも、こつこつ小金を掠めて愛人に貢いでいた宗吉に向く。愚鈍も愚鈍の宗吉だが、彼の心の中は明確に語られないまま話は進んでいく。何を考えているかわからない夫…というのも、実にありがち。

さて、いよいよ、利一に手をかけようかと連れ出すときに、旅館で酔っ払いながら、利一に、自分のおいたちを語る。ここで、彼がどういう人間なのか…が垣間見える。
まともな家族というものを知らなかったから家族が欲しかった…と、でもいざ家族を持ってみるとどうしてよいのやらわからず破綻していくという、なんとも、そこら辺にありがちな話ではないか。虐待された子は、成長した後、結局同じことを自分の子供にしてしまう…というのは、昨今あたりまえに語られる例である。

同じ緒方拳主演の犯罪サスペンスである『復讐するは我にあり』に比べると、その犯罪行為の鬼畜加減は格段に低い(そういう類の、得体の知れない恐怖とは違う)。でもあえてタイトルは“鬼畜”なのだ。あなたの中にも鬼畜っぷりは、あるんじゃないですか?たまたま今、その鬼畜要素が発現されない環境なだけなのでは?と、そう問いかけているようにも思える。

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image2178.png公開年:1974年
公開国:アメリカ
時 間:122分
監 督:シドニー・ポラック
出 演:ロバート・ミッチャム、高倉健、ブライアン・キース、岸恵子、ハーブ・エデルマン、リチャード・ジョーダン、ジェームズ繁田、岡田英次 他
コピー:すさみきった現代。ストレンジャーが 愛で まもり通した花一輪に 日本任侠の心が燃えた! 全世界の注目をあびて《巨匠》が描く娯楽超大作!





アメリカの海運会社を経営するタナーの娘が、日本のヤクザ組織・東野組に誘拐された。東野とタナーが交わした武器売買契約をタナーが履行しなかったためだ。タナーは、第二次大戦後に進駐軍兵士として一緒に日本に滞在していた旧友のハリー・キルマーに相談。ハリーは、日本にいる田中健というヤクザの幹部に貸しがあり、彼に協力を依頼すれば、問題を解決できるかもしれないと告げる。元々はタナーの不備が発端だったため、乗り気ではないハリーだったが、タナーの部下のダスティと共に仕方なく訪日する。東京に到着したハリーは、田中英子という女性が経営するバー“キルマー・ハウス”を訪れる。英子はハリーの日本滞在時の愛人で、バーは帰国の際に彼女に贈った店だった。英子から健が京都にいることを聞いたハリーは、すぐに京都に行き事情を説明するが、健は既にヤクザの世界から足を洗っており…というストーリー。

もう、タイトルからして直球すぎて如何なものか…と思ってしまったのだが、内容もタイトルに負けていなかった。
当時のアメリカ人にとってすれば、日本の文化・風習だけでもアメージングなことばかりだっただろうに、それに加えて任侠世界の感覚やしきたりを理解しなければ話が進まない。だから、とにかく至る所で説明、説明 and 説明。誤解されてしまうと厄介なので、説明的な台詞もとにかく丁寧だったりする。

東京や京都でロケされていて、当時の街並みがものすごく味わい深い。新宿の様子なんか、臭いが伝わってきそう(パチンコ屋のトイレが臭そう)。なぜかJCBの看板が目立つのがおもしろい(UCの看板もあるので別にスポンサーといわけでもないだろう)。1970年代の頭には、すっかりクレジットカードが定着しているのね。

シドニー・ポラックの手腕なのか否か、アメリカ映画にありがちな“トンデモ”な日本描写が、この作品には極めて少ない(異論があるのは承知)。違和感が強いのは、花子役のクリスチナ・コクボのカタコトな日本語くらいじゃなかろうか(教師設定なのにカタコトはないわな。ここは吹き替えでよかっただろう)。
足を洗ったヤクザが、京都で剣道を教えているのが変?私は別に変だとは思わないな。もう遠い昔の日本だから、私の頭の中で“別世界”という判断をしているせいかもしれないけれど。
#ハリー、東京⇔京都の移動 ごくろうさん…。

(以下、ネタバレ含む)

同じ女を愛した男というシンパシーで、通じる二人の男。必死の目にあって復員したのに、毛唐の愛人になっている妻。しかし、その毛唐がいなければ、売春婦にでもならない限り娘共々生き抜くことはできなかっただろう。命あっての物種。これも運命、身分を兄と偽って身を引けば丸く治まる。なんとも息苦しいが、そういう時代ということで。
本当はプラマイゼロで、もうハリーに義理なんか無いんじゃないの?と思うのだが、それを隠している以上、表面的には義理があることになってしまうという難しい状況。高倉健はそういう微妙な感じや、やるしかない…そういう運命なんだ…と達観した気持ちをうまく表現していたと思う。

そんな事情だから英子もおいそれとハリーと結婚なんかできなかった。じゃあ、すっぱりと縁を切りゃあいいと思うのだが、そうしていないところをみると、英子は元々シモがだらしない女だということになるのだが、それはご愛嬌。

そんなことも露知らず、田中健は自分に義理があるだとか上から目線だったことに、とてつもなく恥ずかしくなってくる。
ヤクザ、ヤクザというけれど、単に社会からドロップアウトした無法者とは違うのよ。マフィアとは違うのよ。男と男が義理を通せば、それが任侠なのよ。それは外国人だって同じことだよ…と、そこで最後にハリーがやっちゃうのがなかなかのインパクト。もちろん、実際はそんなに簡単には切れないんだろうけど、ハリーが失神しそうになってるのが、なかなかリアル。でもさすがに、そこまで美化しちゃいけないと思うのよ。兄貴分の目を盗んで、ささっとエンコを詰めちゃうのなんて、見方を変えれば滑稽だものね。

今、地上派で放送されることは間違いなくないであろう、色々と総合して珍作と言い切ってよい本作だが、雰囲気といい人物描写といい、全編に緊迫感を維持し続けた作品だと思う。あまりに予想外で、思わず「おもしれ~」って口に出してしまったよ。
#パンナムのカバン欲しい…

 

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image2162.png公開年:2012年
公開国:日本
時 間:129分
監 督:井筒和幸
出 演:妻夫木聡、浅野忠信、桐谷健太、溝端淳平、チャンミン、青木崇高、中村ゆり、田口トモロヲ、鶴見辰吾、西田敏行 他
受 賞:【2012年/第36回日本アカデミー賞】新人俳優賞(チャンミン)
【2012年/第22回日本映画プロフェッショナル大賞】ベスト10(第7位)
コピー:札束より欲しいもの、おまえにはあるか?


闇で過激派や犯罪者を相手に調達屋をしていた幸田は、学生時代からの友人・北川から大手銀行の地下に保管されている40億円相当の金塊を強奪する計画を持ちかけられる。銀行担当のシステムエンジニアである野田、元エレベーター技師で銀行の内部にも詳しい“ジイちゃん”こと斉藤、爆弾に精通している元・北朝鮮のスパイの青年チョウ・リョファンと、計画に必要な人材を北側は集める。さらに、計画を知ってしまった北川の弟・春樹を加え、6人のメンバーによる計画が始動する…というストーリー。

原作が良いからだとは思うが、これまでの井筒監督作品の中で、いちばんマトモな出来映えだと思う。

井筒監督は、毎度毎度、朝鮮関係に多かれ少なかれ偏執しており、本作もどっぷりなのだが、以前とは偏執の仕方がちょっと違っている印象。もしかすると井筒監督の朝鮮半島(および在日朝鮮人/韓国人)に対する見方に変化が生じているのかもしれない。これまで無条件に信じ込んでいた馬鹿左翼の喧伝に疑問を持つようになったのかも…と思える。

今回、井筒監督のお気に入りだった模様のチャンミンは、北朝鮮工作員役なので、違和感はない。しかし、エンドロールの曲で、コケさせられるとは思いもよらなかった。安室奈美恵の楽曲なのだが、何一つ本作の雰囲気とマッチしていない。要するに、東方神起とavex繋がりってことなんだろうけど、他の曲もあっただろうに。まあ、製作品を確保するためには、そんなところは小事ってことなんだろうけど、井筒監督って人は、金で苦労し続ける運命なのかもしれないな。

原作は20年以上前の小説で、そのころでも過激派の設定は時代的に違和感があったと思うのだが、舞台を現代にするとますます違和感が大きくなる。でも、20年前の設定にすると、建物やら小道具やら細かいところまでその時代に戻さないといけない。時代劇なら撮影所でいいかもしれないが、かえって20年前とかいう設定は金がかかる。よって設定を現代に。
その反動なのか、妙な小ネタは散りばめられている(“のび太くん”とか)。一部には好評らしいが、私にはサムいしスベってるようにしか見えない。

肝心の仕事への動機が、私にはしっくりきていない。札束は足がつく、金の価値はどこへいっても通用する…それは判る。でも、金だって足はつくよ。一旦溶かしたとしても足元を見られて、目減りするなら、現金を運んでロンダしたほうが良いのでは?ということになる。原作ではうまく説明ができているのだと思うけど、本作では少し説明不足かな。

一番、しっくりこないのは野田。彼は慰謝料(養育費?)を払わねばならず、金が必要なのはわかる。慰謝料は必ずしも一括で払わねばいけないものでもないから、彼はコツコツ払っていくこと自体がイヤなわけだ。でも、この計画が終わったら、海外に逃亡して金を闇でさばくという計画。もちろん日本には簡単には戻ってこれない。パスポートは持っているだろうが、長期滞在できるビザを取っているわけはないので、やっぱり韓国でそのまま暮らそうが、他国にいこうが、所詮不法滞在である(パスポートとは基本的に海外にいくために必要なのではなく、日本に再入国するのに必要なのだから…)。彼が、そんな生活を望んでいるように見えないのだが…(もう、日本で生活するのがイヤになっている…という演出が必要だったんじゃないかな)。

そう考えると、北川だって、どうするつもりだったんだろう。妻と子供が死んでしまったのでエイヤー状態になったけど、元々は妻と息子は日本においていくつもりだったのだろうか。

さらに考えると、主人公・幸田の“人のいない土地を探している”という設定もなんか消化不良で終わってるな。

はっきりいって、メインキャスト全員、大根だったと思う。浅野忠信だって他の作品と代わり映えしないし台詞も聞き取りにくい。西田敏行ですら、抑え気味のキャラだから、いまいち良さが出ていない。でも、全キャラが喜怒哀楽がなく、むしろ感情の薄い人物設定なので救われている感じ。

なんだろうね。もうちょっと予算があれば、何とかなったんだろうかね。

 

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image2126.png公開年:2012年
公開国:日本
時 間:112分
監 督:北野武
出 演: ビートたけし、西田敏行、三浦友和、小日向文世、加瀬亮、桐谷健太、新井浩文、松重豊、中野英雄、名高達男、光石研、田中哲司、高橋克典、中尾彬、塩見三省、神山繁、白竜、菅田俊、國本鍾建、井坂俊哉、本田大輔、阿部亮平、斎藤歩、四方堂亘、西沢仁太、山中アラタ、佐々木一平、山中崇、平井真軌、永倉大輔、貴山侑哉、中野剛、曽根悠多、徳光正行、三溝浩二、中村祐樹、江見啓志、黒石高大、岡田正典、石井浩、山本修、武井秀哲、阪田マサノブ、西條義将、児玉貴志、安部賢一、塚原大助、中村浩二、佐々木卓馬、光宣、龍坐、中村英児、原圭介、光山文章、五刀剛、ヘイデル龍生、七枝実、浜田大介、八田浩司、江藤大我、保科光志、高久ちぐさ、月船さらら、金守珍、金田時男、北村総一朗、中原丈雄、深水三章、中村育二 他
受 賞:【2012年/第22回日本映画プロフェッショナル大賞】ベスト10(第2位)
コピー:全員悪人 完結。
 一番悪い奴は誰だ?

熾烈な下克上抗争の末、先代の跡目を加藤が引き継ぎ“山王会”のトップになって5年。加藤は元大友組の金庫番・石原を若頭に据えて勢力を拡大。その金銭面でのセンスで得た資金を使い、政治の世界にまで手を伸ばしはじめる。警察組織はそんな山王会の勢力拡大を警戒していた。しかし、山王会内部では、若手を優遇する加藤のやりかたに古参幹部の不満が鬱積。刑事の片岡は、古参幹部を炊きつけて、関西の“花菱会”と接触さえい、東西の居だ暴力団を対立させようと画策する。その一方、片岡が獄中で死んだと噂を流していた元山王会配下大友組の組長・大友と接触。ヤクザの世界とは縁を切ろうとしていた大友をけしかけ、この抗争に巻き込もうと裏で手を廻し、仮出所を早めるのだったが…というストーリー。

本作の脚本も北野武によるものだが、前作よりも格段とデキが良い。主人公のくたびれ具合と、抗争との距離の置き方が、スコセッシ作品を彷彿させる。ワーナーが配給するのも判る気がする。
終盤の大友のセリフ「俺、木村組の若い衆でいいよ…」単に疲れただけじゃなく、達観するとこうなるよね。地位が何も生まないことを身に沁みて判ってしまったた男が、力と力のぶつかり合いに対して、別の切り口で動くのはおもしろい。
テンポの緩急が非常によく、前作を観ていなくても、何となく愉しめてしまうくらいだ。北野武作品を全部観たわけじゃないけど、これまでの作品の中で一番おもしろいんじゃないかな。

一時期、在日朝鮮人と噂されたこともあった北野武だが、それを逆手に取ったような、朝鮮ヤクザにお世話になるという展開(張大成を演じていた人は役者じゃないとか)。加藤を殺す場所もパチンコ屋とか、北野武だからこそストレートに描けるのかも。
高橋克典も桐谷健太も、他から見たら贅沢な使い方。みんなノーギャラでも出たいと思う監督なんだろう。
快作だった。
 

 

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image1850.png公開年:1973年
公開国:日本
時 間:99分
監 督:深作欣二
出 演:菅原文太、松方弘樹、田中邦衛、中村英子、渡瀬恒彦、伊吹吾郎、金子信雄、木村俊恵、川地民夫、渚まゆみ、内田朝雄、三上真一郎、名和宏、中村錦司、曽根晴美、大前均、国一太郎、大木悟郎、志賀勝、唐沢民賢、榊浩子、小林千枝、 東竜子、川谷拓三、宮城幸生、山田良樹、疋田泰盛、壬生新太郎、木谷邦臣、松本泰郎、西山清孝、奈辺悟、福本清三、片桐竜次、北川俊夫、梅宮辰夫、小池朝雄 他


昭和21年、呉敗戦直後の無秩序状態の広島・呉。復員後ぶらぶらとしていた広能昌三は、とある事件で人を殺め服役する。服役中、土居組若頭・若杉を兄弟杯を交わすと、先に出所した若杉の尽力で出所。広能の行動力は山守組々長・山守義雄の目にとまり、山守組の身内となる。その後、勢力拡大を目指す山守が、土居組との抗争を繰り広げていく中、元々土居組組長と仲が悪かった若杉は、対立の末に破門となり、兄弟分の広能を通じて山守組の客分となる。これにより土居組長殺害の機運が熟し、若杉がその実行に名乗りを上げるが、仲違いしたとはいえ親子杯を交わした相手を殺すことで、兄弟分が親殺しの汚名を着ることを良しとしない広能が、代わりに名乗りを上げるのだったが…というストーリー。

先日の『ドーベルマン刑事』で、そういえば『仁義なき戦い』ってきちんとは観ていないかも…と思いレンタル。子供の頃、ものまね番組とかで金子信雄の物まねをする人をみて、ポカーンだったことを思い出す。本作での金子信雄を演技をみてやっと理解した。

迫力とテンポは、多くの人が魅了される理由があっさりと腑に落ちるほどの圧巻。スタイリッシュさが皆無なことが、わざと出そうにもだせない汚れ具合を醸し出しており、画力の一助になっている。特にキャラクター付けを意図的になっているわけではないのに、溢れるほどの個性は、演者の力のおかげだけではなかろう。むしろ、説明不足ともいえる不親切な演出が、それに観客は振り落とされまいと喰いついて行く感じ。
ポラギノールのCMみたいに静止画で繋ぐシーン(もちろんCMのほうがパクってるんだろうけど)、こういう効果をこの手の作品にサラッと入れられるのは、なかなかスゴイ。

深作欣二って、ある意味様式美の人だな…と感じたのだが、かといって、市川昆のような様式美とは異なる。両者とも実にマンガ的な画づくりをする人だとは思うのだが、深作欣二のほうがマンガ家に近い印象。その違いはラストシーンで顕著だと思う。
日本のマンガ家って、おもしろい展開をつくってそれを続けることはうまいけど、いざ話を終わらせようとするときちんと終わらせられない人が多いでしょ。むしろ、なにもしないで突然打ち切りになったほうが、この世界が永遠に続いているようで、逆にいいんじゃないかと思えるど。本作は、たしかに葬儀場でピストルをぶっ放すという印象的なシーンではあるが、ストーリーとしてはなにも終わっていないし、すっきりもしない。
このおもしろい世界が永遠に続けばいい。そういう世界観。実にお祭り的な作り方だと思うが、そういう面は、私は好きじゃない。映画はきっちりおわらせてナンボだからね。
でも、始終マンガ的だったからこそ、世界観に魅了される人が続出し、続編が次々と作られたのも事実。その効果やおもしろさを否定するわけではない。

不思議なことに、昨日観た『ゴッド・ファーザー』との共通点が多々。ヤクザとは無縁だった男が、とあるきっかけにより大仕事をやって名を馳せるが、同時にしばらく一線から姿を隠す。覚せい剤に手を出す輩が出てきて、それを反対する元来のファミリー・ビジネスを良しとする勢力と抗争になる。単なる裏社会のルールうんぬんではなく、経済ヤクザに変貌する過程を描いている。
この共通点は、国は違えども同じヤクザのファミリービジネスをリアルに扱おうとすれば、当然直面する問題ばかりなので、共通してしかるべき…と捉えるべきなのか、それとも仁義なき戦いが、マフィア映画の影響を受けているからなのか…。

納得できない演出も散見される。
拘置されているならいざしらず、実刑をくらっているのに保釈金で出てくるとか、ちょっと意味がわからなかった。今でも、よく、有名人が逮捕された後に保釈されると、金さえ払えば放免になるのか。ムッキー!!って怒る人がたまにいるけど、この映画で勘違いした人が少なくないんじゃなかろうか。しかし、戦後まもなくとはいえ、保釈金を積めば禁固刑が終わるなんてシステムはなかったはずなので、これはシナリオのミスなのだろうか。一応、事実を元に書かれた手記が元なのだが、原作でもこの記述はあるのか、映画シナリオ上のポンコツ勘違いなのか。
#サンフランシスコ講和条約締結による恩赦のほうは、実際にあったのかもしれない。でも、今ではこうことで刑事犯が出てくることはまずないだろうから、非常に時代の違いを感じさせてくれる。

また、はじめに米兵に襲われてた女が、最後のほうに出てた山方&坂井の女だって、気付かないよね。気付けないってことは、あの時に助けたことが事始みたいなものなのに、助けた女は結局こんなありさま…みたいな悲哀を感じた観客はほぼ皆無。無駄な演出だと思う。

“実録”モノとすることで、その荒さが不問になっているという印象はるが、本作も『ゴッド・ファーザー』に負けず劣らずのキレキレ演出で、多くの人に影響を与えたと思う。とはいえ、意外と観たことがない人は多い作品だろう。ヤクザ映画だと忌避していた人も、珍味を食べるつもりで観ることをお薦めする。
#辰兄の消えっぷり…



負けるな日本 

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image1714.png公開年:2010年
公開国:日本、カナダ
時 間:118分
監 督:伊藤俊也
出 演:渡辺大、奥田瑛二、川村ゆきえ、武田真治、矢島健一、菅田俊、春田純一、奥村知史、中村映里子、伊藤明賢、斎藤歩、ダイヤモンド勝田、針原滋、飯田裕久、烏丸せつこ、熊谷真実、中田喜子、かたせ梨乃、宅麻伸、原田芳雄、夏八木勲 他
コピー:世紀の完全犯罪、三億円事件、解決。

 

隅田川で発見された絞殺死体の捜査にあたるベテラン刑事・滝口と若手刑事・片桐。定年間近の滝口は上層部の指示を無視した行動を続け、辟易する片桐。しかし、滝口から、被害者の葛木勝が3億円事件の最重要容疑者の一人だったということを聞かされる。当時3億円事件の捜査でミスをしていた滝口は、その苦い記憶を引きずっており、今回の葛木が3億円事件に関わりがあるのではないかと執着する。そして、滝口と同じように、葛木殺しと三億円事件の繋がりに気づいたフリージャーナリストの宮本が、片桐に接近。彼らは、独自の捜査で事件の核心に徐々に迫っていくのだったが…というストーリー。

下山事件やグリコ森永事件と同列であろう、日本犯罪史最大級の事件を扱って、このザマとは。観ていてここまではずかしくなる作品もめずらしい。

本作で繰り広げられる、事件の真相というのが非常につまらない。それが整合性のある物になればなるほど、無駄にリアリティを増してしまい、フィクションとしてはおもしろくなくなる。そういう運命を背負っているのだから、「つまらなくても事実だから!」と強引に言い張るくらいの勢いと説得力がかければいけいない。実はこうだったんですよ…ということをどう膨らませるか、どんな謎解きを仕掛けるかが勝負だと思うのだが、それは無い。

何がすごいって、80分近く経過しても、実はストーリーが何一つ展開していないというおそろしさ(まあ、正味40分もあれば、充分にまとめられそうな内容なんだけどね)。
サスペンス感の無さ。ミステリー感の無さ。ラーメン屋殺しの犯人を挙げたいのか、3億円事件の真相を暴きたいのか、一体この刑事たちは何をゴールとして進んでいるのかさっぱり見えなくなる。製作側はこの2つが同じ意味だと思っているようなのだが、残念ながら、どっちのスタンスを取るかで行動は変わってくるはず。そこがわかっていないからこんな迷子状態になり、オチが判ってもカタルシスは皆無。

警察機構は、このまま武田真治がやらかし続けてくれれば、3億円事件が闇に葬られて都合がいいのでめでたしめでたし…ってことで、奥田瑛二を妨害しているということなんだろうけど、そういうことなら、「俺はただ目の前の事件を捜査したいだけなんだ!」って愚直に捜査してくれたほうが面白かったような気がするけど。まあ、シナリオが稚拙すぎて、武田真治が伏線として生きていないレベルだから、こんなことを言っても無駄かもしれん。

そんな散っちゃいガムテープで口をふさげるとか…
複数人が襲い掛かっているのに、本当に捕まえたい人を無視して若造とだけ戦闘。そして、車はその戦闘をだまってまっているとか…
一般家庭に何気に青酸カリがあるとか…
川村ゆきえやら中田喜子やらかたせ梨乃のちちくりシーンに必然性や演出上の意味があるとは思えず、おまけに官能的ですらないとか…
かたせ梨乃の「ああ、昔、やらかしてたな…」という闘士感が一切無いとか…
はずかしくもなく「臨界を超えちまった!」そんなセリフ吐くとか…

Vシネマ未満。トンデモムービーですわ、これ。まったくはじけていないトンデモムービーほど、つまらないものはない。観るだけ時間の無駄。その時間をつかってラーメン二郎のオーダーの仕方を練習していたほうが、時間の無駄にならない。

#渡辺大はいい俳優になりそうなのだが、こんな作品に出てしまい出世が何歩も遅れてしまったのではないか。誰か救ってあげて。




負けるな日本

 

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image1556.png公開年:2009年
公開国:日本、カナダ
時 間:112分
監 督:角川春樹
出 演:大森南朋、松雪泰子、宮迫博之、忍成修吾、螢雪次朗、野村祐人、大友康平、伊藤明賢、矢島健一、鹿賀丈史 他
コピー:追うも警官、追われるも警官。


 

北海道警察による組織ぐるみの裏金工作疑惑が浮上したため、道議会は、その真偽を問うべく現職警官の証人とする“百条委員会”の開催を決定する。開催の2日前、札幌市内のアパートで婦警の水村巡査の死体が発見される。道警の上層部は、早々に元交際相手の津久井巡査を容疑者と断定し、拳銃所持と覚せい剤摂取の疑いがあるとして、異例の射殺命令が下す。過去に津久井と任務を遂行した経験のある佐伯は、迅速すぎる動きを不審に感じ、元道警の警察官がマスターを務めるバーへ同僚たちを集める。翌日行われる百条委員会の関連性を疑い、今後の身の振り方を話し合っていると、バーの奥から津久井本人が姿を現わし…というストーリー。

ちょっと邦画が続く。

まあ、原作がおもしろいのだろうな…ということは何となく伝わってくる。派手なドンパチはないけれど、『あるいは裏切りという名の犬』のような、フランスの刑事モノみたいな感じもしないわけではい。
残り時間が少ない中、誰が黒幕か?誰が裏切るのか?という緊迫感満載の展開が!!となって然るべきなのだが、残念ながらそうはならない。時間が無いはずなのに、主人公達はけっこうのんびりしていたりして、ピリピリとした世界観がまったく表現できていない。

演出的な問題はそれだけではなくて、角川春樹、わかってないなぁ…というのが、率直な印象。ラストのダサい妄想的な演出など、まともな神経の人間のセンスとは思えない。

どんな手口でどれだけやってるか、裏金作ってる当事者でさえ把握できないくらいの状態になってるから、こんな裏金天国なのである。個々人は軽微な逸脱くらいにしか思っていないが、俯瞰でみると巨悪。だから、悪魔というのははっきりとした形をもたないからこそ恐ろしいのだ…という表現にしなければいけないのであって、あの人が黒幕でした…みたいな表現は一番の禁忌だと思う。

一応フィクションとはいえ、実在の組織で実際にあった悪事をモチーフにして、さらにそれをご当地で撮影しているのだから、もっと詳細な部分までリアルを追求すべきではなかったのだろうか。

これは、TVの2時間ドラマならセーフだと思うが、劇場公開作としては信じられないレベル。自分にどんな才能があると思ってメガホンを取ったのか、よくわからない角川春樹。演者さんたちには悪いけど、これは見る価値のない作品。仮に地上は放送があったとして、深夜じゃないと堪えられまへん。

#松山ケンイチの無駄遣いぶりがハンパない。


負けるな日本

 

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image1695.png公開年:2010年
公開国:日本
時 間:109分
監 督:北野武
出 演:ビートたけし、椎名桔平、加瀬亮、小日向文世、北村総一朗、塚本高史、板谷由夏、中野英雄、杉本哲太、石橋蓮司、國村隼、三浦友和、坂田聡、森永健司、三浦誠己、柄本時生、新田純一、渡来敏之、岩寺真志、小村裕次郎、大原研二、田崎敏路、野中隆光、小須田康人、塚本幸男、島津健太郎、岸端正浩、清水ヨシト、藤原慎祐、藤井貴規、平塚真介、真田幹也、上田勝臣、奥原邦彦、山本将利、菊池康弘、西田隆維、大野慶太、外川貴博、江藤純、戯武尊、内田恵司、川又シュウキ、飛田敦史、芹沢礼多、内野智、瀧川英次、井澤崇行、金原泰成、鈴木雄一郎、柴崎真人、辻つとむ、貴山侑哉、樋渡真司、太田浩介、マキタスポーツ、ケンタエリザベス3世、黒田大輔、藤田正則、鷲津秀人、しいなえいひ、こばやしあきこ、渡辺奈緒子、三原伊織奈、中村純子、棚橋幸代、星野美穂、水上莉枝子 他
受 賞:【2010年/第53回ブルーリボン賞】助演男優賞(石橋蓮司「今度は愛妻家」に対しても)
【2010年/第20回日本映画プロフェッショナル大賞】ベスト10(第9位)
コピー:全員悪人

関東一円を勢力範囲に置く巨大暴力団・山王会。若頭の加藤は、傘下の池元組と村瀬組が兄弟盃を交わして親密にしていることを快く思わず、組長の池元に村瀬組を締めるように命じる。村瀬との関係を壊したくない池元は、対立しているように見せておけば何とかなると軽く考え、配下の大友組に適当に村瀬組とモメ事をおこすように指示。小さな組ながらも武闘派の大友組は、さっそく村瀬組に仕掛け、痛めつけることに成功。しかし、その程度では満足しない山王会は、村瀬組へのさらなる粛清を望み、池元がそのすべてを大友組に丸投げしたことから抗争がエスカレートしてしまい…というストーリー。

アートを匂わすのをあえて排除している点に、非常に好感が持てる。キタノブルーに代表されるヨーロッパで高く評価される様式美が、私はあまり好きではない。置きにいったストライクみたいで何かか鼻に付くんだもの。だから『アキレスと亀』や本作のように奇行・暴力のオンパレードな偏った作品ほど、ほとばしりのようなものが感じられて好みなのだ。暴れるチェーンソーを持たされてるみたいな感覚で、振り回されてる感が心地よい。

ヤクザ(というか暴力団)だって会社と変わらない世界だと思う。ビジネスのルールもあれば、上司・部下の命令体系だってあるわけで、サラリーマンと大差ないじゃない。身勝手な上層部によって使い捨てされる理不尽な展開は、いまの段階世代のアホに迷惑掛けられてる下の世代なら、共感できるだろう。
だけど、今のカタギには、本気のギラギラした闘志とか、筋の通らないことに対する義憤とかが無いよね。暴力の波状攻撃だっておまえら真剣にやれよ!、怒っていいんだぜ!っていう北野武のメッセージなのかな…と。

ただ、コピーの”全員悪人”の看板に偽りあり…というか、大使館のおっさんが悪人になりきれていないのが唯一の不満。だって、カタギの皆さんにはご迷惑をかけない、ヤクザとヤクザによるファンタジーでしょ。アホな国会議員が東京にカジノ特区をつくろうとしているのはヤクザと一緒だよね…と揶揄したかったのだろうけど、そこは徹底して欲しかったかな。

即座に続編を作るのもどうかなと思うけど、このままインテリヤクザが生き残って、泥まみれになった奴が馬鹿をみるオチで終わらせるのは忍びないと考えたのではなかろうか。

ラストのぼんやり具合は否めないけど、快作だと思う。キタノ作品に興味のない私でも良いと思ったので、軽くお薦め。



負けるな日本

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image1503.png公開年:2009年 
公開国:日本
時 間:113分
監 督:吉田大八
出 演:堺雅人、松雪泰子、満島ひかり、中村優子、新井浩文、児嶋一哉、安藤サクラ、内野聖陽、品川徹、大河内浩、石川真希、古舘寛治、近藤智行、安藤聖、玉置孝匡、俵木藤汰 他
コピー:嘘のない恋愛なんて、退屈でしょう?
実在した結婚サギ師。滑稽だけど、なぜか切ない。


父はカメハメハ大王の末裔、母はエリザベス女王の妹の夫のいとこ、現在は米軍特殊部隊ジェットパイロット、36歳のアメリカ人ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐。しかし、その正体は、微妙な変装にもかかわらず、ウソの経歴で女性たちを次々騙しては金を貢がせる結婚詐欺師。弁当屋の女社長しのぶには結婚話を信じさせ、一方、博物館学芸員の春にも興味を示す。さらに、銀座のホステス未知子にも巧みに近づくクヒオ大佐だったが…というストーリー。

日本の犯罪史の中で、血なまぐさい話もなく、普通に考えたらウマくいくわけないだろ?ってレベルで、ここまで特異に輝く人物はいないだろう。数々のドキュメンタリー系バラエティ番組で紹介され、その度に、多くの人の首を傾げさせている。スゴク興味をもっていた人物である。
#まあ、そこまでいう割には劇場にはいかなかったんだけどね。

若干、年齢の設定は異なるものの、騙しのテクニックは伝えられている通りのもので、事件をよく研究していると思う(そのくらいあたりまえか)。
(誤解を恐れず言えば)「女性の欲するものを提供しているだけ」その点を突き詰めていくストーリーは、おもしろいに違いない。松雪泰子演じる弁当やの女社長との絡みや、博物館学芸員の春の心の隙間に入っていく様子は実に痛快で、このまま女から女へ捕まることなくスリ抜けていく様が展開されるなら、さぞや楽しい映画だろうと、ものすごく期待した。

ところがどっこい、弁当屋のダメ弟が登場し恐喝し始めたら、とたんにつまらなくなる。だって、もう後は、これからどうやって捕まるのかしかないのだから。それって予測していた展開とはまるで真逆。中盤以降は追い詰められていく展開だけなんて、つまらないこと極まりない。そこをめげずに、別の街の女を渡り歩きでもするのかと思いきや、結局その辺の女の間をちょろちょろするだけ。

挙句の果てには、北海道の子供時代に虐待されていたから…なんて、多重人格者が形成される過程じゃあるまいし、そんな同情なんだか言い訳なんだかわからないような説明なんか、なんの面白みもない。実際、多重人格でもないし、自分でも本当かウソか判然としなくなっていたなんてことはなく、はっきり犯意は自覚している演出をしているじゃないか。なんだこの脚本。なんだこの監督。期待していただけに、バカじゃなかろうかと怒りたい。
せっかくのすてきな題材を台無しにした。フォアグラでチャーハン作られたみたいながっかり具合。おや?いま並行して観始めた『「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』もこの監督作品だよ。観るの止めようかな。アホらしくなってきた。

メインの堺雅人、松雪泰子の演技はなかなかよろしかったけど、満島ひかりをキャスティングしているってことは、もっとセクシー描写に倒すのかと思ったけどそうでもなかったし、彼女だけじゃなく全体のキャスティングが何か中途半端。

とにかく、ピリっとしない作品。残念だけどお薦めしない。だれか“クヒオ大佐”作り直して頂戴。

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image1536.png公開年:2009年 
公開国:日本
時 間:94分
監 督:板尾創路
出 演:板尾創路、國村隼、ぼんちおさむ、オール巨人、木村祐一、宮迫博之、千原せいじ、阿藤快、津田寛治、笑福亭松之助、石坂浩二 他
コピー:その逃亡、ワケあり。
板尾創路が魅せる、“獄”上クライム・ラビリンス!



鈴木雅之という男が信州第二刑務所に移送された。彼はこれまでに二回も拘置所から脱獄しているという曰く付きの囚人であったが、この刑務所でも収監されてからたった1時間で脱獄を成功させてしまう。しかし、鈴木はあっさりと捕獲され、再度収監される。看守長の金村は、鈴木の行動に不審なものを感じ取るが、その真意まではどうもわからない。その後も鈴木は、収監される先々で簡単に脱獄を繰り返し、“脱獄王”の異名がつくほどの有名人となり、英雄視されるまでに。脱獄を繰り返したため、元々は微罪だった刑期は加算に加算をかさねており、ついに、入れられた者は二度と娑婆を拝むことができないと噂される“監獄島”に送致されることが決定する…というストーリー。

どうも、この作品を軽く考えておられる人が多いので、はじめに言っておく。まだ監督としてのキャリアも浅く、補うべき部分は散見され、稚拙な面もあるのは事実だが(金村をなんで特別視したのか…とか)、“映画”であるためのツボは完全に押さえられており、実に映画監督らしい映画監督が誕生したと言いたい。
奇を衒った作品ばかりの昨今、そのモヤモヤした不満をさっと晴らしてくれたような気すらしている。見事な作品だと思う。

私はあえて、本作をコメディにカテゴライズはしなかった。世の皆さんは、板尾創路といういう人間がお笑い芸人だということで、はじめっからコメディだと勝手思いこみ、ちょっとした演出がすべて笑わせることを目的にしているという先入観に捉われたのではなかろか。その落とし穴にはまり、一生懸命、笑うポイントでもさがしていたのでは?私は劇場に足は運ばなかったが、そんな見方をした人たちがゲラゲラ笑っているところで、本作を観なくてよかったとすら思っている。「ゲラゲラ笑うことじゃねえだろ!」って憤慨していたこと必至である。

注目すべき出色な点は、複数の要素の距離感が絶妙ということである。非常に説明しにくいので、例を出して説明するが、これは天性の素質なのか否か。
拘束された独房のなかで、中村雅俊の「ふれあい」を歌うシーン。おそらく笑いがおこった映画館もあるだろうが、ここはニヤリとはすれどゲラゲラ笑うシーンにあらず。①しっかりと歌い上げる行為の馬鹿馬鹿しさ、②唄いたくもなるせつなさと哀愁、③でもその歌が時代にマッチしてない不条理感。
この3つの要素の距離感がものすごいよろしい。脳内というのは、複数の記憶の間を電流が流れ、結びついたときに快感を得られる。その電流の具合によって、“笑い”にもなるし“感動”にもなるのだが、実は“笑い”が生じるということは、いささか脳は苦痛と感じている証拠でもある。そのストレスを解消するために“笑い”を発生させ、快感物質を出して緩和させようとするのだ(私、脳科学者じゃないのでウソかもしれないけど)。本作の演出は、“笑い”ほどストレスも感じさせず、“納得”ほどすっきりでもない中間の刺激。私にとっては実に心地よい。この刺激こそ、“芸術”の本質ラインだと思うのだが、皆さんはそう思わないだろうか。

二回タイトルコールをするところは、いささか“笑い”に倒れた感じなのだが、これは、本作をコメディだと思わせるミスリードである。それを明示的に意図した仕掛けができているとしたら、もうヒッチコックばりの名監督である。あ、タイトルに板尾創路とつけているのも、その狙いを臭わせる隠喩か。

ん~。深読みしすぎといわれようがなんだろうが、私の脳内は“ユーリカ!”を叫んでいる。映画監督としては、まちがいなく松本人志監督よりは高いところにいる。ものすごくお薦めなのだが、世の中にはこれをいまいちと感じる人が相当数いることも知っている。おこがましくて、これが判るヤツだけが賢いなんて言う気は更々無いが、もうちょっと、この良さがわかる人が増えて欲しいとは思う(よしもとサイドもこの作品のスゴさを判った上でプロモーションしているのかは、甚だ疑問なんだけど…)。板尾監督には是非続編をつくっていただきたい。

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image1425.png公開年:2009年 
公開国:日本
時 間:94分
監 督:木村祐一
出 演:倍賞美津子、青木崇高、板倉俊之、木村祐一、西方凌、三浦誠己、宇梶剛士、村上淳、段田安則、泉谷しげる、中田ボタン、ハイヒールリンゴ、板尾創路、新食感ハシモト、キムラ緑子、安藤玉恵、橋本拓弥、加藤虎ノ介、遠藤憲一 他
コピー:お金は神か、紙切れか。



昭和25年。大津シンゴは、ふるさとの山村にて、元軍人の戸浦らを集め、発行されたばかりの新千円札のニセ札製造を持ちかける。しかし、印刷機を購入するには多額の資金が必要だということが判明したため、小学校に務めるかつて自分の教師だった佐田かげ子に参加を促す。犯罪に荷担するなどもってのほかと拒否するが、知的障害を持つ息子や本の一つも買えない生徒の状況を考え、ついに荷担を決める。やがて戸浦をリーダーにして、実行部隊のメンバーが揃い、かげ子は大津とともに印刷機購入の資金集めを担当するのだが…というストーリー。

やりとりが不自然だったりクサく感じられたり、不要なカットが残っていたり(目標のお金が貯まりました!って会議の場面での板倉俊之の含みのある顔とかね)、初監督ということなので、大目に見てあげたいと思っている。脳内で想像したときにはウマく描けていても、実際に形にしてみると何かヘンってことは往々にしてある。芸術なんてそれとの戦いといってもいい。それを繰り返すことでウマくなっていくのだから。自分が映画をつくれっていわれて、一発目でここまでできるかは疑問だもの…って、厳しい気持ちになれないのは、プロレベルに達していないと無意識に感じているからかもしれない。それはそれで悲しい作品かも。

ただ、脚本に関しては、より救いようがないかもしれない。極秘裏に遂行するということが前提なのに、仲間になるであろう確度の低い先生を引き込み、拒否されるとそのまま帰ろうとする意味がわからない。村人に信用のある人だからというチョイス理由はわかるけれど、正義を振りかざして計画を破綻させるかもしれないのに。そして先生が参加するもっともな動機がさっぱりわからない。本などを買ってあげたいということじゃなくって、バレて捕まったとしてもそれでもいいんだ!と決意するまでの根拠が希薄なのだ。だって、ニセ札で購入したことがわかれば買った本は接収される可能性だって低くないんだし、村人にばら撒いたニセ札なんかまちがいなく回収されるんだし。そのリスクをおかしても、それに賭けるだけ困窮しているという描写も不足している。さらに、最後、かげ子の取り分の使い道は結局わからなかったって、状況ですぐわかるんだから、リアリティなさすぎでしょ(やるなら、警察はわかってたけど、あえて…みたいな描写を入れないとさ)。

最後の裁判でのかげ子のセリフも、ものすごく気に喰わない。「国家がお金の価値を決めるですよね」。お金の価値は市場が決めるんでしょ。「わかったことがあります。お札は結局タダの紙切れ」って、お札はタダの紙切れではなく、労働に対する価値を証明するものでしょ(厳密にはそれだけじゃないけど)。それを否定することは労働を否定することと同じである。もしこれが映画を介して伝えたいメッセージだとしたら、この脚本家たちは何か大きな勘違いをしているのではなかろうか。お金はただの媒体であって、お金自体に価値があるものではないということが理解できていたら、こんなはずかしい脚本は書けないだろう。仮に、このセリフを言わせたいなら、それ以上に国家が人の労働や財産(命を含む)をないがしろにしているでしょ!という指摘を、うまいこと盛り込まないといけないのだ。それを盛り込めるだけの力量が無い上に、論理的に自分の考えが未整理で、おそらく根本的に考え方に誤りがあるので、この有様なんだと思う。

キム兄は、パートナーを間違えたと思う。もうしわけないが、他者には薦められない。ただ、もう一度、監督をするチャンスが彼にめぐってくることは祈る。その時は、いい仕事仲間を見つけて欲しい。化けないとは言い切れない何かはあるような気もするので。でも、本作はお薦めしない。

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image1428.png公開年:1976年 
公開国:日本
時 間:120分  
監 督:長谷川和彦
出 演:水谷豊、内田良平、市原悦子、原田美枝子、白川和子、江藤潤、桃井かおり、地井武男、高山千草、三戸部ス 他





実際の事件をもとに描かれた短編小説を映画化した作品。不確かな理由で両親を殺害してしまった青年の破滅への道を描いたストーリー。

TSUTAYAのポップの謳い文句を見て、おもしろろそうに思えたので素直に借りてしまったのだが、結論から言うと、さほど面白くなかった。

あくまで予想なのだが、本作は複数人の合議をもとにして、その決定事項をすべて盛り込んでいるのではないかと思える。
たとえば、こんな感じ。
若い監督のほかに、キャリアのあるスタッフが多数いて、ストーリーや演出方法について、繰り返し打ち合わせが行われる。こんな設定はどう?こんなセリフは??こんなエピソードをいれてみたら?こんな演技をさせてみたらおもしろいんじゃないか?いいですねーそれ。みたいにホワイトボードには、アイデアがいっぱい。先輩スタッフの意見なので、監督も脚本家も盛り込まないわけにはいかない。そんで、全部とりあえず撮ってもみる。本当ならばその後、編集の段階で増長だったり流れを阻害するようだったら、スパっと切るのだが、先輩の手前切れない。
その結果がこの作品。むやみに長々としていたり取ってつけたようなシーンが多いし、流れ的に意味のなさそうな演出などの詰め合わせに見える。そして、どの部分に焦点を当てたいのかよくわからなくなり、個々のシーンは破天荒だけれども、全体的にはぼやーんとした、残念な仕上がりになってしまった。公開時はさらに長かったというのだから、観ているほうはけっこううんざりしたのではないだろうか。

で、全体がぼやーんとしたために、相対的に魅力的に浮かび上がってしまうのが、原田美枝子の容姿。結局、本作で得をしたのは彼女だけかもしれない(水谷豊や市原悦子の演技は鬼気迫るものがあるのだが、ちょっとやりすぎで気持ち悪いレベルまで到達している)。

同じ日本の実在犯罪モノである『復讐するは我にあり』に比べると、かなり落ちるので、お薦めしません。

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プロフィール
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クボタカユキ
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男性
趣味:
映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
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一日一シネマ。読んだら拍手ボタンを押してくだされ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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