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image1129.png公開年:2003年
公開国:アメリカ
時 間:131分
監 督:リドリー・スコット
出 演:ニコラス・ケイジ、サム・ロックウェル、アリソン・ローマン、ブルース・マッギル、ブルース・アルトマン、スティーヴ・イースティン、ベス・グラント、メローラ・ウォルターズ、ナイジェル・ギブス 他
コピー:その男、潔癖症の詐欺師。



詐欺師のロイは、自らを芸術家と呼ぶほど、見事な腕前の持ち主。しかし、強迫神経症による極度の潔癖症。オフィスや家を毎日病的なまでに掃除・消毒し、衣服や日用品もきれいに整頓されていないと落ち着かない。汚れ物が出るのを嫌い、食事も毎日ツナ缶で、屋外で空気を吸うのも苦痛なほど。ある日、常用している薬を誤って処分してしまい、薬を貰おうとかかりつけの医者に電話をするが、なんと夜逃げした後。家からも出られず症状がひどくなったロイに、詐欺の相棒のフランクは、精神分析医のクレインを紹介する。その後クレインは、何度か診断した後、ロイの症状が遠い昔に離婚した経験が原因かもしれないと告げる。ロイは元妻と話すことがどうしてもできず、クレインに元妻とコンタクトをとってもらうように依頼。すると、別れた当時妊娠していた妻が娘を出産していたことを知り…というストーリー。

ロイの詐欺の手口や、強迫神経症の症状、病的なまでの潔癖さなど、彼の行動のディテールが実に緻密に表現されている。なので、立派な悪人であっても、どこか興味を惹かれる所があるし、ちょっと応援したくなってしまう。破滅に向かっているであろう彼が、今後どうなってしまうのか、画面から目が離せなくなる。

し・か・し、だ。おそらく観客の6割くらいは、頭によぎったはずだ。
(以下ネタバレ注意)

あれ?もしかして、ロイってば逆に騙されないか???と。まともな映画なら、いやそうじゃないかも…と思わせる、仕掛けもあると思うのだが、本作はそれが弱い。そして、もし、騙しているならば“彼”が首謀者なんじゃないのか?と、すぐにピンときてしまう。そうすると、そっちの彼も彼女もグルってことだよな…と、芋づる式に見えてきてしまうのだ。主人公のディテールはよく描けているのに、肝心のストーリーの仕掛けが見え見えという、実に残念な内容。

(さらにネタバレ)

紹介した医者もグルだった…のは良いだろう。でも、薬が無くなったのは偶然だし、かかりつけの医者が夜逃げしたのは仕込みじゃないだろう。じゃあ、診察を受けたのちにグルになったってことになる(クレインが本物の医者なのか仕込みなのかもわからんけど)。
ロイが妻に電話したて、話せなかったのも医者にとってはたまたまだろう。だって、その電話でしっかり話をしたら子供がいないことはわかってしまう。あくまで医者に電話をしてもらえるように依頼をしたからこそ、あの仕掛けが始まるわけだし。そこから、娘の仕込みをはじめたわけだ。でも、ロイが車を降りない、元妻と会わないという前提がないと、すべてがパーだよね。よくうまくいったよね。
さらに、そこから、デカい詐欺の話を絡めたわけだ。それはいつから仕込まれていたのかなぁ。昔から?いつロイがその気になるかわからないのに?ってことはやっぱりロイがやる気になってから、グルになるやつを見繕ったんだよね。ずいぶん臨機応変にうまいことやったもんだな。そんなにフランクって賢くて、多くの人間を使えるタイプかな?

ん~~~。なんか、フランクの騙しの流れに無理がありすぎじゃねえか?ずいぶん稚拙で穴だらけだし、「やられた!」なんてとても思えないだけど…。

それにさ、観ている側としては、少しはロイを応援するスタンスになってるわけ。で、ああ、これからロイの反撃が始まるんだろうな。フランクたち汚ねぇな!って、こっちは拳を振り上げてるわけだ。きっとすっきりさせてくれるんだろうと。
ところが、ロイは反撃しないんだ。アンジェラともそれなりに和解しちゃうし、足も洗ってる。それどころか、幸せな生活を掴んじゃってる。
そうするとさ、こちとら振り上げた拳は「……、ん…。うん…」ってな感じで、ゆっくり下ろすしかないじゃない。犯罪者なんか応援しちゃって、俺って何を言ってるんだか…みたいな感じで、ちょっとはずかしさすら覚えるよね。なんで、こっちがそんな気分にさせられなきゃいけないのよ。
いや、たしかにそのオチは“正しい”んだろうさ。でも、すっきりしないし、微妙な空気になるし、そりゃ評価されないよ。演者も映像もいいんだよ。キャラはものすごく立ってるし、ストーリーだってプロットまでは物凄くいいんだよ。なのに、ストーリー運びかたがクソで詰めが甘いんだ。なんか、“惜しい”“もったいない”という言葉しか浮かばないわ。


負けるな日本

 

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image0167.png公開年:2002年
公開国:アメリカ
時 間:128分
監 督:ジョン・リー・ハンコック
出 演:デニス・クエイド、レイチェル・グリフィス、ジェイ・ヘルナンデス、ブライアン・コックス、ベス・グラント、アンガス・T・ジョーンズ、リック・ゴンザレス、チャド・リンドバーグ、アンジェロ・スピッツィリ、ロイス・D・アップルゲイト、ラッセル・リチャードソン、レイノール・シェイン、デヴィッド・ブラックウェル 他
ノミネート:【2002年/第8回放送映画批評家協会賞】ファミリー映画賞:実写
コピー:ひとりで夢を追うほど、強くなれない──そんな僕の背中を押してくれたのは、《家族》という名の奇跡だった…。

メジャーリーガーを目指すジム・モリスは、ブルワーズに入団するも肩を故障し、夢は絶たれることに。その後、テキサスの高校で教師兼野球部コーチとなり、35歳となった今、妻と子供に囲まれて幸せな日々をおくっている。そんなある日、ジムがバッティングピッチャーとして投げた球が、思いも拠らぬ球威だったことに周囲も自分も驚く。彼の肩は治っていたのだった。ジムはやる気のないプレーをする部員を叱ると、部員たちは「自分たちが地区優勝したら先生はプロテストを受けること」という提案をする。ハッパをかけるつもりでその約束を承諾すると、野球部は快進撃をはじめ…というストーリー。

そんなに昔の話じゃない実話なのに、日本じゃそんなに有名じゃない人。2年プレーした後、引退してるけど、すぐに映画化されている。教師だから身ギレイだろうし、いかにもディズニーが扱いそうなネタだもんね。

実話だからあたりまえかもしれないけど、展開は自然。まあ、事実じゃない細かい演出はもちろん色々あるだろうけど(映画だもん)。あんな万年ポンコツ野球部が、はっぱかけられたくらいで急に強くなるか?という疑問は湧いたけれど、州大会に出て一回戦で負ける程度なら、まあ無くはないだろう(事実なのかどうか確認できん)。プロテストのくだりから、マイナー→メジャーの流れも、いくら100マイル近い球速だからといって、それほどトントン拍子じゃないのはあたりまえで、不自然さはない。

ベタベタだけど、メジャーに呼ばれるシーンや、最後に街の人が押し寄せてるシーンは、感動するさ。この映画自体は“夢あるね~”以外の何者でもない。この映画だけを観ると、こんないい作品は2・3年に一回くらいは地上派で放送すべきだ!くらいに思えるんだけど。夢見たことが今やれている人なんかそうそういないだろうし、だけど皆、どこかに何か引っかかっているはずだからね。観ていて沸き立つものを感じる人は多いだろう。

ただ、映画だと、ものすごく活躍したように見えるけど、実際は2年で15イニングくらいしか投げていないし、先発なしの勝ち負けなしで、セーブもホールドもなく、防御率も5点近い。大抵、こういう実話映画の場合、エンドロール前にその後の活躍っぷりなんかを紹介するものだけど、「メジャーで二年間プレーして引退して、今でもテキサスに住んでいる」としか言わないのも納得。この成績を紹介されたら「ダメじゃん!」ってなるもの。
映画自体は最高にゾワっとできるのに、本人の活躍がいまいちなせいで、あんまり評価されない。そんな側面もあるかもね。

それに、復活できたのは努力じゃなくって、元々の天賦の才能…ってのも、盛り上がる気持ちを阻害しているね。私らにはその才能すらない…って気付くと一気に共感できなくなるものなぁ(う…)。でも、そんな穿った観方をしなければ、素直に感動できる良作だと思う。元気が出るのは事実。

#この映画を観れば、日本の野球選手が、チャンスがあればメジャーに行こうと思うのは、そんなに変じゃない…と思える作品。野球に対する無垢な愛がそこにあるように見えるものな(実際は知らんけど)。




負けるな日本

 

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image0243.png公開年:1998年
公開国:フランス
時 間:75分
監 督:ミッシェル・オスロ
出 演:ドドゥ・ゲイエチャ セヌザー、マイモウナ・エヌジャイエ ロベール・リンソル、マリー=オーギュスティーヌ・ディエッタ、ウィリアム・ナディラン=ヨツンダ、セバスチャン・エブラン 他
コピー:なぜ?どうして?小さな男の子の大きな好奇心が世界を変えた。



アフリカのとある村で、母親の胎内から男の子が自力で生まれ、自らキリクと名乗る。彼が生まれた村は、魔女カラバによって財宝が奪われ、呪いで泉も枯らされてしまっていた。村の男達はカラバに戦いを挑んだものの、皆喰われてしまい、キリクの叔父が最後の男となる始末。キリクは、カラバとの対決に向かったう叔父に付いていく。そして、持ち前の知恵と行動力で叔父のピンチを救い、なんとか死なずに村に帰ることができた。その後もカラバによる攻撃から村人を救い続けたキリクは、何故カラバが意地悪なのかという疑問を解くために、自分の祖父でもある“お山の賢者”のもとに向かうのだったが…というストーリー。

もう、3回以上観たかな。

(比較する必要はないんだけど、ジブリライブラリからDVDが発売されているので)ジブリ作品と比較してみると、『千と千尋の神隠し』より後の作品よりは、まちがいなくデキの良い作品だと思う。フランス製アニメは、たまにこういう名作があるからこまる(いい意味で)。少なくとも、『崖の上のポニョ』の6倍は面白いと感じた。

勇気と機知に溢れる子供(というか赤ん坊)が、冒険を繰り広げる物語が、童話のようなテイストで繰り広げられる内容。初期のジブリ作品にあって、今は失われてしまったそれが、本作にはある。
且つ、寓意が溢れる作品でありながら、カラバが何故魔女になってしまったのか…という部分や、魔女ではなくなったカラバを罵倒する村の女たちのセリフなど、現在のアフリカ女性が直面する問題を隠喩してもいる。
そういうつらい体験をしたであろう女性の投影であるカラバは、背中の刺を抜くときに、さらなる苦痛を経験することに。トラウマを負った人がそこから脱却するためには、再度苦痛の山を越えねばならないという、心理学的な視点もなかなか深いものがあると思う。
キリクの成長と嫁とりのところは、世界中の童話に同様に見られるちょっと性的な要素である。

アクの強い映像や、寓話のような内容に、面食らってしまって、「古くさい、稚拙なストーリーだ」と判断する人は、自分の中にある“アニメ”という先入観で目が曇っている馬鹿者だと思う。そういう批判に惑わされず、是非とも観て欲しいと私は思う。強くお薦めしたい。

美術に関しては、アフリカが舞台で彩り溢れているのだが、どことなく南欧というかスペインの風を感じる。非常に私好みだった。

#浅野温子の吹き替えはなかなか良かったんだけど、その後、声優の仕事してないね。



負けるな日本

 
 

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image1826.png公開年:2011年
公開国:日本
時 間:103分
監 督:松本人志
出 演:野見隆明、熊田聖亜、板尾創路、柄本時生、りょう、ROLLY、腹筋善之介、清水柊馬、竹原和生、長谷川公彦、鳥木元博、吉中六、重村佳伸、安藤彰則、中村直太郎、寺十吾、石井英明、松本匠、岡田謙、京町歌耶、野口寛、伊武雅刀、國村隼 他
コピー:鞘しか持たない侍とその娘、30日間の戦い──。



脱藩した武士・野見勘十郎は、さやだけの刀を持ち、一人娘のたえを連れて、お尋ね者として各地を逃げ回る日々。しかしついに多幸藩の追っ手に捕らえられ、殿の御前に。しかし、多幸藩には奇妙な“三十日の業”という刑があった。それは、母君を亡くして以来、笑うことができなくなった若君を、一日一芸で30日の間に笑わせられたら無罪放免、できなければ切腹という刑。これまでに成功した罪人は一人もいなかったが、勘十郎はその業に挑むことを決め…というストーリー。

基本的なプロットはものすごく良いデキだと思う。ダメ侍が“三十日の業”を課せられ、トホホっぷりをみせつつも、周囲がそれに協力していく。登場人物の心に変化が生じていくというのは、シナリオのセオリーの鉄則・常道である。本作は、主要な登場人物だけでなく、町の人々まですべての人の“心”に変化が生じる。松本人志のシナリオテクニックが向上したと思いたいのだが、今回は、高須光聖以外にも、数人が脚本協力としてクレジットされているので、その辺りに基本が判っている人がいるのかも(案外、板尾創路だったりして)。松本人志は原案のみに留まって、脚本はおまかせし、他人が書いた脚本で監督をやるという体制が、今後は良い結果を生んでいくかもしれない。

ただ、プロットの良さと松本人志のこだわりに齟齬が生じているかな?という点と、ディテールの甘さ…というか、その甘さを観客に気付かせてしまう点に、問題があるかもしれない。

映画ははじめの10分間での掴みが重要。その掴みで何をやっているかというと、三人の刺客に襲われて、致命傷と思しき傷を負ったにも関わらず、なぜか軽症で生き残っているという姿。薬草が伏線ということは理解するが、あの過剰なヴィジュアル表現に効果があったか否か。これは本作の掴みとして正しいのだろうか。本作の全体の雰囲気を表せてるわけでもないし、スカしにもなっていないように思える。

また、1日であの装置が作れるか?ということが頭をよぎる。それはおかしいという野暮なことをつもりはない。逆に、それを観て「ああ、この作品はファンタジーのつもりでつくっているんだな…」と感じた。でも、ファンタジーなら、それが気にならないような演出や雰囲気作りを、もっと前からすべきだったかと(もしかして、冒頭の暗殺シーンは、これは荒唐無稽なノリの作品ですよ!ってことを前置きするためだったのか?だとしても、失敗してるよな。ならブラックバックにすべきじゃない)。

まさか30日のネタをすべて見せるつもりなのか????まさかな…と思わせておいて、本当に毎日見せ始めたところは、良いと思う。しかし、その割りには、最後の5日間にやったことを端折ってしまうってのが理解できなかったりする(ここは貫くべきなのでは?)。

根本的な部分だが、なんでさやだけなのかって説明が浅い。戦うことを捨てたのはいいが、何で竹光でもなく、丸ごと刀を捨てるでもなく、さやだけを持って歩くのか。そこに至る心情とか過程はものすごく大事なはず。
#まあ、実際のところ、“さや侍”ていう単語が思いついて、まずそれを使いたくなった…ってのと、刀のさやに切腹したドスを収めるイメージが思いついて、それをやりたかったんでしょう。

彼は三十日の業をやろうとする。つまり死にたくはない。すべてを投げ出したくなっているけど死にたくない。単なる臆病者とうことか?現代社会で疲れたおっさんの投影か?(その割に、共感できないのはなぜか)
妻が死んだことで、落胆しきっちゃったのか?でも、娘が彼に問いかけ続けていた“なんで生きているのか?”という問いかけのアンサーがあるようで無い気がする。最後の坊さんが読む手紙の中にも、その答えは無いようにも思える。

まあ、いろいろ文句は書いたけど、前の二作から比べれば、格段に“映画”らしくて、及第点は充分に超えていると思う。最後の“歌”は、評価の分かれるところだと思うが、私はOK。実際に歌ったのか、歌ったように思えるような脳内表現なのか、それこそ受け手の自由であり、立派な映画表現だ。

蛇足だけど、私なら、最後のたえと若君が遊ぶシーンは、たえ一人が蝶二匹と戯れるシーンにする。野見勘十郎だけでなく若君も死んじゃってるのか、もしかして?っていう、クセのある一撃をスパ!っとカマしたい。

#野見さんについては特にコメントなし。案外きちんと演技していた。




負けるな日本

 

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image1822.png公開年:2011年
公開国:日本
時 間:147分
監 督:成島出
出 演:井上真央、永作博美、小池栄子、森口瑤子、田中哲司、渡邉このみ、市川実和子、吉本菜穂子、相築あきこ、別府あゆみ、安藤玉恵、安澤千草、蜂谷真紀、松浦羽伽子、ぼくもとさきこ、深谷美歩、畠山彩奈、余貴美子、平田満、風吹ジュン、井上肇、宮田早苗、徳井優、広澤草、野中隆光、管勇毅、荒谷清水、日向とめ吉、瀬木一将、吉田羊、日比大介、劇団ひとり、田中泯 他
コピー:優しかったお母さんは、を誘拐した人でした。

生後まもなく、父親の愛人に誘拐され、4歳になるまで犯人に育てられていた恵理菜。両親の元に戻ることができたものの、それまで犯人を母親と信じて疑わなかった彼女にとって、真の両親は他人以外の何者でもなかった。両親もそんな娘の態度にとまどい続け、結局、まともな親子関係を気付くことができないまま、恵理菜は大学生になる。ある日、友達もおらずバイト生活に明け暮れる恵理菜に、過去の誘拐事件について取材させて欲しいという女・千草があわられる。妙に馴れ馴れしい千草を訝しげに思いながらも、取材に応えていく恵理菜。そんな時、恵理菜は妻子ある男の子供を身篭ってしまい…というストーリー。

誘拐犯・野々宮希和子の公判の様子から始まるのだが、そこで語られる事件当時の様子を皮切りに、①誘拐→逃亡の生活、②救出後に成長した薫の今の生活、という二本のストーリーの川をつくる。その二本の川を交互に見せていくことで、登場人物たちの心の揺れを見せたり、彼らの行動に対する疑問を説明してみたりする。決して目新しい構成ではないし、もしかすると原作の段階でこういう構成だったのかもしれないが、非常に効果的だったし、編集の仕方も長けているので、単なるウェットで病んだ人々のお話にならず、スリリング且つメリハリの効いた“映画”らしい作品に仕上がっていると思う。

小池栄子は『接吻』と同様に光る演技。胸を目立たなくさせるためか、純粋なキャラ付けなのかはわからないけど、、猫背で引きずるような歩き方。全編オドオド(っていうかキョドっている)。その一貫した演技のおかげで、彼女の過去の告白を聞いた時の“ぞわっ…”が生じる。
そして、ストーリーは、痛い二人によるロードムービーに転じていく。

ただ、シチュエーションが特異すぎて、共感しにくいのが難点か。特に男性には難しいかもしれない。誘拐犯の希和子は、子育てをする喜びを味合わせてもらったことに対して感謝する陳述をする。普通は彼女が人非人に写る。でも、薫との生活を順に追っていくと、なんとなく希和子が理解できる…???いやぁ、男の私には微塵も理解できないのよ。女の本能だとでも?
薫の感情だって理解しにくい。後妻で入ってきた義母と折り合いが悪くて…なんて経験をした人には共感ポイントがあるのかもしれないけど、私そういう経験ないし。それこそ、狼に育てられた狼少女の気持ちなんてわかるわけないでしょ。それと同じくらいピンとこない。まあ、逆に彼女たちも“普通”がわからないから、“八日目の蝉”の気持ちを考えるわけなんだけど…。
#本当に一番理解できないのは、連れ去り犯であろう女を愛人にしていた夫と、その後も生活を共にし続けている点なのだが、そこを突っ込んじゃ話が進まないのかな(ここをうまく説明できていたら、よかったのにな…と思う)。

原作通りなのかどうかわからんけど、多くの人が、ラスト「これで終わり?」と思っただろう。あの写真館で薫は何を思い出したと?どういう心の整理がついたと?私の感受性が不足しているのかもしれないが、いまいち理解できていない。島に戻るって決めたこと?とりあえず、子供を生んで、二人で育てるって決めた以外になにが?お腹の子供が愛おしくなったって、それまではそう思ってなかったの?

登場人物に共感できなかった私は、俯瞰した目線で純粋にサスペンス映画として愉しんでいたのだが、申し訳ないのだが、結局、彼女がどういう欠けたピースを求めていて、どうそれを埋めたのかよくわからなかった。そこがうまく表現できないならば、せめて、もう一盛り上がり事件をつくって終わって欲しかった。

まあ、文句は色々書いたけど、佳作だと思う(とにかく、中盤までの演出は評価したい)。非常に不思議なのは、なぜ映画賞から総スカンなのか(ノミネートすらない)。演者の一人くらいノミネートされていてもよさそうなものなのだが…。わからんね日本の映画界は。



負けるな日本

 

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image1820.png公開年:2011年
公開国:アメリカ
時 間:80分
監 督:ジョン・エリック・ドゥードル
出 演:クリス・メッシーナ、ローガン・マーシャル=グリーン、ジェフリー・エアンド、ボヤナ・ノヴァコヴィッチ、ジェニー・オハラ、ボキーム・ウッドバイン、ジェイコブ・バルガス、マット・クレイヴン、ジョシュア・ピース、カロリン・ダヴァーナス、ヴィンセント・ラレスカ 他
コピー:密室<エレベーター>が、お前たちの地獄になる



お互いに見ず知らずの5人が乗り合わたエレベーターが急停止し閉じ込められる。警備員たちは早急に救出を試みるが、急行エレベータが中間部分で停止したために難航する。さらに、警備室の声は通じるもののエレベータ内の声は聞こえず、不穏な空気に。そんな中、一時的に照明が消えると、若い女が背中を切られる。緊急事態に慌てた警備員は、警察に応援を要請。たまたまそのビルから男が転落死した現場で捜査をしていたボーデン刑事が、即座に駆けつけるのだったが…というストーリー。

M・ナイト・シャマランが製作・原案。映画界は『ソウ』シリーズみたいな、低予算ながらもインパクトのあるシチュエーションホラーを捜しているので、そういうニーズにもマッチしていたと思う。ただ、その期待には全然応えられていない。

タダでさえいけ好かない人間ばかりのエレベーター内に充満する疑心暗鬼。外からの声は聞こえるけど中の声は聞こえないで、何がウソで何が本当かわからないという、『藪の中』ばりの展開。シャマランが貯めていたこういうアイデア群を、容赦なく投入!ってことらしいのだが、これらアイデアも既視感が。
エレベータの5人が脛に傷のある奴らばかりって、『ソウ』だってターゲットになってる人たちは行いのよろしくない人ばかりだった。集めているのか殺人鬼か悪魔かの違い。

そこに駆けつける刑事も関係者というのは、シャマランらしい。ただ、そこまではわかるけど、この怪現象に気づいた中南米系の警備員は、結局、どういう関係?だって彼は“自分たちは、これを見せられている”とまで言ってるじゃない。いや、それ以前に、ビルから転落死した人のくだりって重要?っていうか、その設定生きてる?彼も悪魔のターゲットだってこと?
どうも、アイデアを詰め込んだのはいいのだが、発散して未消化になっちゃってる印象。

本当に悪魔の仕業?いや、そう見せておいて実は、巧みな犯罪者がいるのかもよ?と、もっと、この辺りをぼやかして引っ張り続け、観客を弄び続けられればよかったと思う。
#正直、こっちはもっと弄んでくださいよ~くらいの気持ちで観ているのに、全然、相手にしてくれない感じ。

(ネタバレ注意)
で、結局、本当に悪魔の仕業だった。その末に、シャマランがいかにもお好みな、“赦し”のお話になっちゃう。シャマランの宗教観って、既存の宗教観を超えた何かがあるから良かったんだけど、最近はキリスト教的な宗教観の域を出ていないように思える。悪魔の諸々の発言を聞くと、悪魔さんが悪魔には見えない。悪人を適正に処罰するのが悪魔ってか?悪魔か天使か、それは貴方の行い次第よ…ってことか?大した深い洞察でもないし、あんまりおもしろくないよね。
『ハブニング』でどうしちゃった?と思わせて、『エアベンダー』でダメだこりゃと思わせて、その後の仕事がコレだもの。正直、才能が枯渇しちゃったんじゃないかと思われても仕方が無いかと。

ピリっとしない凡作。シャマラン監督が復活するのはいつなのか。『エアベンダー』の続編なんか作ってる場合じゃないと思うんだよなぁ。




負けるな日本

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image1819.png公開年:1983年
公開国:カナダ
時 間:103分
監 督:デヴィッド・クローネンバーグ
出 演:クリストファー・ウォーケン、ブルック・アダムス、マーティン・シーン、ニコラス・キャンベル、トム・スケリット、アンソニー・ザーブ、ハーバート・ロム、コリーン・デューハースト、ショーン・サリヴァン、ジャッキー・バロウズ、ゲザ・コヴァックス、ロバータ・ウェイス、ラモン・エステヴェス 他
受 賞:【1984年/第12回アボリアッツ・ファンタスティック映画祭】批評家賞、黄金のアンテナ賞、ヒッチコック・サスペンス映画賞

教師のジョニーは、恋愛関係にある同僚のサラの家から帰宅する途中で、自動車事故に巻き込まれてしまう。一命はとりとめたものの昏睡状態となる。5年後、彼は昏睡から目覚める。幸いにも大きな後遺症はなかったのだが、昏睡中にサラは別の男と結婚しており、子供までいることに、大きなショックを受ける。そんな中、看護士がジョニーに触れたときに、看護士の家が火事になっているビジョンが浮かぶ。彼は、事故の影響により、手に触れた人の過去や未来の出来事を知覚できるという能力を身に付けてしまったのだ…というストーリー。

実にスティーヴン・キング原作らしい内容だし、クローネンバーグらしいジメっとした質感がいい感じ(他作品で観られるグロさは無いけどね)。キング原作の超能力モノのSF作品で一番いいデキかもしれない(というか、純ホラーかヒューマニズム系意外は失敗映画ばかりだけどね)。

(以下、ネタバレ注意)
クリストファー・ウォーケン演じる主人公ジョニーは、事故に逢って5年も昏睡状態で、目覚めたのはいいけれど、愛しい恋人は別の誰かと結婚しちゃってるし、もちろん体は萎えちゃってまともに動けない状態。

そんな彼は、まず未来や過去が見えるようになる。でも、その能力のおかげで人助けもできるけど、インチキ超能力者と罵られることにもなる。すっかり嫌気がさしてしまい、ひっそり暮らそうとするんだけど、昏睡中に発生していた連続殺人事件の調査を依頼される。人の役に立つならば…と、引き受ける。基本、すんごくイイ人なのね。

で、現場で事件当時のビジョンが浮かび、真犯人を突き止め、大捕物に(なかなか緊迫感があってよい)。「うん、色々大変だったけど、きっとこうやって人の役にたつ運命だったのね…」てな感じで、この流れで進むのかと思いきや、そうはならない。

やはり、能力に嫌気がさして、またもやひっそりと暮らそうとするのだが、またしても元カノの影が追いかけてくる。もう、いい加減、ひっそり暮らさせてやれよ…と思うのだが、ストーリーは、なんで彼はその能力を与えられたのか?というところに焦点が当たっていく。

(さらにネタバレ注意)
やはり、このストーリーの一番のポイントは、未来が見えた彼にとっては正義の行動でも、周囲の人からは単なるテロリストにしか見えないよね…っていうところ。だけど、主人公は、満足して死んでいく。自分が汚名を着せられても、将来的に愛すべき人たちは救われるんだもの。
世の中に実在するテロリストって、絶対に信じて疑わないで行動しているわけで、もしかして彼らも、未来のビジョンを見て、同じように行動してたりして…っていう、きわめて不謹慎ながらもSF的な冷めた着眼点が秀逸。そして、このラストのテーマにすぐ行かずに、切ない主人公に男泣きしちゃうような話が並行しているのが、実に巧み。

あまり有名な作品ではないけれど、秀作SFでとても愉しめた。お薦め。




負けるな日本

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image1346.png公開年:2008年
公開国:日本
時 間:108分
監 督:万田邦敏
出 演:小池栄子、豊川悦司、仲村トオル、篠田三郎、大西武士、馬場有加、佐藤貢三、宮田亜紀、杉山彦々、青山恵子、菅原大吉、平栗里美、美月まどか、八波一起、諏訪部仁、竹本和正、鳥木元博、岡部務、由地慶伍、高野三枝、伴藤武、篠崎誠、吉岡睦雄、中津川南美、熊島一樹、河崎早春、須賀友之、粕谷直子、櫻井勝、太田悦史、権藤俊輔、沖田弘二、比佐廉、小宮山ますみ、鈴木隆之介、柏原優 他
受 賞:【2008年/第18回日本映画プロフェッショナル大賞】作品賞、主演女優賞(小池栄子)、ベスト10(第1位)
コピー: この愛は理解されなくてもいい。やっとあなたという人に巡り会えたのです。
究極の愛が行き着いた、衝撃の結末。

幼い頃から人付き合いが苦手だった遠藤京子は、淡々と事務職をこなす孤独な日々を送ってきた。ある日彼女は、無縁な親子3人を撲殺した坂口秋生の逮捕劇をTVで目にする。京子は、カメラに向かって微笑んだ坂口の表情を見て、彼が自分と同じように孤独の中にいる人間だと確信。そこから事件記事のスクラップを始め、坂口に関する情報を狂ったように集めるのだった。公判が始まると、弁護士の長谷川と接触し、坂口へ差し入れを持っていって欲しいと依頼するまでになり…というストーリー。

映画を観ているはずなんだけど、小さい小屋で小劇団がやってたらさぞ話題になるだろうな…なんてことが、ずっと頭の片隅に。なんでそう思うかというと、“映画”ならではという表現がまったくといっていいほど使われいないから。別に、中島哲也監督のような奇抜さなんかを求めていっているのではない。映画ならではというフォーカスの当て方や、場面の移り変わりなど、効果的な手法を使ってしかるべきだと思うのだ。はっきりいって絵コンテのセンスや編集のセンスが不足。

小池栄子の演技に関しては、何の文句もなし。バラエティの印象が強すぎるのが非常に残念だが、致し方ない。満島ひかりが『ウルトラマンマックス』で三池崇史監督と出会ったような、そういう運命が彼女のは無かったということ。あきらめるしかない。

本作の最大の問題ポイントは、タイトルでもあるラストの“接吻”だろう。いわゆる映画の玄人筋にはウケがよかったと思う。だけど、一般の観客の7割は“はぁ?”だったんじゃなかろうか。私も、観ているリアルタイムの間は、意味がわからなかった。観終わった後に、振り返ったり撒き戻したりして、熟考した上で、「ああ、もしかしてこういうこと?」と結論が見えてきた。私が鈍いのか?いや、多分違うと思う。

(以下、ネタバレ注意)
遠藤京子は、坂口にシンパシーを感じてどっぷりと傾倒していく。自分はいままでの人生の中で、周囲の人間からぞんざいな扱いしか受けてこなかったと思っているし、きっと自分は他者とは違う感覚なんだろう…と。だって、どうやら周りの人が感じているらしいことはピンとこないし、自分が気にかかることや大事に思っていることを周囲の人はそう思っていないようだし。きっと自分はこのまま孤立して生きていくんだろう…すっと理解されないんだろう…と思っているところに、同じように他者からはみ出すべくしてはみ出した人間が出現する。

で、ストーリーも彼女の一途な行動をずっと追っていく。ラストでその一途さは、坂口から裏切られた…というか、このまま二人は染み込んで一つになってしまうんじゃないかと思っていたくらいなのに、突然突き放された絶望感で、極端な行動として現れるわけだ。ああ、こういう燃え上がりで終わるんだ…と思ったところで“接吻”なわけだ。

私は、これは、絶対的に他者と違うと思っていた(思い込んでいた)京子が、自分の中に普通の人間(というか生き物)が欲する感情や欲望が顔を出したのだ。そう、京子は表層の意識では坂口を愛し長谷川を憎悪していたのに、無意識下では長谷川を欲していた(ある意味、ノーマルな私がいた…)ということに、自分も気づかされたという瞬間なのだ。
理性と本能の乖離。自分が自分を作り上げていただけなのか。やはり坂口や長谷川が言うように、自分と坂口は別物なのか。それとも逃げ出したいけど、引っ込みが付かなくなった私がそこにいるのか。え?何?何?私って何?
あの“接吻”の瞬間に、こういう考えや思いが、ぞわーーーーっと津波のように襲ってくる。そしてそれに気付きつつも、我に返った京子は、刑務官に引っ張られながら長谷川を拒絶しながら消えていくわけだ。もしかすると、最後の拒絶は、今まで長谷川を拒絶していた理由とは違って、今度は長谷川に迷惑をかけたくないという愛に変わっているのかもしれない。

そう、本当は、観ている時にリアルタイムで、この“ぞわーーーーー”を感じられる演出をしないとだめなの。これをリアルタイムで共有できたら、本作は間違いなく名作となり得た。これができなかった以上は、地味だけど佳作どまり。もし、小池栄子のがんばりがなかったら凡作。

#坂口が致命傷を負ってもあまり痛みを感じていなさそうな演出は、地味に秀逸だったと思う。シリアルキラーとか暴力犯罪を繰り返す人は、物理的な痛みに鈍感な人が実際多いからね。


負けるな日本

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image1768.png公開年:2010年
公開国:アメリカ
時 間:133分
監 督:オリヴァー・ストーン
出 演:マイケル・ダグラス、シャイア・ラブーフ、ジョシュ・ブローリン、キャリー・マリガン、イーライ・ウォラック、スーザン・サランドン、フランク・ランジェラ、オースティン・ペンドルトン、ヴァネッサ・フェルリト、マイケル・ジェネット、ナタリー・モラレス、シルヴィア・マイルズ、チャーリー・シーン 他
ノミネート:【2010年/第68回ゴールデン・グローブ】助演男優賞(マイケル・ダグラス)
コピー: 欲望は、罪なのか。

ジェイコブは、若くして成功をおさめた金融マン。今は、次世代エネルギーの発展を夢みて、とある教授が推進する事業に投資している。また、ジャーナリストのウィニーと結婚を前提に交際しており、公私共に幸せな日々を送っていた。ある日、勤務しているKZI社の経営者で、父のように慕っているルーから、特別ボーナスを貰う。彼は、そのボーナスを自分の為に使えという。様子のおかしいルーを訝しげに思いながらも、ボーナスを受け取ったジェイコブは、婚約指輪を買った後の残りを自社株に投資する。その後、KZI社の株が突然急落し破綻。ルイスは地下鉄に飛び込み自殺してしまう。その後、株価急落は、投資銀行経営者のブレトンが、あらぬ噂を振りまいていたことが原因だったことを知り…というストーリー。

昨日の前作を踏まえ、いざ続編を鑑賞。

主人公のジェイコブは、前作のバドと違って、それなりに成功しているし、ジャーナリストとの恋人ともうまくいっていて、まさに“リア充”ってやつ。バドのように闇雲な上昇志向な奴でもなく、クリーンエネルギーっていう夢を追う健全な精神の若者。まあ、若気の至り的な煙たさは感じるけど、基本的に忌むべき人間ではない(が、バドに比べると“草食”といっていいほど、ぬるいキャラだったりする)。

常温核融合ってちょっと設定に無理があって、そこはちょっと興醒めした。シナリオのポイントとしては、既存の石油利権を脅かすかもしれない次世代エネルギーの登場であればいいのだから、もうっちょっとリアリティのあるネタにしてほしかった。

また、前作を観た人は、同様の違和感を感じたと思う。ゲッコーの子供って息子じゃねーの?ってね。観進めていくと、前作のラストの後に、さらに訴訟が何年もあって、あの男の子の下に娘がいたんだよ…っていう設定になっている。で、あのぽっちゃり息子はその後ドラッグに溺れ自殺して、娘とは絶縁状態という設定。まあ、娘という設定を作りたかったんで、いろいろこねくり回して腐心したんだな…ということがよくわかる。

忘れないうちに書いておくと、娘ウィニー役のキャリー・マリガンは、抑えた演技の繰り返しにもかかわらず、しっかりと感情や考えているであろうことが伝わってくる良い仕事をした。彼女の地に足のついた演技がなければ、とっ散らかった作品になっていたに違いない。

(とっても、ネタバレ注意)
ジェイコブは、父とも慕うルーが自殺に追い込まれ、さらに会社も破綻し、借金まで負ってしまうというピンチに。そこから、彼の逸脱が始まる。婚約者の父親がゲッコーであり、彼からの情報で、ブレトンが黒幕であることを知る。ブレトンはルーの敵でもあるし、ゲッコーの敵でもあった。恋人の親ってよりも“敵の敵は味方”って要素のほうが強いだろう。

その後、ルーの仇!とばかりに、自分も同じように噂を流して反撃に出たり、ブルトンの懐に飛び込みながらもゲッコーと繋がってみたり…と、若者が目的を果たすために、先人に従って道を外していく…っているプロットは、前作をと同じである。違うのは、悪人が二人いて、復讐on復讐みたいな入り込んだ構造になっている点。ただ、残念ながら、それが、必ずしもおもしろさに繋がっていないのが痛い点である。

基本、同じようなプロットを繰り返して、はたしてオリヴァー・ストーンは何を伝えたいのか?ブルトンが堕ちた後、さあて、次はゲッコーの野郎の番だ!どうやって反撃するんだ!?と注視していると、なんと、ゲッコーは改心するのである。孫のエコー写真を見て…である。
オリヴァー・ストーンは、自分の強欲を老獪というマントで包みながら、娘の心を重ね重ね裏切るような男を、私たちに“許せ”といっているのである。申し訳ないないが、誰一人として、父娘の和解とかそんな展開は求めていない。今度の幸せのバブルははじけませんよ…みたいな、そんなゆるゆるの三文芝居、おもしろいか?

この作品を作った意味がやっぱりわからない。オリヴァー・ストーン老いたり…。これが私の正直な感想。
#本作で、一番驚いたのは、チョイ登場したバドが、ブルースターを売っぱらって儲けていたことかな…。夢ねえなぁ。



負けるな日本

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image1767.png公開年:1987年
公開国:アメリカ
時 間:124分
監 督:オリヴァー・ストーン
出 演:マイケル・ダグラス、チャーリー・シーン、ダリル・ハンナ、マーティン・シーン、ハル・ホルブルック、テレンス・スタンプ、ショーン・ヤング、シルヴィア・マイルズ、ジェームズ・スペイダー、ジョン・C・マッギンレー、ソウル・ルビネック、ジェームズ・カレン、リチャード・ダイサート、ジョシュ・モステル、ミリー・パーキンス、タマラ・チュニー、フランクリン・カヴァー、チャック・ファイファー、レスリー・ライルズ、ジョン・カポダイス、アンドレア・トンプソン、セシリア・ペック、ポール・ギルフォイル、アニー・マッケンロー 他
受 賞:【1987年/第60回アカデミー賞】主演男優賞(マイケル・ダグラス)
【1987年/第45回ゴールデン・グローブ】男優賞[ドラマ](マイケル・ダグラス)
【1987年/第8回ラジー賞】ワースト助演女優賞(ダリル・ハンナ)

ニューヨーク大学を卒業して証券会社に就職したバド。一攫千金を夢見ていたが、実際は電話営業の繰り返しの日々で薄給な上に、客の損金を負わされることもしばしばで、父親から頻繁に借金をする有様。そんな生活に嫌気がさし、思い切って投資銀行家として有名なゴードン・ゲッコーをオフィスに押しかける。しかし、海千山千のゴードンは、駆け出し証券マンであるバドの情報などには興味を示さなかった。そこで、バドは、航空会社ブルースター・エアラインの労組幹部である父親から聞いた内部情報を、ゲッコーに漏らしてしまう。その情報にゲッコーは興味を示し、バドに株式の売買を一任するのだったが…というストーリー。

『ウォール・ストリート: Money Never Sleeps』(2010年)を観る前に、やはり前作は観ておかないとダメかな…と思い鑑賞。

冒頭、チャーリー・シーンの馬鹿ヅラ&ポンコツ演技にうんざりさせられるものの、浅はかで無駄な上昇志向の持ち主という役柄であることが見えてきて、むしろマッチしていることに気付く。

ヘッジファンドのやっていることがよくわかる映画…という意見もあるけれど、ゲッコーもバドも、誰にでも不正だとわかる行為をやっているので、株トレードの難しさがどうのこうのという知識は要らない。単純に詐欺師とその片棒を担がされた男の話なので、シンプルでわかりやすい。人の不幸は密の味。「勝った」としたり顔をしている彼らが、どんどん堕ちていく様は、やはり愉しい。ゲッコーのキャラクターが強烈であればあるほど、そのおもしろさは増幅される。

証券が商品であり、そこに市場があるかぎり、商品を右から左に動かしたことで生じる利鞘は、基本的には“正”だとはおもう。ただ、証券(特に株式)の根本的な性格は、自分で事業をする能力はないが金だけはもっているポンコツが、その資金を有効活用するために、事業のアイデアをもっている人に活用してもらうというものである。その根本原則に従うならば、せめて株式は1会計年度は保持して、1回以上の株主総会を経なければいけない。それより短く売買して得た利益については、税金を増額すべきだと、個人的には思っている。だから、優良株は時間をかけて育つと教えるバドの直属の上司の意見には強く同意する(そういうキャラが配置されていること自体、とても巧みな脚本だと思うのね)。

資本主義は、周囲の人間に施しをして正等な対価を貰うというのが基本原則。ただ、金欲しさに、周りが金を払ってくれるような行為をすることも、周囲への施しを表面的に同じに見える…というのが、資本主義が発展した重要ポイント。つまり強欲でも社会が発展する仕組みになっているということだ。でも、周囲への施しと強欲ゆえの行動は、完全にイコールではない。似ているだけで、後者はその強欲によって次第に周囲を不幸にする。貧しいけれど、それが判っているバドの父親。それがわからない息子への感情を考えると、なかなか泣かせられる(日本にはこういう“父親”がいっぱいいるがゆえに、いまの繁栄がある。そう思うのね)。
それにしても、「欲ってのは毒にも薬にもなる。その分水嶺は中道(ほどほど)だよ…」って答えをとっくの昔に出している仏教の優位性よ…。

バドは、かすかに残っている人としての心を完全に捨ててしまうのか否か?ブルースターの従業員たちは本当に路頭に迷うことになるのか?これらが、Greed(強欲)を大罪と定義している宗教の国で、繰り広げられているというのが、実に愉しい。人間の強欲をスピード感溢れる展開で表現した名作。超お薦め。
#ただ、私がレンタルしたDVDの、音声のノイズゲートのかけ方がものすごく耳障りで、残念極まりない。

アメリカでは本作を観て、ゲッコーに憧れて、トレーダーの世界に入った人間が多いと聞く。なんで、これをみてゲッコーに憧れるかなぁ?忌み嫌うべき人種だと思うのだが。やっぱり、アメリカ人は“自由”の意味を履き違えてる馬鹿が多いな…と思う。
今のアメリカやヨーロッパの経済的凋落を見ていると、単に強欲の果てに富の再分配に失敗した国家群にしか見えない。そんな国の経済学者たちが、失われた20年だ何だと日本を蔑んでいたのが実にアホらしい(腹を切るべき経済学者だらけだな)。これは、国家(というか市場)を構成する、人間のベース部分の問題に起因することなので、10年やそこらでは解消しないだろう。すくなくとも、アメリカやヨーロッパが浮上することは60年くらいはないと思う。日本はこつこつと独自路線を進むべし。そう強く感じる作品である。

#さて、続編はいかがなものかな…




負けるな日本

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クボタカユキ
性別:
男性
趣味:
映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
自己紹介:
毎日1本映画を鑑賞。褒めたり、感動したり、がっかりしたり、憤慨したり、薦めたり、こんなポンコツ映画は観ないほうがいいよといったりします。

今日も読んでくれてありがとうございます。

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