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公開年:2013年
公開国:日本
時 間:128分
監 督:佐藤信介
出 演:岡田准一、榮倉奈々、田中圭、福士蒼汰、西田尚美、橋本じゅん、鈴木一真、相島一之、嶋田久作、児玉清、栗山千明、石坂浩二、テイ龍進、波岡一喜、落合モトキ、井坂俊哉、工藤俊作、阿部丈二、草薙良一、増田修一朗、俊藤光利、大迫一平、植木祥平、松崎裕、朝香賢徹、荒木貴裕、生島勇輝、大塚幸汰、中村織央、和田亮太、井出卓也、大塚ヒロタ、前野朋哉、岸本尚子、吉岡奈都美、五十嵐麻朝、上野直人、廣瀬裕一郎、千野裕子、山森大輔、春日井静奈、寺田伽藍、西田奈津美、桝木亜子、満田伸明、西守正樹、加藤貴宏、河野マサユキ、瀧口亮二、亜佑多、夛留見啓助、新田匡章、渋谷謙人、内ヶ崎ツトム、根本太樹、黒石高大、沖原一生、北代高士、熊川雄大、斉藤悠、塩見大貴、山口航太、三元雅芸、佐藤誓、樋渡真司、国枝量平、岩手太郎、清水一彰、大久保運、平野靖幸、剣持直明、須田琉雅、吉澤実里、平澤宏々路、碓井由美、石田由紀子、岸田タツヤ、増田俊樹、大塚和彦、青木一平、田野良樹、内藤トモヤ、黄田明子 他
コピー :本のために、あの人のために。

1988年(正化元年)“メディア良化法”が制定され、風紀を乱す表現を含むと判断されるメディアを取り締まることが可能となった。政府は検閲のための武装組織“メディア良化隊”を結成し、各地の図書館・書店の書籍を灰燼と化してきた。文化の衰退を恐れた図書館は、2004年(正化16年)、読書の自由を守る自衛組織“図書隊”を結成。以降、両陣営の死闘が繰り返されてきた。2019年(正化31年)、図書隊に笠原郁が入隊する。彼女は、高校生のときに図書隊隊員に読みたい本と彼女自身を助けてもらった経験があり、その隊員のようになりたいと、入隊を希望したのだ。担当教官となった二等図書正・堂上篤は、笠原を容赦なく地獄の特訓に放り込むが、元々男子顔負けの身体能力だけが取り柄の笠原は、意地で喰らい付いていき、とうとう女性初の図書特殊部隊ライブラリータスクフォースに配属されるまでに成長する。そんな中、小田原にある私立の情報歴史図書館の館長が死亡する。良化隊とはいえ私有財産の検閲まではできないために、これまで難を逃れてきたが、所有者がいなくなれば検閲は可能。そしてその図書館には、メディア良化法成立に関する、政府側が知られたくない資料が存在すると噂されており…というストーリー。

本当は、あまりディテールに観客の目を向かせてはいけない作品だと思う。たとえば、笠原が憧れる王子様のくだり。堂上の行いは、いくら図書隊のことがニュースにならないといっても、図書隊が不利な事件だったんだから、調べれば記事くらい残ってるだろう…とか。いくら逆光で後姿しかわからんといっても、声と慎重と担当地区からある程度の予想はできるだろう…とか、なぜか堂上だけは王子様候補から除外されているのは都合がよすぎるだろう…とか。
小田原の図書館が私有財産だから検閲できないっていうけど、書店にある書物だって私有財産だろ…とか。誰かに相続されるんだから、所有者が死んだって、私有財産だろ…とか。etc。
原作ではきちんと説明されているのか知らんけど、映画を観ている分には、ツッコミし放題。まあ、明治=M、大正=T、昭和=Sときて、正化=Sはあり得ないんだから、その程度のレベルだと、早々に諦めをつけるのが正しいのだろう。

しかし、“観客に余計なことを考えさせるな”は、映画の鉄則だと思う。どんな作品だって穴はある。別に観客は穴探しのために映画館に足を運んでいるのではない。愉しむためならいくら騙してもらってもかまわないと思っているのに、わざわざ綻びを見せて興ざめさせるという無能っぷりを発揮する必要はない。何が言いたいかというと、本作は、冒頭から38分くらいまでに、日本映画のダメさが、ギュっと濃縮されてのだ。なんなら、38分から観始めたほうが愉しめる(試してみて)。
メディア良化法の成立や、図書隊結成の経緯、笠原が入隊するまでのエピソード、現在の争点、世相などをだらだらと、それも“ナレーション”で説明するという愚策。
そういうのは、登場人物のセリフや現在進行形のエピソードを使って理解させるべきである。むしろ、観客に「え?それどういう意味?」「どういう状況?」と疑問を沸かせて、ストーリーを進行する上で答えを小出しにして、観客の頭の中に“ああ、そういうことか!EUREKA!”を作っていくのが常道だろう。シナリオが悪いのかもしれないし、監督のセンスがないのかもしれないし、こんな編集で良しとした製作側が悪いのかもしれないが、とにかく、頭から38分くらいまではイライラする。それで、128分まで上映時間が長くなっているというのも、釈然としない。
#38分迄はどうすべきだったのか?というのは、映画監督を目指す人のための、ワークショップのいい教材になると思う。

一応、褒めるところは褒めることにする。それ以降は、観られる。話が動き始めると、細かいことが気にならないので、とても愉しめる。原作の長さだとおそらく意味のあるキャラクターであろう、 田中圭演じる小牧や、福士蒼汰演じる手塚が、別に彼らじゃなくてもいい状態だとしても、疾走感がそれを上回る。
昨今焦点になっている児童ポルノの単純所持に関する法案とか、自衛隊の専守防衛に対する揶揄なんだろうな…と思うけど、後半はそんなこと、どうでもよくなるほど、ストーリーが動いている。本当に、面白い世界観だと思う。思いつきをこういう形に仕上げた、原作は秀逸なのだろうなと思う。

私の言い分を読んで、駄作だと忌避する必要はない。38分まで早送りするなり飛ばすなりすれば、とてもとても愉しめる。

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公開年:2013年
公開国:日本
時 間:133分
監 督:石井裕也
出 演:松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、黒木華、渡辺美佐子、池脇千鶴、鶴見辰吾、宇野祥平、又吉直樹、波岡一喜、森岡龍、斎藤嘉樹、麻生久美子、伊佐山ひろ子、八千草薫、小林薫、加藤剛 他
受 賞 :【2013年/第37回日本アカデミー賞】作品賞、主演男優賞(松田龍平)、監督賞(石井裕也)、脚本賞(渡辺謙作)、録音賞(加藤大和)、編集賞(普嶋信一)、新人俳優賞(黒木華『草原の椅子』に対しても)
コピー :マジメって、面白い。


1995年。玄武書房では、新しい辞書『大渡海(だいとかい)』の編纂事業が進んでいたが、ベテラン編集者の荒木が定年を迎えることとなり、後継者の育成が急務となっていた。社内で目ぼしい人物を物色していた荒木は、真面目すぎる性格ゆえに営業部で浮いた馬締光也という青年を発見する。大学で言語学を専攻していた言葉に対するセンスが評価され、馬締は辞書編集部に異動となる。辞書編集部には、荒木のほか、お調子者の西岡、契約社員の中年女性・佐々木、辞書監修を行う老国語学者・松本という個性的な面々がいた。24万語という大規模な編纂事業は、社内で“金喰い虫”と揶揄されていたが、彼らを通して辞書の世界の奥深さを知り、馬締はどんどんのめりこんでいくのだった。一方、馬締が暮らす下宿に、大家の孫娘・林香具矢が住むことになり、一目惚れしてしまう馬締。思いと伝えられず苦悩するが、そんな中、出版社の方針変更により『大渡海』事業が中止になるという噂が広がり…というストーリー。

ダメな主人公が、実は特殊な才能の持ち主だと見いだされるという展開は、少年マンガ的な展開。そして辞書という身近なツールなのに、辞書編纂というとてつもないテクニックと努力を要する世界を見せてくれる。『タンポポ』とか伊丹十三作品などの視点に通じるものがあり、はじめの15分で、ギュッと心が掴れた(もう、この時点で成功したも同然の作品)。

松田龍平は、またいつもどおりボソボソしゃべってるな…と思いつつも、役柄に合っているので良し。元々目も死んでるし、何を考えているのかわからないのが功を奏している。

オダギリ・ジョーを一番評価したい。チャラ男だけど人情味溢れる熱い男を好演。松田龍平とは相性が悪そうに見えたんだけど、逆にいいコントラストになっていた。
加藤剛は、長いスパンの時間軸の中で、しっかりと“老い”てくれた。あれ?もしかして加藤剛ってお亡くなりになった。本作は遺作?って思っちゃうくらい劇中で見事に弱ってくれているし、一方で“静かな執念”を演じきったと思う。二人にはこの仕事で何か受賞させたかった。

長いスパンといえば、時間を追うごとに世の中に存在するツールが変わってく様子が描かれてるんだけど、まあおそらく小道具の時代考証はしっかりしているとは思うんだけど、なんか違和感を感じてしまった。おそらく、こっちの記憶がおかしいのだとは思うけど。

鶴見辰吾演ずる局長くらいしか悪役が出てこないのも特徴。それも、会社の偉い人としては当然の行いであり、むしろ事業継続を許してくれた善人だし。善人しかでてこない作品なのに、おもしろいというね。“道”追及する人々を淡々と描くだけで、ここまで熱く観ることができるのかと。

宮崎あおいの配役がマッチしていないとはいわないが、宮崎あおいしかいないのか?という飽きみたいなものを正直感じてしまう。

個人的には、もっともっと“用例採集”の偏執的な努力の様子を描いてほしかったんだけど、そうしちゃうと他の人間模様が薄くなっちゃうから女性客が逃げちゃうんだろう。ほどよいバランスなんだろう。原作は読んでいないけれど、もっと原作では山あり谷ありの展開があったんだと予想する。それらをザクっとカットして、淡々と描いたのは監督のセンスだと思う。

これは良作。お薦めしたい。

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公開年:2008年
公開国:日本
時 間:123分
監 督:蜷川幸雄
出 演:吉高由里子、高良健吾、ARATA、あびる優、ソニン、今井祐子、綾部守人、市瀬秀和、妹尾正文、市川亀治郎、井手らっきょ、小栗旬、唐沢寿明、藤原竜也 他
受 賞:【2008年/第32回日本アカデミー賞】新人俳優賞(吉高由里子)
【2008年/第51回ブルーリボン賞】新人賞(吉高由里子)
 コピー:痛くないと、感じない。
19歳、痛みだけがリアルなら痛みすら、私の一部になればいい。


渋谷界隈をブラつくだけの単調な日々を過ごす19歳のルイ。そんな毎日に苛立ち覚えていたある夜、クラブでアマと名乗る男と出会う。彼は赤く染めたモヒカンヘアで、顔中にピアスをしており、背中に龍の刺青、一番特徴的なのは“スプリットタン”と呼ばれる蛇のように先が割れた舌だった。未知の世界の人間と出会ったルイは、スプリットタンに特に心を奪われ、自分もやってみたいと思うのだった。アマに紹介してもらった店で、ルイは舌にピアスをあける。その穴を徐々に拡張していくのだ。その店の店長シバは、アマ以上に顔中がピアスで、全身彫り物だらけだった。それを見たルイは、自分の身体にも最高の絵を彫りたいと、アマの背中にある龍とシバの右腕にある麒麟を合わせたデザインをシバ依頼する。アマと同棲をはじめたルイだったが、彫ってもらう度にシバとも関係を続けた。しかし、いくら舌の穴を拡張しても、刺青を増やしても、ルイの心は満たされない。ただただ痛みだけが、生きている実感だとなっていた。そんなある日、町で絡んできたチンピラをアマが撃退。その場は逃げ帰ったものの、その後、その相手が死亡したことをTVニュースで知ったルイは…というストーリー。

自分がだれにも必要とされていない疎外感。自分が何をしても世の中に影響を与えていない疎外感。自分で何かをコントロールしたい欲求=自分がこの世にいる実感=自分の存在価値…という感じのロジックはわからんでもない。しかし、自分でコントロールしたいという割には、ピアスをあけてもらうのも、刺青を彫ってもらうのも、他人に体を委ねているわけで…。
普通は、あれ?自分のやってること何か矛盾してね?と気づくのだが、あまりいい環境で育っていないと、不安や疎外感で目が霞んでしまうのかな。
蜷川幸雄監督の演出だけど、意外とアクションシーンが気持ちよかった。キャラのバックボーンを説明しすぎないのは、当たり前ではあるけど、いかにもベテランらしい匙加減。小栗旬と藤原竜也の贅沢(?)な使い方なんて、蜷川幸雄にしかできんわな。

メインキャスト陣が体当たり演技なのは認める。ただそれはあくまで、彼らのキャリアとの相対的ながんばりである。
吉高由里子のナレーション棒読みは、演出なのかマジなのか。っていうか、あのナレーションは必要なのか?とか、酒しか飲んでなくて激ヤセしていくっていう設定なんだけど、“激”ってほどは痩せていなかったのが、ちょっと残念。デ・ニーロばりの仕事をしろとはいわないけど、もうちょっと観客がギョっとする程度は痩せてほしかった。
舌の穴を拡張するときは、痛くて攻撃的になる…ということだが、それが彼女の演技から伺えない。弱っている様子は伝わるが…。

同様に、人体改造という未知の世界なわけだけど、ARATAの顔ピアスも刺青もいまいち美しくないのは、いただけなかった。普段は、刺青なんかに魅力は感じないんだけど、一瞬心を奪われてしまったわ…くらいの美しさをみせてほしかった。まあ、そこはARATAの演技の問題じゃなく、演出の問題だね。

終盤は、親族でもない、ただ同居していただけの未成年に、警察が捜査状況を説明するという、リアリティのない場面があったり(ありえないとはいわないが違和感)、ちょっとストーリーに没頭できなくなってくる。これは、シナリオというよりも、原作の問題かも。

本作でユニークなのは、相手の犯罪行為を知ったときに隠蔽工作するというパターン。それを繰り返すルイ。現状を変えたいという意思と、変えたくないという意思のアンビバレントの共存。この両極端の感情の間を高速で揺れ動く軌跡が、彼女を形作っているってところか。

まあ、オチとかどうでもいい。いい雰囲気を最後まで貫いてくれた作品。けっこう気持ち悪い内容なのに、鑑賞後は案外さわやかな感覚に包まれたのは、何なんだろうね。これが蜷川演出なのかな。
#舌の穴拡張シーンはCGかな?そこは評価したい。

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公開年:2012年
公開国:日本
時 間:124分
監 督:河合勇人
出 演:長谷川博己、臼田あさ美、土屋太鳳、風間俊介、田畑智子、斉木しげる、でんでん、富田靖子、夕輝壽太、山中聡、赤堀雅秋、戸田昌宏、歌川椎子、澤山薫、窪田正孝、浜野謙太、北村匠海、未来穂香、西井幸人、藤原薫、小野花梨、桑代貴明、刈谷友衣子、工藤綾乃、三浦透子、岡駿斗、久本愛実、鈴木梨花、小山燿、吉永アユリ、下山葵、影山樹生弥、柿澤司、中西夢乃、伊藤凌、松岡茉優、中嶋和也、馬渕有咲、松本花奈、西本銀二郎、森野あすか、米本来輝、鈴木米香、齋藤隆成、三宅史、中澤耀介、澤田優花、安田彩奈、山口愛、福地亜紗美 他
コピー:常識を打ち破れ、世界は変わる

緋桜山中学の国語教師・鈴木先生は、独自の教育理論・鈴木メソッドを用いて理想的なクラスを作り上げようと、日々努力している。その独特な教育理論によって、時には他の教師と対立することもあるが、生徒たちの様子の変化に手ごたえを感じつつあった。プライベートでは、妻・麻美が妊娠中で、公私ともの順調のはずだったが、なぜか女子生徒・小川蘇美とのあらぬ妄想に振り回されるようになってしまった。2学期になり、学校が生徒会選挙や文化祭など慌ただしくなっていく中、鈴木先生の天敵・家庭科教師の足子先生が復帰。早速、足子先生は、生徒会選挙の有効投票率を上げるために記名選挙を提案したり、学校近くの公園から不審者を排除するために喫煙所の撤去を働きかけるなど、暴走をしはじめ職員の間に不穏な空気が流れ始める…というストーリー。

タイトルに“Episode11”とあったので、何ぞや?と調べたところ、本作はTVドラマであった模様。続きってことですな。私、観たことないどころか存在自体を知らず。これは『闇金ウシジマくん』のようにTVドラマを観ていなかった人にはピンとこないシーンの連発か?と警戒。確かに、TVドラマの流れであろうくだりは散見され、TVドラマを観ている人ならクスリとくる部分もあるんだろうな…とは思いながら、ノリが掴めないまま中盤まで経過してしまった。TVドラマを観ている人なら、鈴木先生や生徒が死んだりするようなお話じゃないことを判った上で観てるわけでしょ?知らない私は、この鈴木先生が全編にわたって良い人として扱われ続けるのか、破滅していくお話なのかすら見えなかった。
とはいえ、引っかかってしまって、ネット検索しないと観続けるのが難しいほどの不明個所はそれほどなかった。

そんな私が観終わった感想は、始めこそユニークだったけど、結局、中学生日記に落ち着いちゃったな…って印象。それが映画になっているという点を、逆に新鮮とみるか否か。
イライラさせられるエピソードはたくさん散りばめられてはいるものの、それに対するカタルシスがしっかりと得られなかった。イライラの滓だけが心の中に残ってしまい、ちょっと不快なまま終わってしまった感じもある。
本作の特徴なんだろうけど、言葉による処理が多く、ビジュアル表現がいまいち。いや、鈴木先生の妄想とかはあるんだけど、ビジュアルで表現して欲しいところは、そういう部分ではなく、登場人物の考えている事、感情の機微。子役が多くてそれを求めるのは無理なのかもしれないけど、全部、心の声やディベートで片付けられている気がして。
おそらく、TVドラマのほうは、ある意味中学生日記の現実版として、優秀なデキだったんじゃないかな。TVは別にそれでいいと思うんだけど、同じノリでそのまま映画にしちゃったのかもね。それがイマイチに感じる原因かのかな?と。

別に観なくてもよかったかな。TV版を観た人へのご褒美でしょう。
#昔、富田靖子のファンだったんだけどな。たまにみるといつも同じような演技なのが、ちょっと悲しい。

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公開年:1991年
公開国:日本
時 間:121分
監 督:山田洋次
出 演:三國連太郎、永瀬正敏、和久井映見、田中隆三、原田美枝子、浅田美代子、山口良一、浅利香津代、ケーシー高峰、浜村純、佐藤B作、いかりや長介、梅津栄、渡部夏樹、レオナルド熊、中本賢、小倉一郎、村田正雄、松村達雄、中村メイコ、音無美紀子、奈良岡朋子、田中邦衛 他
受 賞:1991年/第15回日本アカデミー賞】作品賞、主演男優賞(三國連太郎『釣りバカ日誌4』に対しても)、助演男優賞(永瀬正敏『喪の仕事』に対しても)、助演女優賞(和久井映見『就職戦線異状なし』に対しても)、新人俳優賞(永瀬正敏、和久井映見『アジアン・ビート(日本編)アイ・ラブ・ニッポン』『喪の仕事』『就職戦線異状なし』に対しても)


新宿の居酒屋でアルバイト生活をする哲夫。仕事から帰宅すると、丁度、父・昭男から電話がかかってきて、母親の一周忌に岩手に帰って来いと言う。居酒屋でこきつかわれるのにうんざりしていた哲夫は、アルバイトをやめて帰省し、普段着で法事に参加する。その夜、東京でサラリーマンをしている長男・忠司夫妻が、田舎で一人暮らしの昭男の今後を心配しており、最近購入したマンションに父親を引き取るつもりがあるという。哲夫はそんな会話を気まずそうに聞いていた。翌日、長男・長女が戻っていく中、少し昭男の面倒をみようと哲夫はひとり残ったが、昭男は哲夫が東京でフラフラと転職を繰り返していることをたしなめ、二人の心の溝はかえって深まるばかりであった。東京に戻った哲夫は、下町の鉄工場で働くことにする。思っていた以上に厳しい仕事内容で、またもや辞めてしまいと思いかけたとき、取引先の倉庫で働く征子という女性に一目惚れしてしまう哲夫。彼女に会いたいばかりに哲夫は仕事を続け…というストーリー。

山田洋次作品は、あまり観ていない。階級格差を良しとしたいんだか悪しとしたいんだか、よくわからないな…と感じることが多いし、それが人情話でうやむやにされているような気がするのも、好みじゃない。山田洋次といえば人情話みたいなイメージがあるけれど、私には中途半端な左翼主義者的な臭いが感じられるので、好きじゃないのかも。まあ、わたしが素直じゃないだけなのかもしれないけど。
長男・忠司の描写なんかに、そういう部分は見られるけれど、本作に限って言えば、純粋に父と子の朴訥な愛に、素直にスポットが当たっていると思う。まじめな勤め人だけど少し愛情が薄い長男と、目的意識が薄く感情的で、逆にいえば純粋な次男という、うまい対比ができていると思う。

東北の親類がいる人はよくわかると思うが、ケーシー高峰らが演じる東北人のうざったさが実にリアル。あんたのためを思って言ってあげているんだという割には、押し付けがましく、それが常識だろうという風に、自分の価値観を押し付ける、視野の狭い口だけのお節介な人間が、結構多い。東北人が嫌われる理由の半分がこれだと思う。
そういう明らかに口だけだとわかる言動もそうだが、親だから面倒みなくては…いや、面倒をみる態度は取っておかないと世間体が悪い…という類のウソもある。長男本人も半分はそういう気持ちだが、長男の妻に関しては100%それなのがありありと判る。
だからといって、父親は体も弱ってしまい、本来ならば子供世代に庇護を受けるべき状況なのかもしれないが、それは受けられない。むしろ建前に素直に乗ってしまった先には不幸が待っているのは目に見えている。

かつての戦友の八方塞がりな現在を聞くと、心苦しい。やはり一人でひっそり死ぬのが最適なんじゃないだろうか…、そういう荒んだ気持ちになったところで、まさかの哲夫からの告白。この抑えながらも小躍りするような三國連太郎の演技。本作のいいところを全部一人で持っていちゃった感じ。泣くまではいかずとも、うるっとこない人はいないだろう。
#泣ける、泣けるとは聞いていたが、そうやってハードルをあげられていたにも関わらず泣かせるんだから、大したものだ。

凡人監督(というか凡人脚本家)なら、哲夫の恋愛の進展具合のすったもんだを描いただろうが、すぱすぱと展開させているのが、とてもいいセンスだ。親族が嫁が聾唖者であることを知って云々かんぬんなんて一切描かない。本作の場面構成は、非常に勉強になる。

ああ、本当の幸せなんて、こういう小市民的な出来事の中にあるんだな…、いや、こういうあたりまえの幸せだって、なかなか無いのかもしれない(岩手に戻ったときに、おまえは幸せものだ…と言われるシーンがそれを表現)…ってことなのかな。まあ、その通りなんだけど、ちょっと階級格差での底辺の生き様みたいな感じで描かれているようで、若干気持ち悪かったりする。しかし、それも、最後の三國連太郎の異常なまでの"こりゃ死ぬな…”感でかき消される(死なないけど)。

ラストのスッキリしなさを不満に思う人も多いだろうが、私はあれでよいと思う。人生ってちろちろと蝋燭の灯火のようなものだなって、そう感じさせてくれたもの。良作。
#岩手の家で、スタジオ感がでちゃってるのが、とても興醒め。そのくらいなんとかならんかったのかなぁ…。

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公開年:1982年
公開国:日本
時 間:110分
監 督:渡邊祐介
出 演:武田鉄矢、有賀久代、樹木希林、西田敏行、花沢徳衛、田中邦衛、高倉健、仲谷昇、岡本富士太、小林昭二 他






博多署は、山笠祭り開催中にトルコ風呂を管理売春の容疑で強制捜査したが、何一つ証拠が挙がらず、マスコミの大批判を受けてしまう。一刑事である片山元が、火消しのために沼津に転勤するハメになる。先の捜査で知り合った聾唖のトルコ嬢・三沢ひさ子の生い立ちを不憫に感じた片山は、足を洗わるだけでなく身元引受人となり、沼津にもつれていくことにする。沼津では、二人は兄妹ということにしてアパートを借りた。初めは不安そうだったひさ子も、徐々に、普通の生活のありがたさをかみ締め、幸せを感じるようになる。片山の初仕事は、沼津で発生している、連続殺人事件の捜査。事件の発生が曜日を分けているようだという以外に、特に手掛かりも見つからない中、信用金庫で強盗事件が発生。片山が得意とする蟷螂拳で犯人を取り押さえ、その犯人が連続殺人事件と繋がっていることをつきとめるのだったが…というストーリー。

まだまだ、博多出張の気持ちが高いままで、博多関連の映画を観ようとおもってレンタル。でも冒頭のトルコ風呂のガサ入れのシーンだけで博多はおしまい。

名義はペンネームになっているが、原作も脚本も武田鉄矢。キャラの立て方や、事件と恋愛の二重構造が相乗効果を生んでいる。いくら生い立ちが不憫だからといっても、トルコ嬢の身元引受人に現役刑事がなるなんて、ファンタジーがすぎるなぁ…なんて思ったが、それは片山の生い立ちを説明することで、しっかり解消。改めてみると、本当に良く出来ている作品。ひさ子を“徳川”に潜入させる展開になったどうしようかと思ったが、さすがにそれはなくてホッとした。

片山は、奥手で手が出せないんだろうな…なんて思っていた。“徳川”でも躊躇するそぶりがあったし、基本は清廉キャラなのかなんて。でも、ラスト付近で、「なんで抱いてはいかんのですか!」と、一応チャレンジして拒否られていた模様。ちょっと笑った(笑うシーンじゃないんだけど)。
変に聖人(というかいい人)ぶってしまうもんだからって、誰かにかっさらわれても、聖人の顔のまま心で鳴くハメになるという、男性にはありがちなパターン。容姿の冴えないし、組織の都合は甘んじて受入れ、自分が納めればそれでみんなが幸せになるならそれでいい…というキャラも、日本では一定の共感が間違いなく得られる。

実際に、ただの刑事が各県に転勤になるなんてことはあり得ないけど、寅さん的なご当地ムービーとしては優秀な設定。ただ、沼津自体は旅行先としては、あまりおもしろくないのが難点か。寅さん的といえば、失恋して、その土地を去るというパターンは一緒。パクリというか普遍的な物語の構図なんだと思う。
ラストの吉田拓郎の歌は、本シリーズをよく表した雰囲気のある歌だが、よく考えると、いい加減なやつ~じゃけ~んって、博多とも沼津とも無関係の広島弁。まあ、そういう勢いって大事だよね。

樹木希林、西田敏行、田中邦衛、高倉健と、チョイ役ががものすごく豪華なのも本作の特徴。でも、wikipedeiaにひさ子を演じている有賀久代が、本作の演技を恥じて引退したと書いてあって驚愕。私、この方、本当の聾唖者だと思ってたくらいだし、度胸のあるいい演技をする人だと見ていたんだけどねぇ。

改めて、リブートしてもいいようなシリーズだけど、もう武田鉄矢にこなす体力はないわなぁ。老いた片山で一本つくるってのはアリかもしれない。実に良作。深夜に放送すると大好評のはずなんだけど、“トルコ”の部分を全部無音にするわけにもいかないので、地上派放送は無理だな。

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image2183.png公開年:1991年
公開国:日本
時 間:107分
監 督:竹中直人
出 演:竹中直人、風吹ジュン、三東康太郎、山口美也子、マルセ太郎、神戸浩、神代辰巳、いとうせいこう、大杉漣、草薙幸二郎、須賀不二男、久我美子、野村昭子、船場牡丹、原田芳雄、三浦友和 他
受 賞:【1991年/第48回ヴェネチア国際映画祭】国際批評家連盟賞(竹中直人)
【1991年/第34回ブルーリボン賞】主演男優賞(竹中直人)、助演女優賞(風吹ジュン)


それなりの売れっ子マンガ家だった助川助三は、マンガへの情熱を失ってしまい、数々の商売の手を出しては失敗を繰り返していた。家計は、妻モモコがチラシ配りで得る収入だけで支えられていた。助三は、元手のかからない石が売れたらなんと素晴らしいことだろうと、ふと思い立ち、石屋を開業することに。もちろん街中に開店する資金などあるはずもなく、川原に自作の小屋を建てて商売を始める。来年小学校に上がる一人息子の三助を連れ、朝から夕方まで店に座り続けるものの、一つたりとも石が売れることはなかった。ある日、石の愛好家の専門誌を読んだ助川は、オークションで石が高額で売買されていることを知り、オークションを主催している石山という男の家を訪れる。石についての講釈を聞き、売れる石を出品するためには、上流まで石を探さねばいけないと考えた助三は、家族を伴い遠く山梨まで採石に出かけるのだったが…というストーリー。

つげ義春のマンガは、ねじ式をぱらりと読んだ程度でほぼ読んだことがない。よって、本作が原作の雰囲気をよく表しているか否かはよくわからないのだが、世間の評価は高い模様。ロケ地や舞台が、わざとらしくシュールに描かれているということはないのだが、不穏な空気というか微かな違和感というか、そういったものを常に漂わせており、そういう意味では成功しているように思える。

たしかにシュールな空気は漂っているのだが、本作の主人公はシュールというよりも、単に楽して儲けたい人に見える。タイトルの“無能”とは何なのか。その漫画の才能を捨ててしまったら無能になった?
かつて、マンガを描くことはたのしいことだった。つまり、マンガで稼げていたことは彼にとって“楽に稼げていた成功体験”なわけだ。商業的な仕事はしたくないっていうのは単なるいい訳で、マンガを描くことが、今の彼にって“楽”じゃなくなってしまっただけのハナシ。彼は苦労しないで儲けることに快感を覚えるようになってしまった。その成功体験が忘れられずに、とにかく楽に稼げる商売を探しまくる。だけど、楽に稼ぎたいので、商売を軌道に乗せるために頭を使ったりはしない。すべて、他人から聞いた儲け話みたいなのに乗っかるだけ。
普通は、貧しさの苦痛と、こつこつ働くことを天秤にかけて後者になるのだが、楽して儲けられないくらいなら、極貧でもかまわないというスタンスが、普通の感覚じゃない。
でも、実世界でも、程度の違いはあるが、こういう人がは案外いるので、それほど浮世離れしているとも思えないところがミソ。

競りで、妻ががんばっちゃうのは、一つのおもしろエピソードを見るべきなのか、もっと深い、男女の根源的な関係を示唆しているのはよくわからん。正直、家族3人が手を繋いで歩いてくシーンも、餓鬼・畜生が無表情で地獄への道へ進んでいるようにみえて、デカダン臭満載で心苦しく感じてしまった。

いきなり初監督映画が、ヴェネチアで賞を取ってしまった竹中直人。その後も数年おきに、『119』(1994)、『東京日和』(1997)、『連弾』(2001)、『サヨナラ COLOR』(2004)、『山形スクリーム』(2009)と、コンスタンに監督はやっている。俳優の仕事の多忙さを考えるとスゴイってのもあるが、さほど商業的に成功しているとも思えないのに、映画を作らせてくれる信頼を得ているというほうがスゴい。

娯楽作品ではないけれど、他の作品とは一線を画すという意味では、際立った作品かも。

エンドロールを見て友情出演のオンパレードなことに気付いたが、観ている最中はあまり気にならなかったというか気付かなかったというか…。どこにつげ義春出てた?

 

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image2142.png公開年:2012年
公開国:日本
時 間:137分
監 督:西川美和
出 演:松たか子、阿部サダヲ、田中麗奈、鈴木砂羽、安藤玉恵、江原由夏、木村多江、やべきょうすけ、大堀こういち、中村靖日、山中崇、村岡希美、猫背椿、倉科カナ、佐藤和太、栗原瞳、原扶貴子、森富士夫、柏村栄行、栗本有規、ヤン・イクチュン、伊勢谷友介、古舘寛治、小林勝也、香川照之、笑福亭鶴瓶 他
ノミネート:【2012年/第36回日本アカデミー賞】主演女優賞(松たか子)
コピー:人間最大の謎は、男と女

東京の片隅で小料理屋を営む板前の貫也とその妻、里子。小さいながらも、いつも常連客で賑わっている店は、5周年を迎える。そんなある日、調理場からの失火で店は全焼。二人は全てを失ってしまう。もう一度やり直そうと前向きな里子はラーメン屋のアルバイトを始める。貫也も知り合いのツテで板場で働き始めるが、自分の店で思うようにやってきて、ここにきて他所のしきたりに従えるはずもなく、モメごとをおこして辞めてしまう。そして、次第にやる気をなくし、酒に溺れる毎日に。そんなある日、店の常連だった玲子と、駅のホームでばったり遭遇。酔った勢いで玲子の部屋で一夜を共にしてしまう。愛人に手切れ金を渡され落ち込んでいた玲子は、貫也の話を聞いて、貰った手切れ金をすっかり渡してしまう。大金に浮かれた貫也は、小走りで帰宅するが、浮気はすぐに里子にバレてしまう。激怒してもらってきた金を焼いてしまおうかというその時、もしかすると、夫には女にとことん同情される才能があるのではないかと気付き…というストーリー。

冒頭の迂遠なカットの連続で、挫けてしまう。正直、2回ほど観るのを中断した。後々、貫也に騙される女性の様子を描いているのはわかるが、それ必要だろうか?
重量挙げの人はパっと見は男性みたいだし、風俗の人は最初ソープで再登場のときはデリヘルだから同じ人だとすぐに繋がらない。両者とも地味な顔立ちだから、印象薄いし。後から出てきて「わー、あの人かー」っていう驚きや感動があるだろうか。普通の感覚ならカットするところだろう。監督のせいなのか編集のせいなのかはよくわからんけど。
とにかく話の本題である結婚詐欺の流れになるまでが、迂遠なの。

一番釈然としないのは、里子が結婚詐欺を思いつく場面。札束を燃やそうとするときにふと思いつく。思いつくのはいい。確かにそういう才能があるのかも?!と気付くのは不自然ではない。でも、才能に気付くということと、それをやらせようという感情に至ることとは、別問題ではなかろうか。よっぽど愛想が尽きたか、恨みの気持ちが増したか、かなり悪魔的な感情が沸かないと、それなりに愛していたであろう夫に、別の女性と夜を共にする生活を強要させるまでには至らないと思うのだが…。
一回の浮気だろうが不快で許せなくなるのはわかる。でもそこまで、極端に振れる境目が、全然わからなかった。浮気が数回続いたというなら判るが、一回の浮気だけで結婚詐欺がバンバン成功するに違いない!と確信できるその違和感よ。

自分がこんな大したことのない男にずっと尽くしているのは、玲子が金を渡したのと同じ感情が発露なんじゃねーの?という考えに至ったのなら理解できなくもない。でも、そこに気付いて愕然とした…、プツッと切れてしまった…っていう瞬間は伝わってこない。
仮にそれに気付いたならば、このままじゃいけないと思い、別れよう…って考えにも至ると思うが、それは選択肢にあがらない。“割れ鍋に綴じ蓋”とか“愛憎”だといえばそれまでだが、しっくりはこない。

そこで、私はふと思う。女性には、これがピンとくるのかしら? どうなんだろう。
このターニングポイントさえ、スパっと描けていたら、文句なしのコメディだったと思うのだ。本作は、コメディをコメディとして描かない“スタイル”なだけで、立派なコメディ。ただ、頭でも書いたけど、ちょっとテンポが悪いから、そうは見えないだけ。

なんだかんだで、結婚詐欺が波に乗ってしまうくだりは、なかなか面白く、その間の松たか子の演技がユニークで愉しめる。本当に軌道に乗ってしまうことへの戸惑い。“店”が目的だったけど、実は、店自体は幸せに至る手段だったことに薄々気付き始める。じゃあ、真の目的である幸せな生活は? 結婚詐欺なんかやっていたら子供なんか作れない、むしろ幸せから遠ざかっている。ところが、ブレーキの踏み時のはずなのに、逆にアクセルを踏んでしまう自分への戸惑い。

西川美和監督作品は、結局、いつも警察に追われるような内容ばかり。最後の金の返却って何か意味があるんだろうか…。穴を掘って埋めて…みたいな行為に近い。人間は所詮、遺伝子の呪縛から逃れられない…というような、諦めの運命説みたいなものが漂う。もうちょっと肩の力を抜いて作れば、監督自身の人としての地金みたいな部分が滲み出なくていいと思うな。

田中麗奈が調査を依頼した笑福亭鶴瓶の役は、法律の話をしていたから弁護士なのかと思ったけど刺青してるし、興信所なの?ヤクザなの? それとも刺青のある弁護士をディスってるの? スッと理解できまへんでした。
#鈴木砂羽が演技してるの初めて見た。

 

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image1097.png公開年:2004年
公開国:日本
時 間:125分
監 督:タカハタ秀太
出 演:草なぎ剛、中谷美紀、香川照之、市村正親、パク・ジョンウ、コ・ドヒ、チョ・ウンジ、イ・ジュンギ 他






韓国の最果ての街。オカマの老人“ビーナス”が経営する“ホテル ビーナス”には、ワケありな住人が住んでいる。酒浸りの元医者“ドクター”と妻の“ワイフ”、3号室にはいつか花屋を開くことを夢見る娘“ソーダ”、4号室には殺し屋を自称する少年“ボウイ”、屋根裏部屋である0号室にはウェイター兼ホテルの世話係“チョナン”がが暮らしていた。そこへある日、。無口な男“ガイ”と娘“サイ”がやって来る…というストーリー。

あらすじを書いていて思ったが、設定こそあるが、あまりまともなストーリーは存在しない。

白黒であることに何か意味があるのか…と真剣に考えていたのだが、理由は思いつかなかった。パートカラーなので、カラーになっている部分に何か意味があるのだろう…とも考えたが、それでも意味がわからない。ラストはすっかりカラーになってしまうのだが、その境目もわかったようなわからないような。警察(らしき人)に対して、虫けら呼ばわりされたことに反抗するのだが、それで、霧が晴れたように彼らの何かが変わったのだろうか。あれが決定的な場面だとも思えず、どうにも空々しく感じてしまう。
韓国地方都市の場末のホテルということで、むしろ、小汚い町並みをそのまま写したほうが、雰囲気が出たのではないかと思った。しかし、ラストのカラーをみると、中途半端な色合いで、こんな色彩にしても逆効果だったかもしれない(TVドラマの色)。言い方は悪いが、白黒にして“逃げた”んだと思う。
#ここは韓国人カメラマンを使えばよかった。

LOVE PSYCHEDELICOの楽曲を多用しているのだが、その使い方がクドくてとにかくダサい。
舞台が韓国だったり、全編韓国語だったりするのは、この作品が草なぎ剛がやってたTV番組だからしょうがないとしても、タップダンスは、あまり演出上の意味がなかった。符牒として意味をキチンと持たせればいいと思うのだが。
日本に韓国の彼女を呼んだら事故にあって死んじゃった。呼ばなきゃよかった…とは思うだろうけど、自己責任だわな。父親の気持ちはわからんでもないが、なんでラストで墓参りを許す気になったのかもわからん(そこ、大事じゃね?)。それにしても、あんな山の中腹に墓ってあり得るのかしら。

まあ、ガイ・リッチーとかロバート・ロドリゲスとかタランティーノとか、その辺の米英映画の真似事をして、失敗しているんだろう。

それにしても2時間超は長すぎかな…と。最後まで全編白黒で、本当に意味を持たせたいところをパートカラーに。そして、香取慎吾とか出さない。説明しすぎのところはカットする。きちんと意味付けができていない無駄な演技や動作はばっさり捨てる。
まともな編集をしさえすれば、もうすこし観られるものになっただろう。

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imageX0097.Png公開年:2009年
公開国:日本
時 間:112分
監 督:星田良子
出 演: 竹中直人、宅麻伸、斉藤暁、稲垣潤一、段田安則、浅田美代子、紺野美沙子、貫地谷しほり、塚本高史、田口浩正、賀来千香子、宇崎竜童、柏原収史、田中卓志、山根良顕、佐々木すみ江 他
コピー:余命半年──、彼が気づいた本当に大切なもの。




食品会社に勤める53歳のサラリーマン藤岡徹は、胆石で入院していたが、病院内を歩行中に、主治医が“53歳の男性。末期の胆嚢癌でもって余命半年。妻は告知をしないと決めている”と話しているのを立ち聞きしてしまう。確かに、妻も子供たちの言動も、何かを隠しているように思えた。そのまま退院し家に戻った藤岡だったが、どうせもうすぐ死ぬと考えると何もやる気がおきない。妻に無理やり息子の高校の学園祭に連れて行かれると、そこで学生がライブをしている姿を見かけ、自分も高校時代に“シーラカンズ”というバンドを組んでいたことを思い出す。死ぬ前にもう一度バンドをやろうと思い立った藤岡は、かつてのメンバーであった酒屋の渡辺、不動産屋の山本、エリートサラリーマンの栗田に声をかける。はじめは乗り気ではなかった面々も、藤岡の病状を知りバンドの再結成を了承するが、それぞれ家族や仕事に問題を抱えており…というストーリー。

別の患者で勘違いでした…という展開が、冒頭から読めてしまい極めてつまらなく感じてしまうのだが、それがストーリーの根底設定なのでしかたがない。
となると、勘違いの部分にばかり焦点をあてないで、ポイントをずらすことが一番重要になってくる。何か別の理由で、家族もよそよそしくしていて、観客にはいかにも本当の病状を隠しているように見せているようなのだが、もう、娘の結婚のことなんだろうな…と薄々見えてしまう。

人間死ぬ気になったらなんでも実現できる…ってのを本当に余命宣告されたら、何でもできちゃうんじゃね?っていう発想はわかる。でも、実際はそういう反応にはならない。いざとなるとなるべく周囲に迷惑をかけないで…という方向になりがちなので、ものすごくリアリティはない。
さらに演出も不自然で、リアリティの無さに拍車をかける。たとえば、昔の写真を見ながら、「これテッちゃんだろ。これ俺俺~」って、自分たちの写真なんだから、誰だかわからないなんてことはあり得ないわけで、会話が不自然極まりない。「痩せてるなー」とか「髪多いなー」とかならわかる。普通、こんなセリフはカットするだろう。ちょっとセンスのない監督かも。
また、寺を借りるくだりは、脅すネタがあるなら脅すだけでもよかったし、安い戒名でよかっただろう。本気で自分の戒名を付けたかったのかもしれないが、家族のことを考えている男なら、家族になるべく財産を残そうとするはずで、極めて不自然。

多くの人が指摘しているが、稲垣潤一のキャスティングがかなり失敗。感情の薄い役柄なので何とかなると思ったんだろうが、許容範囲を超える棒読み具合。興醒めすること極まりない。本当に演奏させることに何故か執着しているようなのだが、映画のデキとはまったく無関係。演りパクで何の問題もなかったはず。

この手の音楽のコンテストがラストになる作品は、どんなつまらん作品でも最後の大会のところはそれなりに盛り上がるはず。ベタベタでありきたりな演出だと思っていても、鳥肌がたつものである。なのに、なぜか本作は盛り上がらない…。
あのタイミングで、徘徊する母親を捜しにいく展開は、あれをおもしろく演出するのは何気に難しいと思う。捜しに行かないで警察呼べよ…とも思っちゃうし。演奏中の中学校時代の回想はいいけど、劇中の出来事の回想はいらんな…とも思う。

どうもこの監督さん、やっちゃいけない線がわかっていないような…。

ただ一つフォローしておくと、実はシナリオ自体はしっかりしていて、部下もギター好きとか、徘徊老人とか、伏線はスマートに貼っている。まあ、優等生の夏休みの宿題みたいな出来映え。アラが目立たないように、90分くらいにまとめるとよかったんだと思う。

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image2108.png公開年:2012年
公開国:日本
時 間:129分
監 督:山口雅俊
出 演: 山田孝之、大島優子、林遣都、崎本大海、やべきょうすけ、片瀬那奈、岡田義徳、ムロツヨシ、鈴之助、金田明夫、希崎ジェシカ、内田春菊、市原隼人、黒沢あすか、新井浩文 他
コピー:彼らがツイてなかったのは、この人と出会ってしまったこと。



ウシジマこと丑嶋馨は、10日で5割、1日3割という法外な金利の闇金融業を営んでいる。法を犯しているのは百も承知で、すべてが自己責任。回収も自ら情け容赦ない方法で行う。フリーターのミコは、パチンコにはまった母がウシジマから借金したため、利息の肩代わりをするハメに。友達から楽に稼げると勧められ、“出会いカフェ”のバイトを始めるが、デートをするだけで簡単にお金を手に入れることを知り、頻繁に通うようになる。一方、ミコの友達で2イベントサークルの代表を務める3歳の小川純。現在、これまでの人脈を使って、イケメンダンサーを集めた大きなイベントを企画しており、これを機に成り上がっていこうと考えている。しかし、資金集めが思ったように進まない。うまく調達できず困っていると、知り合いのネッシーから、闇金業者のウシジマを紹介される。所詮、闇金業者なので踏み倒しても問題ないと…というストーリー。

原作マンガは読んだことがなかったのだが、本作の主人公であるウシジマが、何かを主張するでもなく特徴的な行動をするわけでもない上に、早々と逮捕されてまったく動かなくなってしまうという展開にちょっとおどろいてしまう。原作もこんな感じなのか?と思い、コンビニにペーパーバック版みたいなのが売っていたのでパラパラとみていたが(それが第1話なのかは良く判らなかったが)、たしかにウシジマ君よりも周囲のキャラクターのほうが動いていたし、セリフも少なかったし、どういうキャラなのかイマイチわからなかった。
原作ファンの方々には申し訳ないが、1冊、2冊パラリと読んだ程度では、いまいちマンガ版の魅力が良くわからず…。

片瀬那奈演じる元従業員が出てくるんだけど、いきなりこんなの登場されてもさ…と思い、いろいろ調べてみたら、この映画の前にTV版があるんだねぇ。私、それを知らなかった。これは、TVドラマのファンのためにものだ(本作の感想はこれにつきる)。きっとTVドラマのほうは、お金にまつわる人間ドラマが描かれているんでしょう。映画になるくらいなのでおもしろいのかも。ただ、いきなり本作をみたら、説明不足な設定が多々あり、ちょっと置いてきぼり感があるのは事実。

大島優子は、微妙な役柄お与えられていたが、演技は可も無く不可もなく。なんでもそれなりに卒なくこなす人なのでしょう。かわいらしさはまったくないのだが、ある意味、役柄にマッチしてはいる。でもアイドルさんとしては、新境地を開拓したというほどでもなく、得はしていない。
最後の最後になるまで、いてもなくてもよい役で、最後のあの電話のためだけの大島優子なら、邪魔だったかもしれない。彼女がいなければもっとエグくできたのなら、そうしたほうが、私のようにはじめて観る人間にはよかったかもしれない。

ストーリーは、おそらく色々なエピソードを、こねくりまわしたり、引っ付けたりして、なんとか一本にして整合性を取ってみた…、そんな感じなんじゃないかな。正直、ごちゃごちゃして締まりがない印象。
まあ、とにかく、マンガ、TVドラマあっての本作であって、いきなり観て楽しめるものではない…ということかな。以上。

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imageX0093.Png公開年:2009年
公開国:日本
時 間:114分
監 督:根岸吉太郎
出 演:松たか子、浅野忠信、室井滋、伊武雅刀、光石研、山本未來、鈴木卓爾、小林麻子、信太昌之、新井浩文、榎本陸、有福正志、山崎一、宇野祥平、中沢青六、水上竜士、中村まこと、田村泰二郎、鈴木晋介、大森立嗣、眞島秀和、芹沢礼多、笠松伴助、宮地雅子、奥田恵梨華、森山智弥子、広末涼子、妻夫木聡、堤真一 他
受 賞:【2009年/第33回日本アカデミー賞】主演女優賞(松たか子)、美術賞(矢内京子、種田陽平)
コピー:太宰治 生誕100年 ある夫婦をめぐる「愛」の物語

終戦直後の混乱期の東京。才能に恵まれながらも、私生活では酒・借金・浮気と放蕩三昧を続ける小説家の大谷。妻の佐知は幼子を抱えながら、そんな大谷を健気に支えていた。ある日、大谷が、行きつけの飲み屋“椿屋”から金を奪って逃げ帰ってくる。追いかけてきた椿屋は警察に通報すると息巻いたが、これまでに大谷が踏み倒した酒代を含め、佐知が椿屋で働いて返すことでどうにか収まることに。佐知が独身ということにして働き始めると、途端に評判になり、若く美しい佐知目当ての客で繁盛し始める。しあkし、そんな妻の姿を見た大谷は、「いつか自分は寝取られ男になる」と嫉妬を募らせるようになり…とうストーリー。

大谷のモデルは太宰治自身。こんな放蕩な人間では無かったと思うが、その後実際に自殺してしまったことを考えると、よく自分を客観的にモデルにできるな…と関心するというか呆れるというか…。この心中話はダーク極まりないはずなのだが、この話の筋がものすごくおもしろい。太宰治といえば、鬱々とした作品ばかりかと思っていたが、正直意外。それとも原作は底抜けに暗いけれど、根岸吉太郎の技でここまで面白くなっているのか。私、文学青年ではないんで、原作を知らないのでなんともいえないのだが…。
#桜桃とタンポポの意味もよくわからん…

根岸吉太郎の作品は雰囲気が良くって好きな部類。でも、本作は戦後すぐなのだが、いまいち昭和な感じがしない。悪いわけじゃないのだが、大正っぽくてピンとこなかった。

文章上では問題はないのだろうが、“行けない”と“いけない(良くない)”など、言葉にするとわかりにくい台詞が散見。原作からはずれたくない気持ちはわかるのだが、無駄なひっかかりを残す必要はなし。脚本家が、頭の中でロールプレイしていないんだろう。キャスティングも“よく見る人”が多くて、ちょっと余計なイメージが刺さってきて邪魔だったかも。

放蕩な大谷が話の主軸ではあるのだが、主役ではない。主役は妻の佐知。夫に振り回されながらも献身的につくす妻を描いているのだが、佐知の過去の出来事が明かされると、この妻もなかなかユニークな人間であることがわかり、非常に興味が増す。なぜ、彼女は耐えられるのか。いや、進んでこの道を歩むのか。
大谷も、妻の奥底にはトラウマのようなものがあると疑っていたと思うのだが、結局そこは膨らみもしなかったし明かされもしなかった。それが、彼女の魅力の発露なのだから、明かすべきだったのでは?ただ、万引きを救ってもらっただけじゃないよね?だから、ラストがポヤ~ンとした感じで終わっちゃったんだと思う。

色々、難は散見されるんだけど、それでもまあまあ愉しめた作品。

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image2049.png公開年:2004年
公開国:日本
時 間:144分
監 督:崔洋一
出 演:ビートたけし、鈴木京香、新井浩文、田畑智子、オダギリジョー、朴武、松重豊、中村優子、唯野未歩子、濱田マリ、柏原収史、張賛明、塩見三省、北村一輝、國村隼、寺島進、朴希範、伊藤淳史、仁科貴、佐藤貢三、中村麻美 他
出 演:【2004年/第28回日本アカデミー賞】主演女優賞(鈴木京香)、助演男優賞(オダギリジョー)、監督賞(崔洋一)
 【2004年/第47回ブルーリボン賞】助演男優賞(オダギリジョー『この世の外へ クラブ進駐軍』に対しても)
コピー:血は母より、骨は父より受け継ぐ

1923年。17歳で済州島から大阪へ渡って来た金俊平。他の朝鮮移民と同様に日本で一旗揚げることを夢みて渡ってきた。子連れの李英姫と結婚し、花子と正雄のふたりの子供をもうけるが、酒を飲んでは暴れ、家族の心が安らぐ日は無かった。戦争中は行方不明となり1945年にフラりと戻ると、突然、蒲鉾工場を開くと言い出す。強靱な肉体で従業員を高圧的に支配し、持ち前の強欲さと時勢がら蒲鉾工場は大成功を収める。そんな彼の前に、かつて人妻に生ませた息子・武が現れ金をせびるようになるが、守銭奴の俊平は一銭も渡す気はなく、大乱闘の末、追い出してしまう。自分の息子たちが反抗的なことに常々不満をもっていた俊平は、一年後、自宅のすぐ目の前の家で妾・清子を囲い始め、さらに高利貸しを始めますます景気がよくなるのだった。しかし、清子が脳腫瘍で倒れてしまい、動くことも話すこともできなくなてしまう。そのやり場のない怒りを、再び家族に向け始める…というストーリー。

公開時に売られていた漫画版をチョロっとコンビニで立ち読みしたら、けっこうエグくて、今に至るまで観る気がおこらなかった。うじ虫のたくさん湧いた腐りかけの豚の生肉を食べるところとか、脳梗塞になる妾さんは片方の脳を大きく摘出して、ペコペコのカバーで覆っている状態だってのを、あまりうまくない絵で見せられると、本当にエグさ倍増でね。

だけど、『月はどっちにでている』の主人公と、本作の主人公というか狂言回し(子供・金正雄)が、原作設定的には同一人物だと知り、興味が沸き、やっと観ることに。でも、原作では繋がっているのかもしれないけど、映画同士だと時代もキャラクター設定も異なるので、全然繋がっていない。大体にして母親の李英姫、死んじゃってるしね。
#鈴木京香の晩年が絵沢萠子ってのは、結構絶妙な気がしないでもないが…。

済州島から自分の意思でやってきているシーンからスタートするところから始まるのは、実はすごい。在日朝鮮人たちが、日本から強制的に連れて来られたと主張し続けるのを真っ向否定しているのがね。理不尽極まりない金俊平の行動だけでなく、取り巻き全員が何か理不尽。差別されてるとかなんだとか、そんなレベルではなく、全員が全員、地虫のような生き方しかしていない。行き詰っても、すべて人のせい、人のせい。
蒲鉾屋で成功しても、そこから世間様に顔向けできるような企業にしようとかそういう発想が根本的にない。その後も金貸しに転じるが、目先の金を稼ぐことしか目がいかず、一度成功したら、不法だろうが何だろうがお構いなしにそれだけを繰り返す。
#電車でキムチ喰うなよ…。
最後も、私たちから見たら「はぁ?」って思うのだが、済州島出身なのに、なんで北朝鮮の帰国事業にのっかるのか。結局は、騙されるわけだが、騙されるほうがアホ。

こういうクレイジーな男を軸にして話が展開するので、明確なメッセージ性がどうのとか、そんな次元ではない。野生の王国を観る時のような、そういう圧倒的な人外な風景がそこにあるだけ。単純に話はものすごく面白い。
本作で一番評価したいのは照明。しっかりと対象物を浮かばせつつも、貧乏臭い薄暗さで、リアリティをつくっている。セットも衣装も、よく揃えたなと思うくらいがばってる。とにかく技術スタッフの力は大きい。

一方、演出面では、首を傾げるところが散見。演出的には理解するけど、首吊った親族を見つけたら、すぐに降ろすだろ…とか。はじめの方の、ビートたけしが鈴木京香を襲うシーンも、子連れの李英姫と無理やり結婚しようとしているシーンだということがわかりにくい…とか、色々。
済州島から渡ってくるシーンを冒頭だけでなく、終盤も差し込んだのは、崔洋一が韓国人で『ゴッドファーザー』をやるつもりだったと、私は見ている。しかし、無理があった。そこに愛がないからダメなんだと思う。

キャスティングも、似ていることよりも演技力を重視したのは理解するが、子供時代と成長した姿に乖離がありすぎるのな難点。息子・金正雄にほくろを付けざるを得なかったことで、言わずもがな…という所だ。

別に悪いわけじゃないけど、鈴木京香の日本アカデミー賞とオダギリジョーの助演男優賞ってのは褒めすぎだろうに…って思って調べたら、同年の他のノミネートされた人が、それほどいい仕事していなかったり、作品自体がいまいちだったりで、ごっつあんゴールだった…orz。でも、照明賞(高屋齋)、美術賞(磯見俊裕)は受賞させないとだめでしょ。見る目無いなぁ、日本アカデミー賞。

よく出来た作品で、崔洋一作品の中では飛びぬけていると思う。だけど、鶴橋界隈にに行くのちょっと怖くなる。
#この時代から飛田って飛田なんだなぁ…。

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image2041.png公開年:2012年
公開国:日本
時 間:68分
監 督:中村義洋
出 演:濱田岳、木村文乃、大森南朋、石田えり、中林大樹、松岡茉優、阿部亮平、中村義洋、桜金造 他





空き巣の青年・今村と恋人の若葉は、プロ野球選手・尾崎のマンションに忍び込む。今村は尾崎のファンらしく、野球のことなど全然知らない若菜に熱く彼の凄さを語り始める。すると、部屋の電話が突然鳴り出す。留守電の声を聞くと、若い女が尾崎に助けを求める内容。何故か今村は、その女性に会うといい始め…というストーリー。

『ゴールデンスランバー』と同じ世界のお話。伊坂幸太郎の世界観。本作に出てくるデパートなんかも『ゴールデンスランバー』で使われたデパートで、さすが監督もプロデューサも一緒。ファンはこの質の統一感を愉しめるんだろう。

短編ながら、謎解きは厚みがあり、プロットは良い。おそらく原作自体が良いのだと思う。しかし、一点だけどうしようもないのが、最後の野球場のシーン。予算がなかったのはわかるが、まったくもって大勢の人が球場にいる空気を出せていない。まるで社会人野球の準々決勝くらいの雰囲気。さらに最悪なのが音声(というか効果音)。まったく広い球場の感じが出せていない。そりゃパ・リーグの試合なんて、スカスカな客入りの時もあるけれど、広い空間ゆえの音というのがある。こういう技術的なダメさには、すっかり興醒めさせられる。
さらに、最後の最後のフライを取るシーン。話の筋的に、フライを取ることに意味があるのはわかるが、さすがダイレクトのホームランボールは素手では取れない。木でも建造物でもいいから、せめてどこかにバウンドさせてからにすればよいのに。興ざめ。
映画監督だってそれぞれ得手不得手はある。別の監督の手に掛かっていれば、世界観の統一はされなかったかもしれないが、この興冷めはなかったかもしれない。同じ監督による世界観の統一という弊害と言ってよいのではなかろうか。

タイトルの“ポテチ”。わざわざタイトルにするくらいだから、意味があるのだろうな…と思って観ていたのに、何で違う味のポテトチップを渡した後のくだりで、主人公は泣いたのか…ということに、すぐ気づかなかった、鈍感な私…というか、眠くてぼーっとしてた。自分が欲しかった味のポテチじゃなくても食べてみたらおいしかったからこれでいいや…って、恋人が行ってくれたので、自分とダブらせて泣いちゃったってことか。まあ、詳しくは本作を観てくだされ。

伊坂幸太郎×中村義洋の一連の作品が好きな人にとっては小気味良い作品。そうでない人にとっては極めて凡作。

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プロフィール
HN:
クボタカユキ
性別:
男性
趣味:
映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
自己紹介:
一日一シネマ。読んだら拍手ボタンを押してくだされ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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