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image1762.png公開年:2009年
公開国:アメリカ
時 間:108分
監 督:F・ゲイリー・グレイ
出 演:ジェイミー・フォックス、ジェラルド・バトラー、レスリー・ビブ、ブルース・マッギル、コルム・ミーニイ、ヴィオラ・デイヴィス、マイケル・アービー、レジーナ・ホール、グレゴリー・イッツェン、エメラルド・エンジェル・ヤング、クリスチャン・ストールティ、アニー・コーレイ、リチャード・ポートナウ、マイケル・ケリー、ジョシュ・スチュワート、ロジャー・バート 他
コピー:正義とは何か──。

妻と幼いひとり娘との幸せな家庭を築いているクライド。ある日、突然自宅に押し入った2人組の強盗に襲われ、妻と娘が惨殺され、クライド本人も重症を負わされてしまう。ほどなく、犯人のダービーとエイムスは逮捕されるが、彼らを有罪にするための証拠が捜査上の不備により法廷で採用されず、裁判での負けを恐れた検事のニックは、主犯格のダービーと司法取引をすることを決めてしまう。その結果、エイムスの死刑は確定したが、主犯のダービーは数年の禁固刑ということに。クライドは到底納得することができなかったが、どうにもならない。それから10年後、エイムスの死刑執行日。薬物によって安楽死されるはずだったが、彼は苦痛にもがき苦しみながら絶命し…というストーリー。

今年下半期に観た作品の中でトップクラスで面白かった。

ジェイミー・フォックス演じる検事ニックを主人公として物語は展開するが、観ている側は一切彼に同調も共感もせず、その同調と共感は犯人に向けられるだろう。そう、主人公がクソ人間であるだけでなく、彼が立脚する司法制度も丸ごとクソなのだ。
確かに犯人の行いは悪人のそれなのだが、こんなに応援したくなる悪人は、はじめて。珍しい作品だと思う。
シリアルキラーに興味が沸くのとはまったく異質の感情だ。悪人だけど、その行動・考え方は、まったくの“正義”。自分がクライドと同じ立場だったら、できるならば同じ行動をとりたいとすら思う。

単なる感情の話か?というと決してそうではない。クライドの行動は、狂った末の猟奇的な報復か?いやいや、全部計算ずく。司法取引の法廷でのやりとりも、全部計算ずく。個人的な復讐ではなく、司法全体に対する報復という理性に基づく復讐。その怒りの中にある“冷静な執念”に、もう、ゾクゾクしてしまった。その執念たるや、闇の『ショーシャンクの空に』って感じ。

まあ、ラストの先回りのギミックだけは、つまらないかも。多分、そこがイマイチだから、評価が低いのだろう。
でも、その最後だって、ニックはしてやったりと思ってるかもしれないけど、むしろ神々しい死に見えたな。クライドは、残念という表情をちょっとだけ浮かべて、即座に満足の表情になり受け止めている。
これまで検事として、ヘンゼルとグレーテルが小さなパンくずを捨てたのと同じように、これまで“良いこと”と思い自分が捨ててきた信念の重さと、こだわってきたくだらない“数字”の影に流された多くの涙の重さで、ニックは、残りの人生をまともな心持ちで過ごすことなんか絶対にできない。

ただ、“完全なる報復”って邦題が変なんだわ。LAW ABIDING CITIZENって法律を遵守する市民って意味だからね。私はこの原題を、むしろ法が持つ趣旨に則った行動をとっているのはクライドだよ…という意味だと捉えたね。そう、彼のほうが正常だ…とね。
原論からいえば、刑事裁判は国家が犯罪者に対する罰を決める儀式であって、被害者の報復を代行するものではない。報復の代行ではないとしても、法は社会の平穏を保障するものでなければいけないのであって、安易に司法取引をして犯罪者を社会に出すようなことは、法の趣旨に反する。本作のケースの場合、司法取引をしなければ、両方の犯人が軽微な罰にしかならない可能性があったわけだが、それでも司法取引はすべきではなかった。仮に簡単に出所したとしても、それは警察の証拠収集手続きの不備であって、犯人たちは社会の監視の目に置かれ、それと同時にクライドは、適切な手順を誤った警察組織に対して賠償請求ができただろう。本来は、そこでバランスを取るべきだったのに、クソ検事のニックは自分の成績のため、判事は惰性によって司法取引を許した。そりゃあ、クライドの怒りは“正常”だろ?

しかし、民事で賠償を求めようとしても、多くの犯罪者は人の死を償えるほどの財産を持っておらず、殺され損なのが実態。それはアメリカでも日本でも一緒だけど、まあ、それは別の話だな…。

ちなみに、この脚本を書いたカート・ウィマーって、『リベリオン』の監督・脚本の人ね(最近だと『ソルト』の脚本かな)。そう考えると、このくらいは許せるな(どういう意味かは、『リベリオン』をみるべし(笑))。
不謹慎なのは百も承知だが、ニックの家族にも、悲惨な結末が訪れる展開になったなら、『セブン』に匹敵する作品になったと思う。できることならば、バッドエンドバージョンをつくるべき。
無冠だろうが何だろうが、もっと評価されてよいはずの作品。心の底からふつふつと沸く、自分の感情に驚きを覚えるくらい新鮮だった。お薦めしたい。



負けるな日本

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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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