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image1802.png公開年:2010年
公開国:アメリカ
時 間:96分
監 督:ジェームズ・ガン
出 演:レイン・ウィルソン、エレン・ペイジ、リヴ・タイラー、ケヴィン・ベーコン、ネイサン・フィリオン、グレッグ・ヘンリー、マイケル・ルーカー、アンドレ・ロヨ、ショーン・ガン、スティーヴン・ブラックハート、リンダ・カーデリーニ 他
コピー: 
正義の心で悪をKILL
特殊能力ゼロ、モテ度ゼロ、体力微妙──なりきりヒーローが世界を救う


子供の時からいじめられつづけ、いいことなんか無かったブサイク中年男のフランク。彼が人生を振り返って、良かったと思えることはたったの2つ。泥棒が逃げた方向を警官に教えてヒーロー気分になれたことと、自分とは不釣合いなほど美人なサラと結婚したこと。しかし、サラはヤクの売人ジョックと恋仲になり、フランクの元から去ってしまう。失意のどん底のフランクは、突然、神の啓示を受ける。最愛の妻をヤクの売人という悪魔から救うために、正義のヒーローなれと。フランクは、自作のコスチュームを作り、“クリムゾンボルト”と名乗り、街をパトロールし、レンチを武器にチンピラをぶちのめしていく。そんな彼の行動は、ネットやTVニュースで次第に話題となっていく。市民を襲う犯罪者として…。そんな彼の前に、コミックショップの店員リビーが現れ、自分を相棒にしろと、突然押しかけてきて…というストーリー。

誰もが『キック・アス』を思い浮かべるでしょう。だって素人がコスプレしてヒーロー気取り。しまいにはネットやTVニュースで有名になっちゃう。そして女の子のヒロイン仲間が出てくる。ほぼ同じプロットだもの。パクりか?なんて思われるかもしれないけど、公開年は同じだし、たぶんそれはない。

『キック・アス』にあって本作にないもの。それは“スタイリッシュ”。
本作にあって『キック・アス』にないもの。それは、小汚さ。エグさ。作品自体がパンツのシミみたいなイメージだ。

主人公のフランクは、ヘタレキャラどころか、ちょっと頭のネジが緩んでいる。はっきりいって社会不適合者である。対人関係をうまく構築できない、何らかの精神的な障害の持ち主のように見える。そんな彼が、職場のダイナーでヤク中の女性と出会った瞬間に電撃が走り、そのまま結婚にまっしぐら。でも、もちろんうまくいわけがない。妻に去られた後の彼の行動は、アホ丸出しだし、どう考えても逃げた妻が、そこまで固執する価値のある女性にみ映らない。

その愛する妻が、ヤクの売人に寝取られて、打ちひしがれた末に、自作ヒーローとなる契機も、神からの啓示。でも、所々登場するこの“啓示”が彼の特質をよくあらわしている。“啓示”という形をとっているから、外部からの意見に従っているように見えるけれど、結局は彼の内なる声にしたがっているということ。つまり、自分がこうだと信じたことは正しいことだと、基本的に疑わない人間だということである。これはパーソナリティ障害の人の特徴である。

でも、この視点は面白い。ヒーローとは、自分の行いが“正”であり、他人から歓迎される行為であると、疑わない者だから。そりゃ、たまに自分の行動の正当性を悩むヒーローはいるけど、最終的にはやっぱり正しいんだ!ってことになる。だって、そうじゃないとヒーローなんかやってられないもの。でも、現実にそれができる人間は存在するとすれば、こういうパーソナリティ障害の人なんじゃね?と。

ただ、私だけかもしれないが、このフランクを見ていると、なにかじんわり涙が出てくるというか、身につまされるというか…。何故かよくわからないのだが、自分の切り取った一部が巨大化したような、分身のように思えてきて、いままで感じたことがないような、変な“共感”覚えてしまった。私も少し病んでいるのかもしれない。

さらに、パートナーに立候補するエレン・ペイジ演じるリビーも、同様にパーソナリティ障害っぽい性格傾向。しかし、フランクは、悪は許せない!妻を救う!っていう目的があって行動しているのに対して、彼女は制裁を加えること自体が目的。目的と手段の区別がすぐに付かなくなる思考回路の上に、性的にも攻撃的にも欲望を抑えられないというやっかいな人物。
そんな彼女に引っ張られて、フランクの行動も加速せざるをえなくなってくる。

たしかに『キック・アス』のクロエたんは、顔の筋肉が思わず緩むほどかわいかった。対して、本作のエレン・ペイジは、こっちの顔が苦笑いになるほどのトホホっぷりだ。でも、エレン・ペイジの“汚れ役”への徹しぶりはすごい。あっちの果て方から、命の果て方まで、自分のポジションが良くわかっているんだろうけど、あそこまでやられるともう何も言えない。嬉々としてザクッザクやってる様子に、何かを超越した生き物の姿が滲んでいるようだ。彼女の演技を見るだけでも、本作を観る価値があるといってもいいすぎでは無いと思う。

ラストの壁。『メアリー&マックス』と同じ感動がそこにあった。こんなアホな話なのに、『サイン』のラストのような、“大いなる力”への畏怖と敬服を感じてしまう。そう、フランクは最後、悟ってしまうのである。
ああ、ヤバいもの観ちゃったなって感じ。私の中では、『キック・アス』を超えてしまっている。お薦め。





負けるな日本

 

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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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