忍者ブログ
[1]  [2
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

imageX0039.Png公開年:2010年
公開国:日本
時 間:107分
監 督:中田秀夫
出 演:藤原竜也、綾瀬はるか、石原さとみ、阿部力、武田真治、平山あや、石井正則、大野拓朗、片平なぎさ、北大路欣也 他
コピー:死ぬか、稼ぐか。




時給11万2千円という高額報酬に惹かれて、7日間の心理学実験に申し込んだ、フリーターの結城ら10人の男女は、人里はなれた地下施設に収容される。彼らの様子は24時間完全監視されるが、それ以外にも実験生活のルールがあった。それは、もし“事件”が起きたら全員合議で解決するというもの。その解決方法とは、犯人を多数決で決められ、その際“犯人”になった人にも“探偵”役になった人にも、特別ボーナスが与えられる。とても単純で、簡単に7日間が経過しそうに思えたが、2日目にいきなり参加者の一人が何者かに殺害されていしまい…というストーリー。

『ソウ』とか『es』とか『バトルロワイヤル』とか、いろいろな作品のミックス。藤原竜也がバイトに誘われるのをみると『カイジ』が浮かぶし。せめて、インディアン人形の造型とか『ソウ』を想像させないものにすべきだと思うが。

キャスティングに関しては、言うまでもなくホリプロ祭り。綾瀬はるかと石原さとみという、キャラがかぶりがちな二人を競演させるために、石原さとみに似合わないキャラを押し付けた模様。結局、変なかんじに。
そのくせ、誰かが内部で仕掛け人をやらないと成立しない内容なので、綾瀬はるかが“機構”側なのが見え見えというお粗末具合。

原作からしてこのレベルなのか、この脚本がクソなのか。三歩進むとボロが出るレベル。色々ありすぎてまとめられないので、つらつらと書いてみる。
通り魔の新聞記事とか伏線の貼り方が幼稚。
はじめの説明の中で、“生存者”という単語が出てきた時点で、殺し合いをさせることが判ってしまう。それなのに、、参加者は“生存者”という単語にさほど反応せず、“実験”だと信じ続けるという違和感。
平山あやの「なんか違和感ありまくり…」とか、セリフまわしが不自然(何に対する不自然だってのよ)。
石原さとみが片平なぎさを殺した理由が“怖かったから”ってさ。帰宅を確実にするために危険要素をとことん排除しようっていうほうが、理由としてはまともだろう。
片平なぎさの眼鏡はどっから出てきたのか。彼女を頭を貫いた釘の血液は固まって変色してるだろ。
ガードを避けてまで夜間見廻りをしなくてはいけない意味がピンとこない。殺人鬼に遭遇すりゃ殺されることにはかわらない。
武田真治がお棺におちて気絶とかバカらしい。
平山あやが死ぬシーンがわかりにくい。
推理小説の名前とか全然生きていない。“監獄”というルールも生きていない。わざわざ、“機構”なる組織が大々的にこういうことをやる意味もメリットもわからない。
北大路欣也はなんで武田真次と藤原竜也が殺し合いをしているときに狸寝入りしているのか。そのくせに、ラストでノコノコと藤原竜也の前に顔を出すとかありえない。それに北大路欣也は生きてたんだから“機構”は報酬を渡せよ。

ああ、くだらない。これひどくね?ジャパニーズホラーの旗手として、ハリウッドデビューもしてる中田秀夫監督をして、この有様って。心理ゲームが展開されるべきなのに、お互いが牙を剥き合うまでの、心の機微が全然表現できていないって、サスペンスとしてもミステリーとしても落第だよね。驚愕の駄作。

キャラが喋りすぎ。映像上の仕掛けもシナリオの展開や台詞まわしも、全方位的にポンコツ。もっと、“寝られない”というシチュエーションにスポットを当てたほうがよかったんじゃなかろうか。
#石井正則の死体が動いてるんだよ。そのくらいなんとかならんかったのか。
スタッフ全員があと半歩本気になれば、もう少しなんとかなったはずなのに。なんかおかしいな…という気付きのスキルが著しく低い人たちが集まってたのか、気付いても声に出せない風通しの悪い現場だったのか。

拍手[0回]

PR

image1252.png公開年:2008年 
公開国:日本
時 間:102分
監 督:内田けんじ
出 演:大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人、常盤貴子、田畑智子、北見敏之、大石吾朗、奥田達士、尾上寛之、桃生亜希子、沼田爆、田村泰二郎、ムロツヨシ、佐藤佐吉、長江英和、山本龍二、久保和明、戯武尊、村岡希美、小林隆、斎藤歩、音尾琢真、中山祐一朗、森田ガンツ、吉武怜朗、五十嵐令子、山本圭、伊武雅刀 他
受 賞:【2008年/第51回ブルーリボン賞】助演男優賞(堺雅人「クライマーズ・ハイ」に対しても)
コピー:行方不明の友人、同級生を名乗る探偵、大人の放課後(アフタースクール)には何かが起きる!!笑って、驚いて、巻き込まれて、グッとくる。驚きエンターテインメント!
甘く見てるとダマされちゃいますよ

母校の中学校で教師をしている神野は、産気づいた幼馴染の木村の妻を病院に運ぶ。肝心の木村とは何故か連絡が取れずにいると、そこにちょうど、同級生に北沢と名乗る男がやってくる。北沢は、昨日撮影されたという若い女と車に乗り込む神野の写真を見せ、木村のことを探している追っているという。神野は、北沢の言うがまま木村の捜索を手伝わせられるのだったが…というストーリー。

そろそろ1時間が経過しようというところで大転回し、それが本作の醍醐味。この監督(脚本を書いているのも監督)が、騙しのテクニックに長けているのは認める。しかし、もう一枚、騙しの山がないといけないんじゃなかろうか。
ネタバレになって申し訳ないが、あれよあれよと巻き込まれただけの善良な市民でした…という小粒なオチに対して、見事にだまされたとスッキリ思える人はあまりいないだろう。

以下、完全にネタバレ注意。

①事件に巻き込まれた被害者?→②実は金の強奪を狙う加害者?→③警察の手先として動く小市民…という流れ。
もう一枚④があって、ニヤリという展開があるとか、せめて②と③が逆とかにしないと、観ている側はテンションの持って行き場がないだろう。

だって、実は計算ずくの行動で、善良な彼らが実は…という方向性を見させられたのに、実はちょっとしたきっかけで事件に巻き込まれて、警察の捜査に協力しているだけというのに、がっかりしないほうがおかしい。何が一番悪いかって、神野も木村も自分の頭は何一つ使っておらず、他者のいいなりだったという点。主人公が自律していないことを知って、がっかりしない訳が無い。
おまけに、オチの事件の真相までぼやっとしたままで終わるしね。

振り返ると、はじめの1時間くらいまではもっとシェイプすべきで、もう一展開…というのが無いもんだから、配分も悪くなっているのだ。この内容は80分くらいでまとめるのがちょうどいい分量。要するに材料不足。
#本当は最後に神野が北沢に言ったセリフを主張したいんだよね(その内容については私も強く同意する)。だから、もう少しそこを膨らませて欲しかったかな。

この展開を崩したくないならば、観客の目を笑いで誤魔化すしかなかったろうが、残念ながら笑いの場面は皆無である。この作品をコメディとカテゴライズしているサイトも散見されるのだが、本当にコメディだったらもっと評価できただろう(ゆるいサスペンスってところだよね)。笑う場面はどこなのか、教えて欲しいくらいだ。

…と文句ばっかりになってしまったが、小粒にまとまってしまったとはいえ、佳作なんだと思う。神野と同じように気のいい人たちは、最後のふわっとした感じで、満足できるはず。私のような性根のどこか曲がっている人は(笑)、どこか釈然としない思いに襲われるってことなんだろう。特段お薦めはしない。

#佐々木蔵之介と堺雅人って、役者としてのカテゴリが近いので、メリハリがないような…。




負けるな日本

拍手[0回]

image1635.png公開年:2010年 
公開国:日本
時 間:106分
監 督:中島哲也
出 演:松たか子、木村佳乃、岡田将生、西井幸人、藤原薫、橋本愛、天見樹力、一井直樹、伊藤優衣、井之脇海、岩田宇、大倉裕真、大迫葵、沖高美結、加川ゆり、柿原未友、加藤果林、奏音、樺澤力也、佳代、刈谷友衣子、草川拓弥、倉田伊織、栗城亜衣、近藤真彩、斉藤みのり、清水元揮、清水尚弥、田中雄土、中島広稀、根本一輝、能年玲奈、野本ほたる、知花、古橋美菜、前田輝、三村和敬、三吉彩花、山谷花純、吉永あゆり、新井浩文、山口馬木也、黒田育世、芦田愛菜、山田キヌヲ、鈴木惣一朗、二宮弘子、高橋努、金井勇太、野村信次、ヘイデル龍生、吉川拳生、成島有騎、小野孝弘、三浦由衣、前田想太 他
受 賞:【2010年/第34回日本アカデミー賞】作品賞、監督賞(中島哲也)、脚本賞(中島哲也)
【2010年/第53回ブルーリボン賞】作品賞、助演女優賞(木村佳乃)、編集賞(小池義幸)
コピー:告白が、あなたの命につきささる。

ある中学校の終業式の日。1年B組の担任・森口悠子は、教壇から生徒にある告白をする。数ヵ月前、シングルマザーの森口が学校に連れてきていた一人娘の愛美がプールで死亡するという事件があったが、警察は事故と断定したが、実はこのクラスの生徒2人よる殺人だったと。しかし、たとえそれを白日の下にしたとしても、彼らは少年法に守られて罰せられることはない。だから、自分の手で処罰することに決めた、と彼女は宣言し…というストーリー。

原作は読んでいない。あくまでこの映画をみた上での感想・指摘である。なぜ、その断りを入れるかというと、これから述べる、問題のあるポイントは、おそらく原作の段階から存在する問題だと思うから。

中島監督の前作『パコと魔法の絵本』が、ただただカラフルで奇抜なだけの表現に留まっていたことに失望し、次回作に多大に期待していた私。打って変わってカラフルさは鳴りを潜めたものの、そのエネルギーは、“告白”という言葉の羅列をいかに効果的に視覚を用いて訴えるかに注がれ、見事に成功している。
ホメ言葉に聞こえないかもしれないが、誤解を恐れずに言うと、デキよいプレゼン資料を見せられた感じ。「いやー、同じことを説明しようとしているのに、こっちの資料は見せたいところのポイントのメリハリがあって、表現もすっきりしていて、いいですねー」なんて、お客に褒められて、いかにもコンペに勝てそうな資料みたい。
中島監督といえば色彩表現だけど、じゃあ、色を除いたら何が残るのか。別にきらびやかな表現だけが俺の能力じゃねえ!そういう演出上のテーマがあったかどうかは知らないが、そういう挑戦的なものは感じる。別にこの告白という作品で、従来の色彩表現を使ってはいけないという制限は無いのだから。
他の監督が、本作を撮ったなら、もっと普通の“告白”になっただけだろう。映画にする意味があったの?のオンパレードだったと思う。特に、冒頭部分の森口による告白部分なんて、ほぼ棒読みのセリフが続くだけなんだから、ヘタな監督がやったら、この段階で半分以上の観客が「ダメだこりゃー」状態になったのは必至。中島監督だったから持ちこたえたられたのだ。こういう、ある意味奇抜な原作を映画化するには、このくらい“毒”ともいえる演出は最適だったと思う。演出の面では、私は大満足しており、中島監督の次回作にも期待したい。

で、その中島節をもってしても、覆い隠せなかったシナリオ上の問題点とはなにか。ただ1点。なんで、森口のやったことを口外すると犯人Cとみなすというメールだけで、誰一人、親に言わないのかという点。自分以外の誰かが公表してしまうかもしれないし、それを心に留め置くつらさよりも、親にチクったほうが心が楽になるに決まっている。犯人Cとみなすということは、同じように感染させてやるぞ!という脅迫以外の何者でもないわけだが、森口の所業を複数の生徒が公言してしまえば、その森口自体の行動は制限され、おそらく安全になるはず。森口がそういうことをしたという証明ができないから…という見方もできるが、複数の生徒が言えばおそらく問題にはなるはず。生徒がHIVの基礎知識もないポンコツで、謝った恐怖を抱いたとしても、それとこれとは別の問題。やはり、何をどう天秤にかけても、数十人の生徒の行動を束縛できるだけのパワーがそのメールには無い。
で、おそらくこのあたりは、原作からそうなんだろうな…と。この点に関しては、どういう演出にすればリアリティを持たせることができるか、色々考えたが思い浮かばなかった。

もう一点だけ、残念な点は、松たか子がどうしても森三中の村上さんに見えてしまったこと。別に揶揄しているわけでもなんでもなくて、せっかくのシリアスシーンに、余計な要素が混じって邪魔臭かった(今後の俳優人生を考えると、死活問題だと思うのだが)。感情の表出の少ない役なので難しい面もあったし、木村佳乃が神がかり的な演技だったので対比せざるを得ないので、松たか子はちょっと損をした感がある。

世の中には期待はずれだったという評価が散見されているが、もう一度言うが、大概の指摘内容は原作から包含しているものなので、仕方が無い。後味の悪い作品だという感想もあるが、元々そういう作品だから(それに文句をいってたら「セブン」なんかどうなっちゃうんだ)。いずれにせよ、軽く及第点は越えているのでお薦めする。
#最後の「なーんてね」は、海外ではなんて訳されてるのかな…。
 

 

負けるな日本

拍手[0回]

imageX0020.png公開年:1975年 
公開国:日本
時 間:153分
監 督:佐藤純弥
出 演:高倉健、山本圭、田中邦衛、織田あきら、郷えい治、宇津井健、千葉真一、小林稔侍、志村喬、永井智雄、中田博久、千葉治郎、志穂美悦子、渡辺文雄、竜雷太、丹波哲郎、鈴木瑞穂、青木義朗、黒部進、北大路欣也、川地民夫、林ゆたか、伊達三郎、山内明、多岐川裕美、露口茂、近藤宏、宇津宮雅代、藤田弓子、風見章子、渡辺耐子、高月忠、清水照夫、畑中猛重、宮地謙吾、佐川二郎、打越正八、仲原新二、日尾孝司、河合弦司、亀山達也、岩城滉一、中野力永、荘司肇、浅若芳太郎、佐藤晟也、青木卓司、山田光一、中条文秋、長岡義隆、田辺真三、山本みどり、十勝花子、須賀良、滝川潤、小田登枝恵、相川圭子、山浦栄、城春樹、津奈美里ん、横山あきお、松平純子、久地明、片山由美子、横山繁、佐藤信二、木村修、藤浩子 他

東京駅を出発した“ひかり109号”に爆弾を仕掛けているという脅迫電話が入る。爆弾は列車の速度が時速80キロ以下になると爆発するという。先行列車が事故により停止しているのを、巧みなポイント切り替えによって回避し、新幹線は速度を維持したまま南下していくが、終点は間近に迫りつつあり…というストーリー。

『スピード』の元ネタですな(『スピード』の脚本家は『暴走機関車』にインスパイアされたって言っているけど、一定時速を下回ると爆発するっていうギミックから勘案すると、どう考えても本作が元ネタだろうにね。くだらない言い訳だね)。

車に“自家用”って書いてたり、新幹線の計器のアナログ感とか、時代考証の資料としてみてもおもしろい。この古さが味になっていい雰囲気。爆弾の解除方法を知っている最後の犯人かもしれないのに、発砲しちゃうという乱暴さなんだけど、それも気にならないくらいの勢いと緊迫感がある。なにげに豪華俳優陣がカメオ出演していて、こんな使い方あり?っていうのも驚き。
北海道の田舎でSL貨物車を爆発させるシーンはなかなかスゴイ。今では絶対こんなロケはできないよなーっ、スゲーって思ったけど、やっぱり国鉄は協力してくれなくって、隠し撮り(?そんなのあり?)とか、走行する新幹線はミニチュアだそうだ。でも、0系車両自体がおもちゃみたいだから、そのようには見えない。

『スピード』のように単純なストーリーじゃなくって、犯人側の手順も決して順調ではなくって、それによる両陣営のせめぎ合いが、先の読めなさに繋がって非常におもしろい。
なんで犯行に至ったのかというバックボーンもしっかりしている。犯人が社会的敗北者だったりするので、不況の今こそ(というか不況とみんなが思い込んでるだけな気もするけど)是非リメイクしてほしいとは思うけれど、今作ったとしたら逆に陳腐なものしかできない気がする。いろいろな困難を跳ね除けた時こそ、エネルギーが発揮されるといういい例だね。

くだらない質問をする記者の様子は現在も変わらない。だれかが責任をとって早急に俺を安心させてくれ!という気持ちを抑えることができずに、会見している人をもっともらしいことをいって責めるという、ジャーナリストとして腹の決まっていない、何をすべきか整理もできていない、クソみたいな行為は、最近もよく見る光景。
TVのコメンテーターやネットでしたり顔で不安をあおってるだけの馬鹿どもは、この作品を観て、今、現場を責めるべきかどうか、自分の行動をよく考えるといい。
#言ってもしょうがないことをTVで言っているのは、60歳前後の段階世代ばっかりだな。ダメ世代。ただ、今なら乗客の反応は、もっと冷静かもしれないな。

どこが決定的に素晴らしい!っていうわけじゃないんだが、何本もの細い川が、うねって絡まって一本の大河になったような、有無を言わせない迫力がある。日本映画史に燦然と輝く一本。もし未見の人がいたなら是非おすすめ。傑作だと思う。へんなハリウッド映画やら最近のアイドル映画まがいの作品をみるくらいなら、これを観ろ!って感じ。





負けるな日本

拍手[0回]

imageX0001.png公開年:2008年 
公開国:日本
時 間:117分  
監 督:和泉聖治
出 演:水谷豊、寺脇康文、鈴木砂羽、高樹沙耶、岸部一徳、川原和久、大谷亮介、山中崇史、六角精児、山西惇、神保悟志、小野了、片桐竜次、木村佳乃、西村雅彦、原田龍二、松下由樹、津川雅彦、本仮屋ユイカ、柏原崇、小野寺昭、岸谷五朗、平幹二朗、西田敏行 他
ノミネート:【2008年/第32回日本アカデミー賞】助演男優賞(寺脇康文)
コピー:必ず、追いつめてみせます。

不可解な連続殺人が発生し捜査一課が手がかりをつかめずにいたが、右京と亀山は、現場に残された記号をヒントに、連続殺人事件であることを突き止める。さらに、わずかな手がかりから犯人の次なるターゲットを割り出すことに成功。しかしそれは、3万人のランナーと15万人の観衆が参加する東京ビッグシティマラソを舞台にしたテロ計画だったのだが…というストーリー。

TVドラマの映画化であるが、『相棒』自体、ほぼみたことがない(ああ、やってるなぁ…と思うことはあっても、一話丸々通して観た事はない)。『相棒』って好きな人はかなり好きみたいで、DVD-BOXとか買って揃えている人もいますからね。公開当時は、けっこうな興収で、もしかしたらおもしろいのかもとは思っていたが、レンタルするところまではいかなくって今回もBSで放送されていたのを録画したのを、HDレコーダの棚卸がてら観た。

以下、完全にネタバレなので注意。







海外ボランティアに参加している青年が、地元のテロ組織に誘拐され、日本政府が身代金を要求されるという事件が発生し、その青年の遺族が犯人なわけだが、どうもピンとこない。これは、日本で実際におこったできごとがベースになっているのは言うまでもない。海外の子供たちを助けるために尽力しているのだから、政府は無条件に助けるべきだ、、という意見と、危険なところに自分の意思で覚悟していっているのだから、少なくとも退去命令があれば従うべきだし、従わないのならば助ける必要ない、、という意見のぶつかり合いである。実際は誘拐された女性とその家族はものすごいバッシングをうけた。本作では、そういうバッシングする日本人の態度を批判する前者の意見を肯定しているようだったのだが、ラストに近づくと様子が変わってくる。なぜか、その青年には、日本政府の通達は届いておらず、それが隠蔽されたのだというスキャンダルを隠していたという話にすりかわってしまった。マジメに難しい問題を考えさせたいのかとおもったら、それを放棄して勧善懲悪をはっきりさせて逃げてしまった。なんだこりゃ?チキン脚本だ。

さらに、青年の父は、“あれだけバッシングで盛り上がった事件が一段落したら何もなかったように、忘れ去られたようになってしまった”と怒るのだが、それは当たり前のことではないか?人間がそんなにつらい思いやストレスをいつまでも心の表層に置いておけるわけがないではないか。それを批判してどうなるというのだろう。一体何が言いたいのだ?そういうことを言うくせに、本作は、さきほど言ったように、難しい問題を考えさせることを放棄して、当たり障りの無いラスト選択している。矛盾も甚だしい。どうもこのプロットを考えた人間は、社会というものをきちんと見据えていない、上っ面だけを捉えているように見える。

このように正面切って問題に切り込むようにみせかけながら、陳腐な逃げ方する脚本を書いた人は(まあ、プロデューサーレベルの判断だとおもうが)、モノを作る人間として非常にタチが悪いと思う。私は不快だ。しっかり仕事をしている演者さんたちがかわいそうである。

『相棒』ファンの人はとっくに観ているだろうと思うし、そういう人はテレビ版のお祭りだと思ってみているから、それはそれでいいと思うのだが、そうではない人は観る必要はない。まともな人間ならば、バカにされた気分になるだろう。こういう社会派ぶってはずかしい結果になったクソみたいな脚本を書いた人は、今後二度と映画には携わらないでほしい。(TVドラマをバカにしているわけではないのでご注意いただきたいが)TVの脚本をおとなしく書いていて欲しい。世の人間をムカつかせないためにも。強くお薦めしない。

拍手[0回]

image0791.png公開年:1963年  
公開国:日本
時 間:143分  
監 督:黒澤明
出 演:三船敏郎、香川京子、江木俊夫、佐田豊、島津雅彦、仲代達矢、石山健二郎、木村功、加藤武、三橋達也、伊藤雄之助、中村伸郎、田崎潤、志村喬、藤田進、土屋嘉男、三井弘次、千秋実、北村和夫、東野英治郎、藤原釜足、沢村いき雄、山茶花究、西村晃、浜村純、清水将夫、清水元、名古屋章、菅井きん、山崎努 他



靴メーカーの権藤専務は、自分の息子と間違えられて運転手の息子が誘拐され、身代金3千万円を要求される。苦悩の末、権藤は運転手のために私財を投げ出して身代金を用意するが…というストーリー。

散々紹介されているし、映画検定の問題ネタでは必ず出てくる一本なのだが、今まで観たことはなし。ストーリーも、電車からお金を投げることしか知らなかったくらいである。

誘拐のくだりでずっと引っ張るのかと思っていたら、1時間くらいであっさり子供は奪回。正直意外だったが、これで、そんじょそこらの映画でないことを察知させる。とはいえ、当時はどう捉えられたかはわからないが、推理モノとしてそれほど優れているとは思わない。それでも、惹きつけるのは、編集のうまさだろう。ずばっと切ってみたりちょっとひっぱてみたり(そんな小手先作業ではなかったとは思うが)、私にはかなり新鮮に写った。おかげで、結構長尺なのだが、あっというまに観終えることができた。
#まあ、犯人がドヤ街をうろつくあたりは、もうちょっとサクッと切り上げても良かったとおもうが、逮捕までのじらしということなんだろう。

あと、とても特徴的なのは街や列車の音。本当に拾った音声なのか、後から足したのかはわからない。音声が聞き取りにくくなるくらいなのだが、おかげで臨場感がかなり増している。

もし、私なんかが、このシナリオを書いてしまうと、会社の重役連中を痛めつけたくなってしまうところだが、あくまで、三船敏郎と犯人でタイトルの状態を形成しなくてはいけないので、そこはあえて放置というわけだろう。
青木もちょっとイラっとくるので、少し痛い目にあわせたくなったが、そう思ったのも演技と演出がうまいおかげで惹き込まれたという証拠だろう。また、ラストでは、三船敏郎には「破産して一から出直しているいけど俺は幸せ」と、つらっと言って欲しかったのだが、それは言わぬが華というやつなんだろうね。
本当に脚本・カット割・編集・演技・演出ともにすばらしと思うのだが、まったく受賞歴がないので不思議に感じて、調べてみた。どうやら、当時の営利誘拐に対する刑罰の軽さを訴えていたり、公開後に誘拐事件が多発したりして国会に取り上げられていたり等々、ちょっと賞をあげにくい状況だったのかもしれない。こういう映画には、後年になってから賞をあげるのが粋というものだと思うのだが、いかがなものかね(アメリカ国立フィルム登録簿みたいに、日本でもひとつのステータスを与えるべきだと、私は思う)。

白黒で若干音声も聞き取りにくい部分はあるのだが、一度は見てみるべき映画だと感じた。ヘタなハリウッドのサスペンスを借りるくらいなら、未見の人はだまされたと思って借りてみてはいかがだろう。

#それにしても、仲代達矢も山崎努も若くて、彼らだと気付かない人もいるかもしれないね。

拍手[0回]

プロフィール
HN:
クボタカユキ
性別:
男性
趣味:
映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
自己紹介:
一日一シネマ。読んだら拍手ボタンを押してくだされ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
リンク
カウンター
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
最新コメント
[06/03 離脱ラバ]
[06/03 離脱ラバ]
[06/03 離脱ラバ]
[04/28 ETCマンツーマン英会話]
[10/07 絶太]
最新トラックバック
Copyright © 2009-2014 クボタカユキ All rights reserved.
忍者ブログ [PR]