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公開年:1975年
公開国:日本
時 間:89分
監 督:石井輝男
出 演:小川真由美、岡田裕介、金子信雄、田中邦衛、絵沢萠子、滝沢双、田島義文、近藤宏、河合絃司、相馬剛三、山田光一、山下則夫、土山登志幸、横山繁、亀山達也、岡本八郎、山本緑、宗田千枝子、岡久子、松井紀美江、田中筆子、津森正夫、南広、沢田浩二、清水照夫 他




ギャンブル狂いの西原房夫は、情婦の向田孝子から金をせびる生活を続けていたが、彼女の財産も付きかけていた。かつては、証券会社に勤務していた西原だったが、400万円ほど横領し競馬につぎ込んだことが発覚しクビになっていた。当時、医者の妻だった孝子が、財産を処分して不倫相手の西原を救ったため、刑事事件になることは免れていた。西原と孝子はそれから同棲生活を続けている。しかし、西原はひそかに一発逆転を狙っていた。昨今、多摩農協に連続しての脅迫状が舞い込む事件が報道されていたが、それは西原の仕業だった。実は、この脅迫状は警察の目をそちらに向ける為で、一方で三億円を強奪する計画を立てていたのだ。そんな、西原の挙動を不審に思った孝子が問い詰めると、計画を告白。借金に追われる生活にほとほと疲れ果てていた孝子は、西原の犯行を手助けすることを決めるのだったが…というストーリー。

オープニングで、実際に捜査に関わった刑事さんが出ててきて講釈をたれる。当時のこの事件に対する社会の反応を考えるとわからないでもないが、結局捕まえられなかった刑事が、時効を迎えようという時に、何かを偉そうに語る滑稽な姿。当事者が、嬉々として犯人の予測をする姿があまりにも滑稽に映し出されている。とにかく、警察機構を馬鹿にする製作側の意図が明確であることがわかる。
それにまんまと乗っかる馬鹿刑事。キャリア批判や、本作の内容に苦言を呈しているが、こんな馬鹿じゃ捕まらないだろうと、ある意味納得できる、冒頭の掴みである。

1975年12月10日時効成立の事件なので、それに合わせて公開をぶつけたのだろう。つまり時効前に製作されているわけで、下衆だとは思うが、商魂はたくましいと思う(興収に繋がったかどうかは不明)。

盗まれた金は東芝府中工場の社員のボーナスだったのは有名な話だが、保険がかかっていてしっかり翌日には支払われていたりと、日本国内で誰も損をしていない。この、誰一人悲しんだ人がいないというところが、ある意味で神格化に繋がって(というか、犯人の過大評価に繋がって)、捜査手法が曲がっていっているのが、本作を通してもよく覗える。

犯人像が正解か否かは別にしても、警察の不手際の連続については、事実をうまく綴れていると思う。本作のすごいところは、事件の経過や捜査の経緯、警察の不手際が全てといってよいほど、詳細に盛り込まれていること。wikipediaに書かれているレベルの内容なら、ほとんど描かれていると思う。90分未満なのになかなか。犯罪史的なおさらいの意味では、いい資料かもしれない。

しかし、”答えはこれだ!”的な内容をつくっては見たものの、これだけ人々の想像力をかきたてて、記憶に残っているであろう事件なだけに、明らかになっている事実との整合性はがっちり取らねばいけないわけで、荒唐無稽なフィクションでおもしろさを追求するわけにもいかず、面白みに欠けた結果になってしまった。
ギャンブル好きという設定が、3億円の行き先と絡められているのだが、それならだれも気付かないなぁ…という展開ではなく、もうすこし凝った仕掛けが欲しかった。また、ラストは、ひとりのはみ出し刑事が、勘で逮捕した犯人を、厳密には不法な取り調べで追い詰め続け、結局時効を迎えてしまうという内容。それまでの流れと比較すると、ダイナミックさに著しく欠けており、尻すぼみ感が著しい。

あ、色々文句は書いたけれども、三億円事件を扱った『ロストクライム -閃光-』なんかより、何倍もおもしろいのは事実。とてもユニークな作品だと思う。観て損だとは思わないはず。
ポイントは小川真由美だろう。くたびれながらもエロさただよう佇まいが、コントロールされてるのかコントロールしてるのか判然としないという、微妙な立ち位置にうまくマッチしていると思う。
#昔、片岡鶴太郎が金子信雄のモノマネをしていたけど、『仁義なき戦い』をみても全然似てねえと思ったのだが、本作の金子信雄は、まさにモノマネのそれだったわ。

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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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