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公開年:2004年
公開国:アメリカ
時 間:122分
監 督:マイケル・ムーア
出 演:マイケル・ムーア、ジョージ・W・ブッシュ 他
受 賞:【2004年/第57回カンヌ国際映画祭】パルム・ドール(マイケル・ムーア)
【2004年/第71回NY批評家協会賞】ドキュメンタリー賞
【2004年/第10回放送映画批評家協会賞】ドキュメンタリー賞
【2004年/第25回ラジー賞】ワースト主演男優賞(ジョージ・W・ブッシュ)、ワースト助演男優賞(ラムズフェルド国防長官)、ワースト助演女優賞(ブリトニー・スピアーズ、ライス大統領補佐官)、ワースト・スクリーン・カップル賞(ジョージ・W・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュ&ライス大統領補佐官、もしくはジョージ・W・ブッシュ&“彼の”『Pet Goat』)
コピー:それは自由が燃える温度。
2000年の大統領選挙にて混乱の末にブッシュがアメリカ合衆国大統領に就任。そして2001年9月11日、アメリカのニューヨークとワシントンをハイジャックされた旅客機が襲うという前代未聞のテロ事件が起きる。やがてテロの実行組織がオサマ・ビン・ラディン率いるアルカイダと判明し、アルカイダが潜伏するアフガニスタンを攻撃する。しかし一向に彼らを捕えられないまま、なぜか戦場はイラクへと移る。一連のブッシュ政権の行動に疑問を抱いたマイケル・ムーアは、様々な角度からその真相を明らかにしていく…というドキュメンタリー。
本作は非常にすばらしい作品である。数十年後にますます評価が高まる作品であると断言しよう。
なぜこんなすばらしい作品を撮る監督が、いまいち好かれていないのか?(特に本国で)。そりゃあ、真実をえぐりだすようなジャーナリストはいつも嫌われるものだよ…という人がいるかもしれないが、若干違う。それは、彼が手がけていたTVシリーズに原因がある。日本でも『マイケル・ムーアの“恐るべき真実” アホでマヌケなアメリカ白人』というタイトルでレンタルされているので観てみるとよい。「わかるんだけどさぁ。そのやりかたってどうなの?」のオンパレードなのだ(本作でもその片鱗はちょこちょこ見えるが)。正直、私はマイケル・ムーアという人間は大嫌いである。でも、それはそれとして、本作はよくできている。
ちょっと話は違うが…、中国は歴史教といってもいいくらい歴史を残すことに命をかけている。細かいことを言えば色々記述や描写の誤りはあるが、『史記』の司馬遷から歴史家としての姿勢は脈々と貫かれている。そんな中国でも、易姓革命が起こり皇帝の血筋が変わったからといって、すぐに前の代の歴史書はつくられない。なぜかといえば当事者がいる間は、感情的なバイアスが公正な目を曇らせるから(だから“清史”だって、まだ完成していない)。
だから、私は、数十年経った後に、ジョージ・ブッシュは、ヒトラーと並列で扱われると思っている。いくらなんでもそこまでは思う人がいるかもしれないが、わたしは予言する。絶対にそうである。
その理由はなにか。ヒトラーは全権委任法の成立によってワイマール憲法を殺した(憲法は他の法律とちがって、法を廃止しなくても執行する唯一の法律である)。私は社会科の教員免許をもっているが、自分の生きている間に、このような稀有な事件を遭遇することはないと思っていた。しかし、それはおこったのだ。それもなんと自由と民主主義の旗手であるアメリカで。「愛国者法」の成立はそのくらいの意味を持つのだ。残念ながら現在、アメリカの憲法は死んでいる(後世の歴史家が分析してくれることだろう)。
私はある自論ゆえに、本作を非常に興味深く観た。それは何かというと…。私は、現在の日本の議院内閣制は制度的(というか運用的)に疲弊してしまっていて、三権分立のカウンターバランスが効いていないと見ており、行政の長を大統領という形で選出することを考える時期にきていると考えている。ここまで話すと、「そうそう、私も首相公選制にすべきだと思うんですよ~」という輩が口を挟んでくる。私はそういう輩に、必ず質問するのだ。「あなたは、アメリカ大領領が、国民の直接選挙で選ばれていると思っているのか?」と。もちろんアメリカ大統領は直接選挙では選ばれていない。選挙人を選出し、彼らが投票する。それも1年以上の日数と膨大ない費用をかけて。なんでこんな面倒くさいことしているのか考えないのだろうか。これは、アメリカが誇れる発明である。答えを聞けば「なーんだ」と思うかもしれない。一つは衆愚政治を防ぐため。数ヶ月の選挙戦で投票になってしまったら、その時の雰囲気で簡単に誤った方向に倒れる可能性がある。1年以上選挙戦をやれば、否が応でもじっくり考えざるを得ないのだ。そしてもう一つは、立候補者のあら捜しだ。人間は完璧ではない。だれでも多かれ少なかれ脛に傷はある。短い選挙戦だと、それが隠し通せてしまうが、1年もやれば、ぽろぽろと漏れてくる。はじめは偉そうなこといっていた立候補者だって、私は過去にこんな過ちを犯したことがあるが、悔い改めてがんばりますと、謙虚になるのだ。こうやって、アメリカは“皇帝”の出現を防ぐ方法を発明したのだ。素晴らしい。
私は、これに習うべきだと常々考えていたのだが、本作を観て、考えを修正しなければならなくなったと考えている。残念ながら、立候補者に対するあら捜しはうまく機能せずに、ブッシュのような愚か者が選出されてしまい(本作だって、当選した後につくられたのだからその役目ははたしていない)、さらに「愛国者法」なるものまで生み、権利の簒奪を許した。これは、ジャーナリズムは機能しなかったことが大きいのだが、それは現在の日本でも同じことである。
現在の日本の首相も、行政の長がどういう立場を取るべきか、わかっているのかいないか甚だ怪しいことからわかるように、三権分立をより明確にする必要はあるのだが、そのためには憲法も変えねばいけないが、あまりにもあまりにも硬性憲法がすぎる。さてさてどうしたものかと思案を巡らせる日々である(って、私は何様なんだか…)。
とにかく本作は一見に値するので見て欲しいし、アメリカがどういう国かを理解する一助になると思う。特に、いまのトヨタ問題が、なにか怪しいなと感じるだろう(アメリカ政府はアメリカ自動車産業の大株主だしね。もっといろいろあるんだろうけど)。しかし残念ながら、またしてもイラク戦争と同じ結末になることを予言しておこう。日本がぐうの音も出ないように仕掛けたつもりだろうけど、結局日本が成長する材料を与えてしまっていることに彼らは気付かない。アメリカ政府はイソップ童話を読んで、感じるものが無いらしい。
まあ、今はだまって反論しないでいたほうがいい。ジャイアンが暴れているときに刃向かったって殴られるだけだから。しばらくすると、こっちのほうが有利になってるのだ。それに映画の時のジャイアンは役にたつからね。面倒くさいやつはうまく利用するに限るのだ。そのくらいのしたたかさというか小ズルさが、いまの日本政府に欲しいですな。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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