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image1586.png公開年:2007年 
公開国:ポーランド
時 間:122分
監 督:アンジェイ・ワイダ
出 演:マヤ・オスタシェフスカ、アルトゥル・ジミイェフスキ、マヤ・コモロフスカ、ヴワディスワフ・コヴァルスキ、アンジェイ・ヒラ、ダヌタ・ステンカ、ヤン・エングレルト、アグニェシュカ・グリンスカ、マグダレナ・チェレツカ、パヴェウ・マワシンスキ、アグニェシュカ・カヴョルスカ、アントニ・パヴリツキ、クリスティナ・ザフファトヴィチ 他
受 賞:【2008年/第21回ヨーロッパ映画賞】エクセレント賞(Magdalena Biedrzycka:衣装デザインに対して)
コピー:明日を生きていく人のために そしてあの日 銃身にさらされた 愛する人のために

1939年9月、ポーランドは密約を結んだナチス・ドイツとソ連によって攻撃さて、全土が分割占領される。政府はロンドンに脱出し亡命政府を結成するが、武装解除されたポーランド軍人や民間人は両国の捕虜となってしまう。アンナの夫であるポーランド人将校のアンジェイやその友人イェジたちはソ連の捕虜となり収容所へ。アンナと娘のニカはソ連領に取り残されたが、その後ポーランドに脱出。アンジェイの親元に非難したものの、義父はドイツ軍に逮捕され収容所で絶命。アンナとニカと義母はアンジェイの帰還を待ち続けるが、1943年4月、ドイツ軍は、ソ連領のカティンで多数のポーランド人将校の遺体を発見したと発表する…というストーリー。

昨年、カティンの森事件の被害者を追悼する式典に向かったポーランド政府専用機が墜落し、ポーランド大統領らが死亡する事故があったが、そのニュースではじめて“カティンの森事件”という単語を聞いた日本人も多かろう。
人間の歴史において、数々の惨殺事件は発生したが、その発生から事後にわたって、その経過は大変特異。そして、ポーランド民族の心に、いまだに大きな傷を残しているといえるのだが、この映画を観れば、その事件の詳細が良く判るか?と聞かれれば、否としかいいようがない。本作は、カティンの森事件のあらましを知っている人、もしくは学校で教えてもらったけど実のところ良く知らないんだよね…という人を対象にした作品。つまり、ポーランド国民、もしくはその近隣の人々を対象にした作品で、事情を知らない人は、わかりにくいと思われる。

私の理解している範囲で事件の流れを書くと…。
まず、この事件の主役はスターリン(だと思う)。共産主義陣営を拡大するには、ナチスも邪魔だし、すぐ隣で民主主義・自由主義を掲げるポーランドも邪魔。どちらも潰したいスターリンは、まずナチスと手を結びポーランドを攻撃し占領。ポーランド軍の捕虜はポーランド・ソビエト戦争時の恨みがあったので虐殺。その罪をナチスに着せて国際的に非難されるよう仕向ける(もちろんナチスは否定)。第二次世界大戦が終わってもソ連は事件の犯人であることを認めない。ご存知のとおりポーランドは共産圏でソ連の傀儡政権のような時代が続いたため、この事件は長らくタブー視され解明されることはなかった。そして、冷戦が終わった後になってようやく調査・研究が行われソ連の反抗であることが判明。最近になってスターリンの仕業だったことを、ロシアが声明するに至る。

もちろん事件自体も悲惨なのだが、この事件で一番悲惨なのは、ポーランド人が被害者であったのに、同じポーランド人がソ連に従属し、この事件を闇に葬ろうとしたことである。ソ連の恐怖に屈服し同胞を苦しめるという構図。これ以上の民族的な悲劇はないだろう。
ちなみにお隣韓国では、親日派を恨むがあまりちょっとでも日本に関係があった人は弾圧されるなど、同様に同胞を苦しめているので、似た状態かもしれない。さらにおかしなことになっているのは、本当は親日派を恨んでいるのだが、同胞を恨めとは言いにくいので、日本を恨めと教育してしまい、子供の世代は日本を恨むようになってしまった。親世代は「こんなはずではなかった。まずいことになってるな…」と思っているかもしれない。
閑話休題。

そして、事件が明らかになっても、ロシアは“ソ連のやったことだから俺らは関係ねーよ”と謝罪を拒否するという、更なるむなしさ。

で、本作は、生きるためとはいえ心を失ってまで生き残ったポーランド国民よ…という嗚咽のような作品なのだ。ポーランド国民や近隣の関係国には、観ているだけで鈍痛がするような重みを与えるのだろうが、根本的に事件のあらましを知らなければ、その響きも半減する。さらに、ソ連語、ドイツ語、ポーランド語の違いや軍服の違いなど、ピンと来ない人は、どこがどこの国に占領されているのかも混乱してしまうかもしれない(こういう私も、分割統治の線引きがピンとこなかった)。

歴史の教科書として学生に見せたくなるのだが、ちょっと勉強させないといけないだろうし、やはり他国のこと…というスタンスになってしまったら、“映画仕立ての再現フィルム”という印象で終わってしまうかもしれない。意味のある作品だとは思うけれど、お薦めは非常にしにくい作品。

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