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公開年:1990年
公開国:アメリカ
時 間:115分
監 督:ジョエル・コーエン
出 演:ガブリエル・バーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、アルバート・フィニー、ジョン・タートゥーロ、ジョン・ポリト、J・E・フリーマン、マイク・スター、スティーヴ・ブシェミ、フランシス・マクドーマンド 他
コピー:『ゴッドファーザー』以来 ギャングの世界を扱った映画で コーエン兄弟によるこの大胆にして衝撃的な傑作ほど パワフルなものがあったろうか。--ガイ・フラットリー/コスモポリタン
禁酒法時代のアメリカ東部のとある町。イタリア系マフィアのボス・キャスパーは、街を取仕切る大ボスのレオに、八百長賭博の邪魔をするチンピラのバーニーを始末するように相談するが、無碍に断られてしまう。バーニーがレオの情婦ヴァーナの弟だったからだ。レオの右腕であるトムは、キャスパーと不必要に敵対するのは得策ではないと進言するが、それも聞き入られることはなかった。そんなトムは、ギャンブル好きが災いして借金まみれ。その日も、バクチで負け続けて借金を増やしていたが、ひょんなことからヴァーナと一夜を共にしてしまう。しかし、明朝、ヴァーナを尾行していたレオの部下ラグの死体が発見される。これによって、アイルランド系のレオとイタリア系のキャスパー、二人の勢力争いが激化する。しかしトムは、自分との情事がばれるのを恐れたヴァーナがラグを殺害したのではないかと疑い、その説明のためにヴァーナと関係を持ったことをレオに告白してしまう。レオは激怒し、トムを追放。博打の借金に追われるトムは、やむを得ずキャスパーの部下となるが、「バーニーを殺せ」と命令され…というストーリー。
トムは、成田三樹夫が演じるインテリヤクザ的なポジションで、頭がいいなんて周囲から評価されている。たしかに大学出のマフィアは珍しいんだろうけど、その落ち着いた様子がそう見せているのと、他のマフィアさんたちが人並み以下にアホなだけで、それほど賢くはない。
いや、本当に賢かったら、マフィア組織なんかにいないだろうし、借金まみれなわけがない。その借金を自分の手で返そうと、頑なに変なポリシーを守ったりするから、チンピラからみたらまたまた賢く見えたりする。
何がいいたいかというと、この作品と愉しめるか愉しめないかの分水嶺がそこにある…ということだと。つまり、トムがその賢さを駆使して、難局を乗り切るストーリーを期待してしまうかどうか…である。なぜなら、トムが乗り切れた要因の半分は、偶然だから。特に、ミンクの死体のくだりなんかは、トムの意図とはまったくの無関係。偶然以外の何者でもない。
最後も、トムがレオを救ったという形になっているが、トムはそれを目指して行動していたわけじゃないよね。元々、二人の間にどういう友情の歴史があったのかは知らないが、とにかくトムの心の中では、とっくにプッツリと切れているわけだ。
要するに、変化する状況を知恵や追い詰められた時に発揮するズルさを最大限に発揮して乗り切るのではなく、悪く言えば場当たり的に対処していく姿。そして、多くの運で乗り切ってるところに違和感を感じた人は、本作をつまらないと判断したに違いない。
でも、コーエン兄弟の意図としては、そういう綱渡り状態を俯瞰で見せて愉しんでもらたいわけで、小ずるい男がしたり顔で、策を弄して笑いながら乗り切ってる様子を愉しんでほしいわけではない。トムに共感しトム目線で鑑賞するのではなく、その世界に亡霊として存在しているような目線で観ないとおもしろくないということだ。
彼らの他作品でみられるコメディ要素よりも、一枚上から俯瞰で観たコメディって感じがする。いつものコメディ要素は、ちりちりと音がしそうなくらいの綱渡り感に転化されているってところかな。これがコーエン兄弟らしくないと見る向きもあるんだけど、私はOK。このノリさえ、早々に掴めてしまえば、特に終盤はかなり愉しめると思う。軽くお薦めしたい。
トム以外のキャラ設定もおもしろい。レオのマシンガンぶっぱなしエピソードをはじめ、バーニーのクソみたいな行動など、表面上の設定ではなくて、エピソードを重ねることによって人物像を見せていくのは、コーエン兄弟は本当にウマいと思う。捕まって拷問されたデブ男に、あの場面で叫ばせ続ける演出は、私なら思いつかないもんなぁ…。
負けるな日本
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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