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公開国:アメリカ
時 間:85分
監 督:ピーター・ロード、ニック・パーク
出 演:メル・ギブソン、ジュリア・サワラ、ジェーン・ホロックス、イメルダ・スタウントン、ベンジャミン・ホイットロー、リン・ファーガソン、ミランダ・リチャードソン、トニー・ヘイガース、ティモシー・スポール、フィル・ダニエルズ 他
受 賞:【2000年/第67回NY批評家協会賞】アニメーション賞
【2000年/第26回LA批評家協会賞】アニメーション賞
【2000年/第6回放送映画批評家協会賞】長編アニメ賞
コピー:こんなチキン、見たことないゾ!
イギリス、ヨークシャー州にあるトゥイーディー養鶏場。そこで飼育されているメンドリたちは、強欲な女主人トゥイーディーによって、囚人のような暮らしを強いられていた。毎日毎日、タマゴを生むだけの日々で、タマゴを生まなくなれば、食肉として処分されてしまう。そんな生活に疑問を感じるニワトリのジンジャーは、他のメンドリたちと共に、何度も脱走を試みるのだが、いつも失敗ばかり。柵の向こう側には楽園があると信じる彼女が、再び脱走計画を練っていると、空から一羽のオンドリが突然降ってくる。自分たちも空を飛べるようになれば脱出できると考えたジンジャーは、そのオンドリのロッキーから飛び方を教えてもらおうとするのだが…というストーリー。
『ウォレスとグルミット』と同じ制作会社によるクレイアニメーション。でも、ジャケット画像を見ればわかると思うが、くちばしの中に歯があるという、とてつもない気持ち悪さ。いや、単なるデザイン上のユニークさでしょ…と思うかもしれないが、迂闊に子供にみせると、軽くショックを与えるかも。結構、残酷で、さっきまで普通に生活していたメンドリが、あっさりお肉にされちゃう。
アメリカ作品ではあるが、制作会社はイギリス。本作は、資本家により搾取され続ける労働者階級の抵抗の物語で、ケン・ローチ作品のようなノリ。労働者側は理不尽な弾圧を受けており、資本家側の貪欲さは底なしで同情の余地はない…という設定で描かれる。さすがに、労働者側ばかりを良く描くとバランスが悪いので、労働者側は無知で愚か…という設定も忘れない。
『大脱走』を想像する人が多いみたいだけど、舞台が収容所で共通しているだけで、描き方は全然違うと私は思う。
さすがにそれだけじゃ、アニメ作品としては成立しないので、ジンジャーとロッキーの恋愛話や、老兵のくだりなど、ネズミとの取引など、色々差し込んでいるが、無駄な寄り道になっている気がする。最終的にニワトリが飛ぶなんて無理な話だと落胆した後に、飛行機作りに邁進するあたりから、急激に盛り上がってくる。余計な部分は差し込まずに、純粋に“大脱走”だけで勝負したら、名作の大活劇になったと思う。
『大脱走』とは違い、“楽園”を目指して脱走するのだがら、ゴールは楽園でなければいけない。しかし、脱走した後に安易に楽園が手に入ってしまうオチが、シナリオとして芸がなく、ぼやけた後味になっている。
ロッキーと老人しかいないのに、なんで有精卵ができるのかな…、他からオンドリがやってきたのかな、でもそんな描写ないな…とか、なんかいい加減なオチだな…とも思う。凡作かな。
#優香や岸谷五朗らの吹き替えは、はっきりいってうまくはない。
公開国:アメリカ
時 間:90分
監 督:ブレンダン・マロイ、エメット・マロイ
出 演: ジェイソン・ロンドン、リー・メジャース、A・J・クック、ヴィクトリア・シルヴステット、ライオ田原、ウィリー・ガーソン、ザック・ガリフィナーキス、デヴィッド・デンマン、デヴィッド・ケックナー、フレックス・アレクサンダー、デレク・ハミルトン 他
コピー:偶スノーボード・パークと愛する人を守るため、ボーダー達の熱い闘いが、今、始まる。
アラスカの山岳地帯になる小さな街ブル・マウンテン。リックと仲間達は、そこでスノーボードに明け暮れる毎日を過ごしている。しかし、リックは2ヵ月前バカンスに行ったメキシコのリゾートで出会い、3週間だけ付き合ったアンナ子のことが忘れられず、次の恋に踏み出すことができずにいた。そんなある日、街のオーナーが心臓発作で急逝。リゾート開発業者のメイジャーが街の買い手として名乗りを上げ、リゾート地として再スタートさせるために、どんどん街を変貌させていくのだった。リックたちもメイジャーの下で働くことになったが、街の変貌ぶりに違和感を覚え、不満を抱くようになる。そんな中、メイジャーの二人の娘がやって来くるのだが、そのうちの一人があのアンナだった…というストーリー。
スノーボードをやっているか、酒を飲んで悪ふざけをしているかの毎日を繰り返している若者集団。元々、パンツをズリ下げ、半ケツ・酩酊状態で、スキーを楽しんだ伝説の老人“パパ”が、先住民をだまくらかして手に入れた山。その精神を脈々と受け継いでいる彼らはある意味、正当な後継者といえる。彼らがどうやって食い扶持を稼いでいるのか疑問だけど(ホテルで働いているのはわかるけど、まともな給料を貰えるような働きぶりには見えない)、まあ、とにかく楽しいそうではある。
ジャケットを見る限り、陳腐なおふざけB級映画に思えるのだが、キャラクター設定が案外細かく、かつメリハリがあるので、なかなか面白い。みんなバカなんだけど、バカはバカなりに特徴があって、バカのハーモニーはなかなか観ごたえがある。なぜこの手のおふざけコメディのアメリカ映画には、髭面で下品なキャラクターが必ずでてくるのかは不明だが、彼の破天荒というかアスペルガー症候群ぎみの浮きまくったキャラが、一番、いい味を出している。
主人公リックの恋愛がらみの話と、山の存亡のストーリーの二重構造。ただ、新オーナーの娘が例の忘れられない娘…という設定は良しとしても、リックもアンナも、あれは過去のことと割り切ってみたり、距離を縮めてみたりと、どういう方向にしたいのか観ていてもよくわからず、中途半端。後だしで車椅子の現在の彼氏を出して、さらにグダグダになった印象。セスナで飛んでいくところは、一つの山場のはずなのだが、全然盛り上がらない
一方の山の存亡ストーリーは、ラストに新オーナーを襲撃する展開に。彼の手法が気に喰わないから反抗するのはわかる。でも、単に彼を追い出しても、経済的な問題は解消するわけではない。なんか、そちらも解決できるような、オチにしないといけないのではなかろうか。各娘とも母親が違うという設定なのだから、地味に娘も結構な資産を持っていて、娘が父親に愛想を付かして且つリックの仲間とくっつくことで、彼女が資金を出す算段がつく…とか、考えれば色々、展開させる方法はあったろう。
まあ、シナリオの稚拙さを補う方法を考えればキリが無いのだが、最後までバカを通せたことで、それなりに飽きずに観ることはできた。及第点ギリギリ。100円レンタルなら、まあギリギリ許せる範囲。
#エンドロールのNGシーンはセンスがない…。
公開国:アメリカ
時 間:114分
監 督:ロブ・コーエン
出 演: シルヴェスター・スタローン、エイミー・ブレネマン、スタン・ショウ、ヴィゴー・モーテンセン、クレア・ブルーム 他
ノミネート:【1996年/第69回アカデミー賞】音響効果編集賞(リチャード・L・アンダーソン、デヴィッド・A・ウィッテカー)
【1996年/第17回ラジー賞】ワースト主演男優賞(シルヴェスター・スタローン)、ワースト音楽賞(「Whenever There is Love(Love Theme from Daylight)」)
コピー:偶然がニューヨークに仕掛けた恐るべき大事故!
ニューヨークのマンハッタン島とニュージャージを結ぶ改定トンネル。夕方のラッシュアワー時に、逃走中の暴走車が有毒廃棄物を運搬中のトラックに衝突し大爆発をおこす。爆発により出入り口は崩落し、炎と有毒ガスが閉じ込められた人々を襲う。EMS(緊急医療班)は、生存者の救出に向かうが、内部に進入することができず、内部の酸素が残り3時間ほどしかもたないという状況の中、救出を諦めようとしていた。偶然、現場に居合わせた元EMSチーフのラトゥーラは、交通局司令室のバセットとかつての同僚で現在EMS副隊長のフランクに対して、自分がトンネル内に侵入し救出作戦を展開することを進言する。ラトゥーラは、以前、任務中に自分の判断ミスで部下を含む3人の人間を死なせてしまったこを、未だに悔やんでおり…というストーリー。
『タワーリング・インフェルノ』や『ポセイドン・アドベンチャー』の同種だが、この手の作品はどうしても似てしまう。スタローンの凋落ぶりの象徴的作品と言えなくもないが、こういう大味で短絡的な内容には、スタローンによるわかりやすいキャラクターはマッチしていると思う。
この作品で面白いのは、閉じ込められた一般人が、誰一人、まともに救いたいと思うような人間ではないこと。そして、あからさまな死亡フラグ立てて、フラグが立ったら最後、だらだらと引っ張ったりはせずに履行することが、なかなか面白い。
言うことを聞かない有名人とか、もっともらしいことをいって邪魔ばかりする奴とか。恋人のアクセサリーを持ったまま事故に巻き込まれちゃう職員なんて、戦争映画で「この戦争が終わったら結婚するんだ…」ばりのフラグ。気持ちのいいくらい(というのは語弊があるが)綺麗にお亡くなりになるのが、不謹慎ながらもイライラすることなく快適だったりする。
逆に言えば、各者ともぜんぜんキャラクターに深みが無くて、まともな人間ドラマを展開することができないので、イヤな人間を演じてもらって自業自得でお亡くなりになってもらい、観客はすっきりするという、なかなかユニークな手法だともいえる。
ただ、あまりにラトゥーラが無双すぎて、もしや死ぬのでは?という感じは一切なく(笑)、パニックムービーなのにハラハラ感があまりないという、本末転倒な内容ではある。
一応ヒロイン扱いの作家志望の女性だが、微塵も魅力がなく、ラトゥーラとくっつくところがまったく面白くもなけりゃ、いい感じでもない。ラトゥーラ自身のバックボーンも、かつてEMSにいたという以外に語られていないので(独身なのかどうかも不明)、くっつくこと自体がいいことなのかどうかもわからない。
さらに、黒人の商品は非業の死を遂げ、その恋人が泣き崩れているのに、何を言っているのかと。アドレナリンが出すぎちゃって、他人のことなんぞかまっていられるかよ!ということなら、なかなかシュール。
何気に、深夜に放送していたら、だらだらと観ちゃうレベル。
公開国:アメリカ
時 間:94分
監 督:ロバート・ムーア
出 演: ピーター・セラーズ、ピーター・フォーク、デヴィッド・ニーヴン、マギー・スミス、アイリーン・ブレナン、トルーマン・カポーティ、エルザ・ランチェスター、ナンシー・ウォーカー、ジェームズ・ココ、ジェームズ・クロムウェル、アレック・ギネス、エステル・ウィンウッド、リチャード・ナリタ 他
コピー:世界の5大名探偵とともに華麗な晩餐会と殺人にご招待します!?
“あなたを晩餐と殺人に御招待します”と書かれた、富豪ライオネル・トウェインからの招待状を受け取った世界的に有名な5人の探偵、ミロ・ペリエ、サム・ダイヤモンド、ジェシー・マーブル、シドニー・ワン、ディック・チャールストンは、それぞれお供を連れて北カルフォルニアにあるトウェイン邸にやってくる。盲目の執事ベンソンマムに迎え食卓についたものの、新たに雇った料理女イエッタが聾唖者で指示が伝わらず、晩餐の準備はされずじまい。食道楽のペリエが怒りだすと、突然トウェインが現れる。彼は“12時にここにいる誰かが殺され、その犯人はこの中にいる。真犯人を解き明かした者には、100万ドルと本件の出版権と映画化権を譲渡する”と言って姿を消すのだった。屋敷に閉じ込められてしまった彼らは、これからおこることに戦々恐々としていると、調理室で執事が殺されているのを発見し…というストーリー。
まず、本作はまともなミステリー作品ではないことを断っておく。
ペリエがポワロのパロディで、マーブルズはミス・マープルのパロディで、でも、ピーター・フォークが演じているのはコロンボじゃなくてサム・スペードで…って、元ネタがよくわかんないから笑いどころもわからない。元の探偵の性格とか捜査手法ともわからない、彼らの行動の笑いどころもわからなない。
どうやら探偵小説にありがちな密室殺人ネタを小バカにしている模様。そのあたりは『殺人ゲームへの招待』と似ている。そして、ストーリーに登場する証拠などは一切無関係に、真犯人はダレかというオチをどうにでもできる…も『殺人ゲームへの招待』と似ている。
演者は間違いなく本作のほうが豪華だと思うのだが、『殺人ゲームへの招待』よりも面白くない。
トウェインが機械マニアだという設定は良しとしても、そのテクノロジーがSF並みだというのが致命的。一切振動もなく、部屋がムーブするということが可能なら、もうドラえもんレベルの所業。何も言うことはない。
行き当たりばったりなのも、ヒドすぎで、聾唖のメイドがロボットで且つ執事のベンソンマムも健常者だったとしたら、調理場でのあのやりとりはまったくもって意味不明。
ただただ、ミステリー物を批判したいということなのかもしれないが、行き当たりばったりで雑に作ってよいということにはならない。
ピーター・セラーズが演じるワンの養子が日本人で、全然日本人ぽくない上に、日本評がトンチンカンなことについては、もう何も言うまい。アメリカ人には別に期待していない。それ以前にワンが微塵も中国人っぽくないのだが…。
本作で驚くべきところは、トゥエインを演じているのが、あのトルーマン・カポーティということだ。あの『冷血』『ティファニーで朝食を』のトルーマン・カポーティだ。『冷血』で筆を折ってから10年くらいたっている。アルコールと薬物中毒に悩んでいる時期か。おそらく気持ちの悪いトゥエインは大して役作りはしていなく、おそらく素だと思う。
欧米の推理小説マニアなら楽しめるのかもしれないが、私には無理。つまらん。
公開国:中国
時 間:114分
監 督:チャン・イーモウ
出 演: チョウ・ドンユイ、ショーン・ドウ、シー・メイチュアン、リー・シュエチェン、チェン・タイシェン、スン・ハイイン 他
コピー:たとえ何が起きても、きみをずっと待ち続ける。
文化大革命の嵐吹き荒れる1970年代初頭の中国。農民の生活こそ人間の理想であるという思想のもと、都会の高校生は農村に強制的に住込み実習させられていた。教師を目指している女子高校生のジンチュウも農村に送られ、村長の家で農作業を手伝うことになった。その村にはサンザシの樹があり、抗日戦争で死んだ兵士の血によって、本来は白い花が赤く咲くという言い伝えがあった。村長の家には、地質調査隊員の青年スンが息子同然で世話になっていた。スンはジンチュウへ好意を抱き、彼女のことを常に気に掛け積極的な態度を示す。はじめは困惑したジンチュウだったが、彼女もスンの誠実な人柄に次第に惹かれていくのだった。しかし、ジンチュウの父親は走資派のレッテルを貼られ地方で投獄させられており、元教師だった母親も辛い労働を強いられている状況で、恋愛をしていることが明るみに出れば、教職に就く道は閉ざされる。街に戻ったジンチュウのところへスンが訪れるようになるが、人目を忍んで会う日々が続くのだったが…というストーリー。
場面転換の編集では、ゆっくり暗転し、状況を説明するナレーションが入るのが特徴的で、あまり見ない手法。『アダプテーション』では、心の声や状況を説明するナレーションを入れるなど、映画においては愚作といわれていた。しかし、小説を読んでいるような感じを演出している…というか、むしろ映像の部分が挿絵のような雰囲気を演出している気がして、本作のこれは愚作とは思わない。
主人公のジンチュウがあまりにもおぼこ娘すぎて、どんなに辛い目にあっても、昔の少女マンガのような雰囲気になる。ジンチュウを演じるチョウ・ドンユイの薄い顔立ちや、文革で辟易する周囲の大人たち、さらに彼女の友人がビッチだったりして、その対比でジンチュウのおぼこ娘感は、一層際立つ。
文革の中、切り裂かれる若い男女の姿を通して中共批判でも展開するのかと思いきや、そういう方向にはならない。いや、なりそうな雰囲気を軽く漂わせながら、純愛ストーリーが繰り広げられる…という振幅を繰り返す感じ。私は、恋愛ドラマを傘に来た体制批判的な作品を期待していたのだが、純粋なノスタルジー感あふれる恋愛童話で、女性向けの作品だった。
とにかく、スンは積極的にジンチュウにアプローチしてきて、世の女性の言い寄られたい願望を満たしてくれるだろう。何があっても、絶対に自分をあきらめないという人がいるという女王様気分に、世の女性はきゅんきゅんくるんでしょう(笑)。
もう、手を握ることすらはばかられるおぼこ娘ぶりを発揮し、枝で介して手を繋いで歩くなど、その素朴さは40年前の少女マンガ。そのせいで、自転車二人乗りとか、包帯の交換とかのちょっとした接触が、ものすごいフィジカルコンタクトに見えてしまう。
もう、あまりのおぼこぶりに、どこでヒいてしまうか…というチキンレースな気もする(笑)。さすがに、添い寝しただけで本気で子供ができると思い込み、堕胎した直後の親友を呆れさせるのは、いかがなものかと。逆に、その知識水準で教師になれてしまうというのが、本作唯一の体制批判だったかもしれない。
おぼこ、おぼこ言い過ぎだが、観終わってもやっぱりおぼこ娘映画だと思う。最後は無理やり悲恋のお話という形で落としているが、まあ、それしか落としようがない。多分、女性の3分の1くらいは、かなり好きな作品だと思う。
公開国:アメリカ
時 間:98分
監 督:トレイ・パーカー
出 演: トレイ・パーカー、マット・ストーン、クリステン・ミラー、マササ、ダラン・ノリス、フィル・ヘンドリー、モーリス・ラマルシュ 他
ノミネート:【2005年/第14回MTVムービー・アワード】アクション・シーン賞(テロリストの襲撃)
コピー:アメリカ フ★★ク イェー!
世界の平和を乱すテロリストに対抗するため、国際警備組織“チーム・アメリカ”結成された。彼らは、今日もマシンガンを手に、憎きテロリストたちを手段を選ばず殺しまくる。そんな調子なので、多くの人々から“平和を守ると称して破壊行為を繰り返しているだけだ”と指摘されるが、お構いなし。ある日、とある国の独裁者がテロリストに大量破壊兵器を売りさばこうとしているという情報を掴む。それに対抗するために、リーダーのスポッツウッドは、ブロードウェイのスター俳優ゲイリーをスカウトし、おとり捜査をさせることを発案する。スターの夢を諦めきれないゲイリーは一度はその要請を断るが、自分の演技の才能を世界平和のために生かすべきだと考え直し、チームに参加。元アメフト選手のジョー、マーシャルアーツの達人クリス、心理学専攻のリサ、心霊能力のあるサラたちと共に、武器ディーラーの隠れ家への潜入作戦を遂行するのだったが…というストーリー。
間違っても人形劇だからって、子供に観せてはいけない。観せたら気まずくなるとかそんなレベルではなく、純粋にR-18だから。残酷表現ゆえにR-18なんじゃなく、性的表現においてR-18だから。詳細は自分で観て判断してくれたまえ。
コメディではあるが、反テロ、反米的を前面に出してスタートするので、そういうメッセージ性を絡めてくるのかと思いきや、あっという間に単なるお下劣ムービーに転げ落ちていく。
マイケル・ベイを直球でバカにし、メタ視点で映画業界を揶揄したかと思いきや、アメリカの傲慢をバカにし始める。全方位的に攻撃するのかと思いきや、ブッシュ非難をはじめとする共和党批判に、アレック・ボールドウィンたち俳優たちを馬鹿にする民主党批判と、バランスを考えて攻撃しているところがあざとい。
ちょっと誰かをバカにするのも飽きてきたな…と思ったら、ゲロ噴出に倒錯セックスと、より下劣に。いやいや、やりすぎだろとニヤニヤしていると、北朝鮮に矛先を変える。観客にあまり考えさせる暇を与えない手法は評価できる。
お気に入りのキャラは、人の心が読める隊員のサラ。「私の心がゲイリーに惹かれているのがわかるわ…」と全然スピリチュアルな能力じゃねーし。くだらない。
アメリカのお下劣映画といえば『サウスパーク/無修正映画版』っていうのがあるけど、主張や思想がありそうでまったくない本作のほうが、くだらなさと無意味さという点では間違いなく上だろう。
日々の仕事に疲れたら、観てみるといい映画。くだらないことで悩んでいるのが馬鹿馬鹿しくなると思う。
公開国:日本
時 間:114分
監 督:曽利文彦
出 演: 窪塚洋介、ARATA、サム・リー、中村獅童、大倉孝二、松尾スズキ、荒川良々、近藤公園、平野貴大、翁華栄、末満健一、三輪明日美、津田寛治、馬渕英里何、山下真司、石野真子、夏木マリ、竹中直人 他
受 賞:【2002年/第26回日本アカデミー賞】新人俳優賞(中村獅童)
【2002年/第45回ブルーリボン賞】新人賞(中村獅童)
【2002年/第12回日本映画プロフェッショナル大賞】ベスト10(次点)
コピー:<274cmをとびかう140km/h> 地上最速のエクストリーム・スポーツ“卓球”
ペコとスマイルは片瀬高校卓球部に所属する幼馴染の二人。しかし、自分の才能に絶対的な自信を持つペコこと星野は部活に顔を出さず、小さい頃から通っている卓球場タムラに入り浸っていた。ほとんど笑うことがないのでペコが“スマイル”と名づけた月本は、内気で無口だが卓球の実力は高く、卓球部の顧問・小泉は彼を本気にさせようと必至になるが、“卓球は暇つぶし”と言い放ち一向にやる気を出さない。ある日二人は、中国人留学生がやってきたという辻堂学園高校卓球部の偵察に出かける。ペコは大胆にも留学生の“チャイナ”に勝負を挑むが、1点もとれずに敗北。大ショックをうけるペコと、執拗に小泉から干渉され続けるスマイルは、インターハイの日を迎える…というストーリー。
もう、4、5回は観ているはずなのだが、観始めると毎回一気に観てしまう。ペコ、スマイル、アクマ、チャイナ、ドラゴン、その他オババや小泉まで、キャラがすべて立っている上に、全員のバックボーンがスッっと腑に落ちるという、奇跡の演出。それがクドカンの脚本の巧みさ故なのか、原作のすばらしさ故なのかはわからない(原作読んだことないもんで)が、とにかくすばらしい。
ARATAと中村獅童はこの作品で一般認知度が急上昇したわけだが、とにかくここまで全キャスティングがドハマリなのもすごい。
天賦の才なのか、努力なのか…というストーリーの軸は、スポーツに限らず人生の中で誰しも考えるテーマ。それを大きな物語のうねりとして見せているのは、とてもウマい。楽しむこと、好きであること、というある意味凡庸な結果にも関わらず、それに説得力を持たせるのは、スピード感とビジュアル的な奇抜さのある演出のおかげ。
この手の作品を観ると扱われているスポーツ自体に興味を持っちゃうもんだけど、そういう気は一切おこらない。それは、スポ根だけどスポ根じゃないから。そして、おそらくクドカンがスポーツに興味がないか、打ち込んで快感を感じたことがないからではないかと思う。それが悪いという意味ではない。スポーツをやっていた人間が、スポーツを無条件に楽しいものとする価値観みたいなものが排除されているのが、いい効果を生んでいる。だからこそ、荒川良々が演じるヘタレキャプテンみたいなキャラクターが生き生きと描けるのだろう。
さすがに本作を名作と呼ぶ人は少ないが、あえて私は言おう。名作だと思う。
公開国:アメリカ
時 間:104分
監 督:マーク・スティーヴン・ジョンソン
出 演: ベン・アフレック、ジェニファー・ガーナー、コリン・ファレル、マイケル・クラーク・ダンカン、ジョン・ファヴロー、ジョー・パントリアーノ、デヴィッド・キース、スコット・テラ、リーランド・オーサー、エレン・ポンピオ、レニー・ロフティン、エリック・アヴァリ、ケヴィン・スミス、ポール・ベン=ヴィクター、ジュード・チコレッラ、ケイン・ホッダー、スタン・リー 他
受 賞:【2003年/第12回MTVムービー・アワード】ブレイクスルー演技賞[女優](ジェニファー・ガーナー)
【2003年/第24回ラジー賞】ワースト主演男優賞(ベン・アフレック:「ジーリ」&「ペイチェック 消された記憶」に対しても)
コピー:レーダーセンス覚醒!彼には、見えない悪が見える。
昼は盲目の弁護士 夜は正義の使者=デアデビル
ニューヨーク。12歳のマット・マードックは、かつて名ボクサーだったが今は落ちぶれている父親ジャックと二人暮らし。ある日、尊敬していた父親が取立屋をやっている姿を見てしまい、ショックで闇雲に走っていると、放射性廃棄物の容器が破損する事故に遭遇。液体を目に浴びてしまい失明してしまう。しかしそれ以来、聴力など他の感覚が鋭敏になり、周囲の物事を詳細に把握できる超感覚“レーダー・センス”の持ち主となる。息子の失明の責任を感じたジャックは、闇試合ながらもボクサーに復帰。息子のためにも汚いことはやらないと誓った彼は、持ちかけられた八百長を無視するが、そのせいで殺されてしまう。父の死により世の中の悪を強く憎むようになったマットは、成長し弁護士になるが、その一方“デアデビル”に扮し、犯罪者に制裁を加えるのだった。そんなある日、カフェで出会った女性エレクトラに心惹かれるのだったが…というストーリー。
レーダー・センスという能力も、コスチュームも、なかなか好きで、もうちょとマシな内容にまとめられなかったものか…と残念に思っている作品。ベン・アフレックはアメリカ人に大根役者として叩かれまくりだが、普段は吹きかえに観るし、源音声を聞いても英語なのでニュアンスがよくわからんし、そこまでヒドいとも思えないんだが…。
マット少年が失明し視神経に影響を受けることを表現したシーン。ビリビリと視神経に強い刺激が走る様子を表現しているのだが、本当は視神経だけでなく脳の他の部分にも影響を与え、レーダー・センスを獲得するに至る…という趣旨なのだが、ただた痛々しく感じる。
液体を浴びたときではなく、ベッドで昏睡している時に、その表現にすればよかったのに。
アメコミ原作に忠実に作ったのか、あまりキャラを乖離させてはいけないと考えたのか判らないが、色々中途半端。後にエレクトラ単独でスピンオフしたことを考えると、原作でもエレクトラは生きているのだろう。でも、本作だけを考えれば、中途半端に死をぼやかすのはおもしろくない演出。キングピンへの怒りの根源だったはずだが、鑑賞後の盛り上がった気持ちが折れる。だから、父親の仇という流れにせざるを得なくなるわけだが、やっぱり気持ちの軸がブレる。
キングピンを殺すのやめるマットだったが、キングピンがマットが正体であることをばらせば、盲目の人間にやらられたと噂になる…といって口止めする。うーん、そんなの口止めになるかね。この対決の様子を知るのは二人だけなんだから、マット以外にも別に人間がいたとかいえばいいだけの話じゃないか。全然してやったりじゃなくて、モヤモヤする。
一人怪演で気を吐いていたのがブルズアイ役のコリン・ファレル。彼のユニークな演技がなければ、本作はグダグダだったろう。そんな彼の演技も、締りの無い対決…というか、これまでのキャラクターから逸脱した言動に変貌してしまい、いまいちノリが崩れてしまうラストバトルに。稚拙な演出の餌食になってしまう…。
でも、もう一度言うが、私はこのデアデビルといくキャラクターが好き。『ハルク』⇒『インクレディブル・ハルク』の例があるし、もう一度映画化してもらえないものだろうか…。現在の映像技術で表現したレーダーセンスを観てみたい。3Dとかでね。
公開国:日本
時 間:129分
監 督:三池崇史
出 演: 伊藤英明、二階堂ふみ、染谷将太、林遣都、浅香航大、水野絵梨奈、KENTA、山田孝之、平岳大、吹越満、磯村洋祐、宮里駿、武田一馬、荒井敦史、中島広稀、鈴木龍之介、横山涼、竹内寿、西井幸人、藤原薫、堀越光貴、米本来輝、永瀬匡、工藤阿須加、岸田タツヤ、秋山遊楽、尾関陸、小島藤子、林さくら、神崎れな、夏居瑠奈、秋月成美、藤井武美、山本愛莉、綾乃美花、松岡茉優、塚田帆南、菅野莉央、山崎紘菜、伊藤沙莉、藤本七海、岸井ゆきの、山谷花純、三浦透子、兼尾瑞穂、宇治清高、岩松了、篠井英介、小島聖、滝藤賢一、矢島健一、山中崇、橋本一郎、山口馬木也、眞野裕子、坂東工、池谷のぶえ、岩原明生、森下サトシ、酒巻誉洋、尾崎舞、大門真紀、貴志祐介 他
コピー:まるで出席をとるみたいに、先生はみんなを殺し続けたんだ。
高校の英語教師・爽やかな見た目の蓮実聖司は、生徒から“ハスミン”と呼ばれる人気者。同僚教師やPTAからの信頼も篤く、模範的な教師だ。しかし彼の正体は、他人への共感能力を持たないサイコパスで、自分にとって都合の悪い状況になればその人間を殺害することも厭わない。殺害した後も、その知力と行動力で巧みに隠蔽し、学校を都合のいいように支配していた。文化祭前日、蓮実は邪魔になった女子生徒を自殺にみせかけて始末したが、別の女子生徒が現場に立ち入り、このままではすべてが露呈してしまう状況に。とっさにその生徒も殺害した蓮見だったが、隠しきれないと考えた彼は、文化祭の準備で学校に泊り込んでいた生徒全員を殺すことに決める。それを同僚教師の仕業に見せかけて…というストーリー。
まあ、AKBの大島優子がこの映画を嫌いだとか何とか言ったことで話題になっていた作品だが、そりゃ、この映画を好きだという方が頭がおかしい。犯罪史に残るシリアルキラーの分析はいくらでもある。幼少期の経験がどうしたこうした。こういう傾向を持つ人間はそうしたこうした。でも、そう分析しようが、そういう人間と対峙した時に、常識を持ってして対処できる人間はそういない。
常人がサイコキラーの思考を理解できるわけないんだから、無理にでも野生の王国でも観るような感覚でみないといけない。
アメリカでサイコ・キラーとして成長し、そこではピンチを味わっているという設定が面白い。
周到なように見えて、けっこう杜撰。まあ、実際のシリアルキラーなんかも、スポっと注意力が欠落することもあるので、かえってリアルである。表面の生活が豪奢で、実際の生活では郊外のボロ小屋に住んでいる。実際、ここまで極端な二重生活のサイコ・キラーの事例は聞いたことがないけど(私の勉強不足か)、フィクションとしては面白い。
殺人のパートナに対して、その死に対する美学が異なるが故に殺害に至るわけだが、正直、その点は判りにくい(というか、どういうロジックなのかピンとこない。私シリアルキラーじゃないので(笑))。
これらの、“サイコキラーの育て方”的なシーンのすべてが、回想シーンなので、緊迫感には欠けるのも残念。
ほころびからの、惨劇というなの饗宴。自分の犯行が明るみに出そうになり、追い詰められているんだけれど、サイコ・キラーにとっては満漢全席という、この振幅。
三池監督は脚本も手掛けているが、彼の大好物分野であることは間違いない。アニメやゲーム物の映画化で、職人的に稼ぎ、本作のような心の底から愉しめる作品に入魂する。変態なんだか真人間なんだかよくわからないけど、そういう建設的に狂気を発揮するところも、本作に通じる。「東大?to die?」これが、原作にあるセリフなのかどうかわからないけど、このセリフこそ三池監督のセンスのすべてが集約されているといえる。
正直、本作の一番の見所である惨殺シーンは、予想通りというか、意外と刺激が少なく、そのせいで不快さだけが滓として残ってしまった感じ。そして、なにが一番、本作で驚いたかって、“TO BE CONTINUE”。原作を読んだわけじゃないので続きがあるお話なのかどうか知らないが、これでそれなりに綺麗に終わってるんじゃないのかな?
いくら心神耗弱で無罪を勝ち取れる可能性があるからといって、すぐに娑婆に出られるわけでもない。アメリカでも多重人格者が、人格統合の後に普通に生活する例はある。もし続編を作るとしても、15年くらい経って、治療が終了したと判断されてから出てくる…という展開しか思いつかない。それまで、出所後の再開までを楽しみにして…。
でもそれだと、最後に死んでいた子が動いたシーンの使い方がわかんないんだよなぁ。やっぱ蛇足じゃないのかなぁ…続けるのは…。
#おそらく、瞳孔に表情が出ないように黒いコンタクトレンズをしていると思うんだけど、ちょっと不自然すぎるかな…。
公開国:日本
時 間:112分
監 督:北野武
出 演: ビートたけし、西田敏行、三浦友和、小日向文世、加瀬亮、桐谷健太、新井浩文、松重豊、中野英雄、名高達男、光石研、田中哲司、高橋克典、中尾彬、塩見三省、神山繁、白竜、菅田俊、國本鍾建、井坂俊哉、本田大輔、阿部亮平、斎藤歩、四方堂亘、西沢仁太、山中アラタ、佐々木一平、山中崇、平井真軌、永倉大輔、貴山侑哉、中野剛、曽根悠多、徳光正行、三溝浩二、中村祐樹、江見啓志、黒石高大、岡田正典、石井浩、山本修、武井秀哲、阪田マサノブ、西條義将、児玉貴志、安部賢一、塚原大助、中村浩二、佐々木卓馬、光宣、龍坐、中村英児、原圭介、光山文章、五刀剛、ヘイデル龍生、七枝実、浜田大介、八田浩司、江藤大我、保科光志、高久ちぐさ、月船さらら、金守珍、金田時男、北村総一朗、中原丈雄、深水三章、中村育二 他
受 賞:【2012年/第22回日本映画プロフェッショナル大賞】ベスト10(第2位)
コピー:全員悪人 完結。
一番悪い奴は誰だ?
熾烈な下克上抗争の末、先代の跡目を加藤が引き継ぎ“山王会”のトップになって5年。加藤は元大友組の金庫番・石原を若頭に据えて勢力を拡大。その金銭面でのセンスで得た資金を使い、政治の世界にまで手を伸ばしはじめる。警察組織はそんな山王会の勢力拡大を警戒していた。しかし、山王会内部では、若手を優遇する加藤のやりかたに古参幹部の不満が鬱積。刑事の片岡は、古参幹部を炊きつけて、関西の“花菱会”と接触さえい、東西の居だ暴力団を対立させようと画策する。その一方、片岡が獄中で死んだと噂を流していた元山王会配下大友組の組長・大友と接触。ヤクザの世界とは縁を切ろうとしていた大友をけしかけ、この抗争に巻き込もうと裏で手を廻し、仮出所を早めるのだったが…というストーリー。
本作の脚本も北野武によるものだが、前作よりも格段とデキが良い。主人公のくたびれ具合と、抗争との距離の置き方が、スコセッシ作品を彷彿させる。ワーナーが配給するのも判る気がする。
終盤の大友のセリフ「俺、木村組の若い衆でいいよ…」単に疲れただけじゃなく、達観するとこうなるよね。地位が何も生まないことを身に沁みて判ってしまったた男が、力と力のぶつかり合いに対して、別の切り口で動くのはおもしろい。
テンポの緩急が非常によく、前作を観ていなくても、何となく愉しめてしまうくらいだ。北野武作品を全部観たわけじゃないけど、これまでの作品の中で一番おもしろいんじゃないかな。
一時期、在日朝鮮人と噂されたこともあった北野武だが、それを逆手に取ったような、朝鮮ヤクザにお世話になるという展開(張大成を演じていた人は役者じゃないとか)。加藤を殺す場所もパチンコ屋とか、北野武だからこそストレートに描けるのかも。
高橋克典も桐谷健太も、他から見たら贅沢な使い方。みんなノーギャラでも出たいと思う監督なんだろう。
快作だった。
公開国:日本
時 間:112分
監 督:星田良子
出 演: 竹中直人、宅麻伸、斉藤暁、稲垣潤一、段田安則、浅田美代子、紺野美沙子、貫地谷しほり、塚本高史、田口浩正、賀来千香子、宇崎竜童、柏原収史、田中卓志、山根良顕、佐々木すみ江 他
コピー:余命半年──、彼が気づいた本当に大切なもの。
食品会社に勤める53歳のサラリーマン藤岡徹は、胆石で入院していたが、病院内を歩行中に、主治医が“53歳の男性。末期の胆嚢癌でもって余命半年。妻は告知をしないと決めている”と話しているのを立ち聞きしてしまう。確かに、妻も子供たちの言動も、何かを隠しているように思えた。そのまま退院し家に戻った藤岡だったが、どうせもうすぐ死ぬと考えると何もやる気がおきない。妻に無理やり息子の高校の学園祭に連れて行かれると、そこで学生がライブをしている姿を見かけ、自分も高校時代に“シーラカンズ”というバンドを組んでいたことを思い出す。死ぬ前にもう一度バンドをやろうと思い立った藤岡は、かつてのメンバーであった酒屋の渡辺、不動産屋の山本、エリートサラリーマンの栗田に声をかける。はじめは乗り気ではなかった面々も、藤岡の病状を知りバンドの再結成を了承するが、それぞれ家族や仕事に問題を抱えており…というストーリー。
別の患者で勘違いでした…という展開が、冒頭から読めてしまい極めてつまらなく感じてしまうのだが、それがストーリーの根底設定なのでしかたがない。
となると、勘違いの部分にばかり焦点をあてないで、ポイントをずらすことが一番重要になってくる。何か別の理由で、家族もよそよそしくしていて、観客にはいかにも本当の病状を隠しているように見せているようなのだが、もう、娘の結婚のことなんだろうな…と薄々見えてしまう。
人間死ぬ気になったらなんでも実現できる…ってのを本当に余命宣告されたら、何でもできちゃうんじゃね?っていう発想はわかる。でも、実際はそういう反応にはならない。いざとなるとなるべく周囲に迷惑をかけないで…という方向になりがちなので、ものすごくリアリティはない。
さらに演出も不自然で、リアリティの無さに拍車をかける。たとえば、昔の写真を見ながら、「これテッちゃんだろ。これ俺俺~」って、自分たちの写真なんだから、誰だかわからないなんてことはあり得ないわけで、会話が不自然極まりない。「痩せてるなー」とか「髪多いなー」とかならわかる。普通、こんなセリフはカットするだろう。ちょっとセンスのない監督かも。
また、寺を借りるくだりは、脅すネタがあるなら脅すだけでもよかったし、安い戒名でよかっただろう。本気で自分の戒名を付けたかったのかもしれないが、家族のことを考えている男なら、家族になるべく財産を残そうとするはずで、極めて不自然。
多くの人が指摘しているが、稲垣潤一のキャスティングがかなり失敗。感情の薄い役柄なので何とかなると思ったんだろうが、許容範囲を超える棒読み具合。興醒めすること極まりない。本当に演奏させることに何故か執着しているようなのだが、映画のデキとはまったく無関係。演りパクで何の問題もなかったはず。
この手の音楽のコンテストがラストになる作品は、どんなつまらん作品でも最後の大会のところはそれなりに盛り上がるはず。ベタベタでありきたりな演出だと思っていても、鳥肌がたつものである。なのに、なぜか本作は盛り上がらない…。
あのタイミングで、徘徊する母親を捜しにいく展開は、あれをおもしろく演出するのは何気に難しいと思う。捜しに行かないで警察呼べよ…とも思っちゃうし。演奏中の中学校時代の回想はいいけど、劇中の出来事の回想はいらんな…とも思う。
どうもこの監督さん、やっちゃいけない線がわかっていないような…。
ただ一つフォローしておくと、実はシナリオ自体はしっかりしていて、部下もギター好きとか、徘徊老人とか、伏線はスマートに貼っている。まあ、優等生の夏休みの宿題みたいな出来映え。アラが目立たないように、90分くらいにまとめるとよかったんだと思う。
公開国:アメリカ
時 間:102分
監 督:ゴア・ヴァービンスキー
出 演: ニコラス・ケイジ、マイケル・ケイン、ホープ・デイヴィス、ニコラス・ホルト、マイケル・リスポリ、ギル・ベローズ、ジェメンヌ・デ・ラ・ペーニャ 他
地元シカゴのローカル・テレビ局で気象キャスターとして働くデイヴ。仕事の内容にしては多額の報酬を稼いでおり、順調な人生のように思われたが、なぜか街を歩いているとファストフードや飲み物を何度も投げつけられる。私生活では別れた妻ノリーンの元暮らす二人の子供たちは、それぞれ問題を抱えておりデイヴは気が気ではない。デイヴは復縁を考えてるがノリーンには一切その気がない。デイヴの父ロバートは有名な作家だったが、父からはまったく認めてもらえていないと感じており、関係もいまいちギクシャクしている。そんな満たされない毎日を送るデイヴは、これらの問題を打破するために、ある夢を描いていた。それは全国ネット番組“ハロー・アメリカ”のウェザーニュースを担当すること。何度もアプローチした結果、やっとオーディション話がやってきた。これを機に家族との絆を取り戻そうとノリーンにそのことを告げるのだが…というストーリー。
これ、日本未公開作品。自分の性格のせいで、現状に満足できない男が苦悩するストーリー。そんなに悪いとは思わないんだけど、ニコラス・ケイジ演じる主人公デイヴにイマイチ共感できないことが、未公開の理由かと。共感できない一つ目の理由は、彼がわずか2時間仕事するだけで、ローカル局にもかかわらず24万ドルという多額の報酬を貰っており、時間も金も余っていて、いくら家族の問題を抱えていても心持ちひとつでどにでもなりそうな境遇。何を贅沢なこと言っとんねん…と。
もう一つの理由が、あまりにもデイヴの性格が悪すぎること。デイヴの性格の悪さは、随所に見られるが、私が一番致命的だなと思ったのは、NYで娘に“なんでお前はラクダの足”と呼ばれているか?を聞いたとき。娘は“ラクダの足は強いから。私が強いから”とまったくトンチンカンな答えを言う。そのときデイヴは気付いていないと安堵の表情を見せる。いやいやいや。いずれ真実を知ったらもっと傷つくのだから、ほっとしている場合ではない。このとりあえず今乗り切れればいいという思考回路が実に不愉快な人間。ノリーンが愛想を尽かすのも至極当然。
冒頭のデイヴが両親の家を訪れる場面。母親は孫娘をいい娘だというが、父親は問題児だと看破する。見たくないものは見ないという性格は100%母親から受け継いでいることが表現されている。父ロバートは、妻がそういう性格なのはまあ良しとしても、息子がそれを受け継いでいる事については、顔には出さないものの非常に心を病んでいる。そんな矢先自分の大病が発覚。この息子をなんとかしなければ…と思うが無駄に体面ばかり気にして、自己顕示欲の塊のようになっている息子に、正論を語っても逆効果。
ロバートは死ぬ前に“価値あるものを手に入れるためには、それなりの犠牲も必要”と言う。まあ、わからないでもないけど、デイヴの場合、ハロー・アメリカの仕事を得るために、必ずしも必要な犠牲だったわけでもなく…。
それだけ収入があれば、けっこう頻繁に子供をNYに呼ぶことも可能だろうし。ラストで、アメリカンドリームを実現するためには、何らかのトレードオフが必要。そういうことには我慢しなきゃ。納得しなきゃ…とか、いわれても、何かピンとこない。
ニコラス・ケイジもマイケル・ケインも、ものすごくいい演技をしているんだけど、なんか芯が狂っているお話だと思う。とにかくピンとこない作品。
公開国:日本
時 間:63分
監 督:新海誠
出 演: 水橋研二、近藤好美、尾上綾華、花村怜美 他
コピー:どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。
東京の小学生・遠野貴樹と篠原明里は、体が弱く内向的な性格という共通点から特別なシンパシーを感じていた。しかし、小学校の卒業を境に、明里が栃木へ転向することになし、会うことがなくなる。中学に入学して半年が過ぎたころ、栃木の明里から手紙が届く。それから文通を重ねるが、今度は貴樹が鹿児島へ転向することになってしまう。鹿児島と栃木では、もう二度と会うことができなくなると考えた貴樹は、明里に会うために栃木にいく決心をする。授業が終わった貴樹は、電車を使い栃木へ向かうが大雪になってしまい電車が大幅に遅延。約束の時間が過ぎる中、貴樹は明里が駅で待っていなければいいと慮っていたが…というストーリー。
内容は別にして、書き込みが凄いと噂の作品。たしかに凄いんだけど、これ、写真とかビデオで撮った町並みから原画をおこしているので、書き込みがすごい…っていうのとはちょっと違うような…。でも、使ったことがある駅とか、通ったことがある町並みとかあアニメになっているのって、興奮するものだ。街ロケ番組とかとはちょっと違う感覚。見たくないもの、見せたくないもの、あまり美しくないものは、原画におこさなければよい。
まあ、新海誠独特の陰影と彩色が魅力なのはもちろんなんだけど。
この手法で観光地を紹介したアニメがあったら、私、観ちゃうけどね。私が観光庁の人間だったら、タレントを使ったPR映像なんかつくるくらいなら、こういうアニメを観光地ごとに作るけどね。
大雪で遅れて栃木に到着した後、二人は辺りにあった小屋で一晩を過ごすが、捜索されるでもない。これで、お互いの家庭環境がどんな感じかなんとなくわかる。無駄な設定の説明がないのは良い。
一途な思いのストーリーということだが、遠野貴樹にシンパシーを感じる男性は少ないだろう。鹿児島だろうが、手紙を飛ばして住所がわからなくなろうが、何とか住所を知る方法はあるわけで、いつまでもグズグズしている人間の気がしれない。むしろ、いつまでも男性から思ってもらえるというシチュエーションが、女性に響いてるんじゃなかろうか。
“切ない”というよりも、幼いころの喪失感と思い出がトラウマになってしまい、後々の人生においてまともな人付き合いができなくなっているという“症例”といえる。そりゃあ暗い。この暗さで2時間あったら、観ているこっちが鬱になっちゃいそうだけど、60分くらいだから堪えられる。
ただ、多くの人が思っただろうけど、山崎まさよしの「One moer time, One moer chance」のPVだよね。
公開国:アメリカ
時 間:170分
監 督:マーティン・スコセッシ
出 演: レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ブランシェット、ケイト ベッキンセイル、ケイト・ベッキンセール、ジュード・ロウ、アレック・ボールドウィン、ジョン C ライリー、アラン・アルダ、イアン・ホルム、ダニー・ヒューストン、グウェン・ステファニー、アダム・スコット、マット・ロス、ウィレム・デフォー、ジョン・C・ライリー 他
受 賞:【2004年/第77回アカデミー賞】助演女優賞(ケイト・ブランシェット)、撮影賞(ロバート・リチャードソン)、美術賞(ダンテ・フェレッティ:Art Direction、Francesca LoSchiavo:Set Decoration)、衣裳デザイン賞(サンディ・パウエル)
【2004年/第30回LA批評家協会賞】美術賞(ダンテ・フェレッティ)
【2004年/第62回ゴールデン・グローブ】作品賞[ドラマ]、男優賞[ドラマ](レオナルド・ディカプリオ)、音楽賞(ハワード・ショア)
【2004年/第58回英国アカデミー賞】作品賞、プロダクションデザイン賞(ダンテ・フェレッティ)、メイクアップ&ヘアー賞
【2004年/第10回放送映画批評家協会賞】監督賞(マーティン・スコセッシ)、音楽賞(ハワード・ショア)
【2005年/第4回MTVムービー・アワード】男優賞(レオナルド・ディカプリオ)
コピー:すべての夢をつかんだ時、いったい何が見えるのだろう。
18歳で亡くなった父から石油掘削機の事業を引き継いで成功したハワード・ヒューズ。1927年、21歳になった彼は、潤沢な財産を飛行機アクション映画に大量に投入する。映画界の常識からはずれた撮影技法は業界人たちから揶揄されたが、3年以上かけて完成した『地獄の天使』は大ヒットを記録。ハリウッドの有名人となった彼は、その後も映画製作を継続しヒットを飛ばす。やがて人気女優キャサリン・ヘプバーンと出会い恋に落ちる。一方、飛行機への情熱は航空ビジネスへと向かい、会社TWAを買収。新型の飛行機開発を行い、自ら操縦桿を握り、飛行機の世界最速記録を次々と更新。自らの夢を次々と叶えて人生を謳歌するハワードだったが…というストーリー。
『ディパーテッド』でようやくオスカーを受賞したスコセッシだが、あれは、もういいかげん獲らせてあげないと…という功績賞的な意味合いが強かったと思う。あんなお抱え監督仕事にオスカーを与えるんじゃなくて、真の意味でオスカーを渡すに値するのは本作だったと、私は思っている。
昨日の『アルゴ』もそうだったが、アメリカには実在のエピソードの中にとんでもないものが存在する。ただ、実話ベースの映画は大別するを二つあり、一つは“事実は小説より奇なり”パターン。もう一つは“奇人列伝”パターン。本作は後者である。
幼い頃、母親に言われたこと(“QUARANTINE”)が頭にこびり付いて潔癖症になってしまったハワード(事実は知らんが作中ではそう描かれている)。とてつもないハンデではあるが、彼自身それに耐えて眼前の問題をクリアしなければ、自分の夢が実現できないことを認識しており、実際それを乗り越えて勝利を勝ち取っていく。彼は、傍若無人で夢の為なら手段を選ばない…という男ではない。きちんと状況(敵)を見極め、それに対処すべき方法を模索し、これだ!と思ったら躊躇無く邁進する。いやいやそれは難しいだろう…と躊躇してしまうところを全力でアクセルが踏める。一般人との違いはそこである。その障壁の一つとして自分の潔癖症があるならば、何とかそれを乗り越えるだけの胆力を持ち合わせている。
彼の夢は非常に子供じみてみえるかもしれないし、彼が成し遂げたことと投入した費用のバランスに疑問を感じる人がいるかもしれないが、自由主義経済の中で彼のような存在が実は不可欠。①彼の事業により購入される資材や支払われる給与が膨大でお金が回ること、②目的のために飽くなき技術革新を求めていくが、一見無駄な開発に見えても後々その成果が何らかに活用される可能性があること。②はイノベーションであり、①は資本主義社会を廻す基本である。彼が奇人であり、あまりにスピード感のある人間なので、そこに目を奪われがちだが、彼は自由主義経済の化身であることを見逃してはならない。
その証拠に、終盤はパンナムと結託した議員との戦いになる。国益の名の下にパンナムが国際線を独占するという法、つまり“規制”と彼は戦うのである。
結果、その戦いに勝利するハワード。そのやりとりは大変参考になる。相手の出方を予測して反証を準備するという手法は、財産とコネクションの賜物なので、我々は参考にできない。しかし、(必ずしもどんな場面でも活用できるとは限らないが)彼が、ブリュースター上院議員と公聴会で対峙するときの、ブリュースターの発言に対するハワードの言葉のかぶせ方。周囲の人間を不快にさせないレベルで、相手の発言を止める微妙なタイミング。実際の映像は残っているのでそれを参考にしたと思われるが、これを訓練せずにやっていたのなら天性の論客なんだろう。
まあ、とにかくこの公聴会での勝利のシーンは、実に興奮した。
タイトルの『アビエイター』のとおりに、実際に空を駆け巡り、そして経済界・社交界を時には高速で飛ぶ、時にはアクロバット飛行をみせたハワードだったが、最後は壊れていく。でも、神からその役目を与えらているような人間とは、大抵そんなもんじゃなかろうか。(一神教世界以外にみられる)荒ぶる神、職能神っていうのは、神話の中でもどこか狂っているものだ。本作は、ハワードという“神”を眺める作品である。お薦め。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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